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東方極限想  作者: みょんみょん打破
新たな異変
52/67

幻想郷、煉獄




 ここ人里は、変わらず賑わっている。

 今の状況が嘘のように。

 妖怪による、被害はあまりないように見える。


 迷いの竹林入口に戻り、一軒の家を訪ねた。


「妹紅!」

 扉を叩き、呼び出す。

「だれ? まった――――」

 怠そうに頭を掻きながら出てきた妹紅。俺の顔を見ると、名前を呼んで、すぐに抱き付いてきた。

「無事でよかった」

 安心した。頭を撫で、落ち着かせてから聞き出す。

「今、どうなってるか知ってるか?」

「あー……」言い淀み、左手で頬を掻く。その薬指にはキラリと光る、銀色の指輪。   

 妹紅はこの前、俺の嫁になった。それは、逆にプロポーズをされたからだ。男らしい。女だが。今では嫁。娘でもある。

「それね……」

 ぽつりと切り出した。「なんか、慧音がおかしくなって、襲いかかって来たんだよね……」

 まあ、中に入ってよ。促され、入って話を聞く。



 昨日、妹紅が、慧音の家に行った時、慧音の目が不自然に光っていて、予備動作無しに襲いかかって、混乱しながらも、なんとか気絶さしたらしい。それからは寝ている。だと。揺すっても、やはり起きないらしい。ビンタしても揺すっても無駄。

 困ったもんだ。しかし、妹紅はなにもない。

 なんでだろうか。共通点は今のところ、人間か。

 だが、俺は半分妖怪だし、慧音も半分人間だからな。何故だろう。そう言えば、半人半妖なら、霖助、基、霖之助か。後で行ってみよう。近くだし。唯一の男友達。無事で居てくれ。なかなか頭も良いし、良い奴なんだよな、霖助。

 まあ、妹紅の無事を喜ぼう。


「今までさ――――」

 今まであった事を話し、気を付けるよう注意して、出る。やることは妖怪の山並みにある。


                    

