アールくんとビーくん
ある日のバイト中。僕はハッとして後輩のビーの腕を掴んだ。
「聞いてくれビー」
「なんです?」
「エルがこの前女の子になったんだ」
「大丈夫ですか?」
「え?」
「や、頭大丈夫なのかなって心配になって」
「いやほんとうなんだって。マジの大マジなんだって」
「少し疲れてるんじゃないですか?」
「確かにここ最近疲れは溜まってるかも」
「今日はもうあがったらどうです?」
ほら、早く帰った方がいいです。頭のおかしなことを言い出す前に。早く。そう言いながら僕の背中を押すビーに、僕はまたハッとして携帯をポケットから取り出してカメラロールを漁った。
「ほらこれ見ろよ」
「え、マジだ」
「だろ?女の子になってるだろ?」
「なってますね、ついてない、ですもんね」
画面を指で広げてみせると大きくその部分が映し出される。ほえーって顔でそれを見るビーになあ信じただろ?って得意げに言うと気の抜けた顔ではあ、と言われた。
「とんだ怪現象ですね」
「ああ、とんでもない怪現象だ」
「なんかしました?」
「え?」
「いやらしいこととか試してみました?」
「お前正気か」
「や、だって女体化なんてファンタジー、現実に起こったらなんか色々試してみたくなりません?」
「相手はエルだぞ」
「でも先輩これでしましたよね?」
「あん?」
これでしましたよねだと?
「だってほらこの写真、お気に入りマークが付いてる」
ほらこれハートマーク。先輩が押したんでしょ?そうですよね?なんて言うビーにもう一度あん?と言ってみる。
「この下半身丸出しで泣いてる女体化したエル先輩の写真でアール先輩は色々しましたよね?」
「さて、そろそろあがるとするか」
「驚く程に誤魔化した方が下手くそですね」
「誰が誤魔化した!なにを誤魔化した!」
「だから先輩がナニしたことを誤魔化し」
「静かに!」
「先輩が一番うるさいですよ」
呆れ顔のビーから逃げるように僕はあがる準備を始めた。