表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

未来行きのチケット

作者: 梅谷 雅

未来行きのチケット

私は絶望していた。

私は夢半ばで死の宣告をされてしまった。

私の夢というのは『想像を現実にする装置を作ること』であった。

意味が分からない? 確かにそうかもしれないな。

だが、例えばスマートフォン。

画面を触ることで操作できるよな? 馬鹿っぽい言い方? それは気にしないでもらおう。

話を戻すと、スマートフォンになる前はガラパゴスケータイだったわけだな? 

もっと前はどうだ。ポケベルだったり、初期ケータイ電話においてはかばんを持ち歩くような大きさだったろ? かばんというのは誤解を招くな。かばんクラスに大きい機械を持ち歩くという方がまだあってるかな?

まぁ、何が言いたいかって言うとさ……そんなでかい荷物みたいなケータイ持ち歩いていた人がガラパゴスケータイならまだしもスマートフォンなんて想像出来たかって言う話だよ。

私はそんな感じに柔軟な発想というものにあこがれていたわけなんだよ。

ところが、人間というのは『想像の滝』のようにアイディアがどんどん流れてくるなんて事はないんだ。

どこかで必ず『限界』が生じる。

不思議だよな。

私も不思議で仕方ない。

では、それはなぜか……なぜだと思う?

簡単だよ。いや、簡単ではないか? あくまで私個人の意見として聞いてほしいことなのだが、理由は『想像したものが形で現れないから』だと思っているんだよ。

想像することは誰でもできる。

誰でもできないことというのはその先のことなのだ。

つまり、想像の先……創造することが人間誰でもはできないのだ。

もし、誰であっても想像して創造できればこの世にできないことなんてなくなるだろう。


『人間が想像できることが創造できる』


というのは人間が考えるよりよほど『怖いもの』なのだ。

新しいものを生み出すのはいいこと?

確かにいいことだよ。

でも、それが悪いことに使うものだったらどうだ?

核兵器だったり、武器だったり……まだ見ぬ新種のウイルス感染……簡単にパンデミックになるね。

そうなってはいけないのだ。

けど、私はそれを分かっていながら『想像を現実にする装置を作ること』を作ろうと考えていた。

作るのは難しいさ。

実験段階でできたことなんて本当に高が知れている。

例えば傷の治療。

擦り傷や切り傷など……簡単な傷であれば絆創膏のようなものを貼って剥がせばもう元通り。

夢だと思うかい?

現実なんだ。昔の人は軽い傷というのはなめときゃ治るとかいったらしいね。

本当にその通りだと思ったよ。必要なのは『血をしっかり取ること』と『その傷を閉じること』なんだよ。

私が想像したこの治療は装置によって実現することができた。

絆創膏を貼って剥がすという行為によって血をふき取り、人体に無害な接着剤のようなものを貼り付ける。そうすることによってこの傷は一瞬でなくなる。

もちろん水につけても平気だ。接着剤だからには簡単には取れない。

何よりも使用した本人はその接着剤の薄さに驚きを隠せないだろう。痛みもなくなってるんだしね。

さて、分かってもらえたかな?

私はこんな風に想像したものを生み出してくれる装置を作っていたんだ。

これから新しい創造をして行こうというときに私に余命宣告だ。

(しゅ)(がん)と呼ばれるものだ。

何十年か前に癌というものがはやっていたらしい。

難しい病気でそれを治すのは困難であったと聞く。

早期発見ならまだよかったらしいが、手遅れになることや再発のリスクなどもよくあったらしい。

だが、私の世界ではそれは一時間ほどの治療で治ってしまう。

治療法としては私も医者ではないから詳しくは知らないが、『掃除』というものをするらしい。風呂場の掃除とかでカビキラーのようなものがあるだろ? それみたいに『癌』のみを落とす薬を塗るらしい。そうすると癌だけがかさぶたのように現れてぽろっと落ちるらしい。直接その薬を癌にかける必要もないらしくてね、例えば脳にできているとするだろ? その場合は脳に薬をつけるらしい。そうすると薬を塗った箇所からかさぶたのようなものが現れるというから驚きだ。

