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狩猟学園の無契約者  作者: 暇人 暇斗
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無契約者の初日

初めて小説を投稿させていただきました。

暇人です。なにかコメントや感想を頂けたら幸いです。

投稿日はきままに投稿しようと考えています。

沢山の人に読んでもらえると嬉しいです。

・・・はぁ~、なぜ僕がため息をついているのかというと、僕はただいま牢屋の中で両腕、両足に鎖を巻かれ身動きが取れない状態だからである。

 

 薄暗いこの牢屋はいつしか僕の人生の終着点なのかと思ってしまう。

 とはいえいつまでもここにいるわけにはいかないのだが、牢屋に監禁され出られないのでどうしようよない。 

 牢屋はコンクリート使用の薄汚いところである。

 両腕と両足に鎖を付けられた状態の僕はただもういつここから出られるのかだけを考えていた。

 

 なぜ、そこに捕まっているのかと言うと、いまから約30分ほど前にあの事件は起きた。

 

 ・.・.・

 

 月の光が街を神々しく照らす中で一人の少年が屋根の上に座り、ある一点を見つめていた。それは、とてつもなく広い街中で一際目立つ大きな学園。

 建物の横には巨大なドームらしきものがありその後ろから縦長の時計台が顔を覗かせる。

 

 少年はため息をつきながら独り言を口にする。

「あそこに明日から僕は通うことになるのか、大丈夫かな?」

 独り言を呟く中、背後から小さな足音らしきものが聞こえてくる。しかしその音に少年は気付かない。すると、

 にゃーー!!

 背後から突然、猫が飛び付き少年の小さなバックを盗み走り出す。

 「あ、ちょっと、それ僕のバック返して!!」

 少年は泥棒猫を追い掛け屋根から屋根へと移りながら猫を追い掛ける。

 次第に少年は大きな学園に近付いていく。しかしいくら走っても猫には追い付けないむしろ徐々に猫から遠のいている。次第に少年の体力にも限界がきていた。

 それもそのはず昨日この少年は朝から今現在まで一睡をしていなかったのだ。その疲れの影響もあり少年の体力はもうほとんど無くなった。

 視界が暗くなり足は疲れ果ててそして少年はついに屋根の上で寝てしまった。

 そんな中、少年のバックを盗んだ猫が歩み寄ってくる。すると、

 「まったくだらしないな、私の弟がこんな情けないとはなんとしても見せるわけにはいかないわね。私の理事長としての名に泥を塗ることになりかねないわ」

 

 ・.・.・

 

 「ん? なんか眩しい!」

 そして、少年は窓から射し込む光に当てられ目を覚ます。辺りを見る限り見知らぬ場所であるとすぐに理解できた。

 少年はベッドの上に寝転がっていた。光が視界を遮り、疲れが残る少年は再び寝ようとする。

 すると少年の右手に柔らかい感触に触れる。

 (ん? これは、枕かな? それにしても柔らかいなこの枕)

 少年が閉じた目を開くとそこには、

 「すぅ~、すぅ~」

 銀髪のロングヘアーの女性が赤いパジャマ姿で寝ていた。歳は少年よりも歳上だろうか。

 少年はその女性の胸を触っていた。

 「うわーー!!」

 思わず驚いた少年は声を上げてしまった。

 その声に気付いたのか女性がゆっくりと目を開け起き上がる。

 「ん~、朝からうるさいなお前は」

 「って姉さん! なんでこんな所に!?」

 「なんでって、ここは私の部屋だから私がいてもおかしくないでしょ?」

 「いやいや、そんなことよりなんで僕が姉さんの部屋で寝てるの!?」

 「あぁそれは昨日お前が屋根の上でみっともなく寝たから、仕方なく私の部屋に連れてきてやったの感謝しなさいよ」

 「いや、それは確かにお礼は言わなきゃだけど、それより僕は今日ここに通うこと知ってるんだよね?」

 「当たり前じゃない、私がお前に入学するように手紙を出したんじゃないか」

 そんな姉弟の会話を邪魔するかのように部屋に突然、

 「どうかされましたか理事長! 部屋から大きな叫び声が聞こえたと女子生徒から聞きましたが...」

 声高らかに叫んだ少女が部屋に入ってきた。髪が青く正装な少女は二人を見た瞬間に、

 「り、理事長になにをしているのだお前は!!」

 「え、いや誤解ですよ!! これは誤解なんですってば!! 姉さんも何とか言ってよ!!」

 「すぅ~、すぅ~」

 少年の姉は寝たふりをしていた。

 (このクソ姉貴!!)

 「そこの男! 理事長から離れろ!」

 「ご、誤解なんですよ!!」

 「問答無用!!」

  

 ・.・.・

 

 そして、僕は勘違いされたまま牢屋に監禁されているのです。一刻も早く姉さんに会って無罪を言ってもらわなくちゃ困るのだが、この状態だとなにも出来ない。

 すると、そんな中、牢屋の扉に人の影らしきものが見える。少年はそれに気付きその影に向かって叫んだ。

 「すみません! 貴方はここの学園の生徒ですか? もしそうならこの学園の理事長(ねえさん)に言ってほしいことがあるんです!」

 扉の近くにいた少女が牢屋の前に立ち止まる。

 赤い髪の少女が問い掛ける。

 「ねぇ今朝、貴方が理事長を襲ったっていう変態さんなの?」

 「だからそれは誤解なんですってば!!」

 「でも学校中で噂になってるわよ? 理事長が男に襲われたって」

 「本当にそれは誤解なんです、姉さn...いや理事長と話をさせて下さい」

 

 すると少女の後ろからまた別の少女の声が聞こえる。

 「お前! そこでなにしてる!?」

 その声に反応し振り向く赤い髪の少女、後ろにいたのは緑髪の少女だった。髪は短く腰には鞘のようなものを付けた少女。

 「珍しいな君がここにいるとは、なんだ? 変態くんとおしゃべりをしていたのか?」

 「うん、その通りよ、それより貴方はここになんのご用?」

 「あぁそうだった」

 すると緑髪の少女が少年の方を振り向き。

 「君、理事長がお呼びだ」

 (や、やっときたのか、)

 

 少年は牢屋から出て手錠を腕にはめられて牢屋を後にする。

 その時、すれ違いに赤髪の少女が、

 「また後でね。」

 「え?」

 「なにをぼさっとしている? 早く来い」

 そしてそのまま引っ張られていった。

 

 (もう、牢屋に行くのはごめんだな)

 長い校舎の廊下を歩く少年と少女、そんな中、少女が少年に問い掛けた。

 「それにしても君はどうやって理事長の部屋に入ったんだ? 普段理事長室は立ち入りは禁止されているはずなのに」

 「あ、いや僕にも色々な事情がありまして」

 「ふーん、理事長と色々な事情がねぇ?」

 「もしかしてまだ僕が襲ったなんて思ってます?」

 「うん、だって生徒会長からの証言だったからね、あの人は嘘は付かないよ」

 (生徒会長か、それは多分ただの勘違いだと思うのだか、)

 そして理事長室へとまたおかえりのように戻ってきた。

 (またこの部屋を訪れることになるとはな、)

 すると少女がドアをノックし、

 「理事長、連れて参りました」

 するとドアの向こう側から、

 「入っていいわ」

 (間違いない、この声は姉さんの声だ)

