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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
44/67

廃洋館にご招待







 あれから、地霊殿を昼に出て、帰った。

 俺の城に今度来たいのだと。その時に紫を呼んで、ついでに嫁の皆にさとりとこいしが挨拶したあと、相談したら、特別に俺の城まで送ってくれるらしい。

 他の嫁達も同じで、私も遊びに行きたいから送っていくわよ。と、名乗り出ていた。


 そして、俺達は――ルーミアと三月精――今、霧の湖近く、しかし紅魔館とは離れている所にある、廃洋館という場所の近くにいる。


 何故ここに来たのか。それは昨日に遡る。

 俺達が帰った後、城の玄関に一通の手紙があったのだ。


 内容は、簡単に言うと、廃洋館に来て、演奏を聴いていってほしい。とのこと。場所も丁寧に書いていて、好感が持てた。


 次の日。十二月、二十九日。


 こいしから貰った帽子を被り、男物の黒のストール。白のシャツ、黒のスーツ。と少しお洒落してきた。


 呼ばれたのだ、それくらいお洒落しないと失礼だろう。ルーミアは黒のドレス。サニー達は赤、クリーム色、青のドレスをそれぞれ着ている。寒くはないらしい。


 冬の弱々しくも柔らかい日射し。


 寂れた館。所々、煉瓦なんかが崩れている。

 俺達は鉄製の彫刻が施された門を通り、玄関の扉につく。

 何故かその扉は独りでに開いた。

 重々しく、錆びた音がする。


 中に入る。その時、怖いのか、サニーが手を握ってきた。その小さな手を握り返し、進む。電気がなく、暗い。しかし、何も見えない訳ではない。薄暗い程度だ。

 視線を巡らせる。天井には割れたシャンデリア。蜘蛛の巣。壷もあるが、やはり割れている。

 本当の廃洋館だ。

 内装は何処と無く紅魔館を連想させる。

 俺達の目の前に三体の幽霊が姿を現した。


 三角錐状で返しがある帽子。一番上に、三日月やら流れ星やら装飾があったり。白いシャツにベスト。襟と肩にフリル。ボタンが二つ。スカート。三人色と細部は若干変わっているが、概ね同じ。

 左から服が黒と白と赤で金髪。

 次に薄い桃色と青。髪は青。

 最後に服は赤、黒。かなり薄い茶色だ。

 三体の中で、身長は薄い桃色の子が一番高い。その次に黒の女の子、最後に赤い子だ。



 桃色の子が両手を挙げて「ようこそ! 私は次女のメルラン・プリズムリバー! 今日は私達、プリズムリバー楽団の演奏をたくさん聴いていってね!!」元気いっぱいに俺達を歓迎した。

 次に赤い子が頭を下げて「私は三女のリリカ・プリズムリバーだよ!」

 最後に黒い子が無表情に近い顔で「ようこそ、最強の半人半妖、未知 神楽様」綺麗なお辞儀をして「私は長女で、リーダーをしている、ルナサ・プリズムリバーです。今日はわざわざこんな所にご足労いただ――――」

