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幼馴染み1

リビングのドアを開けた途端、鼻腔を刺激する匂いがした。



テーブルの上にある、程よい色に焼かれた食パンが目に入った。


その横には、目玉焼きとサラダの皿が置かれ


さらに横に、牛乳を並々とついだコップも見えた。



我が家の定番の朝食。



メニューは毎朝おなじだったが、飽きるということは無かった。


その匂いを嗅ぐと、食欲という神経が刺激され、胃袋は活発になった。



しかし、パン食がそんなに好きという訳では無い。


僕が中学の頃は、朝食に和食も食べていたのだ。


それが高校に上り半年後には、もっぱらパン食だけになった。



パン食になったのには、それなりの理由がある。


何度かパンではなく、米を食べた日があった。


その日に限って、いつも悪いことが起きるのだ。


足を踏み外し、側溝に落ちたり。


授業でサッカーをやると、1時間で二度も顔面でボールをトラップした。



それからというもの、朝食はパン食だけになった。



それが理由でわないことを知っていたが


パン食だけの朝食になり、災難は激減した。


だから僕は、げんをかついでいるのだ。



そして今日も、定番の朝食の匂いを嗅ぎ


僕のお腹は、グウ〜、と音をたてた。



だが、僕は眉を寄せた。


なぜなら、同時に見えて来た壁時計が、8時10分を指していたからだ。



僕はそれを確認し、慌てて玄関へと走った。



「翔!ご飯は!?」


「遅刻すっからいらね〜わ!」



このままでは、今年13回目の遅刻になる。


今日はどうしても遅刻をしたくなかった……。



明日遅刻したら、掃除当番を一人でやらせると


昨日、12回目の遅刻をしたときに、担任に言われたばかりだった。


泣く泣くではあるが、朝食を諦めることにした。



「翔〜!ちょっと待ちなさい!!」


そんな僕を、母が引き止めた。


「なんだよ〜?」


あからさまに面倒くさそうな表情を向ける。



「はい、これ……」


「ん?……」



母は伸ばした手に、コップを持っていた。


牛乳である。



それを無理やり僕に持たせると


「イッキしな」


笑顔でそういった。



僕はそれを受け取ると、胃袋に流し込んだ。



「いってらっしゃい」


バシ!


「おわっ……」


背中を強く叩かれ、思わず口に含んだ牛乳を吹きそうになった。



僕はむっとした。



それでも、それが母の優しさだと知っているから


「いってきます」


照れ臭そうにそう言うと、家を後にした。



全速力で走れば、まだギリギリ学校に間に合う……。

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