3:集団お見合い・4
蜂蜜から軌道修正出来た……はず。
お父様は、きちんと仕事出来る人です。ターナとのやり取りは、とてもそうは思えないですが……。
「ターナ! なんだこれは! 美味ではないかっ!」
「あら、お父様。散々貶していたのは、どなたでしたか?」
しれっと視線を突き刺してやれば、お父様はムゥ……と唸って黙った。解れば宜しいのよ。
「という事で。この蜂蜜を今度のお見合いパーティーに出そうと思いますの。これを入れたお茶も美味しいんですのよ」
「そう思う。……私も参加しようかな」
「は? お見合いパーティーなんだから、独身だけですわよ、お父様」
「だが、お茶が飲めるのだろう?」
お父様、あなた本当に仕事が出来ると言われてます? 普通に自分のお茶に入れて下さい。私の呆れた視線に、ようやく言いたい事が分かったのか、お父様が視線を彷徨かせた。
「この蜂蜜とやらは、良いと思うぞ」
お父様が咳払いして誤魔化す。私もそれに乗ってあげる事にした。
「私の前世では、養蜂家と言って、蜜蜂を人間が飼いまして、この蜂蜜を作ってもらっていました。先程も言ったように蜜蜂の巣で作られていますから、蜜蜂に刺されないようにしますけれども」
「ふむ。もしかしたら、新たな事業になりそうだな」
お父様の顔つきが変わりました。まぁ蜂蜜が認められれば、お仕事にもなりますわねぇ。
「ターナ。他には? 他には無いのか?」
「と、仰いますと?」
「仕事になるものだ」
「違います。私の仕事は、婚活する方達をくっつける事です」
「……コンカツ?」
お父様、ごめんなさい。省略しちゃったわ。きちんと言い直します。私が言い直すと、ああ、と思い出したような表情。忘れてましたか、お父様。
「取り敢えず、こういった新しいものを取り入れる事で、見知らぬ方達の会話が生まれます。その中で、お互いがもっと距離を縮めたい! と思いましたら、私の出番ですわ!」
「互いが知り合えばそれで良いんじゃないのか?」
「違います。お父様。結婚するまで、何をして来たか覚えていませんの?」
「私とターナの母は、政略結婚だからな」
そう言えば、珍しく政略結婚でしたね、お二人は。
「互いが知り合っても、それは知り合いレベル。いっとき時間を共有したに過ぎません。本来、お見合いとは、信頼出来る方から薦められたお相手様との縁談。全く相手を知らなくても、薦めてきた方が信頼出来るからこそ、お相手様を信じてみる。つまり、縁談を取り持つ人物が信の置ける人物でなくては成り立ちません」
「成る程。つまり、ターナが信頼出来るかどうかで、今後が決まるわけか」
「ですから、互いが知り合ったその先。そこからが私の出番となるのです!」
お父様が納得したように頷いた。
お見合いって本来、こういうものですよね。人と人との信頼関係が無いと。昔は今よりずっと、家同士を繋ぐ意味合いが強くて、それ故に信頼関係がモノを言ったはずですからね。
 




