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窓際のクラスメート1

シャーペンの頭部を押して、先から芯を出す。


何度か押したところで、その芯がノートの上にぽとりと落ちた。


落ちた芯は、なんと無く、黒い糸に似ているように思えた。


僕は、それを繰り返しながら頭をめぐらせていた。



数本の黒い芯が、ノートの上に貯まったところで


シャーペンからは、芯が出る感触がなくなった。



授業が終わったら、思い切って佐伯に訊こう。


僕は同時に考えを固めた。



佐伯がもしも見えているのなら、情報が得られるかもしれないし


見えていないなら、それはそれで構わない。



そのせいで、僕が変人と思われるかもしれないが


どうせ佐伯は、すでに皆から変人と思われてる教師だ……。


気にすることはない。



黒板の真ん中の上に見える時計は、9時15分を指している。


8時50分から始まった授業は、半分の時間を消耗していた。



残り半分……。


時間を潰すことを考えた。


いまさら授業を聞く気にもなれない。



そのとき、ふと金田の顔が頭に浮かんだ。


強く言い過ぎたな……。



そう思うと同時に


「なぁ〜カネ!」


僕は後ろを振り向いた。



しかし、後ろの席には金田の姿はなく、本来そこに座るはずの生徒がいた。


その生徒の手には、教科書ではなく、漫画本が握られている。


僕に声を掛けられ驚いたのだろう、頁をめくる途中で、その手を止めていた。


瞼をせわしなく動かし、僕を見ている。



僕が軽く手を上げ、謝るそぶりを見せると


止めていた手を動かし、また漫画を読み始めた。



仕切り直して、金田の席に目を移すと。


金田は、覆い被さるように机に抱き着いていた。



ふて腐れたか……。


一瞬、そう思ったが、やはり寝てるだけだな、と思い直した。


あれぐらいで落ち込むような奴では無いことを、知っていたからだ。


寝ている金田を眺めながら、何をするかを考えたが、何も思いつかない。


しかたなく、金田と同じ姿勢を取ってみた。


すると、すぐに眠気を覚へ、僕はそれを逆らうことなく受け入れた。


そして、意識は徐々に遠のいていった。




「ショウちゃん」


誰かに名前を呼ばれ、僕は瞼を開けた。


幼い子供の声、どこか懐かしく、心地良い気持ちがする声だ。


その声に覚えがあったが、思い出せない。


思い出そうとすると、まるでそれを邪魔するかのように、頭痛が襲った。



そのせいで、海馬のどこかに在るはずの


その声の記憶を思い出すことが出来なかった。


僕は、苛立ちを覚えながら辺りを見渡した。


周りには、ブランコやシーソーとかジャングルジムが見えていた。


そこは公園だった。


この公園にも覚えがあったが、はっきりしたものではない。


苛立ちは増した。



「ショウちゃん……大きなお城を作って」


声の聞こえる方を振り向くと、そこには砂場が見えてきた。


砂場には、小さな女の子が立っている。


その娘の顔には、霧のような靄がかかっていて、顔を伺うことができない。


誰かはわらなかったが、女の子の着ている服に見覚えがあった。


それは僕が小さい頃に通っていた、幼稚園の制服と同じだった。



「ねぇショウちゃん」


女の子は僕に手招きをしていた。


僕は導かれるように、足を前へと進ませた。



「キミはだれ?」


僕は歩きながら、女の子に訊いた。



「ショウちゃんあたしのこと忘れたの」


「え!?」


「いつも3人で一緒にいたのに……」


「3人……?」


「そうだよ、あたしとショウちゃんと……アスカちゃんの3人で」


「明日香?」


「忘れちゃったんだね」


女の子は悲しそうにいうと、小さな手で、握りこぶしを作った。


そして、その握りこぶしを僕の方に向けた。



僕は目を細め、握りこぶしを作った手を見る。


すると女の子は、それに合わせて小指だけを立てた。



その小指には、赤い糸が結ばれていた。



「ショウちゃん覚えてる?運命の赤い糸だよ」


女の子がそういった。

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