私の種癌も同じ方法で治せ? 私も医者にそういったのだが、できないといわれたよ。

理由は癌ではないかららしい。

だったら癌なんて言葉を使うなって思うよな。

つくづく私も同じ意見を言うよ。

だが、これは皮肉めいたものもあるらしい。

過去に治せなかった癌が現在では簡単に治せる。

だが、癌という敵を倒したことで新しい病気を生み出してしまった。

そういうことらしい。

種癌はただの癌よりも強く、現在の薬を塗ってもその薬を取り込み薬そのものを『種癌』に変えてより広範囲に悪影響を与える病気らしい。

手術するにも摘出をしても必ずどこかに『種』を植えているらしい。

その種というところからも『種癌』という名前が来ている。

私は正直言って絶望したよ。

仕方がないとも考えたが、どうしても諦めきれないんだ。

私の装置で治そうとも思ったが、研究段階でそんなことができるわけない……。

正直お手上げだ。

笑ってくれ。


『想像を現実にする装置を作ることができても自分の病気の治し方は想像できない』


この病気の治し方がわからない。

それどころか、この病気がなんなのかすら誰にも分からない。

死亡率100%。

種癌は発祥したら待っているのは死しかない。

しかも、余命は持って1週間といわれた。

これは私が健康診断をサボっていたからではない。

種癌は発症が気づけない。

そして、発症したら最後すさまじい速さで発癌者の体……肉体を蝕んでいく。

とある症例を言うと、肺に種癌ができた人は二日後には脳にまで種癌ができ、三日目には植物人間状態。それから四日後には死亡した。

私もそのルートを歩む羽目になる。

だが、運がいいのか悪いのか……いや、悪いことに変わりはないが私は『早期発見』らしい。

私の種癌は胃にできていた。

だが、非常に小規模なもので二日後に肺にまで行くかいかないかというところらしい。

つまり、私のタイムリミットはおそらくあと二日。

それ以上過ぎると体を動かすのすらつらくなるという。

医者はもう頼ることができない。

なぜかって? これ以上医者を頼ったところでできることなんて『人体実験』ぐらいなものだ。

医者ができることなんてその程度のことだ。その証拠に私には診断後ある紙を渡された。

その紙は『手術同意書』といわれるものだ。

この手術同意書というのは『助けることはできないが手術をさせてくれ』という書類のことだ。

医学会の発展のためと言って肉体を任せる人もいるが、私は知っている。


『この病気は人間には治せない』


だったら、私は死ぬまでがんばって自分の研究を進めるしかない。

人間に治せないなら違う奴になおさせればいい。

『人間の想像』に治させる。

私はこうしてこの病気と戦うのだった。


私はすぐに研究室に戻った。

研究室と言っても私以外は誰もいない。

人とのコミュニケーションというものが得意ではなくてね。

あとは、私の考えは夢だと馬鹿にする人が多くて私の周りには人を置いておきたくないのだ。

研究室にあるものは机と装置だけだ。

この装置はコンパクトなものでね、むかーしにあったブラウン管テレビ? ほどのおおきなものである。

形はそのテレビと同じものだ。ただし、その装置の後ろからはコードがたくさん出ており、そのコードは私の頭につなぐことができる。

私の脳波や考えをそのまま装置に伝わるようにしているのだ。

これこそが私の研究である。

だが、研究と言っても先ほど言ったように簡単な傷を一瞬で治すことのできる絆創膏程度のものである。

うん、どうしようか。

私は考えたよ。本当に考えた。

どうすれば治るのだろうか。

医者では治すことができない。

だからと言って一般人に治せるかと言ったらそんなことはできるわけがない。

人以外と言っても宇宙人にはまだ誰も会っていないし、他の動物なんて論外だ。

もののけ姫のおっとこ主様? あんな化け物会ったら私が食われてしまう。

あれは神であるが邪神に近い。

さて、冗談言ってる暇なんてなくて……

といった感じでひたすら自問自答を繰り返すのだ。

人間で一番想像力を発揮するのはいつだろうか。

それは簡単だ。


『疑問が生まれたとき』


である。

疑問というのはそのままにしたくない。

特に、疑問が生じてすぐの場合は尚更だ。

