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東方極限想  作者: みょんみょん打破
新たな異変
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地底攻略





 幻想風穴。

 長い暗闇を抜けると、一軒の家。その前に虚ろげに立つ茶色の女。ヤマメだ。相変わらず瞳を輝かせている。暗がりの中では、逆に目立つ。

 まあ、薄暗い。といった暗さだが。見えない程じゃない。十分に見える。

 まだ俺を認知していない様子。

 奴は病気やらを発症させる事が出来るはず。それは今後の為に勘弁してもらいたい。なら、一撃だ。

 恐らく二十メートルは離れているだろう。なら、狙撃だな。近くても狙撃だな。気絶させるなら狙撃だな。

 万能。

 狙撃銃を創造して、構える。スコープを覗き、ヤマメの頭を狙う。

 トリガーを引き、体に伝わる衝撃と共に、ヤマメは倒れた。

「ピシュー」

 口笛を吹こうとしたが、失敗。咳払いをして、もう一度挑戦。次は成功した。

「ロックンロール……」

 なにかで聞いた言葉を発してから、キメ顔。

 正気に戻り、若干悶絶するが、ヤマメをボックスにいれる。

 また歩きだし、キスメの所まで向かう。

 一本道。旧都の真ん中辺り。変わった所はない道で、俺は立ち止まっていた。

 ここだ。ここに確かキスメがいたはず。

 右を見る。壁だ。左を見る。壁だ。下を見る。地面だ。上を見る。キスメだ。

 キスメは縄で自らが入っている桶を垂らし、目をギラギラと輝かせ、今か今かと待ち構えている。

 まあ、お前の出番はない。落ちろ。

 狙撃銃を構え、キスメの頭を狙い撃つ。

 額に当たったキスメ。力を無くしたその小さな体は、重心が後ろにいき、桶に身を隠した。

 やった。確信して、ナイフを創造し、揺れている桶の縄を切った。落下地点にボックスを開き、落ちたキスメ。

「ホールインワン」

 その呟きは、洞穴の中では虚しくも、よく響いた。

 次は橋姫。パルスィ。パルスィは橋の上に両手をだらりと下げ、お馴染み、輝かせている。

 岩陰に身を隠し、狙撃。眉間に当てる。後ろに軽く飛び、橋の上に身を預け、倒れた。その下にボックスを開き、入れる。

 一息吐き、汗をかいていないのに、腕で汗を拭う動作をして呟く。

「なんか疲れた」

 大した事はまだしてないのに、何故か疲れてしまった。体が怠い。

 岩にもたれ、座り込む。ボックスからおにぎりを取りだし、食べる。その間に片手で飲み物を出す。気分はピクニック。ピクニックといっても、こんな場所じゃ景色なんて楽しめない。

 むしろ俺以外全員、敵だと思うと食欲もわかない。現在進行形で食べてるけど。

 中身は鮭。この異変が起こってから、飲み物や食べ物をボックスにいれている。このボックスに入っている食べ物なんかは腐らない。だから便利だ。

 本当、ボックスには凄く助かってる。

 腹六分目位で食事を終え、立ち上がり、三度歩きだした。

 影を縫って歩き、旧都に入る。そこらに妖怪達が突っ立っているが、少し広いところまで隠れて進む。

 道よりも、少しの広場。屋根に飛び移り、防犯ブザーを創造した。

 小学生がもつあの黄色の奴だ。紐を抜き取る。辺りに騒音が鳴り響く。急いで広場に投げて、隠れる。

 けたたましく鳴るそれは、旧都の妖怪を集める。ぞろぞろと。屋台から、店から、家から、道から。どんどんと集まる。十数だろうか。それくらい釣れた。にやりと口の端を上げて、手榴弾を一つ創造し、ピンを抜いて投げた。そして屋根に寝転がり、やり過ごす。

 爆音。

 熱気を感じながら、屋根の上から広場を窺う。

 家やらが少し燃えている。これはやばい。焦りつつ、霊力で水をだし、消化活動。妖怪達は気絶している。が、怪我はない。何故だ。丈夫すぎる。

 もしかしたら丈夫って訳ではないのかもしれないな。まあ、後にしよう。今はばれないように全員気絶だ。

 何回か場所を変え、繰り返し、出なくなったところで、地霊殿に向かう。勇儀? そんな女性はいなかった。いいね? アッハイ。

 一人でそんなやりとりをしていると、着いた。どこか禍々しく感じるのは俺だけだろうか。うん、俺だけだな。

 この場にいるのは俺だけなのだから当然ともいえよう。だが、ここからは本当になにがあるかわからない。だが、おおよその、居る場所はわかる。さとりは書斎か、自室。お燐は廊下やエントランス。お空は地下センター。地下センターであってるか? まあいい。問題はこいし。自室か、どこか歩いてるか。だな。見つけられるかも不安だ。

 噴水。アスファルトの道を突き進み、玄関の扉に立つ。

 鉄製の取っ手を掴み、引く。『ギィ』という重々しく、怖々しい音。全員敵なだけあって、恐怖心を一層煽るようだ。

 市松模様と床のスタンドグラス。

 酷く久し振りに感じる。目を細め、辺りを一瞥。

 動物達。端からハシビロコウ、ライオン。虎。コモドドラゴン。鰐。そして――――黒い膝までのドレス。猫耳に小さいハットを乗せ、棒立ちで目を輝かせているお燐が居た。

 やはりか。ジュワユーズと霊力銃を構える。

 お燐はどこからともなく、猫車を取りだす。周りに妖精が出てきた。ゾンビ風の。同じく目を光らせている。武器は持っていない。そして、動物達も唸り、俺を殺さんと身を低くさせ、構えていた。

