大切な一筋の光
両親のことは決して悪くは思ってないけど、父親に関してはつくづく仕方のない奴だとは思う。
一応学園をまとめる立場にあったくせに、教育はしないわ、借金は背負うわで、どうしようもなかった気はするけど、それでも俺にとっては父親だった。
「ジャクター、キリハが探してたよ」
街の中でも高い場所ってことで、時計台の屋根の上にいた俺の前に、パートナーであるフロルが現れる。
突然出来た影に驚きながらも、俺は笑う。
探されていた理由は重々承知の上だから、姿を見せるつもりは毛頭ない。
フロルもそれが分かっているのか、それ以上は何も言わずに、俺の隣に腰を下ろす。
一緒になって街を見下ろすのは、割といつものことなのでお互いに黙ったまま。
キリハ、まだ怒ってんのかなぁ。
ユンガ、捕まったんかなぁ。
「ジャクター、ユンガと会ってから楽しそう」
「え?そう?」
思いがけない言葉に俺は首を傾げる。
フロルの方を見れば、うん、と頷きながらいいなぁ、なんて言っていた。
まぁ、俺とユンガは男同士だしな。
フロルとは良いパートナー同士でいるけれど、やっぱり男女差はある気がする。
「でも、楽しそうで良かった!」
父親が仕方のない奴だったから、殺された。
殺されても仕方のない奴だったのかと聞かれれば、殺される必要はなかったんじゃないかと、首を傾げてしまう。
その分母親は健在で、いくつだよ、って聞きたいくらい元気で若々しいんだけど。
フロルは俺の父親が死んでから、やけに俺の周りをうろつくようになったな。
本当に一時期だけだけど。
ニコニコと笑うフロルは、本当に嬉しそうだ。
俺のことなのに、そんなに嬉しそうな顔するかねぇ、と思いながら頭を掻く。
ユンガのパートナーであるキリハの笑顔を、花のようだと例えるならば、フロルの笑顔は太陽だ。
俺の、光。
笑っているフロルに手を伸ばそうとした時、遠くから聞き慣れた声がした。
俺とフロルを呼ぶ声。
ユンガとキリハだ。
俺達は顔を見合わせて、どちらともなく笑い合いながら、二人の元へ向かう。
当然のことながら、ちょっとしたイタズラの結果としてお怒りモードのキリハには、こってりと絞られたのだけれど。