まぁ、馬鹿な奴はよくその疑問をそのままにしてその疑問すらも忘れてしまうのだが、私は違う。一度感じた疑問は必ず自分の納得のいくところまで考える。三日三晩だって普通に考えてやる。そうして、いままでいろいろなものを生み出してきたのだ。

だが、やはり今回のは全く浮かんでこない。

どうしろというのだろうな。

神は人間の越えられない壁を与えることが多い気がする。

やはり、私には私の病気を治すことなどできないのだろうな。


諦めるのかい?

誰だ?

俺が誰かなんてどうでもいいことさ。だが、君はまだ可能性を考えていないよ

どういうことだ?

どうして君は自分の病気を『今すぐ治そう』としているんだい?

今すぐじゃないと私が死ぬからだよ

ふうん、だったら君の想像はそこまでだ。

そんなことはないだろ? 今までだってがんばってきたさ

そうだね、それは俺も見ていたよ。だけど、君はある盲点に気づいていない。

何だ?

君は今まで『知っているものを便利にしよう』という考え方をしていたんじゃないのかい?

…………それが悪いことなのか?

いや、悪いことではないよ。でも、今の君は『知らないことを何とかしよう』という状況なんじゃないのかい? だったら、今までのことを考えても絶対に浮かばない

そうか、『時代が違う』のか

おめでとう。それが分かったのなら俺からいいプレゼントをあげよう。一度だけこれは使える。このチケットを君に上げるよ。大切に使いな

ん? 私は寝ていたのか?

妙にリアルな夢を見ていた気がする。

だが、装置には何かが映し出されていた。

金色の紙だった。

その紙には『3000年 7月15日行き』とかかれていた。

信じるか信じないかは自分次第だが、私は信じることにした。

藁にもすがる思いとはまさにこのことだな。

しかし、大きな問題があった。

…………これどうやって使うんだ?

使用方法は書かれていない。

片面に行き先が枯れていただけだ。

裏面? には何もかかれていない。

てか、そもそも日付指定の片道チケットで場所も分からない。

行き先というのも分からない。

困ったな。

私はそう思いながらも一度目を瞑った。

次の瞬間、私の手からチケットがなくなる感覚がした。

驚いて目を開けると私は研究室にはいなかった。


そこは真っ白な部屋だった。

真っ白なのに机があり、ベッドもある。

目の前には真っ白な白衣を着てメガネをかけ、髪の毛は横にしかなし人がいた。


「おぉ、いらっしゃい。まさか本当に来る人がいるとは思わなかったよ」

「えっと、どちらさまですか?」

「不思議なことを言う。君は私の無造作にばら撒いたチケットを使って私の元へと来たのだろう? 本来なら誰かがそのチケットを焼いてしまうのだが、運よく君のところに届いたらしい。これも何かの縁だ……何をしてほしい?」

「すみません、状況の整理ができていません」

「そうか、じゃあ君のことを教えてくれないか?」

私は自分の生い立ちから今現在おかれた状況についてまでを説明した。

すると、この人は次にこのように言った。

「そうか、種癌か……簡単だな。つまらない時代にチケットが飛んでしまったらしい」

「は?」

「あぁ、すまない。悪気はないんだよ。ただ、この時代では君たちの言う病気というものはまず『存在しない』」

「は? どういうことですか?」

「私たちは『全ての病気を解明したんだ』」

「ありえない、たとえどんなに科学が発展したとしてもそんなことがあっていいのか? では、あなたはなぜそんな格好をしている」

「ん? それは趣味だよ」

「趣味!?」

「この時代の人は人とのかかわりはほとんどないんだ。なぜなら全てにおいてかなってしまうからね」

「意味が分からない。一から説明してもらおうか」

「君がここに来てうれしいことばかりだ。病気のことは簡単すぎてがっかりしたが、私に質問をしてくれるなんてうれしいねぇ」

「いや、それもわからないのだが」

「私たちは自分の脳にネットワークを埋め込んでいるんだ。たとえ分からないことがあってもすぐに検索することができる。そして、そのネットワークは他の人間全てと接続している。もちろん、プライベートモードにはできるから今私もそれをしているのだが、私たちに知らないことは存在しない」

