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東方極限想  作者: みょんみょん打破
新たな異変
49/67

地獄、紅魔館





「おいおい……、マジかよ……」

 横で魔理沙が唖然として呟く。


 開けて入った館の中は、変わらない赤いカーペット。電気のついたシャンデリア。

 階段や客間への扉。

 しかし、変わっている事が一つ。

 それは――――妖精メイド達。三十以上は確実。

 それらが目を紅く輝かせ、入ってきた俺達を見ていた。

 それはまるで、人形のように無表情で。冷たい。

 睨み付ける訳でもなく。

 見下すわけでもなく。

 威圧もなく。何もない。

 機械のように淡々と。

 俺達を排除するためだけに生まれたみたいに。


「どうやら、マジらしい」

 魔理沙の独り言に返事をしたあと、俺は想像する。ルーミアの闇の大剣を。

 創造する。

 刃は黒く、刃引きしている。殺さないようにだ。

 次にスピア・ザ・グングニルを想像する。

 持ち手は姿を変え、装飾が施される。それは吸血鬼の苦手な十字架のよう。

 これが俺の剣。ジュワユーズ。少し前にスペルで作った剣とは別物だ。


「さて、こんなところで立ち止まっていられない。すぐに終わらそう」

 剣を構え、魔理沙と霊夢に言い放った。


「そうね」

「おう!」

 霊夢の返事、魔理沙の気合いを聞いたところで、密集している所に向き、走り抜ける。ジュワユーズを振り抜き、妖精メイド達を吹っ飛ばす。


 魔法や霊力とかで放出したほうが数倍早いが、使ってられない。勿体無いし。


 大方ぶっ飛ばし、気絶させた後、霊夢と魔理沙の方を見やった。


 お祓い棒で叩いたり、技を使って一網打尽。

 魔理沙は箒に乗り、星のような弾幕を放ち、妖精を蹴散らしていた。

 頼もしい。


 床には妖精達が無造作に倒れている。三人で目を確認すると、やはりと言うべきか、戻っていた。


「やはり目は戻ってるな……」

 二人に確認をとるように、訊く。

 こくこくと頷いた。

「ええ」

 でも。と続けて、「まだ安心は出来ない。異変の首謀者……、ただじゃおかない……!」空いている拳を握った。


 そこから、図書館に向かう。

 弱い者から倒していったほうが効率的だからだ。

 確かにパチェは手強い。だが、体力が無いのだ。それを攻める。しかし、短期で決着をつけたほうが良いと思うのは俺だけか?

 まあいい。その場、その場で動こう。


 道中、妖精が襲ってきたが、難なく戦闘不能にして、図書館に着いた。

 開き、入る。

 ここも薄暗い。だが、蝋燭の光が見える。それに――――


「そこだ!」


 魔理沙が叫んだ後、凄まじい速さの星形弾幕が飛び、図書館内を明るく照らす。

 当たった先は――リリー。


 暗い中では、ばればれな程、目は輝いていた。それを魔理沙がいち早く反応し、気絶させた。

 放っておいても大丈夫と判断して、真ん中に向かう。

 ここは何千、何万と本が置いてある。必然的に、広くしなくてはいけない。

 少し歩くと、読書スペースに火のついた蝋燭があり、パチェを照らしていた。俺達と向き合うようにして、座っている。


「…………」

 パチェは立ち上がり、足下に、魔方陣が浮き上がった。

 それは淡く光り、幻想的に映し出す。


「くるぞ」

 ジュワユーズを出して、上段に構える。

 魔理沙は箒に乗り、八卦炉を持つ。

 霊夢も持っていたお祓い棒を中段に構えた。お祓い棒の紙垂が揺れて、止まる。


 パチェは手を伸ばした。風。その風は鋭い音を出して、俺達に吹いた。


「風魔法だ!」

 俺が言い放ち、動く。


 風魔法。基本は風を操ったり、放出する魔法だが、中級の風魔法の一部で、カマイタチを起こす魔法がある。パチェが使ったのは恐らくそれだろう。

 これは真空の刃で、何処に来るか、等は分かりにくい。


 突撃あるのみだとでもいうように、風の中、走り抜ける。

 俺を切り裂くが、すぐに治る。骨折も三秒で治る自然治癒は伊達じゃない。今まで全く役に立ってなかった自然治癒がこんなところで役に立つとは思わなんだ。


 操っててよかった自然治癒。今すぐ君も操ろう!