 魔法の森入口、香霖堂。

 入ると、目を輝かせた霖助が居た。此方をじっと無表情で見て、突っ立っている。


 ――やはり……か。くそ……。霖助……。お前も……。お前も無事でいてほしかった……。

 拳を握り締め、俯く。

 男の友人。いや、親友と言ってもいい。それだけ仲が良いと自負している。

 思い出がフラッシュバックするように、思い出していく。霖助との日々を。霖助との思い出を。



 ――僕は霖之助だよ。

 爽やかに笑う霖助。そこから知り合いになった。

 ――あはは、君はおかしなことを言うね。

 俺を貶し、笑う霖助。

 ――それは非売品だよ。売れない。

 俺が珍しい物を見つけ、買おうとしたところを、売らない。の一点張りで売らなかった霖助。

 ――神楽。君とは結構永く居るね、サービスだよ。

 そう笑い、コガコーラを売り付ける霖助。



 あれ、なにこれ。全然思い出でもなんでもないじゃないか。よし。


 思い出してからは行動が早かった。高速で近付き、今までの鬱憤が溜まってたかのように、顔面に拳を叩き付けた。

 カウンターに激突して、気絶する霖助。


 ――ふう。これで霖助も治ったな。まあ、男ならこれくらい大丈夫だろ。うん。


 後に残ったのは、妙にすっきりし、一仕事終えたような顔の俺と、木の割れたカウンターにめり込ませ、気絶している霖助だけだった。

 店を出て、振り向く。

「霖助。また来るぜ」

 それは憑かれ物が取れた顔で。

 幻聴だろうが、二度と来ないでくれ。そう聞こえたような気がした。


 全く、ツンデレなんだから。男のツンデレは誰が得をするって言うんだ。

 次は守矢神社だな。

 鼻歌をしながら、飛んだ。




 守矢神社。ここは妖怪の山。

 道中も、やはり。と言うべきか、天狗達が俺に攻撃してきた。皆仲良く気絶させたが。


 長い階段を飛んで、境内に降り立ち、入る。

 名前を呼ぶと、三人が来た。

 無事。

 三人の話によると、妖怪の山は異様に静かで、何もないらしい。何時もなら飛び回ったり、うるさい筈が、ないのだと。

 これなら天魔と文達は望み薄。諦めた方が良い。河童達もかな。

 戦力は俺と霊夢と魔理沙だな。最低俺だけ。

 守矢神社の嫁は早苗を守らないと駄目だからな。早苗は大切だ。


 黒幕不明、状況不明、意識不明、その他を伝え、早苗を守るよう呼び掛ける。

 神奈子と諏訪子はその話を聞くと、お互いに頷いて、早苗の手を握っていた。

 絶対安全ではないだろうが、この二人なら倒せる者は限られてくる。早苗は最早、安全といえる。

 出て、宛もなくふらふらと飛んでいく。


 しかし、妖怪の山も、か。本格的に幻想郷全体の妖怪達が操られてると考えても良さそうだな。

 そして気絶させた者は起きない。……と。

 これによって、戦力を増強することも、多勢で攻めるのも出来ない。俺達の力だけで戦わなくてはいけない。

 それも死ぬかもしれない戦いを、だな。対して此方は殺さないよう相手をしないと駄目。

 腕を斬っても再生して、治った揚げ句、気絶。なんて事はないだろうし。でも美鈴は怪我をしなかった。これはどういうことだ? 特別頑丈だっただけか? 魔法が大袈裟だったのか?

 さっぱりわからないな。



 癖を解き、目を開くと、前には森が広がっていた。

 何処だ。そう疑問に思うが、森といえば魔法の森しかない。といえば、アリスでもある。アリスは無事なんだろうか。

 まあ、行けば分かることだ。


 早速向かうことにする。森には妖精が居り、俺に体当たりを仕掛けてくる。当たる前に殴ったりして、気絶はさしているんだが、如何せん数が多い。妖怪も出てきた。


 時間をかけながらも、アリスの家に到着出来た。

 時間は午後六時。暗いが、大した問題ではない。

 ノックの後、誰? という問いが来た。名乗ると、扉を開けて此方をじっと厳重に確認するように見てきたアリス。

 ほっと息を吐いた。

「貴方は何ともないのね……」

 よかった。と、また安堵の息を吐く。

 金髪を揺らし、俺に入れと言ってきた。

 礼を述べ、入れてもらい、木の椅子に座り、差し出された紅茶を眺めた。

 花柄のティーカップに綺麗な赤い色。見ているだけでも落ち着く効果があるように感じてしまう。

 取っ手を持ち、香りを楽しむ。それはアロマのようで、嗅覚からでも俺を落ち着かせる。

 ついに口をつけた。

 荒んだ心を穏やかにし、鋭く尖らせた思考回路を丸くさせる。そして、体を暖め、自然と溜め息を吐かせた。

「……美味い……。初めて飲んだよ……」

 絶賛する。

 それを聞くと、嬉しそうにした。

「とっておきの紅茶よ! 出してよかったわ」

 上海人形の方をちらっと見ると、上海人形は独りでに動き、皿に盛り付けたクッキーをテーブルに置いた。


 なんか……、穏やかだ……。この異変がおきたのはつい最近なのに、ずっと昔から戦ってるような気分。


 再び、紅茶を口に含み、溜め息。アリスは上品に笑い。

「そんなに美味しい?」

「ああ……」

 肯定して、紅茶からアリスに目を移し「凄くな……。最近、ずっと戦ってたんだ」切り出して、あった事を語る。




 アリスの嘆息。

「お疲れ様。私も昨日から、よく妖怪に敵意を向けられるわ」

 テーブルに頬杖をした。「魔法で蹴散らしたりするのだけど、倒れてそのまま。起きないわ」

 しかも。と続けて窓を流し目する。

「目は不気味に輝いてるのよ。貴方が言ったのと同じ」


 アリスも被害を受けているらしいな。まあ、アリスなら中妖怪程度、楽々倒せるか。しかし、戦力には期待出来ない。弱い訳じゃない。なんか頼むのが申し訳ないんだ。


 俺は同じく、窓を見やる。

 外はもう暗くなっており、秋の冷たい風が窓を叩く。


「ふむ。気を付けろよ」

 注意してからアリスの顔を見る。アリスも俺に目線を合わせた。

「わかってるわよ。そこらの妖怪達なら大丈夫。魔法で倒してやるんだから」

 ふんす。と、鼻から息を出し、気合い十分。といった風に、断言した。


 そういう意味もあるが、大事な事がもうひとつある。これは俺の憶測ではあるんだが――

「もしかしたら操られている奴は強くなってるのかもしれないから、油断はするな」

 忠告する。


 美鈴。魔法をくらっても無傷。

 咲夜。傷を治したと思われる。

 レミィとフランはあまり換わったようには見えなかったが、他の妖怪達も十二分に注意する必要がある。

 油断は禁物。足下を掬われる。掬われた後は喰われる。

 そんなことは御免被るし、勘弁仕る。


「ええ、ありがとう。神楽」

 上品な笑みを浮かべた。あ、そうだ。と、手を叩き「今日は泊まっていきなさいよ。外は暗いし、危ないわよ」ウインクをして、そう口にした。


                           

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