「ということは、私たちの時代で言うところのパソコンが頭に入っているということか?」

「うん、そういうことだ。理解が早くて助かる」

「だが、だからと言ってあなたが医者の格好をしていることが趣味というのはおかしいだろう。それは本業が医者ということですよね?」

「残念、この時代にはその『仕事』という考えがないんだよ」

「……は?」

「人は何のために仕事をするかは君はわかるかい?」

「生きていくためですね。お金をもらったり、そのお金を使って食べ物を買って食べたりといった生きていくために必要不可欠なことをするためです」

「うん、そうだね。君たちの時代ではそうだった。でも、私の時代では違うんだ。全てが自給自足でできてしまうんだよ」

「そんなに人類は成長したというのですか?」

「この頭に入っているネットワークというのは疑問に対する答えを出してくれるんだよ。そして、例えば食べ物を食べたいとしよう。君は何か好きな食べ物はあるか?」

「寿司がいいです」

「えぇっと、日本食だったのか。ふむふむ、あぁ、酢飯の上にネタという魚が乗っているのか……とまぁこんな感じで『情報』はすぐに分かる。では、次にどうやって作るかだ。それはこの水槽で行う」

そういうとその医者? は縦が30cmほど、横は50cmほど奥行きが20cmほどの水槽を取り出した。

「この水槽の中に私の得た情報を入れるんだ。するとどうだろう……はい、おすしの完成。どうぞお食べ」

中に何もなかったはずなのにどこからともなく寿司が出てきた。

「まさか、この時代は自分の家で何もかもができてしまうということですか?」

「正解だよ」

「これなら仕事をする必要はない……いや、待ってください。だったら、そのすしを作ったときのお金とかはどうするんですか?」

「あぁ、この水槽は私の想像からすべてを読み取り素材から何から何までを作って形にしているんだ。つまり、君たちの時代風に言うと『無料』でできるんだよ。だから仕事をする必要はない」

