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東方極限想  作者: みょんみょん打破
新たな異変
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怪力乱身の一本角






 最後の弾幕を避けて、お空が完全に姿を現した。

 やっと終わりか……。少しだけ安堵するが、まだまだ戦闘は終わっていない。汗を滴ながら、お空の動向を見張る。迂闊には近付けないのだ。

 制御棒がない手を挙げて、手のひらを上に向ける。その手のひらには、光沢のある黒く、野球ボール位の大きさ。

『それ』を俺に放つ。轟々と唸り高速で襲い掛かってくる。どんどん大きくなっていってるように見えるのは勘違いだろうか? 否、大きくなっている。野球ボール位の大きさだった『あれ』は、バスケットボール位の大きさになっていた。急いで逃げようとするも、俺とお空の間。ちょうど中間部分で動きを停める。

 なんだ? そう疑問を口に出そうとしたとき、その弾が急激に、二、三倍膨れ上がり、今度は黒の弾幕をばらまきながら、ゆっくりと収縮した。

 だが、さっきと同じじゃないか。これなら溶岩とかが無い分、まだ楽だ。

 避けていると、なにか、力を感じた。ちらりと横目でお空を見る。

 右手の制御棒を俺に向け、オレンジ色の極大弾をつくっていたのだ。危機感を覚え、回避に専念する。

 回避していると、やはりというべきか、轟音を出し、撃ってきた。その弾は散弾のようにバラバラになって、一層弾幕の密度をあげる。一つ一つが『当たれば危うい』という力を持つため、当たれない。その上、密度が高いだけに、さっきから掠り始めてきた。

 服が裂け、髪が切れる。生傷をつくっていき、その生傷は火傷をおこし、止血される。そして、最終的に治る。絶え間なく襲い掛かってくる弾幕に、為す術がない。

 舌打ち一つ、回避しながら一考。

 恐らく、今もなお放出されている散弾は妖力によるもの。黒い弾はもう消えかけている。なら、ここが勝負どころか。

 左手に霊妖魔力をつくる。霊力の青。妖力の赤が混ざり紫。魔力の紫が一層色を濃くする。少しでも誤れば、暴発をおこし、俺諸共一掃するだろう。だが、精神的動揺による、コントロールミスは決してない! と、思っていただこう!

 という言葉をつかう漫画を異変前に、紫が見せてくれた。たしか……、ヂョヂョだっけか?

 閑話休題。

 弾幕を躱し、どんどん近づいていく。すぐ近くに黒の弾。大きさはゴルフボール位になっている。

 最後の抵抗だろうか。激しく弾幕をばらまいて、消えた。それも躱し、放出。

 極大のビームは、お空を襲う。全部消耗する勢いで放出したので、速さも威力も折り紙どころじゃない。鉄の折り紙で折られた鶴並みだ!

 なにを言ってるんだ。俺は。

 汗が弾き飛び、濡れた目元まである髪が額に引っ付き、鬱陶しい。それを無視して、なお、放出をとめない。空いた右腕で、アサルトを撃ち乱らす。当たっていないのはわかるが、もう何もかもどうでもいい。

 地獄跡が崩落しても、お空が傷だらけでも、俺が満身創痍でも、些細な事だ。もう涼しいところで休めるならなんでもいい。北極行きたい。

 約五秒。目眩がしてきたので、放出を止める。多少ふらつき、手からアサルトを離す。マグマに落ち、沈んでいった。

 お空のいた場所を見ると、土に円形の穴が開き、先は見えない。結構深くなっている模様。

 潜り、奥に向かう。なにも見えない位真っ暗。片手を壁に、もう片手を前に伸ばし、ゆっくりと歩いて一分位か。伸ばしていた手に、なにかが当たる感触。例えるなら土。いや、土そのものだろう。手を下ろしていく。なにか、さらさらとした絹のようにきめ細かななにか。

 なんだこれは……? 多分……、髪の毛? だよな。ってことはお空か。よかった。まだ生きてたらこの時点で死んでた。油断思いっきりしてたからな。

 今更だが、迂闊だった。そう反省しながら、お空をおぶる。無理な体勢で、もたついたがなんとか出来た。

 マグマの上を、ふらふらしながら飛行する。金網に足をつけて、扉を開き、倒れ込む。背中に乗っているお空は振りほどいておく。

 熱さに慣れたのか、ここが凄く寒く感じる。身体中に汗をかいてるからか、風が冷たく感じるのだ。

 あと服が汗を吸い取って重い。

 身震いして、毛布を創造して、寝る。

 なにか凄く動きたくないし、眠い。空腹とか二の次だ。

 重い瞼を開ける。起きてた頃と全く、何一つ変わっていない風景。まだ気だるいが、毛布を退けて、顔を横にしてお空を見る。

 やはり変わらない。

 嘆息。

 立ち上がり、お空と毛布をボックスに落として、水分補給と着替え。そしてビー玉を踏み、梯子を昇る。

 重いマンホールを開けて、庭にいる、二羽の鶏を一瞥して、中庭を出た。

 腕を組み、廊下を歩く。

 何故こいしが居ない? いや、部屋も見ていないのにそう言うのは早いか。地霊殿を片っ端から見ていこう。

 エントランスから始め、廊下。

 書斎。

 さとりの部屋。

 お燐の部屋。

 動物達の部屋。

 その他諸々と最後にこいしの部屋。

「ここだ!」

 勢いよく開いて、叫び、構えるが、誰も居ない。もぬけの殻。

 もう多分全て見た。もう旧都か地上にいるんじゃ……。ていうか、今日は勇儀と戦いたくない。辛すぎる。地霊殿で今日は休もう。

 ボックスから多量に作った弁当の一つとコガコーラ。

 食べ終わり、満足だと腹を撫でて、欠伸をする。

 さとりの部屋に入り、ベッドを使っても、怒らないと思うが、ソファーで寝転ぶ。この小さい幸せが至高に感じる。

 すぐに眠くなり、微睡みに全てを委ねた。

 さて、今日も頑張るぞ。

 やる気のないように見えるが、結構やる気はある。なんたってもう少しで終わるのだ。地底、山、紅魔館。太陽の畑や無名の丘。人里に霧の湖。聖の所。いろんな所を行った。倒した。あともう少しで終わりなんだ。黒幕め……、ただでは死なさんぞ……!!

