表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方極限想  作者: みょんみょん打破
新たな異変
67/67

東方極限想、終



「ッ――!」

 飛び起きた。真っ白の、清潔そのものを体現したかのような部屋で。白い毛布が捲られる。荒い息を整えて、高まっている心臓を静ませる。

 壁に立て掛けられている時計を確認すると、午前七時。いつもの起床時間だ。身なりを整え、自分の顔をうつし見る。痩せこけてもいない。目は多少なりとも暗いかもしれない。

 しかし、そんなことはどうでも良くなるほど、浮き足立ち、心がおどっている。もうあんな地獄のような事をしなくて済むのだ。それに黒幕を苦しめる。

 ――そんなに苦しかったのか?

 んむ? そうだ。嫁達にあと一歩で殺し、殺されるというのは辛いどころではない。俺は不死身ではないんだ。当たり前だろう?

 ――あそ。

 病室を出る。向かうは居間だ。人魂の話によれば、居間か、七時に病室に訪れるらしい。もう七時半なのに来ない。なら、居間だろう。

 しかし、予想とは反して、居間はもぬけの殻だった。

 ――あるぇー? おっかしいなー……。俺あとどこにいるかなんて知らないぞ。

 仕方ない。外に行くか。誰とでもいるだろう。

 ――そういうもんか?

 そういうもんだ。

 外に出ると、見慣れた竹林があった。まだ竹林を歩き慣れてはいない俺は、飛ぶ。

 ――おっおっおっ!? 飛んでるー!! 

 俺の知り合いはほぼ全員飛べるぞ?

 ――まじで!? おっほ。すげー。

 竹林を抜けて人里に。妹紅の家にも寄ったのだが、いなかった。人里はいつもとかわらず賑わい、騒がしい。蕎麦がうまそうだ。団子もうまそう。おむすびもいいな。

 ――食べ物ばっかじゃないか! あ、でもまじでうまそう。

 だろ? ここも異変が起きてから来てないからなぁ。団子とか本当久しぶりに感じる。よし、食べよう。

 団子屋に行き、お茶と団子二本を注文して、代金を支払う。まったりと、ふっくらしていて、しつこくなく、甘い。あの昔、行きつけだった店主の場所には負けるが、なかなかに美味。

 ――団子ってこんなうまいんだな。知らなかった……。

 舌鼓をうっていると、頭にそんな言葉が響く。どうやら味覚等も共有しているようだ。しかし、うまい。もう本当久しぶりだ。うまさに涙が出てくる。

 ――……、そんなにか?

 ああ。これがどれほど幸せな事か。改めて思い知らされたよ。

 そうか。とだけ返事をして、黙りこむ人魂。首を傾げながらも食べる。

 食べ終わり、改めて探す。

 さて。どこにいるのか。城に行くか。


 ――なあ、あそこの神社、人がたくさんいるぞ。

 そうだな。知ってる。

 飛んで、人里から妖怪の山に向かう途中。博麗神社に大量の人が集まっている光景が見えた。遠いから誰か。なんてのはわからないが。

 博麗神社に近づくにつれて、なにか布に書かれた文字が見える。なになに。『神楽、ありがとう!』か?

 ――ちょ、おい! なんで冷静なんだよ。普通こういうのって驚くんじゃないのかよ。

 いや、嬉しい。嬉しいんだが、これ、実際にこれされて、驚くのって一握りじゃないか? まずシチュエーションがおかしいだろ。ありきたりってレベルじゃないぞ。

 ――いや、確かにそうだけどさ。ごめん、そう考えたら笑えてきた……。

 頭に笑い声が響く。凄く鬱陶しい。それを無視して、境内に降り立つ。何人もの声がする。ありがとう。と。

「神楽、幻想郷を救ってくれてありがとう」

 代表としてか、紫が前に来て、握手を求めてきた。

 ――なに、この、茶番みたいなの。

 言うな。紫も慣れてないんだ。顔が少し赤い気がするけど、気づいてないふりをするんだ。

 ――お、おう。

「なぁ、紫。お前はなにがしたい?」

 一応握手をして、問う。ピシッと石のように固まった紫。

 もしかして、失言だったか? 後悔するが、遅かった。

「わ、私は……、皆とこうしたら神楽が喜ぶかもという話をしたからしたのよ……それはそれは、残酷な事なのよ……」

 いや、訳がわからないからね。

 ――うーん、この俺と話をしてた時とは全然違う感じね。

 仕方ないさ。

 後ろに、原作メンバー全員が立っている。その上、境内にはテーブルがあり、酒類、料理が所狭しと置かれている。

「だけど、本当に神楽と妹紅、霊夢、魔理沙、聖白蓮のおかげで、私達は救われたわ。異変は解決。皆、解決した後はなにがあったかしら?」

 紫が振り返る。全員手を挙げた。

『宴会!!』

 ――異変? 宴会だと?