 出来る人は限られるだろう事を適当に思いながら、パチェに刃引きしている剣を叩きつける。


『ガキン』硬い音、感触が伝わる。まるで何か硬い物に守られているように。

 恐らくだが、結界魔法だ。

 結界魔法。

 それは結界を魔力でつくる。しかし、ずっと纏っているわけではない。それをされたら勝負も何もあったもんじゃない。二秒。二秒だけ、守られる。一回限り。勿論壊れる。



【聞こえるか、二人とも。これは魔法の中の一つだ。今、パチェは結界魔法を使っている。まず、霊夢が技を使い、囮。魔理沙が後ろからマスタースパーク。俺が死角で攻撃。いけ】

 霊夢と魔理沙が頷き、霊夢が派手な技を使う。

 パチェは結界魔法を行使。意識が霊夢に向いた時、魔理沙は箒に乗り、素早くパチェの後ろ上に飛んだ。俺は隠密で陰に行く。


 ぶつかった時、硬い音。しかし、それは割れる。硝子が割れたような音が図書館に響く。

 魔理沙が上から巨大な閃光を八卦炉から放出した。

 パチェは気付いていて、振り向き三度、結界を纏う。

『ガガガガ』と説明しにくい音が聞こえ、マスタースパークをやり過ごすパチェ。その間ひっそりと近づき、足に力を入れる。

 終わった直後、高速で背後の陰に潜り込み、うなじ辺りに手刀を落とした。


 崩れ落ちるパチェ。支え、椅子に寝かせる。

 図書館を見ると散らかっていた。風で本が落ち、本棚も傷がついていた。


「お疲れ」

 二人にハイタッチを促し、労いの言葉をかけた。

 二人のハイタッチによって、小気味よい音の後、返事がくる。

「お疲れーい!」

「お疲れ様」


 後は妖精数名と咲夜、レミィ、フランだけだな。……色んな意味で辛い。何が良くて嫁と戦わねばならんのだ。ちくしょうめ。犯人見つけたら拷問の限りを尽くしてやる。今回は許さんぞ。

