表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方極限想  作者: みょんみょん打破
新たな異変
50/67

永遠に紅い幼き月




 懐中時計を開き時間を見る。

 六時十六分。多分午後。

 長い間――と言っても、今日の昼から――外を見ていない。まあ、一日は経っていない筈。そんなに戦ってない。と、思いたい。


 気持ち良さそうに寝るもんだ。しかし、いつまで寝てる気だ? もう何時間も瞑想してたんだけど。もうばっちり集中出来そうなんだけど。もう完璧に落ち着いてるんだけど。ほら、起きろよ。




 俺の念が通ったかの如く、霊夢が起き上がった。


 欠伸をして、腕を真上に伸ばす。

 そんな霊夢をじーっと。


「あ、ごめんなさい……、寝ちゃったわ……」

 気まずそうに顔を俯かせて、謝った。

 溜め息の後、口を尖らせ拗ねるように。

「別にー? 俺も寝る訳にはいかないから起きてただけだし。その間ずっと瞑想してただけだし。別に謝ることないし? 怒ってないし?」

 息も吐かぬ勢いで捲し立てる。


 本当に怒ってはいないが、意地悪だ。お返しだ。器が小さいとか言うな。


「ごめんなさい……、そこまでとは思ってなかったの……」

 しゅん。と沈んだ顔で。

「…………」

 ベッドで正座をしている霊夢の顔を見る。

「ね、ねえ、なにか言ってよ……」


 高らかに笑って、霊夢の肩を叩いた。

「冗談だよ。そんなことで怒らんさ。お前らにとっては初めての経験なんだ。仕方無いよ」


 安堵の息を吐いてから胸の辺りに両手を置く。

「もう! びっくりしたじゃない!」

 え、そんなに怒る? 冗談に見えなかったのか? 嫁なら笑って受け流すぞ? ……もしかしたら、俺、普段からこんな奴だと思われてる……?


 だとしたら嫌だな。うむ。しかし、魔理沙。お前はいつまで寝ている。


 視線を魔理沙に向けると、もうベッドから起き上がり、うるさいぞー。と舌足らずながらも文句を言って、目を擦っていた。


 俺と霊夢が魔理沙に挨拶をして、三人で準備運動する。

 二人共嫌がってたが、これは大事な事だ。今まで寝ていて、体が固まっているのに、まともに戦える訳がない。と、言いくるめて、無理矢理にでもやらした。


 終わり、今は玉座の間に、居る。

 ここは俺が居たときは無かった。なら何故か。レミィが『玉座に座ったら格好いいから欲しい!』と咲夜に作らせたのだと。ご愁傷さま。咲夜。


 よくあるラスボスの場所を彷彿とさせる。

 レッドカーペット、玉座、柱、シャンデリア。

 しかし、レミィは座らない。暇。なのだとか。

 そりゃあそうだ。

 だが、ここにしかレミィは居ない。部屋に行っても居ないし、何処にもいなかった。ここ以外。ならここだ。逆に居てくれ。


 願望。

 扉を開ける。レッドカーペットの十五メートル先。玉座に小さな身体を腰かけさせ、頬杖、足組。

 無表情で、目を紅く輝かせ、俺達を見下すように。

 二人と見合わせ、ジュワユーズを右手で下段に構え、金の霊力銃を左手に持つ。

 ゆっくりと、玉座を降り、グングニルをつくり、構えた。それは正しく悪魔。あまりの威圧に、冷汗が垂れた。

 汗が床に落ちたときを合図に、撃った。

 乾いた銃声はしない。しないのだが、代わりに爆発音のような心臓に響く音が聞こえる。

 小さい霊力弾は、視界に捉えられない程の速さでレミィに向かう。だが、まるで見えているかの如く、頭を横に反らした。後ろの壁に穴が開く。

 お返しとばかりに、グングニルを投擲。

 鬼と同等の力は伊達じゃなく、レミィの身長少し上まであるグングニルは、恐ろしい速度で俺を襲う。挑発でもするように、同じく頭を反らした。

 もし、グングニルが大きくなかったら。もし、今のが銃弾だったなら、俺の体は風穴を開けていただろう。グングニルの大きさが幸いした。

 グングニルは扉を壊し、廊下の壁に刺さった後、消失。

 魔理沙が箒に乗り、飛ぶ。霊夢は宙に浮き、お祓い棒を右手に、札を左手に数枚挟んで構えた。

 禍々しいグングニルをまた、つくり、優雅に、歩く。いつもなら走って俺に抱き付いてくるレミィは、今だけ違う。俺を、俺達を殺そうとしてくる悪魔。殺人ロボット。

 小さい体は、しかし、悪鬼羅刹のようで、この場を威圧で支配する。

 余裕の表れなのか、俺達なんか何時でも殺せるぞ。と言いたいのか、ゆっくりと歩く。

 それがまた不気味だ。

「レミィ、いや、“レミリア・スカーレット”お前は俺の知っているレミィじゃない。全力で相手をする。覚悟しろ……!」

 


 それを鼻で笑った後、蝙蝠の翼を広げ、突進。

 横に受け身をして、飛び、避けた。

 素早く立ち上がり、次の攻撃に備える。

 俺の居たところを向く。レミィが腕を振り抜いていた。俺に視線を移し、グングニルを振り上げた。紙一重で避けて、小さい霊力弾を撃つ。しかし、片手で掴んだ。

 ――なっ……!?


