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8:結婚式ってイベントなんだよね。・5

「そう言われてみれば気にしませんね。騎士様は前世持ちをご存知?」


 身分を気にしないのは、私が日本人だったからだろう。


「アーセスとお呼びください。……はい、存じております」


「では、アーセス様。私は前世持ちで前世では平民でしたから身分には然程拘りが無いのかと思いますわ」


 自分で思う。

 令嬢言葉の“ですわ”“ますわ”が似合わない。


「そうでしたか。前世持ちの方はあまり身分に拘りが無いと聞いたことはありましたが、システィアーナ様もそうなのですね。……ではシスティアーナ様、参りましょうか」


 流れるような仕草でソッと手を差し出されたので思わずその掌の上に手を乗せて気付く。

 コレ、もしやエスコートってやつでは?

 えっ、嘘、ホント? やった! 前世で見たかった騎士にエスコートされちゃった!


「アーセス様、ありがとうございます。私、このようにエスコートをされたことが無いので作法がおかしかったら遠慮なく仰って下さいね」


「システィアーナ様のような美女殿がエスコートの経験が無い、とは思いも寄りませんでした」


 私がニコリと微笑めば、騎士様は目を丸くする。そうだよね、私の外見は美少女だもんね。自画自賛だけどさ。美女って言ってくれてありがとう。

 でも、婚約者もいないしお茶会にはデビューしてるけど夜会デビューはしてないからね、エスコートは受けたことないんだよ。

 夜会デビューしてもいいんだけど、というか年齢的にはしてなくちゃおかしいんだけど、夜会はお茶会と違ってエスコートしてくれるパートナーが居ないとデビューすら出来ないんだよね。

 貴族の世界、面倒くさい。

 婚約者が居れば婚約者がパートナー。居ない場合は通常、異性の家族がパートナーになってくれる。私の場合父しか居ない。兄や弟が居ないからね。これから生まれる弟はノーカウントだろ。

 つまりまぁ、あの父が私を夜会デビューさせることを放棄しているわけだよ。

 私が前世を思い出すまでは母とも私とも関係が希薄で殆ど仕事していて城に泊まるか、帰宅しても深夜とかだったからね、私の夜会デビューなんて頭から抜け落ちていたんだろうね。

 お母様もお父様との関係が良好になるまではお茶会に夜会にって自分の公爵夫人としての社交で忙しい人だったからね。お茶会は辛うじてデビューに付き添ってくれたけれど、夜会デビューはお父様に頼むのをおそらく躊躇っていたんじゃないのかなって思うんだよね。

 私が前世を思い出すまではすれ違ってギスギスしていたわけだし。だから頼み辛かったんじゃないかなって思う。

 そしてそのまま夜会デビューが有耶無耶なんだよね。私自身、前世を思い出すまでは深窓のご令嬢だったのは確かだし。……自分で言ってて笑うけどホントに深窓のご令嬢だったんだよね。

 大人しかったし自己主張無いし。ある意味手間のかからない子だけど居るか居ないか分からん空気みたいな子だったんだよ。

 執事筆頭に使用人達は私のことを気遣ってくれていたけど、余所余所しかったしね。まぁ自己主張も無い大人しい私にどう接していいのか分からなかったのもあるんだろうけど。

 今じゃ、皆、遠慮無いんだけどね。でも楽しい。

 前世を思い出す前の私も私だし、あの私も好きだったけど今も今で私は私を好きだし、専属侍女さん達も前の私も今の私も好きだって言ってくれているからそれでいいよね。

 ……いや、話がズレた。

 まぁそんな前の私が夜会デビューをしたいって自己主張なんてすることは無かったし、今の私も多分ワーカホリックまではいかない……はず、だけど、仕事が楽しくて仕方がないから夜会デビューなんて頭から抜け落ちてたし。

 つまりまぁ、夜会デビューしてない私は、エスコートなんて受けたことが無いから、正真正銘、これが初のエスコートだ。


「アーセス様、ありがとうございます。美女だなんて嬉しいです。でも、私は夜会デビューを果たしておりませんから本当にエスコートを受けたのは、これが初めてなんですよ」


 ……自分で言う。

 “公爵令嬢”の特大猫を持ってきて被ってますが、何か?

 仕方ないじゃん。だって一応これでも公爵令嬢なんだもん。猫被らないと家名に傷が付くとか、お父様とお母様の足を引っ張ることになったら、それはそれは面倒くさそうなんだもん。

 でもこの猫、特大だから肩が凝るんだよねぇ。早く外したい。

お読み頂きまして、ありがとうございました。


次話は来月更新予定です。

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