 そして部屋に入ると、朝の時とは違いパジャマ姿ではなくしっかりとした服装で両手を顎に付けていかにも「待ってましたよ」と言いたげな顔で出迎える少年の姉。

 

 そして少年の姉の最初の言葉は、

 「牢屋の中に入った感想は聞かせてほしいな」

 という、なんともくだらない質問だった。

 「誰のせいで僕が牢屋に入れられる羽目になったと思ってるの?」

 と、少年は姉に反論する。

 「それは本当にごめんてば、それよりリイサ少し席を外してくれないかしら、二人で話がしたいの」

 「し、しかし理事長、またこの男が襲うということも」

 「ふふふっ、心配要らないわよ、この子の言う通り私が部屋に連れてきたのだからもう心配しなくてもいいわよ」

 「そ、そうだったのですね分かりました、それでは他の生徒達にも伝えておきます」

 「ありがとう、よろしくね」

 「はい、では失礼します」

 そして、緑髪の少女は部屋を後にする。部屋には少年とその姉の二人だけになる。

 「姉さん、いい加減この手錠を外してほしいんだけどさ」

 「あぁそうだったね」

 そして僕は無事に誤解も解けてやっと話が出来る状態に戻る。

 「それで姉さん、僕をこの学園に通わせる理由について教えてほしいんたけど」

 「それよりも、はいこれ」

 少年の姉は机の中から昨日少年が猫から盗まれたバックを取り出した。

 「あ、それは僕のバック、でもなんで姉さんがこれを?」

 「お前さ、昨日の夜、猫にこれを盗まれて追っかけたけど結局疲れて屋根の上なんかで寝ちゃったんだからね」

 「ってことはあの時の猫は姉さんだったの!?」

 「そうよ、で、どうだった? 実の姉からのドッキリは驚いた?」

 

 ゴチンッ!!

 

 「いったーい、なにするのよいきなり!」

 「なにをって、姉さんのせいで散々な目にあったんだぞ! 怒るに決まってるだろ!!」

 

 少年はいつのまにか実の姉の頭にありったけの力を込めて拳骨をしていた。

 「それにしては、お前の拳骨は加減を知らないの? 女の子には手加減をしようよ」

 「んなの知るかよ、いくら姉さんが女子だろうがなんだろうが俺の怒りはもう頂点に達してるんだから、なんならもう一発やってもいいよ?」

 「そんなことよりも! お前をここに呼んだ理由を言わなきゃ話が始まらないでしょ!」

 (姉さん、強引に話を変えようとしてるな)

 「それで、僕をここに連れてきたのはなんでなの?」

 すると、突然理事長(あね)が立ち上がり後ろの窓を振り返る。

 「お前はこの学園のことは知ってるだろ?」

 「うん、確か国では珍しい女子学園なんだっけ?」

 「その通り、この『ハンティング女子学園』はお前の言う通り数少ない狩猟女子高の一つだ」

 (毎回聞いてて思うのだか、この学校の名前、いまいち過ぎないか?)

 「それで? 僕を呼んだ理由となんの関係があるんだよ」

 「この学園では男子は禁制なんて言われてるんだけど実際は元々男女共学の学園だったの」

 「つまり、とある日とあるどこかの馬鹿な男子が問題を起こして男子は禁止になったわけなの?」

 「お前は昔から理解力が高くて話が早いよ」 

 「そりゃあ、どうも」

 「それでね、お前をこの学園に通わせる本当の理由は...」

 

 急に部屋のなかに沈黙が包み込む。落ち着いた空間の中で理事長(あね)は語り出す。

 「私はもう一度この学園を男女共学にしたいの、その為にはまずお前を...」

 「僕をこの学園では通わせて女子生徒の反応がどうなるのかを見たい、でしょ? 姉さん」

 僕は姉さんが言おうとしていたことを先に言い放ってやった、なんかすごく清々しい気持ちになった。

 「流石、私の弟ね、その通りよ、いまお前の言う通り言い方は悪いけどお前を『実験台』にさせてほしい」

 すると理事長が少年の前に立ち止まり、手を握り、

 「お願いだ、どうか姉の願いを引き受けてはくれないだろうか、」

 その時の俺の答えは決まっていた。しかしこんな暗い姉の素顔は初めて見た。

 「全く姉さんはこの学園の理事長なんでしょ? それならもっと理事長らしくしてよなんか僕が恥ずかしいよ」

 「それはつまり」

 「答えは決まってる、勿論引き受けるよ姉さんのお願いならね」

 すると、さっきまであんなに暗い顔をしていたはずの姉の顔が一瞬にして輝きだした。

 「本当にいいのか?」

 「二度は言わないよ」

 「ありがとう、本当にありがとう」

 理事長(あね)は目に涙を浮かべながら泣いていた。

 「それでこの学園に入るのはいいけど、僕はどの教室に編入することになるの?」

 「あぁそれはお前にはちょうどいい教室さ、その教室は2-D組」

 「2-D組、」

 「実を言うとそのクラスには別に二つ名があってな」

 「それはどんな名前さ、」

 「えーと確か、『問題児しかいない教室』なんて呼ばれてたような」

 「いや、まてまて、そんないかにも危ない教室に僕を入れるの?」

 「大丈夫、お前ならあのクラスを変えてくれるはず、私はそう信じてるよ」

 (いきなり、問題児のクラスに編入するとは大丈夫かな僕の精神が持てばいいんだけど)

 そして、僕が部屋を出ようとした時、

 「あぁそれといい忘れてたことがあった」

 「出る直前に思い出すなよ」

 「すまん、実はここ最近この街の付近でまたしても街の住人が襲われているらしい」

 「まさか例の『殺人モンスター』の件か?」

 「えぇその通りよ、お前は大丈夫だろうけどでも油断はしないでね」

 「心配しなくても僕はそんな簡単にモンスターごときに殺られるような奴じゃないって一番知ってるのは姉さんでしょ?」

 「そうだったわね、心配症ね私は」

 「そうだよだから心配しないで姉さんは姉さんの仕事をしてよ」

 「でも、お前もそろそろ契約をしないと一人ではやってはいけないぞ」

 「それは、まぁまだ考え中だよ」

 「そうだ、もし時間があるのなら、この街の東側に新しい祠が見つかったらしいそこに幻の契約の精霊がいるらしい機会があるなら立ち寄るといい」

 「はいはい、時間があったら行くよ」 

 「それともし分からないことがあるのなら担任の先生に聞くといい、この学園のルールについても教えてもらうはずさ」

 「わかったよ、んじゃ行ってくるよ」

 「うん、じゃあ行ってらっしゃい」

 (幸運を祈るよ、弟よ)

 

 