 驚く暇も無く、グングニルを横に払うレミリア。上半身を後ろに傾かせ、バック転で後ろに下がる。その時、閃光がレミリアを包む。

 マスタースパークだ。魔理沙が上から魔力を溜めていて、何時でも射てるように、準備していたのだ。それに気付き、俺は下がった。

 見事だ。

 称賛を贈りながら、そのままバック転で距離を稼ぐ。二転三転。四転五転。最後に勢いよく飛び、ひねりを入れながら回転して、両手に銃を持ち、レーザー型を連射した。風を切り裂く音。

 やっと大きい一筋の閃光が止む。

 倒れただろうか……。終わっていてくれ……。そう思ったが、期待は打ち砕かれる。

 体に煙を出しながらも、立っている。仁王立ちして、頭を勢いよく傾け、首の骨を鳴らす。心なしか、俺の幻視か、レミリアは――――嗤った。

 唖然としてしまって、反応が出来なかった。

 何故。

 あれを食らって。

 上手い具合に当たった。

 渾身のマスタースパークだった。それが、こうも、容易く。

 殺し合いなのに、唖然とした。呆然とした。

 気付けば視界が回っていて、地面に打ち付けられた揚げ句、壁に激突。

 遅れて痛みがやってくる。味覚が鉄一色になり、溜まる。頬が腫れたような感覚を覚えるが、治った。

 俺が動くと、瓦礫が崩れ、降ってくる。それを無視して、身体を起こす。

 立ち上がり真っ直ぐレミリアを見た。どうだ。とでも言いたげに腕を組み、にやりと口の端をつり上げていた。

 溜まっていた血を吐き捨て、「頭がすっきりしたよ。ありがとう」皮肉気に呟いた。

 レミリア以外の視線に気付き、見やると、霊夢と魔理沙が心配気に俺を凝視している。

 片手を挙げ、無事を伝えた。それを確認すると、頷き、俺とレミリアの動きを注視する。

 三人で一斉に攻撃しても邪魔になると思ったのだろう。俺の動きに合わせて援護射撃をする様だ。そっちのがありがたい。

 全力で走り、ジュワユーズを二対創造して、投げる。もう二対持ち、二刀流にした。

 レミリアはグングニルで一つ弾き、もう一つを身体を傾け、避ける。

 近づいた時、レミリアがグングニルで突きを放つ。身体を回して、受け流す。そのまま遠心力を利用して二本共叩き付けた。

 ――もらった!!

 これは食らった。と確信した。だが、しかし、レミリアは無理矢理、後ろに倒れ、地面にグングニルの柄の先を支えにして、サマーソルトで俺の腕を蹴った。

 ジュワユーズが一本弾かれる。金属の音。ジュワユーズが床に落ちた。

 急いでバック転をしているレミリアに霊力弾を撃つ。しかし、むなしくも床に当たり、レミリアは跳んでグングニルを投げつける。

 横に飛び、回避して、お返しにジュワユーズを投げた。

 翼をはためかせ、躱す。

 少ししか時間は経っていない筈なのに、永く感じる。

 攻防を繰り返す。当たっても決定打に欠ける。霊夢達も機会を伺って、援護するが、当たらないし当たっても効果があまり見られない。


 そろそろ疲れてきた。

 もう終わらさないともたない。

 そう思い、走る。しかし、俺はよろめき、膝をつけてしまった。

 絶好だとレミリアは隙だらけの俺に素早く近づき、首を掴もうと伸ばした。霊夢がなにか言っている。だが――


 ――罠だよ……。


 にやりと、抑えきれなく、笑みを浮かべてしまったが、レミリアはそれに気付いてないのか、俺の首すぐ近くまで手をやった。その手を引っ張り、体勢を崩させ、前のめりになるレミリア。

 背後に潜り、首に組み付いた。

 一瞬の間にギリギリと力を込め、勢いよく、首を捻った。

 コキッ。と小気味の良い音がして、レミリアの抵抗が無くなった。




 レミィを支えて、抱き上げて、片手を挙げ、喜びの声をあげた。

「勝った!!」



 霊夢と魔理沙が床に降りて俺の背中を叩いた。

「私はわざとだって知ってたぜ」

 飄々と言う魔理沙。

 魔理沙に視線を移し「嘘つかないの。あんたも驚いてたじゃない」軽く睨んだ。

 それを、口笛を吹いて誤魔化した。

 誤魔化しきれてないが。

 まあいい、図書館に行こう。疲れた。こんな本格的な戦闘をすることになるとはな……。これで後はフランとルーミアだけだ。それが終われば何時もの幸せを噛み締めれる。頑張ろう。あと一息だ。


 一体だけ妖精が襲ってきたが、すぐに意識を落とし、図書館に入った。まあ、廊下に寝かしたままで良いだろう。フランは地下に居ると思うし。因みにこれも探して居なかったからだ。


 図書館の扉を開けた。未だ目を覚まさないパチェと咲夜にリリー。そういえば城に連れていった美鈴と三月精は起きただろうか。起きていたら良いが……、なんか嫌な予感がする。

 まあいい。今は休もう。

 二人に仮眠をとっていいか確認をとる。

「いまさっき寝たから起きてるわよ」

 魔女帽子を読書スペースのテーブルに置き、「私も起きてるぜ」腕を組んだ。



 そうか。とだけ返し、本棚にもたれて、寝た。



        

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