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東方極限想  作者: みょんみょん打破
古代編
6/67

流れ行く日々の中で

 あれから何ヵ月か経つ。

 その間に新薬を飲んだり、大介と打ち合ったり、輝夜と話をしていた。

 最初よりも、結構武器の扱いも巧くなった。

 今では大介と互角だ……と思う。

 そして今は永琳に大事な話がある、と呼ばれた所だ。


 俺は永琳の部屋に行き、インターホンを鳴らす。


「少し待って。……あら? 神楽、待ってたわ」


 永琳が扉を開け、俺を迎え入れた。


「永琳、大事な話って何だ?」


 不思議そうに問いかけると、言いづらそうにしながらも重苦しく口を開く。


「あのね……あと二年とちょっと先の話なのだけれど……」


 そうか……五年先の話だったのに、もう二年にまで縮まってたのか。

 転生してあっという間に三年間も経ってると……。


「月に行こうと思ってるの……早い話、引っ越しね」


 随分大掛かりな引っ越しだな。

 などと考えてつつ、話を聞く。


「私達は二年前からロケットを作ってるの、そのロケットで月まで行き、そこで暮らす。ここはもう穢れがあって住めないの」


 ふむ……仕方無いか。

 でも永琳達は飛び立つ日に大勢の妖怪が襲って来るのを知っているのか?