 そして僕は理事長室を出る。するとドアの近くに今朝の事件で叫んだ青い髪の少女が立っていた。

 「ようやく出てきたのか」

 「あ、えーともしかして僕を待ってたの?」

 「ば、馬鹿を言うだれが君みたいな変態を待つものか」

 「あれ? 緑髪の子から聞かなかった?」

 「あぁ君が実は理事長から襲われたという話のことだろ?」

 「いや、別に僕が襲われた訳じゃないんだが、」

 「そうなのか、」

 「そう、実を言うと理事長と俺は姉弟なんだよ」

 「そ、そうだったのか?」

 「そう、だから今朝のあれは姉さんが僕を部屋に連れ込んで一緒に寝た、それだけの話だよ」

 「そうだったのか、すまない、君が理事長の弟とは知らずに私はなんて勘違いを」

 「いいよ、もう誤解も解けたんだし謝る必要なんてないよ」

 「しかし、なにかお詫びをしないと私の気がすまない」

 「それなら、2-D組に案内してほしいんだよ」

 「そんなことでいいのか?」

 「あぁ僕はまだこの学園に来たばかりだし、そうだこの学園についても教えてくれないか?」

 「私なんかでいいのか?」

 「だっていまここにいる女の子はお前しかいなしそれにお前はなんか話しやすいし」

 「そ、そうか、それなら仕方ない私が教えてやろう」

 「あぁよろしく頼むよ」

 「そうだそれより君の名前は何て言うんだ?」

 「そういえばまだ自己紹介してなかったね、僕の名前はキミト・レスジーク」

 「キミト・レスジーク」

 「それで君の名前は?」

 「私の名前は、ミチカ・ソーシェル」

 「なんか長い名前だね」

 「呼びにくいのなら普通にミチカと呼んでいいよ」

 「それなら僕のこともキミトって呼んでよ」

 「わかったわ、じゃあキミトさっそくこの学園のことについて説明するからよく聞いてね」

 「あぁよろしく頼むよミチカ」

 そして、僕とミチカは2-D組の教室を目指し廊下を歩いていく。

 

 「それにしてもこの廊下の天井は無駄に高くないかな?」

 「それ、私も思ってたことなの、確かになんであんなに高くする必要があるのか私も知らないの」

 「まぁ姉さんの考えは僕でも読めないからね、」

 「へぇそうなんだ弟の君でも理事長(あね)の考えていることは読めないんだ?」

 「いくら姉弟だからと言って、心が通じてる訳じゃないんだよ」

 「姉弟ってよく分からないものなんだね」

 「まぁ確かに分からないね、それよりも確か君はこの学園の生徒会長なんでしょ?」

 「よく知ってますね、理事長(あね)から聞いたのですか?」

 「いや、理事長室に連れたこられるときに緑髪の確かリイサって名前の女の子に聞いたんだよ」

 「なるほど、リイサに聞いたのね」

 「彼女とは知り合いなのか、」

 「ええ、彼女とは昔ながらの親友なの」

 「へぇそうなんだ」

 「そういう君には親友とか友達はいないの?」

 「あぁ僕には...いないかな」

 「誰も? 一人もいないの?」

 「僕は生まれた時からずっとモンスターとの闘いに明け暮れてたからそんな友達を作る暇なんてなかったな」

 「そうなんだ、ねぇキミト、君は友達を作りたいとか思わないの?」

 「そうだな、僕は友達がいなくていつも一人だった...まぁ姉さんがいたから一人だなんて思ったことはないけど...」

 「けどなに?」

 「僕はほしいなミチカみたいに親友と呼べる友達を」

 「そう、それなら」

 

 ミチカは歩いていた足を止めて僕の方を振り向き手を差し伸べる。

 「それなら私がキミト、君の最初の友達になってあげる」

 「え、いいのか僕と友達になってくれるのか?」

 「うん、だって君は確かに友達を作るの苦手そうだしね、仕方ないから私が友達になってあげる」

 

 僕はその時、初めて心の底から喜びが溢れてきた。いままでずっと一人で自分の心の奥底の闇の奥に閉じ込めていた心を燦然と輝く太陽の下に解放した気分になった。

 僕は嬉しさのあまりミチカが差し伸べてくれた手を握りしめていた。

 「あぁこれからもよろしくミチカ」

 「こちらこそ、これからもよろしくねキミト」

 

 二人の間の壁にある窓の光が二人を温かく包み込む。

 しばらくの間、僕とミチカは互いの目をそらさなかった。

 すると、ミチカが、

 「あ、いけない君を教室に連れて行かないといけなかったね」

 「そうだっね、それじゃあ引き続き案内を頼むよ」

 「分かったわ、任せてよ」

 

 そして再び僕ら二人は教室を目指し歩き出す。

 

 「キミト、あの屋根の建物が見える?」

 ミチカの指差す窓の外にはまだ出来たばかりの新しい校舎らしき建物が建っていた。

 「見えるけど、あれはなんの建物なの?」

 「あれは私達女子生徒の寮だよ」

 「あんなに大きな建物がミチカ達の寮なのか!?」

 「そこまで驚くかな? 別に普通の寮だと思うけど」

 (まぁ理事長(ねえさん)の学園なら不思議はないか)

 「にしても寮にしては豪勢な建物だな」

 「私達にとっては普通の寮だけどキミトにとっては初めて見る光景なんだね」

 「あぁここまで大きな寮は初めて見たよ」

 「それであの寮の隣にある小さな建物があるでしょ?」

 

 大きな寮の隣には2分の1程の大きさのそこまで小さくはない建物が建っていた。いかにも誰か専用の建物だと分かる。

 

 「なぁまさかあそこが」

 「お、流石のこの流れで分かった? あの建物は今日から君の寮だよ」

 (やっぱりか、なんとなく分かっていたがいくらなんでも女子寮の隣に建てるのはどうかと思うぞ)

 「キミト、そろそろ教室に着くよ」

 「そうか、いよいよか」

 (なんか緊張してきたな僕のクラスは問題児ばかりだって聞いたからな)

 「キミト、着いたよ」

 そして二人はついに教室の前にたどり着いた。ドアの向こう側から発せられる謎の緊迫感は僕の精神をえぐりとるかのように異様な感じがした。

 

 「それじゃあ入ろうか、」

 「え、ミチカは自分の教室に戻らなくてもいいのか?」

 「え、私の教室はここだよ?」

 (ん? つまりミチカは僕と同じ2-D組の生徒、言わば僕と彼女はクラスメートなのか)

 「何してるのキミト、早く入ろうよ」

 「あ、あぁ」

 ミチカは教室のドアを開ける教室の中には教壇に黒い『名簿』と書かれた本を持った黒髪の白衣姿の女性が立っていた。

 「お、相変わらず早いなミチカは、ん、隣にいる彼は?」

 「あぁ彼の名前はキミト・レスジーク、キミトこの人は私達のクラスの担任の...」

 「君が今日からここに通う生徒か、始めましてキミト君、私の名前はスナカ・ファリミよろしくね」

 「は、はいこちらこそよろしくお願いします、スナカ先生」

 「まさか君が理事長の弟さんとは驚いたね」

 「僕の姉さんとお知り合いなんですか?」

 「あぁ勿論、私と彼女は昔ながらの古い付き合いでね」

 「そ、そうだったんですね」

 (姉さん、どんだけ知り合いがいるんだよ)

 「あ、あのそれでスナカ先生」

 「ん、なんだいキミト君」

 「教室に僕ら三人しかいないのはなぜでしょうか?」

 キミトの言う通り教室の中を見渡せば誰一人としていない。いるのはキミト、ミチカ、スナカの三人だけ。

 