 両手を下につきだし「もう! ルナ姉! 堅苦しいよ!」大声で、両人差し指を頬に当て「ほら、こう! にぱー! って!」花のような笑みが咲く。

「こ、こう? にぱー」真似をする。



 笑顔になってない。それはどっちかというと冷笑だ。逆に似合ってるぞ。いやいや、違う。ていうか早く聞きたいのだが。久しく何かの曲を聴くからな。結構楽しみなんだ。


 真似をするが、冷笑を浮かばせるルナサ。

 メルラン、笑顔の実践編はまだ続く。


「こうだってば! にぱー!!」

「に、にぱー」若干顔が赤くなってきたルナサ。それでも笑顔を浮かばせようと頑張るが。駄目。

「ねぇ、早く演奏しようよ」呆れた表情、溜め息を吐きながらそう声をかけるリリカ。


 その通りだ。よく言った。個人的に褒めてあげたい。ありがとう。


 心でお礼をする。

 ルナサは咳払いをしてから、俺達に一言謝り、演奏場に案内してくれた。


 演奏場。

 椅子が幾多にも置かれている。その椅子は全て、奏者が立つ場所に向いていた。


 真ん中位の椅子に腰掛ける。

 右にルーミアが俺の腕を組む。

 左にサニーで、手を握りしめていた。



「それじゃ!! プリズムリバー楽団! まずはソロで演奏します!!」

 ルナサがバイオリン。メルランがトランペット、リリカがキーボードをそれぞれ浮かせている。

 メルランがそう宣言した後、三体は顔を見合わせた。



 リリカが演奏する。

 その音は幻想。聴いたことのない音だ。

 それに巧い。だが、いってしまえば、心に響いてこない。

 言うなれば機械のようとも感じる。

 プロは必ずしもとはいかないが、感情や、表現が曲にのる。対して、機械はインプットされた曲を精密に演奏するが、感情がない。

 しかし、全く感情が伝わらないわけでもない。

 彼女自身は楽しそうに、悲しそうに弾いていたりと、感情豊かだ。それを見ると、自然と曲にも彼女の楽しさ、悲しさが伝わってくる。


 リリカが礼をして「ありがとうございました」


 サニーが首を傾げていたが、難しく、まだわからないだろう。俺も彼女の良さを伝えきれていない。

 若干の歯痒さを感じながら演奏はリリカはルナサにバトンタッチをして「次、ルナサ・プリズムリバー。演奏致します」礼をして、顔に陰を差し、バイオリンを鳴らす。



 しっとりと。ゆったりと。奏でる。

 その音は鬱。曲は落ち着くようで、耳からではなく、精神に訴えかけてくるよう。

 そう。『訴えかけてくる』のだ。哀しくも悲しい。そんな感情が俺達に訴えてくる。

 まるで少しでも聴いてると何もやる気がおきなく、悲しくなって気分が沈み――――




「うっ……! ひっく……!」


――ん?


 圧し殺したような、嗚咽が隣から聞こえる。横を見ると、サニーとルナ、スターが泣いていた。

 サニーは嗚咽をだし、大粒の涙を止めどなく流して。

 ルナは静かに、零れる涙を拭わないで。

 スターも涙を流す。しかし曲を聴きながらも、何かに対抗するよう聴き入って。


 恐らく、あてられたんだろう。子供故、感情豊かで、感情を受信しやすい。

 俺は三月精に「おいで」とだけ言って、三人を膝の上にのせ、抱き締める。


 そして曲が止んだ。

 ルナサは俺達の方を向き、綺麗な顔を悲しそうに歪ませ、お辞儀した。

 まだ三月精は泣いている。俺の服を涙で濡らし、ルーミアが三人を撫でる。


「あらら、泣いちゃったね。でも、私の曲でハッピーになってねー!!」


 メルランが曲を奏でる。アップテンポで気分を高揚させ、楽しくなるような。

 踊らせるような。

 それは躁。俺の心に直接語りかけてきた。

『貴方も踊ろう!』

『最高にハッピーだよ!』

 笑いかけてくる。

 誘ってくる。


 三月精はいつのまにか泣き止み、サニーは空中で踊る。ドレスを舞わせる。

 ルナが「神楽様、今度一緒に本を読みましょう? ね? 私その時間が凄く好きなの。お願い。ね? ね? 寧ろ優しい神楽様が好き、好き、大好きです」捲し立てている。それを苦笑で受け流す俺。

