初めに
ちょびちょび上げていけたらなと思います
違うと言っても信じてもらえないならば、「そうだよ」と言う他無かった。
まず初めに言っておくと、俺と君島伊生は幼なじみである。
親同士が仲が良かったことと、家が近かったことが重なって、俺たちは自然と「幼なじみ」となった。昔はよく遊んでいた。
だが中学に上がるとそれはなくなった。会話は会えばあいさつするくらい。遊ぶことはなくなった。早い話が、互いに思春期をこじらせていた。
ところが転機はおとずれた。偶然にも俺と伊生は同じ高校に入ることになった。
「三年間、よろしくね」
合格発表の日、伊生は久しぶりにあいさつ以外で、俺にそう言った。
「ああ、よろしく」
久しぶりに話す伊生は、今まで「こじらせて」いたのが馬鹿らしく思えるくらい、昔と変わっていなかった。
それから俺たちは、互いに帰宅部で、登下校の時間が被ることが多くなり、必然的に会話の数も増えた。
ぶっちゃけ言わせてもらうと、伊生と話すのは楽しかった。長年の付き合いということもあり、俺たちは男女の差など感じさせない、くだらない会話で登下校の間を共に過ごした。
だがそれはあくまで「暇つぶし」。俺も伊生もそれ以外でつるむことはなかった。というより、その必要はないし、できればしたくなかった。
――とまあ、色々前置きさせてもらったが、早い話これから始まるのは、俺と幼なじみとの、甘く(なく)切なく(もない)、どうしようもないほど「どうにもならない」話である。