 俺はその疑問を飲み込み、喋らないようにする。

 そして無言で目を瞑り、腕を組んで話を聞く。

「まず私達上層部、街の一般市民、最後に軍。っていう順番で飛び立つわ」


 まあ永琳や輝夜を守る為には俺が残らなきゃ駄目だよなぁ。

 大介や兵士達と共闘だな。

 俺は怪しまれない様、永琳に言う。


「俺は永琳や輝夜を守ると約束した、何があっても良いように軍と一緒のロケットに乗る。いいか?」


「……何故? 私達を守るなら私達と一緒のロケットに乗った方が良いじゃない」


 そうくるよな……、純粋な疑問と一緒にいてほしいからだろうが……。


 目を開き、まっすぐ永琳を見る。


「……理由は聞かないでくれ。なんと言われても市民が乗るロケットが飛ぶまでここに軍といる。俺の我が儘だが見逃してくれ……、頼む」


 俺が初めて永琳に頭を下げて頼み込む。


「……はぁ。分かったわ、聞かない。けれど、もし何があっても生きて月に来て。これは上司からの命令じゃなく、私からのお願いよ」


「ああ、もとより死のうなんて思ってない、永琳達を置いて逝けるわけないだろ? 死んでもまた会いに来る」


 不吉な事を口にしながらも、冗談っぽく言った。 


「貴方を待っているから。それじゃこの話はおしまい」


 もうこの話をする気は無いのか、手を叩き、おしまい。と締めくくる。


「ふむ、じゃあ俺はもう寝るよ。おやすみ、永琳」


「ええ、おやすみなさい。神楽」


 俺は寝ることにして、永琳の部屋を出て俺の部屋に帰る。

 その間も人妖大戦に備え脳内でシミュレーションをする。


 俺は生きてる者を殺す事が出来るんだろうか……。

 そんな事を考えながらベッドに寝ころび、微睡みに身を委ねる。







 あれから二年と少し経つ。

 今では大介に武器を使っても使わなくても勝てる様になった。

 ただ、それは打ち合いだからだろう。

 大介と俺なら、俺の方が技術では圧倒的に勝っている。

 だが殺し合いだったなら俺は大介に殺されるだろうな。

 経験で負けている。

 人間相手なら真剣で寸での所で止める自信がある。

 それが自信と言って良いのかは知らないが。

 あと、霊力で火、水、電気、土等を扱える様になった。

 体に纏っても大丈夫みたいだ。

 いや、大丈夫じゃなかったら妹紅はどうなってるんだと小一時間位問いつめたいが。

 そんなことどうでもいいか。


 さて、今日は大事な日だ。

 なんの日だというと。


「今日で月に行くことになるのか……」


 そうだ、月に引っ越す日なんだ。

 俺は木刀ではなく、“刀”を二本腰にぶら下げている。

 兵士達は各々剣を持っている。

「なにぼーっとしてんのよ?」


 と、輝夜が俺にジト目で問いかけてきた。


「なに、お前らを守れる日がきたんだな……と思ってさ」


「はあ? なにいってんのよ……」


 まあ、そりゃあわからないだろう。


「すぐ分かるさ、ほら、もう飛ぶぞ? ロケットに乗れ」


「わかったわよ。それじゃあ月で会いましょう?」


 輝夜が乗ったのを見届け、俺は永琳の場所に行く。


「永琳、そろそろロケットに乗ってくれ。なるべく早く済ませたい」


 急かす俺に永琳は訝しげな表情をして言う。


「……わかったわ、神楽……必ず月に来てね?」


「ああ、あと、無事に月で会えたら……、話したいことがある」


「え、ええ……わかったわ。じゃあね、神楽。」


 真剣な面持ちの俺に、押されながらも返事をして会う約束をする。


 発射迄、あと十秒。危険ですので離れて下さい。

 と、アナウンスが始まり、カウントダウンが始まる。

 九。


 その瞬間兵士や市民達が騒ぎだした。

 大きな地鳴りと共に異形の妖怪達が此方に向かってくる。


 八


 後ろで永琳と輝夜がロケットの中で騒いでいる。


 七


 何人かの兵士が、あまりの妖怪の数に絶望しながらも兵士として市民をロケットに誘導する。

 市民達は女子供、力の弱い者達を押し退け、我先にとロケットに入る。

 六


 大介が軽く取り乱しながらも俺の所に走って来て言う。

「お、おい! なんだあれ!? 流石にきついぞ……」


 五


「落ち着け、ここは俺が行く」


 そう言いながらも妖怪達の所まで歩きだす。


 四


 その時、永琳や輝夜が乗っているロケットから、俺を呼ぶ声が聞こえた。

 俺は振り向いて今出来る精一杯の笑顔を見せた。


 三


 永琳の頬から涙が零れた。

 俺は妖怪達の方に向きなおし、走った。


 二


 永琳が泣きながらも崩れ落ちた。

 そして俺は妖怪達とあと十数メートルの所で止まる。

 後ろでは大介が士気を上げるため叫んでいる。


 一


「とまれ! 異形の妖怪共!」


 零

 俺が声を荒げた瞬間、永琳と輝夜を乗せたロケットが飛び立った。


 いつの間にか市民を乗せたロケットもカウントダウンを始めている。


 六


「なんだぁ? 人間。わざわざ食べられに来たのか? ギャハハハ!!」

 一体の妖怪が嗤った。

 その瞬間、伝染したかのように妖怪達が、俺達を嗤い始めた。


 五


 大介が士気を上げる為に叫ぶも虚しく、兵士達が身を震わせながら涙を流す。


「…………」

 俺は少しでも時間を稼ぐ為に沈黙する。


 四


「なんだなんだぁ? この数にたじろいでんのかぁ? ヘッ!! 所詮人間は屑の出来損ないなんだよぉ!!」


 三


 「おい……、どうすんだよこの状況……。はっきりいって絶望的だぜ?」


 妖怪達は何時でも殺せるとでも言うようにまだ嗤っている。


 二


 「大介……、俺が妖怪達を全力で斬り込んでいく。お前は急いで兵士達とロケットに入って飛べ。わかったな?」


 一


「そ、それって……お前はどうするんだよ!」

「俺は時間を稼ぐか、倒せるなら倒す! それしか方法はないだろ!」


 零


 市民達が歓喜しながらも、ロケットは飛び立つ。 


「ちっ! 仕方ねぇ! でも忘れんな! お前は一人じゃねぇ! 俺も誘導が終わったら戦う!」


 大介は嫌々兵士をロケットに誘導しに行く。


「ありがとうよ、態々時間稼ぎさせてもらって」

 俺は霊力を全開にする。

 すると大地は唸りをあげる

「アァ? なにいってんだ――」

 そして体に電気を纏い、高速で動き、刀を居合いの要領で抜き放つ。

「死ね」

 小気味よい音が聞こえ、さっきまで喋っていた妖怪の首が飛ぶ。

 一瞬遅れ、血が吹き出し、俺を返り血で濡らす。 

 脳の信号が無くなったからか、体は前向きに倒れる。


 後ろの妖怪達は、圧倒的弱者だと思っていた人間に、一瞬で殺され、ざわめき始める。


 その間に両手に刀を持ち、高速で動き、妖怪達の命を奪っていく。


 ――なんだ……、殺しなんて結構簡単じゃないか。


 前に進んでは右の刀で妖怪一体の首を刎ね、その横にいる妖怪の胴体をもうひとつの刀で切り裂く。

 炎を造り、妖怪達に投げつけ、周囲を焼く。

 時には喋る暇もなく殺され、時には皮膚が焼かれる臭いを撒き散らしながら気絶も許されることなく焼かれ、息絶える妖怪達。


 その時、声が聞こえた。


「終わったぞ!!」


 大介だ。

 どうやら兵士をロケットに無事、誘導したようだ。

 ロケットの方から歓声とカウントダウンが聞こえる。


「ありがたい! あとは俺達二人だけだ! 逃げるぞ!」


 俺が逃げる事を提案すると、大介が声を荒げる。


「何でだよ!? もう駄目なんだ!! どうせなら暴れようぜ!!」


 大介はロケットが飛び立ち、もう月に行けないからなのか、諦め、最期くらい。と叫んだ。


 俺の記憶が正しければここら一帯を吹き飛ばすほどの核が墜ちるはずだ。


 その前に少しでも離れる必要がある。


「いいからこい! ここらへんを吹き飛ばす核が墜ちてくる!」


 俺がそう言うと大介は知らなかった様で、驚く。


「ま、まじかよ!? そうと決まれば早く逃げるぞ!」


 さっきまでとはうってかわり、急いで逃げる大介と俺。


 無我夢中で走り、妖怪とも少し距離がとれた。


「大介! 止まれ!」


「な、何でだよ!? 核があるん――」

「いいから!」


 俺と大介は止まる。

 俺は急いで霊力で土を操作し、俺と大介を包み込む様にして堅さの限界を最高まで操る。

 これで核でも大丈夫だろ。

 と少し不安ながらも、ふぅ……と息を吐き出す。


「お、お前……こんなことも出来たのかよ? やっぱすげぇな……。お前と親友になれて良かったぜ!」


 大介がニカッと笑い、言う。


 「俺も――」


 俺もお前と親友になれて良かった。

 と言おうとした瞬間、爆音が聞こえ、俺は意識を失った。                  

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