 「あぁそうかキミト君はここに来たばかりだから知らないのか」

 「一体何をですか?」

 「なーに心配しなくてもすぐに全員揃うよ、もうそろそろ全員来るかな? ミチカ君はキミト君を席に案内してやってくれ」

 「はい分かりました、キミトこっちに来て」

 

 ミチカについていき僕は教室の一番後ろの席に座る。僕の隣にはミチカが座っていた。

 「キミトの席はそこだから覚えておいてね」

 「ミチカは僕の隣になんだ」

 「そうだよ、その方がキミトに色々教えやすいからね」

 するとスナカが、

 「おーい二人ともそろそろ来るから気を付けろよ」

 「はーい、分かりました」

 「な、なぁミチカ」

 「ん、どうしたキミト」

 「さっき先生が言ってた『そろそろ来るから気を付けろよ』ってなんのこと?」

 「あぁそう言えばまだ全然このクラスのことについて説明してなかったね、まぁ私の口で説明するより実際に“見た方が(・・・)”分かると思うよ?」

 「それはどういう...」

 

 僕がミチカに問い掛けようとしたその時、窓の外からなにやら人らしきものが飛んできた。

 そして次の瞬間、

 バリーーーーン!!

 「すみませーーん!! 遅れましたー?」

 なぜかHRの時間もとっくに過ぎているのにも関わらず、謝りながら疑問形で投げ掛けてくる紫髪の女の子が勢いよく窓ガラスを破り教室に突入する。

 その瞬間に彼女は勢いあまって僕の方へと飛び込んでくる。

 

 「あ! ごめん! 避けて!」

 「避けられるかーーー!!」

 「うわあぁぁぁ!!」

 早すぎて避けることが出来ず僕と彼女は激突し床に倒れる。

 

 ムニ、モニュッ、

 そして僕は激突した拍子に両手になにやら柔らかい感触のものに触れていた。

 (ん? なんだろうこれ、なんかマシュマロみたいな柔らかさでとても触り心地がいい)

 そして倒れた彼女が起き上がると僕が何を触っていたのか、すぐに理解してしまう。

 「あ、」

 僕は彼女の胸を触ってしまっていた。すると彼女の顔は赤くなり顔が徐々に怒り顔になっていた。

 「い、いや、いまのは不可抗力でしょ? 君から僕に突っ込んで来たんじゃないか!」

 すると彼女は怒りながら、

 「確かにそれは事実だけど、いくらなんでも女の子の胸を揉むだなんて私にとってはハレンチにも程があるよ!」

 すると彼女は右手を上にあげその右手には風のようなものがまとわりついていた。

 僕はいかにもこのあとの展開が目に見えていた。

 

 「す、ストップ、ストップ! まずは落ち着いて話し合おうよ、ね?」

 「いまの私に話し合いなど必要ないし、ただいまは貴方に制裁を与えれば十分です、喰らいなさい!!」

 「ちょ、ちょっと待ってってばーーー!!」

 「問答無用!!」

 彼女は拳に握り締めた風の力を名一杯溜め込みそれを一気に僕の腹へとドストレートにぶつける。

 

 「ぐほっ!!」

 あまりの痛さに僕は痛みを忘れるほどの早さで教室を突き破り校舎の外へと投げ出されていた。

 そしてみるみるうちに隣の校舎の屋上に近付いていき、屋上に着地する。

 

 「ごほっ、げほっ、なんなんだよあの子は、あの力は女の子の力じゃないでしょ!」

 「それもそうだろうな、彼女は精霊と契約を交わして強くなっているのだからな」

 僕の背後からの謎の声、しかしこの声には聞き覚えがあった。その声の主はさっきまで僕と真剣な話をしていた相手だった。

 視界が薄くなる中、僕にゆっくり近付いてくる人影それに僕は問い掛ける。

 「ね、姉さん、精霊と契約を交わしてるってどういうことなの?」

 「おー、すごいな流石は私の自慢の弟だな、彼女の全身全霊の怒りの制裁拳をくらってまだ意識があるとは驚きだよ」

 「そんなことより姉さん、さっきの女の子が精霊と契約をしてるのは本当なの?」

 「私がお前に嘘を付いたことなんて一度もないだろ?」

 「まぁ...たしかにそれはそうだけど」

 「ちなみにさっきお前を殴った女子はこの学校では拳のことに関しては一流だからな、あまり彼女に喧嘩を売らない方がいいぞ」

 「別にいまのは僕が喧嘩を売った訳じゃないよ、彼女から突然窓から突入してきたんだよ」

 「ん? スナカから聞かなかったのか? 避けろとか、気を付けろよとか、言わなかった?」

 「いや、確かに言ってたけどまさか急に窓から女の子が飛び込んでくるなんて予想できないよ」

 「でもまぁ、そのお陰でお前は人生で初の女子の胸を触るということが出来たのだからいいではないか」

 「僕が女の子の胸を触ることのどこがいいことなんだよ!!」

 「まぁまぁそんなに怒りなさんなって、ラッキースケベが出来たからいいじゃないか」

 「だから僕は...」

 すると屋上の扉から、

 「おーい、キミト! 大丈夫!?」

 「おや、どうやら私はお邪魔みたいだね、それじゃあ失礼するよ、キミト学園生活を楽しめ」

 すると彼女(あね)は煙になって消えていった。

 (姉さん、貴方は僕にどうしてほしいの?)

 「あ、いた! 大丈夫キミト!?」

 屋上の扉から勢いよく開けて出てきたのはミチカだった。彼女は僕の方へと駆け寄り怪我の具合を心配しに来てくれたのだ。

 「あ、あぁ大丈夫、平気だよほらこの通り」

 僕は彼女に怪我をしていないと隠し安心させた。それよりも僕はあの窓から突入してきた女子のことが気になっていた。

 

 「なぁミチカ、さっきの女の子は?」

 「あぁユズミのことね彼女は大丈夫よ、いまは教室で他の皆とおしゃべりしてるから」

 「そうか、それならよかった、ん? 他の皆?」

 「そうだよ、キミトが教室から飛んでった後に他の女子たちも教室に入ってきたよ」

 「本当にあの教室はまともな奴がお前しかいないのか?」

 「あははは、それについては私からもなんとも言えないね、私達のクラスは貴方と私を合わせて人数はたったの5人だから、」

 「え、あんなに教室に机があったにも関わらず生徒の人数はたったの5人なのか?」

 「そうなの、だから他のクラスの人からは『問題児しかいない教室』なんて言われるようになったの」

 「なるほど、確かにさっきみたいな女の子の正拳はかなり体に響いたぞ」

 「でもそれにしては、キミトは平気そうだよね」

 「まぁあれくらいの正拳くらいは耐えられるが、あれ以上があるなら耐えるのは無理だな」

 「でもキミトはすごいよね、ユズミの拳を受けてもまだ余裕があるだなんて」

 「そのユズミっていう女の子の正拳はそんなにヤバイものなのか?」

 「ヤバイっていうレベルじゃないよ、彼女の正拳はこの学園の校舎を軽く吹き飛ばすことができる程の威力があるんだからね」

 (いや、そんなに威力があるならいまここに存在する僕はよく生きてるな)

 「だからさ、ほらあそこの校舎の穴は論より証拠だよね」

 ミチカの指差す先にはさっき僕が彼女(ユズミ)に殴られその勢いで校舎に大きな穴が出来上がっていた。その穴の廊下にはスナカ先生が立っていた。

 