 手始めに、犬に向かってジュワユーズを横投げした。慈悲はない。

 高速で回り、飛ぶそれは、反応出来なかった犬に当たり『ギャン!』と喧しく鳴いた。それを皮切りに動物達と妖精が俺に突っ込んで来た。

 ライオンがたてがみを揺らし、俺の喉を食いちぎるように、飛び、牙がスタンドグラスに反射してキラリと光る。

 流石に動物を気絶させる手段を知らない。加減を間違えて、大怪我でもさせてしまったら、さとり達が悲しむ。犬? 知らんな。

 ボックス! 動物の足下、襲おうと飛んできた俺の前にボックスを広げる。中に入っていき、閉めた。

 これで、今さっきの体勢のまま、動きが止まる筈。剥製のようにな。

 鏡を見れるなら、今、俺は悪い顔をしているだろう。

 食べ物をいれると、そのまま保存出来る。飲み物も同様。人をいれると、変わらず行動出来ない。サニー達も、入れた事はあるが、ここに入って、閉じ込められると、動けないし、寝ている時のように、次、開くまで意識は無い。のだと。それなら襲ってきた動物をいれれば、戦闘を回避出来る筈だ。

 あれ? それなら今まで戦わなくても……。いや、考えないでおこう。自分が嫌いになる。

 妖精は銃で撃ち抜き『一回休み』状態にする。

 一回休みとは、よくは知らないが、死んだりしたときの、復活まで? の事をいっているようだ。詳しくは知らんからな。

 三体が倒れこみ、走る音が聞こえた。お燐の方向を見ると、俺の場所に向かって走っていた。猫車を押しながら。

 凄いシュールだ。

 俺も銃を撃ちながら走りだす。お燐は猫車を持ち上げ、銃撃を弾く。飛び、身体をひねって、遠心力を利用して踵落し。お燐が上半身を低くさせ、躱した。

 そのまま俺は一回転して、飛び越え受け身をとる。

 振りだし。ただ、立ち位置が逆転しただけ。

 もう一度俺とお燐は翔た。猫車を持ち上げ、横殴りに振る。それをスライディングでやり過ごし、足払いで転かす。

 ――黒のガーター!! 以外と大人っぽいな……。

 関係無いことで盛り上がる俺。内心歓喜に満ちているが、両足を掴み、体を回す。お燐の体は遠心力と俺の力で浮き上がり、ついに猫車を離した。

 好機。

 体を曲げて、お燐を床に叩きつける。

 どうだ!

 目を回してしまい、ふらつきながらも目を開かせ、確認した。元通り。お燐は安心だ。ボックスを開く。

「うお!?」

 ボックスを開いた瞬間、ライオンが俺に飛び付いてきた。それに驚き、声をあげてしまうが、なんとか首を傾けて避けた。

 なんだか頬に暖かい物が垂れる感覚があるが、無視して、着地地点にボックスを開き、無事、いれる事が出来た。

 頬を拭うと血。まあ、傷は治ってるから問題はない。しかし、もし噛まれていたらと思うと。うむ、猫嫌いも含まれるところだった。

 忘れていた。その状態のまま動きが止まるんだった。うつ伏せに寝ているお燐の下に、ボックスを開ける。今度は成功だ。ちゃんと動物も出なかった。

 さて、次は……、誰だ? さとりにするか? 能力は厄介にも程があるな。トラウマでも呼び起こされたら勝ち目ないぞ。棒立ちの間に何らかで殺したら良いのだからな。

 扉を開けて、発砲。これで良いな。

 誰もいなくなったエントランスから、廊下を歩く。

 書斎への扉の、取っ手を持ち、傾けて静かに押す。無音で開く事に成功して、忍んだ。読書スペースにさとりが座っている。胸の目は、今だけ恐怖の対象にしかならない。ばれないよう、静かに。隠密で狙撃銃を創造して、眉間を狙い撃つ。銃弾は大きく。速く。少し多目に霊力がとられる。しかし、まだ問題ない。

 刹那、風を切り裂く音。椅子に座っているさとりは、衝撃で後ろに倒れた。

 溜め息を吐いて、その場に座り込み、安心感を全面に出す。思ったより緊張していたようだ。深呼吸して、最後にまた、溜め息を出す。

 その場で、離れているさとりのしたに、お燐同様、ボックスを開く。座っているためか、床に吸い込まれるように見える。

 少し休憩しよう。そう思い、読書スペースに向かった。倒れている椅子とはまた、別の椅子に腰掛け、おにぎりとペットボトルのコガコーラを取り出す。

 蓋を回し『プシュッ』と、勢いよく、聞くだけで美味しそうだと感じさせるだろう音色を奏でた。

 俺はコガコーラが大好きだ。この噴出音。いや、音色も大好きだ。これがなくては飲んだ気にはなれない。そしてあの喉を通る快感。何よりにも勝る感覚だ。後味も炭酸の一時の辛さ。その後の甘みがまた……。実質時間で、三時間位は語れる。ノンストップでな。

 よく一日は語れる。と聞くが、実際やってみろ。言えないから。絶対詰まる。止まる。休憩もなしに話せない。

 閑話休題。

 二十分程休み、背伸びして体を伸ばす。頭に血がいくのか、なんなのかは知らないが、多少ふらついた。

 おさまるのを待ち、歩いて書斎の扉を開いた。

 廊下を歩きながら、考える。

 次は誰にしようか。こいしももしかしたら外か地上にいるんだよな。『地霊殿に居るとは限らない』と。これはまずいな。全く何処にいるのか予想できない。

 まず、お空の所に行こうか。ささっと終わらそう。暑い所みたいだし。

 ――あれ、地下センターって何処だ?

 前途多難。






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