 聞いてないか? 異変は誰かがおこした……、まあ、お前が言う事件さ。それが解決すれば、円満。酒を呑み交わすのさ。楽しいぞ。

 ――ふーん。まあ、あんまり呑みすぎんなよ? 酔っ払うとか嫌だぞ? 俺。

 おうともさ。

 始まった宴会。鬼や妖怪。人間、霊。神。相容れない存在達が楽しみ、騒ぐ。久しぶりの酒についはめをはずしちまった。結果。

 ――何度も言ってるけど、酔ってないだろうな?

 んー? ははは。酔ってないよ。当たり前だろ? 俺が酔わないのはコーラを飲んでげっぷするのと同じ確率だ!

 ――え、ごめん意味わかんない。

 人魂くぅん。君の肉親を俺はどんどんおみまいしてくぞぉ。

 ――え。

 君に近い者から順番になぁ。

 ――え。え。

 待ってろ。待ってろ。人魂一族。

 ――そんなのいないんだけど。しかし、敢えて言おう。家族に手ェ出すなよ。

 選べよぉ。幻想郷か? それとも君の家か?

 ――パイが腐らないうちに?

 どーも奥さん。知ってるでしょう? 未知神楽でぇ、ございます。

 ――お? くるか? くるか?

 おい。パイ食わねぇか?

 ――きたー!!

 子供たちもおいでぇ。パイ焼くぞぉ!

 ――あははは!! 大丈夫かよ! まじで!!

 そんなこんなで宴会は三日三晩続いた。吐きながらも。終わった次の日は一日中頭痛と吐き気に悩まされた。しかし、その吐き気や頭痛は薬とは正反対に、心地よく感じた。


 今は俺の城で、紫とソファーに向かい合っている。他の皆はそれぞれ帰った。

「お前は人間にはめられた。でいいんだな?」

 確認する。そう言うのも、人魂が俺に話してくれた。

 しかし、紫程の妖怪がはめられるとなると、油断は出来ない。妖怪でも最高峰の紫がだ。ここまでこけにされたんだ。一体どんな人間なのか。

「ええ。詳しく言うと、脅した人間に教えられた場所が、ちょうどその機械の中だったのよ」

 どういうことだ? 人間に、ここだ。と教えられ、案内された場所か? いや、口振りからすると、スキマで移動したんだろう。そこが機械の中だった。って事か。

「そうか。お前をはめた人間と、作った奴はスキマで連れてこれるか?」

「お安いご用よ」

 さて。これからはなんでそんな機械を作ったのか。と報復だな。

 ――基本的になにするんだ?

 素直に話さないだろうしな。そりゃあ、拷問だよ。言わせんな恥ずかしい。

 ――……。まじか。俺、寝てようかな。

 好きにしていろ。


 連れてきた人間二人は、研究服を着た見た目普通の冴えないおっさん。二人は最初こそ強気でいたが、蹂躙させたら、簡単に話してくれた。

 どうも、あの機械は最高傑作で、洗脳させたり等、活用できるらしい。前々から幻想郷を支配して、妖怪、神達を操れれば、天下はとれることが確実。と考えていたらしい。それを具現化させたのがあの機械。チャンスだと思った研究員は、嘘を教えて、紫を欺くことに成功。操り、一番強いもの、仇なす者を殺せと紫に洗脳させ、この異変がおこったらしい。

 分かりにくいな。

 ――幻想郷支配したい。なら洗脳させれるものがいる。出来た。八雲さんがくる。これチャンスじゃね? 洗脳成功。強いものや操れなかった奴は殺せ。これでおけ?

 おけおけ。ありがとう。異変の全貌はこんなものらしい。ふう。これで完全に終わりかな? この二人以外はもう記憶を消したらしいし。もう、あと数百年は穏やかに暮らしたい。一生分の戦闘をしたような気がする。

 はあ。よもやこんな異変がおきるなんて思ってもなかったよ。もうないことを祈ろう。弾幕ごっこや戦いすらしたくない。

 ――そうだなぁ。俺も戦いなんてしたことないし、経験したくないよ。

「お兄様! 手合わせしましょう!!」

「もう勘弁してくれ」

 ――勘弁してやれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