 「あれって、スナカ先生だよね?」

 「本当だ、なにしてるんだろう?」

 するとスナカ先生は僕達に気付き、

 「二人とも! そんなところにいないで早く教室に戻って来なさい!!」

 「は、はい! 分かりました!」

 「それじゃあキミト、戻ろうか」

 「あぁ、早く急ごう!」

 そして僕とミチカは屋上を後にする。

 

 ・.・.・

 

 教室の廊下に戻ってきた。そして僕はあることに気付き足を止める。

 「ん? どうしたのキミト? 早く教室に入ろうよ」

 「な、なぁミチカ、さっきまでここにあった穴は?」

 「穴? あぁさっきの大きな穴のことね、それなら...」

 ミチカの言葉を遮るように教室の扉が開いた、そこにいたのは、

 

 「うわ! スナカ先生か、もうびっくりしましたよ」

 「あぁすまないなミチカ、それよりキミト君怪我はしていないかい?」

 「あ、はい大丈夫ですこの通り、それよりスナサ先生、ここにあった大きな穴はどこに消えたのですか?」

 「あぁそれなら君達が来る前に直しておいたよ」

 「あ、そうだったんですね」

 「まぁ無事ならよかったよ、ほら君もキミト君に謝罪しなさい」

 

 するとスナカ先生の背後から僕を教室の外へと殴り飛ばした。紫髪の女の子が出てきた。

 

 「えっと、さっきはごめんなさい。いきなり殴ったりして、」

 「あ、いえいえ僕の方こそごめん、」

 すると僕とユズナの愛だからスナサ先生が、

 「それじゃあ二人とも仲直りの印にハグしたまえ」

 「え、えぇ!! スナカ先生何をいっているのですか!?」

 「なにをって、あぁそうかキミト君にはまだ学園のルールを教えていなかったね」

 (そういや、姉さんも言ってたな『学園のルール』について担任の先生から知らなくてはならないと)

 「えっと、それじゃあスナカ先生、この学園のルールを教えてもらえますか?」

 「あぁ勿論だよ、そうでもしなきゃいきなり君も彼女にハグなんてできないだろうし」

 (いや、たとえルールを知ったとしても僕が彼女にハグをすることなんて絶対に有り得ません!!)

 と、僕は心の中で断言した。

 そんな中、教室の中から、

 「スナカ先生~早くHRを始めましょう」

 「あぁそうだったな、それじゃあ君達も教室に入りたまえ」

 (僕とミチカとユズミを合わせて残り二人がこの教室にいるんだよな、一体どんなcrazy野郎がいるのだろうか?)

 

 そして僕は教室の中へと入っていく。するとその途端に、

 「うわぁ! 男の子がいる~クレフずっとお兄ちゃんが欲しかったんだぁ」

 「えっと、君は?」

 「あぁ彼女の名前はクレフ、クレフ・マジリアだよ」

 「クレフ・マジリア?」

 「はい! その通りですお兄ちゃん!」

 「お、お兄ちゃん? お兄ちゃんって僕のこと?」

 「うん! 駄目かな?」

 「いや、別に駄目じゃないけどさ」

 「ならこれからもお兄ちゃんって呼んでもいい!?」

 「別にいいけど、」

 「やったーー!! クレフにお兄ちゃんができた!!」

 「ははっよかったじゃないかクレフ、君の夢が叶って」

 「うん! クレフすごく嬉しい!!」

 「夢? クレフの夢って」

 「うん、クレフの夢はね、いつかお兄ちゃんって呼べる人が出来たらいいなっていう夢なの」

 「でも君の夢に僕なんかで叶えてよかったの?」

 「うんだってお兄ちゃんはすごく優しそうだから」

 「あはは、見た目で判断されたのか」

 「いや、それは違うよキミト君」

 「どういう意味ですか? スナカ先生」

 「彼女、クレフは人の心の中を覗ける能力を持っているんだよ」

 「人の心の中を覗ける能力...それはつまり」

 「そう、簡単に言うならクレフは生まれつき能力を持っているということだ」

 「クレフが能力を持っている、」

 「クレフはねあまりこの能力を使いたくはないの」

 「どうして? クレフ」

 「それは...」

 

 クレフは言葉をつまらせたすると、クレフの横から、

 「クレフ、変わりに私が説明しようか?」

 「ミチカ、いや大丈夫、クレフが説明する」

 クレフの顔は真剣な表情になっていた。

 「これはクレフがまだ小さいころの話なんだけどね...」

 

 「まだクレフが幼いとき、その時のクレフ自身は能力を持っている自覚が無くて、その日はいつも通りに過ごしていたの、そんなときに、」

 「その時のクレフはどこにいたんだ?」

 「この学園に入る前の小さい学園に通ってた」

 「その学園でなにかあったんだな」

 「話を戻すね、それでいつも通り学校に行って教室に入って授業を受けていたときに、クレフの頭の中に変な声が聞こえてきたの、」

 「声? それはどんな?」

 「その時のクレフはまだ分からないから、誰の声なのかは分からないけど、恐らく教室にいる全員の声だと分かったの」

 「...」

 「お兄ちゃん? どうしたの? お顔が怖い顔になってるよ?」

 「なんだろう、分かりたくもないことが分かった気がするんだよ」

 「お兄ちゃん、クレフのこの後のことが分かるの?」

 「あぁでもこれはあくまでも僕の推測だから当たったるとは限らないぞ」

 「それでもいいよ、言ってお兄ちゃん」

 「あぁ分かった、多分だかクレフ、お前はクラスメート全員の心の声を聞いてそれに担任の心までも読み取りそれを何気なく教室内で呟いた途端にクラスメート全員の視線がお前に向いて、『あいつは心を読めるやつだから近付かない方がいい』なんて言われて、クラスでは嫌われ者になり挙げ句の果てには学園にいられなくなった、と、僕は思うんだけど、違うなら違うって言ってくれ」

 「...」

 その時、僕は気付いた、クレフが泣いていることに、なぜ彼女が泣いているのか僕には理解できなかった。

 僕の推測が当たっていて泣いているのか、反対に間違って泣いているのか、どちらにしろ僕がクレフの過去をこれ以上詮索するのはよした方がいいのはこの空間にいるだけでよく分かった。

 

 「それよりも、まずは僕らの自己紹介から始めない? まだ僕はこの学園に来たばかりでまだ分からないことが多いし、まずは君達のことを教えてほしいんだよ」

 「なるほどね、それは名案だなキミト君、それじゃあいまから一人ずつ自分の自己紹介をしてもらうことにしよう」

 「スナカ先生、それは私達は勿論、自己紹介しますが、スナカ先生はしないのですか?」

 「私か? 私の紹介はいらないだろう?」

 「あのぉ、出来ればスナカ先生のことも知っておきたいです。僕の姉とどんな関係で昔の姉についても聞きたいですし」

 「なるほど、そういうことなら仕方ないなそれじゃあ私も自己紹介しよう」

 

 そして、教室で一人ずつ自己紹介が始まる。まず初めに自己紹介するのは、

 「それじゃあ、まず最初は私の紹介をしますね。私の名前はミチカ・ソーシェル誕生日は2月5日、血液型はA型、好きなことは本を読むことです。ちなみに私はこのクラスの学級委員長です。これから一年間よろしくお願いします。」

