表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

黒い糸3

恐怖という種は、瞬時に発芽すると


瞬く間に根を広げ、僕の体を支配した。


そして、葉をつけ花を咲かせる手前で


「であああー!!」


僕は耐え切れずに、奇声を発した。



その叫び声は、家の外に聞こえるほど大きな声で


キッチンで朝食を作る母の耳にも届いた。


叫び声を聞いた母は、部屋へと飛んで来た。



「翔どうしたの!!」


息を荒げる母は、慌てていたのだろう


右手にはお盆を持ち、左手には和え物が入ったこばちを持っていた。


慌てていたのだ。


だが、そんな母よりも、僕は慌てていた。



「母ちゃん!母ちゃん!大変だ!こ……れ……」


しかし、糸が結ばれた小指を突き付けながら


僕は言葉を詰まらせた。



それは、すり抜けていたからだ。


僕の小指から伸びる黒い糸が、ドアの前に立つ母の体をすり抜けていたのだ。



「母ちゃん!!!」


僕は上手く声を出すことが出来ず。


大きく手を振った。


ジェスチャーで右に寄るように促したのだ。



「な〜に?どうしたの?」


母は眉間に皺を作り、訝しげな視線を向けた。


僕の行動が、理解できなかったのだろう。



「いいから!早く右に寄ってよ!」


僕は搾り出すように、必死にいった。


すると、その必死さが母に伝わったのか、困惑した表情を作りながらも


横に少しだけずれた。


「何よ〜……」



僕はそれを確認し、ほっと、胸を撫で下ろした。


そしてすぐに、再度、母に小指を突き付けた。



「母ちゃん!糸、糸、どうにかしてこの糸!」


「は〜?……糸?」


「そう!この黒い糸、外してくれよ〜」



母は眉を寄せながら、あんたね、とため息混じりに口を開いた。


「なに言ってんの、どこに黒い糸があるのよ!?」



「え!?」


僕は絶句した。



「忙しいんだから〜寝ぼけてないで、早くご飯食べちゃってよ!」


「ちょっ……待って!……見えないの?」


母は何も答えずに、部屋から出ていった。



僕は目を擦った。


目を擦りながら、心のなかで祈った。


『夢なら覚めて』


と……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