この時代に仕事はない。

意味がようやく分かった。

仕事がないのではなかった。

仕事をする必要が全くないのだ。

なぜなら、『どんなことをするのも自分でできてしまうから』である。

この人が趣味で医者の格好をしているというのもそれで納得がいく。

この時代のどの人に頼んだとしても私の病気を治すことができる。

これこそが人間の最終的な進化だというのだろうか。

「難しい顔をしているね。さて、では君の病気を治すとしようか。それとももっと悪化してから治すかい?」

「悪化してから治すメリットって何ですか?」

「全くないよ。ただ単に私の好奇心さ。安心してくれ。どんなに悪化したとしても君病気はいとも簡単に治せる」

「具体的にはどうやって治すんですか?」

「髪の毛一本だよ」

「私のですか?」

「もちろん」

「とりあえず、百聞は一見にしかずだ。やってみよう」

「はぁ……」

「この髪の毛をさっきの水槽に……その前に君、この寿司を食ってくれ」

「あっ、いただきます。……おいしい。こんな寿司初めて食べましたよ。何でこんなにおいしいものを……いや、愚問でしたね」

「よろしい、では続きを食べながら見たまえ」

「はい……もぐもぐ」

「こうして水槽の中に入れた君の髪の毛は形を変えて……小さい君の分身となる」

「おぉ! いや、意味分からないんですけど!」

「つまりは、この小さい君が種癌を治すということだ。君の種癌は君の話を聞く限り胃だけと思いがちだが残念ながらもっと転移している」

「待ってください、いくらこの時代が優れているとしても私の時代で乃診断が間違ってるとは思えません」

「君は種癌が何かを知らなかったね。この種癌というのは生きているんだよ。そして、胃にできたというのはより厄介なところだ。君の胃の中の食べ物を食べて成長している」

「……あのぉ、先生?」

「どうした?」

「先生が私にすしを食べさせたのって」

「あぁ、その種癌の成長を促進させるためだ。ついでにその種癌が好み、成長がより早くなるものも多めに入れておいたから安心してくれ」

「何が安心できるんですか! てか、何が早くするんですか!」

「水銀ですよ。なぜかというと不思議なものですがね、水銀というものは金属と反応するものなんですよ。特に水銀の量が多いと金属は『液体』になり、水銀量が少ないと『固体』になる性質を持っています。種癌というものは本来金属ではないのですが、水銀との反応のときだけ金属になる。さらに水銀量が多い場合動きが活発化します。転移というのはそこから液体となって飛び散るからです。固体で当ても同じというかもしれませんが、液体の方がより多くのところに転移する可能性を持っています。なぜなら、形を自由に変えられ、取り除かれる可能性も少ないからです。そのことに人類が気づくのはあなたがいた時代から400年後です」

「水銀の毒性との相性がよかったということになるのですか?」

「そうですね、古代中国では水銀の特異性から『不老不死の薬』としても求められたといいますが。残念ならがやはり毒です。有機水銀を食したりするとやはりその毒性から食中毒になりますね。有機水銀中毒によってなくなった方も多かったらしいですしね。それは農薬での使用でしたね」

「いや、私は水銀マニアではないからそこらへんは分かりませんが……あのぉ、体がだんだん痛んできたのですが……」

「さて、そろそろですね。出番ですよ。ミニミニ君」

こいつはそういうと私に先ほど私の髪から作った小さい分身を私に食べさせた。

「ん!?」

「安心してください、30分ぐらいで終わります」

「30分ほどで治るというのはうれしいのですが、どうやって治すのかを教えてほしかったです」

「君の悪い臓器をさっきの分身に食べてもらいます」

「ふうん、食べてくれるのか……それ私死にますよねぇ!?」

「麻酔も何もなしだと流石に痛みがありますが、安心してください。先ほどのお寿司の中に麻酔のカプセルを入れておきました。今頃君の分身がそのカプセルを壊して君の臓器を食べ始めているころさ」

「今頃は胃にいるってことですか?」

「そうだね……あっ、そうだ! いい忘れてたんだけど君の種癌はいきなり栄養を与えた性で成長がとても早く、強い種癌となっている。そのため、通常はありえない箇所に転移をしていると思う」

「何でそんな人体実験を私の体で行ってくれるんですか! それで、どこに転移ですか?」

「心臓だよ。君たちのことを苦しめていた種癌の前の世代、つまりは癌だが……その癌の種類に心臓癌なんてものは聞いたことないだろ? その理由は他の臓器と違って細胞の入れ代わりがなかったり、心臓の温度が他の臓器よりも高いからというところが上げられる。だが、この種癌はその常識を破るのだ。もちろん、相当ひどい成長をしない限り普通はないんだけどね。それでも5パーセントほど種癌の心臓転移は考えられる。だから、心臓と脳へ分身が言ったときだけ君の意識は完全に0になるからそのことだけは知っておいてほ……あっ、もう心臓にいっていたか」

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――」



「うっ……」

「あぁ、目覚めましたか。よかったもしかしたら死んでしまったかと思いましたよ」

「誰の性でこうなったと思ってるんですか」

「ですが、あなたの病気は完治しましたよ。ついでに癌のほうも取っておきましたよ。君の時代で確かに癌は簡単に取れるようになったかもしれませんが、君も分かっているように種癌がある中で癌治療の薬は使えないんです。つまり、君の時代ではまだまだ癌を克服できたとは言えません。あと200年ほどで種癌を刺激せずに癌を破壊しつくす薬が開発されるはずです。それを楽しみに待っていてください。おそらく、君は死んでいるはずですが」