 「あぁキミト君は多分、彼女からもう聞いてると思うが彼女はこの学園の生徒会長だ」

 「はい、それは知っています」

 「それじゃあ次は、クレフの番だね!」

 

 勢いよく教壇に立ち、大きな声で自己紹介を始める。

 「クレフは、クレフ・マジリアです。誕生日は4月13日、血液型はAB型で、好きな人は、」

 すると、スナカ先生が、

 「おぉ? クレフ、もう君は好きな人ができたのか」

 「うん、クレフの好きな人は、お兄ちゃん!!」

 そう言うと、クレフは僕の方を指差す。

 「おぉ入学初日にもう告白されるとはキミト君、モテるねぇ」

 「か、からかわないでくださいよスナカ先生、」

 「いやぁ、すまんすまん、それじぁあ次は?」

 「それなら、僕がするよ」

 そして、次に教壇に立ったのは見た目は女の子の姿なのだがしゃべり方が男子風の少女だった。

 「僕の名前は、レイゼ・マトリス、誕生日は6月25日、血液型はB型、好きな食べ物はこの学食で出るヘビーストラスの丸焼きです。みんなこれからよろしく」

 「ユズミ、次は貴方の紹介の番よ」

 「はい、分かりました。」

 そして、次に教壇に立ったのはさっき僕の腹に正拳をフルでぶつけた少女だった。

 「えっと、私の名前はユズミ・ナズリア、誕生日は8月23日、血液型はA型、好きなことは鍛練すること、これからよろしく」

 「よし、それなら今度は私の出番だな」

 やけに嬉しそうなスナカ先生が教壇に立つと、やっぱり先生だなと実感してしまう自分がいる。

 「キミト君はもう私の名前は知ってるだろうけど、改めて自己紹介しよう。私の名前はスナカ・ファリミ、誕生日は個人的に秘密にしている、血液型はA型、好きなものは、まぁ大人になれば誰でも好きになる酒だな、これから一年間君達の担任だからよろしく」

 

 そして、ついに僕の番が来てしまった。

 「さぁ最後は君の番だ。キミト君」

 「はい、えっと、僕の名前はキミト・レスジークです。誕生日は5月8日、血液型はA型、好きなことはミチカと同じで読書をすることです。まだこの学園に来たばかりでなにも分かりませんが、よろしくお願いします。」

 「よし、キミト君の紹介も終わったし、そろそろこの学園のルールを教えておこうか、」

 (そういえば、そのことについて聞くの忘れてたなクレフの話で夢中になってたから)

 「それじぁあ、ルールについて教えよう」

 

 ルール1

 学園内での契約能力を発動するのは緊急時のみの使用を許可する。

 

 ルール2

 学園で喧嘩が行われた場合、どちらが悪いのかを裁くため『学園裁判』を行うこと。

 

 ルール3

 『学園裁判』で解決したあとは、両者は仲直りの印にハグをすること。

 

 ルール4

 モンスターとの戦闘は、学園内での契約者のみ許される。

 

 ルール5

 モンスターとの戦闘で、緊急時なことが起きたらただちに『極限契約』を行うこと。

 

 「それでまぁ、いまのは大体最初に書かれてるルール内容だから、ここから先にもまだルールはたくさんあるけど、これ以上私のルールの説明を聞いても飽きるだろうし、もう今日はこの辺で終わりにしておきます」

 「それじぁあスナカ先生、今日のHRはこれで終わりですか?」

 「あぁその通りだ、後は入学式があるから皆、ドームに集合なそれまでは教室で待機しておくこと」

 そして、スナカ先生は教室を後にする。

 その瞬間に、

 「お兄ちゃーーん!!」

 「ぐふっ!!」

 突然、クレフが僕の胸に勢いよく飛び込んできた。その反動で僕は床に倒れこんだ。

 

 「いきなり、なにするんだよクレフ」

 「だってクレフ、お兄ちゃんのこと好きだからハグしたいんだもん」

 「あ、ハグで思い出した。そう言えばキミトとユズミ、二人ともまだ仲直りのハグしてないでしょ?」

 「やっぱりそれ、しないと駄目なことなのか?」

 「当然、やらなかった場合は即刻退学確定よ」

 「この学園、結構ルールに厳しいな」

 「キミトのお姉さんの学園なんだから、弟の君なら分かることじゃない?」

 「まぁ姉さんがこの学園の理事長なら強制的にでもさせそうなのが怖いんだよな」

 「それで? ユズミ、貴方はどうするの?」

 「私は、キミトとハグしたいです」

 「いやちょっとまて、本当にいいの? 僕なんかとハグして後悔しない?」

 「後悔なんてしませんよ、だってほら」

 ユズミの指差す先には僕のお腹の上でぐっすり眠っているクレフがいた。

 「クレフ、普段はお気に入りのぬいぐるみでしか寝ないのにキミト君のお腹の上で気持ちよさそうに寝てるから私もハグしてみたいなって」

 (なんか、この子の理由は、単純だな)

 「分かった、それならユズミ、最後に聞くぞ? 本当に僕とハグして後悔しない?」

 「うん、絶対に後悔しないよ」

 「そ、そうか、なら早くしよう」

 「わ、分かりました。ではどうぞ!」

 ユズミはその場に立ったまま動こうとはしない。つまりこれはユズミに僕からハグする、ということになる。

 「さぁキミト、ユズミにハグしてあげて彼女にとって男子からハグされるのは初めての経験だから」

 「わ、分かったよ」

 

 そして僕はユズミの前に立ちそして、

 ギュ~~~~とハグした。

 「ひやぁ、」

 ユズミはどこからその声を出しのか分からないほどの声でわめいた。

 「ご、ごめん! 離れるよ」

 「あ、駄目だよキミト、ユズミからもキミトにハグしてあげなきゃ仲直り成立しないよ」

 「まじかよ、ユズミ無理しなくてもいいよ」

 「でもハグをしないと私とキミト君は退学になるから」

 「それはそうだけど、僕なんかとハグしちゃ駄目だよ、ユズミにはもっといい出会いがあるかもしれないじゃないか」

 

 「ねぇミチカ、キミト君達の話が次第に脱線してるのは、僕の気のせいかな?」

 「いいえ、貴方のいう通りよレイゼちゃんあの二人の話はもうなんか関係のない話になってるのは間違いないよ」

 「確かにそうだね、あの二人は中々お似合いだと思うし」

 「...」

 「ミチカ? どうしたの?」

 「い、いやなんでもないよ、それより早くハグしないと遅れるねもう時間が、」

 「あほんとだ、このままだと僕ら全員遅刻しちゃうね、仕方ないなこのレイゼが手伝ってあげよう!」

 「ちょっとレイゼちゃん、一体なにをするつもり?」

 「大丈夫、大丈夫、僕に任せてよ」

 

 一方そのころ、キミトとユズミはハグをしてからというものどちらとも動かずじまいの状態である。

 

 (まずい、流石にこのままだと僕の精神が限界を超える気がする)

 (どどどどど、どうしましょう。キミト君にハグされて私なんだかすごく気持ちがいいのですが、今度は私からキミト君にハグするだなんて死ぬのと同じくらいに恥ずかしいです。)

