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黒い糸4

神様はじつに薄情だ……



べつに神や仏を信じ尊っている訳では無いし


教えに従っている訳でも無い。



信仰心というものは、僕の中には微塵も無かった。



それでも、僕の些細な願いも叶えない神様を


やはり、僕は薄情だと思った。



いくら目をこすったところで、黒い糸が消えることは無かった。


その黒い糸は、錯覚でも幻でも無く、僕の右手の小指に結ばれている。


それが紛れも無い現実だった。



外すことも切ることも出来ない黒い糸


僕には、それを見つめていることしか出来ない。


そんな自分が惨めで、もどかしく思えた。


僕は見つめ続けた。




どれくらいの時間が経ったのだろう。


とても長く感じた。


時計に目を移すと、8時調度を指している。


実際には数分しか経っていなかった。


だが、僕にはその時間が、とても長く感じられた。



そしてその時間は、僕の心を変化させていた。


僕はそのことに気付いた。


心が和んでいるのだ。



先っきまであんなに取り乱していたのに


黒い糸を見つめていると、なぜか僕の心は和み、落ち着いていた。


その糸に抱いていた恐怖感も、いつの間にか消え、忘れている。



しかしその換わりに、僕は黒い糸に、幾つかの疑問を抱いていた。



どうして僕にこの糸が見えているのか?


母には見えなかったこの糸は、本当に僕だけに見えているのか?


そして、この糸の先には、いったい何があるのだろうか……?


抱いた疑問は、凄い勢いで増殖していった。


いまだに思考回路の働かない頭脳は、その疑問で埋め尽くされていった。



そのぼやけた頭脳が、活発に働き始めたのは、次の瞬間だった。


「翔ー!いつまで寝てんの!!早く朝ご飯食べなさいよ!!!」


キッチンからの怒号は、明らかに母の声だった。


「やば……すぐに食べに行くよ〜!!」



僕は急いで学校の制服に着替えると


転げ落ちるように階段を降りていった。




このとき、僕はまだ知らなかった


黒い糸の先で待つ


僕の運命を……。

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