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お馴染み4

すいません、話し膨らんでしまったので、窓際のクラスメート改め、国語教師に変えました。第4話に窓際のクラスメートをスライドさせます。あしからず。

そんな顔になるのは、無理も無かった。



突然手を差し出され


『どう思う?』


と訊かれたら


誰でも同じように顔を曇らせるだろう。



明日香は下唇を少し上げ、考えるそぶりを見せてから、僕の質問に答えた。



「ん〜普通だと思うよ、でも男としてはちょっと細いのかも……」


「普通……か、そうだよな、普通だよな」


複雑な心境だった。


やはり黒い糸は、僕にしか見えていない。


明日香の言葉は、それを裏付けるものだった。



しかしその反面


『見えていない』


心のなかで呟き、片方の頬を緩ませる。


そんな自分がいる。



明日香に視線を戻すと、目を細めて僕を見ていた。


「翔なんか変……」


「なんでもないって」


「さっきも一人でニヤニヤしてたし……」


「あ〜……」


ごまかすように、もう一度笑った。



僕の心は、目まぐるしく変化していた。


母親の怒鳴り声で目を覚まし、小指に結ばれた黒い糸を見たとき


どうしようもない不安にかられた。


その不安は、すぐに恐怖へと変わり。


そして恐怖は、いつの間にか心地よい物になった。


今では、明日香に黒い糸が見えないことを知り、優越感を覚えている。



僕にしか見えないという不安感よりも


僕にだけ見えているという優越感が、確実に勝っているのだろう。



僕の作った笑みは、間違いなく、その優越感から来るものだった。


目まぐるしく変化していたのだ。


次々に心変わりする自分が、不思議と可笑しく思えていた。


そしてますます、黒い糸に興味が沸いていた。



黒い糸はどこまでも伸びている。


『糸の先には、いったい何があるんだ……』


真っ直ぐに伸びる黒い糸、その先を見つめながら、朝に抱いた疑問が蘇った。


すると僕の足は自然と、歩く速度を早めていた。



「まってよ翔!!」


背中越しに、また明日香の声が聞こえた。


「なんだよ〜」


邪魔された気分になり、強い口調で返した。



「どこにいくの?」


「どこって……学校に決まってるだろ!」


僕はそう言いながら、振り返った。


明日香は、心配そうな表情を浮かべながら、たたずんでいた。


僕にはその表情の意味が解らない。


しかし、明日香の横に見えるものが、その意味を教えてくれた。


学校の正門……。


知らずうちに通り過ぎていたのだ。


僕は苦笑を浮かべた。



「翔……」


明日香は心配そうに見つめている。


その視線が、僕には突き刺さるように見えた。



「考えごとしてた……」


「大丈夫?」


「大丈夫だって、心配すんなよ〜」



校庭から見える大きな時計は、8時30分を少しだけ過ぎていた。

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