 すると二人の横から、

 「あ! ごめーん!」

 「レイゼさん! 一体なにを!?」

 「あ! レイゼの手が滑った!」

 

 するとレイゼ、ユズミの両手を掴みそのままキミトの背中に回しハグを強制的に完了させる。

 

 「やったね、これで二人とも退学しなくて済むよ」

 しかし、レイゼの声は二人の耳には届かず二人とも顔を赤くし固まってしまった。

 「はぁ、確かにレイゼの言う通りハグさせたけどユズミは心の準備もしてないのに無理矢理させるのはねぇ」

 「まぁまぁ無事に解決したことだし、早くドームに急ごう」

 「キミト! ユズミ! 急いで! そろそろドームに行かないとまずいよ!」

 「あ、うん、分かったよいまいくから、」

 「は、はい、分かりましたいま行きます」

 その二人の心をミチカは読み取る。

 (あれは二人とも完全に意気消沈してるな)

 

 そして僕らはドームに走っていった。

 

 ・.・.・

 

 ドームには他の女子生徒が沢山いた。

 まぁここはいま女子学園なのだから、しょうがないのだが、

 (やっぱり女子学園だから、僕みたいな男子は珍しいんだろうな)

 それもそのはず、ドーム近くの女子全員がキミトに釘付けになっていた。

 その理由はまた別にある。それは、

 「ふん、ふふん、お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

 「なぁクレフ、あまり僕にくっつきすぎだと思うんだけど、」

 「えぇ! いいでしょー! お兄ちゃん!?」

 「いいけど、だからあんまりくっつかないでくれよ」

 ──ねぇ、もしかしてあれが例の、

 ──噂によると、あの男子は理事長とのなんらかの関係があるらしいわ。 

 ──えぇ! そうなの!? でもまぁなんとなく理事長に似てる気がするわね。

 (いや、僕と|理事長(姉さんは)実の姉弟ですから)

 「あ、そうだった、キミトこの後は頑張ってね!」

 「え? なんのことだよ?」

 「それは、後のお楽しみだよ」

 (なんだろう、いまのミチカの笑顔は若干怖いな)

 

 そして僕らはドームの中へと入っていく。中は思った以上の広さで椅子が並んでいた。

 「レイゼ、僕らの座る席はどこなの?」

 「ちょっと待ってね、ええと、あ、あそこだね」

 その場所は、特別席なのか分からないがなぜか僕ら五人分の席が並んでいた。

 「なるほど、僕らだけはここなのか、」

 「でもいいじゃんキミっち、ここからなら全部が見渡せるよ」

 「まぁそうだけどさ、ん? ちょっとまてレイゼ、いま僕のことをなんて呼んだ?」

 「え? 『キミっち』って呼んだけど駄目だったかな?」

 「いや、なんか変なふうに呼ばれた気がしたから、別にその呼び方でいいよ」

 「うん、ありがとうキミっち」

 (それより、さっきミチカの言ってたお楽しみって一体...)

 すると、ドームの舞台上に明かりが灯る。そして舞台の床から煙が上がり幕が開く、その中から人影が見えた。その人物が誰なのか、僕はこのドームにいる女子生徒の誰よりも早く分かってしまった。

 その人物は、

 「皆さん! おはようございます!!」

 (やっぱり、姉さん)

 「ねぇキミト君あれが君のお姉さんなんでしょ?」

 「う、うんそうだよ」

 「お姉さんが理事長だなんてすごいじゃないか!」

 「そ、そうだね、あははははっ、」

 (レイゼ、君は知らないだろう、姉さんの本当の姿を、あぁ、見せてやりたいな本当の姉さんを)

 「さしあたって、みんなにこんして集まってもらったのは他でもない今朝の事件について私からも誤解を解いておこうと思ったからだ」

 ──今朝の事件って? 

 ──あぁ理事長と今日ここに編入してきた男子がベッドの上で一緒に寝てた件のことね。

 

 「ある一部の生徒には誤解は解いてあるのだが、まだ半数の生徒が勘違いをしていると聞いている、なので改めて説明するとしよう。私と今日編入してきた男子は私の弟だ」

 その言葉に驚いた女子生徒がざわめきだした。

 「まぁ驚くのも無理はないだろう。でもこれは紛れもない事実なんだ、私と彼は実の姉弟で、別にベッドで一緒に寝るくらいは普通のことなんだよ」

 ──そ、そうなの? 姉弟って一緒にベッドで寝るの?

 ──そんなの初めて聞きました。

 

 (まて姉さん、貴方の話がまた新たな勘違いを生んでいる)

 「まぁそのことは、置いておいて、もうひとつここに集まってもらった理由がある。私の弟、キミト!」

 すると、そのとたんに僕の席にライトが照らされる。女子生徒全員の視線が僕に集まる。

 ──あれが理事長の弟さん? 

 ──なんかよくみると理事長にそっくりだね

 ──それに可愛いし、

 「キミト! 舞台上にきたまえ!」

 「一体なんのつもりなんだ? 姉さんは」

 「分からないけど、気を付けてねキミト」

 「あぁ分かってるよ、流石に初日で死ぬなんてことはないと願っておくよ」

 

 そして僕は理事長(ねえさん)のいる舞台上へと歩いていく。

 舞台上には理事長(ねえさん)が腕を前に組んで待ち構えていた。

 

 「よく来たな、我が弟キミト」

 「姉sa...ごほんっ、理事長、これはなんのつもりなんですか? いきなり僕を舞台上に呼び出すとは」

 「それはいまに分かるさ」

 

 すると理事長(ねえさん)は生徒たちの方へと向き直り。

 「ではこれから、キミトに『入学試験』を行ってもらう」

 「は!?」

 「試験の内容はいたってシンプル、ドーム外に放たれた『リザグルゼ』を討伐したら合格。続行不能又は、本人が討伐を断念した場合は即刻退学。」

 「ま、待ってください理事長!! いきなり討伐するだなんて無理ですよ。大体貴方はあのリザグルゼがどんな凶暴なモンスターか知っているはず、それを僕に討伐させるだなんて」

 すると、理事長(ねえさん)は僕に小さな声で

 「大丈夫、心配するな、あれしきのモンスターお前なら一発で片付けられるだろう?」

 「いや、確かに出来なくはないですが、いくらなんでも無茶が...」

 「心配するなと言ったばかりだろう、心配せずただ己の力を信じて戦え我が弟よ、お前なら出来る」

 「理事長、」

 「お前にもしものことがあったなら、その時は私が全力でお前を守ってみせるよ」

 その言葉に僕は少しだけ、怒りを覚えた、その理由は、

 「理事長、もう僕を子供扱いしないでください。僕だって男です。やってやりますよ!」

 「そのいきだいっておいで!」

 「はい! 理事長!」

 そして僕はドームの外へと出る。そこには、ドームの上を旋回する巨大な翼竜の姿が見える。

 「あれが、リザグルゼやっぱり大きいな」

 するとリザグルゼは僕の存在に気付き大きな叫び声をあげる。

 まるで声だけで体が吹き飛ばされそうなくらいに恐ろしいものであった。

 