 どれだけ辛かったか……。涙が出る。出てないが、出そうだ。

 こいしはどこにいるかわからんが、旧都や地上をゆっくり探すとしよう。当面は勇儀だ。勝てるビジョンが浮かばない。まあ、どうしても無理なら……、気は進まないが『あれ』だな。

 ボックスの錠剤を取りだし、何時でも、どんな状況でも飲めるよう、パックから外し、ボックスに入れておく。

 多分、俺は無事ではないだろう。腕の一本や二本。寧ろ五体満足ではいられないと思う。

 溜め息を吐き、肩を落とし、旧都へ向かう。

 静かだ。なんの音もしない。その静けさは耳鳴りを起こす程。顔をしかめて、探知をする。

 旧都一の居酒屋、妖伝来。ちょうど真ん中辺りから反応があった。あの爆音で出なかったのは何故か。余裕か? それとも、会わないと戦わないのか? まあいい、行くか。

 旧都を歩く。まだ江戸町の光は失われておらず、一見すると活気が無いことに寂しさを感じるが、この町の光景を見ていると、中ではどんな宴会が開かれているのか、あと少しで祭りでも行われるのではないか。そう思ってしまう。

 ……、視界にチラチラ映る、寝ている妖怪やら焦げやらを除けば。

 だらだらと歩き、着いた妖伝来。扉の左右に提灯が垂らされており、暖簾が掛けられている。

 勇儀がここにいると知っていると、これは死への扉にしか思えない。

 動悸が激しい。それを深呼吸で落ち着かせて、扉を開いた。

 カウンターには誰もいない。カウンター側の席にも同じく。

 しかし、畳席に座っている女性が一人。

 予想通り、勇儀だ。

 此方を横目でぎらりと見た後、立ち上がって、見据えてきた。

 対抗するように真っ直ぐ見る。

 余裕そうに歩いてくる。

 刃が引かれていない、正真正銘のジュワユーズ。そろ切っ先は尖り、軽く突いただけでも貫き、刃は岩でも真っ二つにする。

 昔は。

 そう、昔だ。今は力を失った為に、岩なんか斬れない。悔しい。しかし、切れ味はいい。

 その剣を視界にいれた勇儀は、好戦的な笑みを浮かべる。まるで『早々に壊れるなよ?』と言っているかのように。まだ数メートル離れているのに、腕を振り上げた勇儀。何故かはわからないが『避けないと死ぬ』と感じた俺は、地を蹴って、後ろに退がる。そのすぐ後に、耳鳴りがした。

 周りの音がなにも聞こえない。なにがあったのか。そう考える時にはもう家をぶち抜いた後だった。口から、体の節々から血が吹き出し、動かない。

 激痛に顔をしかめて、立ち上がるも、足に力が入らない。そして身体中が痛い。

 恐らく、あれはただのパンチだと思う。しかし、圧倒的なまでの破壊力は、衝撃波だけで周りを一掃して、俺を吹き飛ばしてみせた。咄嗟に後ろへ飛んだのが功を奏したようだ。

 約十五秒、治癒が終わり、勇儀がいると思われる方向を注視した。

 三軒位俺は吹き飛ばされたようだ。その奥から勇儀が腕を回しながら此方にゆっくりと向かってきている。回復した筈の足はまだ震える。これは武者震いか。あるいは――――恐怖か。

 そんな俺をみて勇儀は嗤う。圧倒的な弱者だと思ったのだろう。しかし、その通りだ。反論出来ない。誰も論じて無いけれど。

 顔を叩き、気合いを入魂。頬がジンジンと鈍く痛む。しかし、その痛みが今は気持ちいい。

 断じてマゾではない。

 それはさておき、今ので足の震えは止まった。いつのまにか無くなったジュワユーズをまた創造し、上段に構える。

 左手に霊妖魔力を溜めて、放出する。紫の極大ボールは勇儀を襲う。これなら怪我位は出来るはず!

 一抹の希望を抱きながら、行方を見た。そんな勇儀は腕をまたも振り上げ――――降り下ろした。

 たった。たったそれだけだった。それだけの動作で周りの家と、瓦礫と、家具を吹き飛ばし、霊妖魔力のボールを跡形もなく消した。

 ――信じられない……。あれでも結構密度を込めたぞ……。

 息をのむ。その際喉が鳴るが、気にしてられない。口を閉じる。無意識に口を開かせていたみたいだ。

 勇儀は首を傾け、骨の音を鳴らしている。なにより、獰猛な笑みをしている。

 勇儀ってこんなに強かったか? いや、しかし、あれから強くなったというのもあり得るし、あの時は本気じゃなかったとか……? 十二分にあり得る……。これでもまだ手加減してそうだしな……。

 再び歩を進め、俺へと向かう。その差は家一軒分。なぜ距離を稼がなかったのか……。悔やまれるが、後の祭り。数メートル先の勇儀がブレる。拳を振り抜いていた。気付けば視界に赤が見える。その方向は『右腕』辺りだった――――







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