 多分。

 しかし、レミィとフランに勝てるか? この二人は本当にしんどい……。出来るなら一人づつ戦いたいもんだ。


 願いながらも少し休憩。


「少し休憩しよう。これから連戦だ」

 道中に妖精と咲夜。レミィの部屋、もしくは何処かにレミィとフランがいる。連戦は避けられないと……思う。なら今のうちに休んでおこうという魂胆だ。


「そうだな」

「でも、油断はしないでよ?」

 三人で椅子に腰掛け「わかってる。探知は怠らない」断言してから、ただ。と続けて「咲夜には注意しろ。いつ来るかわからない」注意を促した。


 咲夜なら時間を止めてここに来れるからな。知らない間にナイフで刺されてましたじゃあ話にならない。


 三角形に座り、死角が無いようにする。

 十分程休み、図書館を出る。何時でも戦えるよう、鞘に入れたジュワユーズと二対の拳銃を隠すように、腰にさしておく。

 妖精を丁重に退かせて、適当に探索。


 居ないのか? 俺が思い始めた頃、タイミングを見計らったかのように、三メートル先の客間から目を紅く輝かせている咲夜が出てきた。

 無表情で俺達を見て、何処から取り出したのか、いつのまにかナイフを三本づつ、両指に挟み、構えた。


 気づけば咲夜は離れていて、居た所にはナイフがあり、飛んできた。

 それを居合いの要領で弾く。

 形は刀ではなく、剣だ。居合いはやりにくいが、出しから弾くのは辛い。だから居合いをやってみた。が、やりにくいな。やはり。

 二人に目配りをして、三人で短期に持ち込む。


 近づいた時、消えて、俺の首筋が寒気を催す。

 咄嗟にしゃがみ、後ろに向かって全力足払いをした。

 当たる感触がする。それは骨が折れる嫌な音。確認する。

 しかし、なにもいない。隣に二人いるが、周囲を見ている。


「霊夢!」

 俺が叫ぶ。

 霊夢の後ろからナイフが迫ってきていた。

 振り向くも、間に合わない。それを察知して、ジュワユーズで弾く。

 壁に刺さり、消えていた。

 周りに視線を配る。壁にはさっきついた傷があり、扉は閉められている。魔理沙と霊夢は同様、キョロキョロとしている。

 逃げたのか? そう思った時、さっきと変わらない咲夜が“三人”居た。


「お、おい! あいつ、あんなこと――――」

 魔理沙が目を見開き、俺に問いかけてくる。

 三人の咲夜を注視しながら諭した。



 咲夜の能力は、時を操る程度の能力。だったはず。これは応用が利く。どうやったかは知らないが、増やしたのだろう。なら足を折ったと思われる咲夜は……? 可笑しい、咲夜は能力を使っても、治す事は出来ないと思ってたんだが……。思い違いか……? いや、そんなことより――


「一対一だ。頑張れ」

 走る。咲夜達に向かって。端の二人が姿を消して、真ん中が俺にナイフを投げる。

 翔ながら、手で弾き、ジュワユーズを投げる。

「…………!」

 これには驚いたようで、一瞬遅れ、射線上から遠退く。地面に突き刺さったジュワユーズ。走り、取って、もう一つ創造して、二本投げる。

 しかし、消えた。後ろを見る。六メートル先に居た。

 半分位の位置に、ナイフが五本。決死の覚悟で、二対の拳銃を取り、撃った。銃声は不思議と聞こえない。心臓の音。五本の銀ナイフが俺に突き刺さる。

 腹を、足を、手のひらを、胸を、肩に刺さる。


「くそ! 流石に痛いな……。まあ、すぐに治るけれど」

 痛みに顔をしかめながらナイフを抜く。血が彩る銀のナイフ。血が切っ先から滴り、地面に落とす。

 かわいた音が五回して、傷が塞がった。

 咲夜は気絶している。放出される霊力の弾を咄嗟に拳程度にした。小さくすると貫通するからだ。

 人間にそんなことしたら死ぬからな。

 そんなことは出来ない。うん。加減を覚えるために犠牲にした名も知らぬ妖怪。ごめん。君は大いに役に立ってくれた。


 肩に抱き上げ、霊夢達の元へ向かう。結構離れてしまった。



「おーい、大丈夫か?」

 片手をメガホン代わりにして、張り上げた。

 霊夢と魔理沙がたっていて、咲夜は居ない。

「あ、お疲れ様。ついさっき、急に咲夜が消えたわよ?」

 不思議そうに、首を傾げた霊夢。


 ついさっき。いつかはわからないが、俺が気絶さした時を仮定するなら合点はいくと思う。

 だが、寝ていても能力は行使出来るからな、咲夜。

「ふむ。まあ、無事で何より。図書館に戻ろう」

 元来た道を指差し、戻っていく俺達。


 咲夜を床に寝かせ、椅子に深く座り、休憩した。

 安心と安定の図書館。今はここが俺達の憩いの場。ここは天国。外は地獄。一瞬でも気を抜けば死ぬかもしれない。

 魔理沙と霊夢は知らず知らずの間に、神経を張っていたのか、寝息を立てていた。

 …………。俺、このまま起きてなきゃいけないのか……? まあ、仕方ないか。二人にとって、初めての経験だからな。

 今まで平和だったのが一転。こんな事になってるんだから。


 俺は寝ている女の子全員分のベッドを創造して、寝かせた。


 ベッドが創造出来て良かったよ。


 待ってろ、レミィ、フラン。後はお前達だ。必ず救ってやる。

 決意を新たに、瞑想した。




      

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