 「やっぱり僕の体は正直だな、体全体が震えてるよ、でも僕には昔から姉さんに鍛えられたこの力があるからあんな奴ごときに殺られる訳にはいかない」

 そして僕は地面から勢いよく飛び上がりリザグルゼのもとへと急ぐ。

 するとそれと同時にリザグルゼの口から大きな火の玉が出現する。それはみるみる内に巨大化していく。

 「あれは思った以上にヤバイね...」

 

 ・.・.・

 

 その頃、ドームの中では女子生徒達がキミトの討伐終了を待っていた。外から鳴り響く轟音に怯える生徒もいた。

 

 舞台上には理事長(あね)生徒会長(ミチカ)が話していた。

 「理事長、キミト君になぜあんな無茶をさせたのですか? この試験はどの生徒がやったとしてもクリアできるものではないのは貴方自身がよく知ってはず」

 「だからこそなんだよ、生徒会長、いや、ミチカ君」

 「え? それはどういうことですか?」

 「確かに君が言った通りにリザグルゼはとても凶暴なモンスターだ、でもあのモンスターでないと私の弟の本気は見られないんだ」

 「キミト君の、本気」

 「まだ彼は私にしか見せたことのない奥義みたいなものだよ、それをキミトはいつ使いリザグルゼを倒すのかが私は見たいの、いままでアイツにしてきた修行の成果を見たいのさ」

 「..」

 「だから静かに見守ってやってほしいんだ」

 ミチカはキミトを助けたいという気持ちを押し殺してキミトが力を発揮し無事に帰ってくることを願った...

 

 ・.・.・

 

 それと同時刻、キミトはリザグルゼの戦闘に悪戦苦闘していた。あまりのリザグルゼの速さについていけなかった。

 (こいつ普通のモンスターの倍以上に動きが素早いな、デカイくせに)

 リザグルゼはキミトに容赦なく攻撃を仕掛ける。

 

 「くっそ、これじゃあキリがない、あんまりこれは使いたく無かったけど合格するためなら使うしかない」

 キミトは全神経を自分の右手に込め始める。そのエネルギーは次第に爆発的なものへと変化していく。

 (もっと、もっとエネルギーを溜めなきゃアイツに勝てない)

 リザグルゼはそんなキミトに容赦なく一方的に攻撃をぶつけ始めた。

 (こいつ、僕がエネルギーを溜めていることに気付いた? でも残念だったなリザグルゼ、もう少し気付くのが早ければよかったのに)

 キミトは全神経の全てを拳に捧げエネルギーは限界を達していた。

 

 「よし! それじゃあ行くか!」

 そしてキミトはリザグルゼに向かって飛び立つ。

 それを、迎え撃つようにリザグルゼは火の玉をキミトに向かって撃ち放つ。

 キミトは火の玉の中へと突っ込んでいく。

 「くらえぇぇぇえ!!」

 キミトはリザグルゼの火の玉を突き破りリザグルゼのお腹へと拳を思いっきりぶつける。

 その瞬間にキミトの拳は光輝く。

 それはドーム内の生徒達にもはっきりと見えていた。

 「理事長、これが」

 「そう、これがキミトの奥義」

 

 《全神拳》

 

 そしてリザグルゼはキミトの一撃により空中から地上へと落ちる。 

 そして、落ちたと同時に大きく土煙が辺りを包み込む。

 ドーム内にもドアから土煙が入り込んでいた。

 

 「みんな! 急いでドームの外に出るんだ!」

 

 理事長に言われ生徒全員はドームの外へと出る。ドームの外には大きな土煙が舞っていた。それが次第に消えていく。そこに現れたのは、

 「流石、私の自慢の弟だキミト」

 リザグルゼが仰向けになり倒れていた。

 「そんなことよりもキミトは? どこにいるのですか!?」

 「あそこだね」

 理事長の指差す先はリザグルゼの背中の中心。しかしよく見ると人影らしきもの見える。

 「キミト!」

 リザグルゼの背中の上でキミトは気絶していた。


 ・.・.・

 

 キミトは自分の意識の狭間にさ迷っていた、

 

 ん? 俺はどうしたんだ? 確か、リザグルゼを叩きのめしたはずなんだけど、俺は一体どうなったんだ? 

 そして、キミトの頭の中に何者かの声が聞こえる。

 「ようやく起きたのか、」

 この声は、もしかして姉さん?

 「あぁその通りだよ、それにしてもリザグルゼの戦いは凄かったな」

 そいつと戦せたのはどこの誰だよ?

 「まぁまぁいいじゃないか、お陰でお前は無事に入学できるんだから」

 俺は入学を許されたのか?

 「そうだよ、お前は皆に実力を見せたのだから十分合格に値する」

 それならよかった。

 「それじゃあ私もそろそろ行くよ」

 もう行くのか?

 「あぁ私にもやらないといけないことが多くてな」

 そうか、分かったそれじゃあまた明日。

 「あぁまた明日」

 

 そして僕の意識は薄れる。

 

 「ん、うーん、」

 意識を取り戻したのは姉と話をしてからどのくらいの時間が経ったのだろうか? 僕は意識を取り戻し辺りを確認する。しかしそこは見たことのない場所だった。

 「ここはどこなんだ?」

 僕はベッドの上で寝ていた。体には包帯が巻かれていた。

 その時、部屋のドアが開いた。入ってきたのは、

 「ミチカ、」

 「キミト!」

 「うわっ!」

 ミチカは僕に飛び付いてきた。ミチカは飛び付きながら泣いていた。

 「よかったキミト、本当によかった」

 「ごめんなミチカ、心配かけたな」

 ミチカは涙を拭い、怒りながら僕に向かって叫んだ。

 「本当よ! 死んだかと思ったんだからね」

 「それより、他のみんなは? 無事なの?」

 「怪我をしたのはキミト、貴方一人だけ他の皆は怪我なんてしてなかった」

 「そうか、それは本当によかった」

 「それじゃあ、私はそろそろ自分の寮に帰るね」

 「あぁ色々ありがとうミチカ、俺の怪我の手当てをしてくれて」

 「どういたしまして、でもキミト今日診たいなことは絶対にしないと約束して」

 「分かった約束するよ二度とあんな無茶をしない」

 「ならいい。じゃあおやすみキミト」

 「おやすみミチカ」

 そしてミチカは部屋を出ていった。

 一人だけの空間の中、僕はリザグルゼとの戦いを思い返していた。

 (あの時、不思議とリザグルゼに勝てると思ったんだよね、あの自信は一体なんだったんだろう?)

 (まぁなんにせよ僕はまた明日からこの学園で生活するんだから頑張らなくちゃ、ふぁ~もうこんなに遅いしそろそろ寝よう)

 Zzz

 そしてキミトはゆっくりと自分の夢の中へと入っていく。

 

 

 【理事長室】

 理事長室の机では、キミトの姉が考え込んでいた。学園で一つだけ明るい理事長室には彼女ただ一人。

 「それにしても今日は凄いものが診れてよかったな、まさかあのキミトがあそこまで力を得ていたとは、あの力ならきっとアイツも倒せるだろうし、東の祠にいる幻の精霊とも契約者になれそうで姉としてはワクワクが止まらないな」

 と、理事長は一人理事長室でニヤニヤしていた。こうして契約者達の一日に幕が降りる。

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