オープニングセレモニー
不知火龍彦は八代利伽の願いもあって、富士の麓にあると言う浅間家へと向かっていた。
『次の停車駅は、新横浜』
新幹線の進行方向に設けられてる液晶パネルには、ただそれだけが表示されとった。
そこが俺達の降りる駅や。
俺、不知火 龍彦は幼馴染みの八代 利伽を伴って、静岡県にある竜洞会権力者の一番手……浅間家に向かってる途中なんや。
……いや、利伽が俺を連れて来てるんやな。
今回の主役は俺やない、利伽や。
利伽と俺は、浅間本家のある富士の樹海を目指して、長い列車の旅に乗り出したんや。
まー長い言ーても、新幹線と快速急行やら特急やら乗り継いで、5時間そこそこ。
そこから歩いて、青木ヶ原にある浅間家へと向かう行程や。
「なー……利伽。青木ヶ原ゆーたらあれやんな? 自殺の名所ゆーか、死体が見つからんゆーか……」
「……ん? あー、昔はそんなん言われとったみたいやなー……」
「じゃー、あれか……? 亡くなった人の霊がさ迷うっちゅー……」
「なんかそんな事もゆわれとったねー……って、ちょっとタツ? あんたひょっとしてお化けとか霊があかんの?」
そこまで話して、利伽は呆れた口調で……呆れたと言う視線を俺に投げ掛けた。
「ちゃ……違うわっ! 確認や、確認っ!」
ってゆーたもんの、怖いもんは怖い。
暗闇に佇む霊とか、考えただけで寒気がするんや!
「……あっきれた……あんた、化身やらに関わってんのに、今更やでー……」
「化身と霊は違うやろっ!」
少なくとも、俺の中では化身と霊は確りと線引きされてるんや。
「似たようなもんやと思うけどなー……普通の人には見えへんし……」
その区切りは、どうも利伽にはないようや。
「……利伽さん……私達を……雑霊と同一視するのは……如何なものかと……」
「そーやでーっ! うちらはその辺の霊ニャんかとは全っ然ちゃうねんからーっ!」
ここまで大人しく聞いてた、蓬とビャクが異論を唱えた。
今回の浅間家訪問に彼女達は同行を強く希望して、ばあちゃんがそれを許可したんや。
「しかし……なんでばあちゃんはビャクと蓬の同行を許可したんかねー……」
旅行か何かと勘違いしてるんちゃうかと思うくらい、新幹線に乗ってからのこいつらは異常にテンションが高い。
まー、二人とも初めて乗るらしいから、しゃーないんかもしれへんけど……。
ビャクは兎も角、あの蓬まではしゃいでいつもより口数が多いくらいや。
「そんなん、決まってるニャん」
「……論じる事も無いほど……明白です……」
俺の呟きに、二人は声を揃えて答えた。
「それって……どう言う……」
利伽が疑問を言い切る前に、二人はほんまに息の合ったシンクロで言葉を出した。
「行き先が」「目的の……先が……」
「「青木ヶ原だからです」」
賑やかな道中、富士の樹海について話題が飛んだ。