「そうだったのですか……一つ聞きたいのですが、さっきの小さい分身が食べた臓器のあとってどうなったんですか?」

「説明していませんでしたっけ?」

「……あなたは趣味としても医者をやってはいけない気がします」

「人と話すのが久しぶりですので。分身の食事のあとは分身がその食べた臓器を作り直すんです」

「その臓器というのは私のものですか?」

「そうですね、はじめに食べたおすしの中に補助の道具も入れておきました。小さい分身が食べたものを人体に影響があるものとないもので分けて、影響のないものからあなたの臓器を元の形に作り直します。年度細工のようにこねたりしますが、元々の性能以上によくなっているはずですよ」

「そんな感じだったんですか」

「体が軽く感じませんか? ありとあらゆる悪いところも作り変えてきているはずですので」

「言われてみれば、筋肉痛とかもなくなってますね」

「そんな感じのものが私たちの医学ですよ」

「ちなみになのですが、あなたの時代で最後に見つかった『病気』というのはなんだったのですか?」

「なんだと思いますか?」

「そうですね、やはり癌のように人を蝕んでいく病気でしょうか」

「いいえ、最後は私たちのネットワーク問題でした。私たちは肉体についての病気は全くなかったのですが、ネットワークのほうでウイルス対戦がありましてね。その対戦が最後です。ひどいときはプライベート関係なしに相手の情報がどんどん入ってくるものなんてのもありましたよ」

「そうですか、私たちもいつかそうなるんですかね」

「それは君の時代で決めてください。君がどれだけ君の時代でがんばるかが私たちを作るのです。だから、君にはがんばってもらいたい。では、さようなら。楽しかったですよ。過去の人間と話すのも悪くなかったですね」

「こちらこそ、ありがとうございました」


私はそう言って目を閉じた。

次に目を開けたときは私の研究室だった。

チケットも何もなく、そこにはブラウン管型の装置があるだけだった。

夢だったのだろうか。

私の体の病気はまだ残っているのだろうか。

私にはそのことは分からない。

だが、確かめる方法はある。


私は種癌を診断した病院へと足を運んだ。

医師からは診断してから一日もたっていないのに何で来たんだろうという顔をされた。

「先生、どうですか?」

「不思議なこともある。昨日のレントゲンには確かに種癌があったのだが今日のを見る限り全くない。奇跡としか言いようがない」

「ということは完治したということですか?」

「どうして完治したか心当たりはないのかね?」

「ないですね」

私は嘘をついた。

嘘をつくべきだと思ったからだ。

だが、医者は最後にこう言った。

「種癌はなくなったが、胃になにやら人型の腫瘍がありそうだ」

(あの野郎、分身体内の放置しやがったな?)

「それについても分かりませんが、それはそのうち取れるでしょう。ただの腫瘍なら問題ないはずです。明日また来ます」

私はそういってとっとと研究室へと戻るのだった。


未来がああなったわけはここに来てようやく分かった。

あの水槽は私の部屋にあるブラウン管だ。

ということは時代が流れるごとに私の『想像を現実にする装置』は形を変えてその時代になじんでいたということになる。

だったら、私は意地でもこの装置を作り上げなくてはいけなくなってしまった。

なぜだって? 

決まっている。


『作らないと私が死んでしまうからだ』



現代医学で直らない病気を治したい。

私は右足の靭帯が緩んでいましてね……あっ、それは手術すれば治るといわれているんですけど痛みはほしくないんで……

癌でしたり白血病でしたり……早期で発見できないと志望リスクが格段と上がってしまいます。

私はその手の病気にかかったことがないのでテレビなどを見て得た知識です。

だから、リアリティにはできないです。

ですが、全てを治せたらそんな風に考える人はたくさんいるでしょう。

だったらどうすればいいのか……私は全部を壊して全部を作り直すという医療を未来に望みます。

話の主人公のように一度心でもかと聞かれるかも知れませんが、リスクのないものは逆に怖いと思いますね。

皆さんはどうでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