 スターは歌っている。綺麗な声で。魅了するように。

 ルーミアも隣で母性の笑顔を浮かべている。



 曲が終わる。


「ありがとー!! 次は三人で演奏するよー!!」飛びはねて、精一杯の笑顔で俺達に伝える。

 アイドルのライブみたいな空気。差詰、この場では俺達は彼女達のファンで、彼女達はアイドル。恋い焦がれるアイドルだ。

 メルランの汗がキラキラと床に落ちる。


 未だ悲しげな表情を浮かべてるルナサの肩をリリカとメルランが叩き、励ましている。

「ルナサ! お前の音はお前だけにしか奏でられない!! これは俺の願いでもある! お願いだ! お前達の! 最高の曲を聴かせてくれ!」俺が激励を贈った。

 すると、ルナサは本当の、可憐で、美しい笑みを浮かべ、勢いよく頷く。



 三体の、騒霊の演奏は始まった。


 悲しく。

 哀しく。

 嬉しく。

 楽しく。


 沈痛で暗く、歓びに喜ぶ。

 ルナサが鬱を。

 メルランが躁を。

 リリカが幻想の音でそれを安定させ、まとめ、耳障りの良い音にしている。

 楽しい。嫁達と共に過ごすのとは違う幸せ。


 あっという間に演奏が終わってしまった。





「ありがとうございました!!」三体が一斉に、声をあげた。

 俺達は盛大な拍手を贈る。

 椅子から立ち、ルナサ達の元へ向かう。


「ありがとう。実に有意義だったよ」ルナサに握手して「ルナサが悲しさを」次にメルランに握手「メルランが楽しさを」最後にリリカに握手して「リリカがそれを支えてまとめる」頭の帽子を少し上げ「自分の感想に歯痒さを覚える程だった」締め括った。


 思い思いの感想を伝えて、昼食にする。

 寂れた食堂で、蜘蛛の巣があったりするが、少し衛生面で不安があるが。まあ、良いだろう。まだ余韻に浸っていたい。


 料理を創造して、テーブルに並べる。

 そう言えば騒霊は食べれるのか? 実体を持ってはいるが……。

 ルナサを見てしまう。

 箸を持ち、料理を選んでいる。

 そして、つかみ、口に運ぶ。


 普通に食べれるのか……。


 口を動かすルナサ。しかし、俺の視線に気付き徐々に口の動きを止める。

 遂には視線を反らし、顔を赤くしてしまった。



――あ、これは……。


 直感的にわかってしまった自分が憎らしい。

 しかし、まだわからない。そりゃあ、誰だってじっと見られていたら恥ずかしくもなるだろう。そうだ。


「な、なに……?」俺の向かいに座っているルナサが、とうとう耐えきれなくなって、問い掛けてきた。

「いや、なんでもない。すまないな」


 言えない。騒霊は飯を食べれるから気になって見ていたなんて言えない……!


 チラチラと赤い顔で見てくるルナサ。少し気まずくなり、食べる事にした。


 食べ終わり、廃洋館を出る時。





「あの、神楽」おずおずと、ルナサが呼ぶ。

「ん?」ルナサを見て、返事をする。


 リリカとメルランがルナサの肩を押し、俺の前に連れてくる。そして「私達はお邪魔だから向こう行ってるね!」そそくさと何処かへ行ってしまった。


「ちょ、ちょっと来てくれないか……?」か細い声で俺に着いてくるよう云った。


 了承して、着いていく。

 テラスのような場所にルナサが立ち止まる。

「きょ、今日は!」張り上げて「嬉しかった……」ぼそっと小さく。

「ああ。あのときか……」俺は深く被っている帽子を浅く乗せて、思い出した。


 多分、あの三体の演奏少し前だろう。

 俺でも驚くほどの大声で感情的になってしまった。

 少し恥ずかしく思ってしまうが。


 両手を後ろに回し「……。格好良かった……」赤い顔で礼を述べるルナサ。

「いや、いいよ。本当の事を言っただけだ。逆に俺なんかが声を荒げてしまって悪かったな」無表情かは知らないが、頭を下げて謝罪する。

 絞るように「ううん……、お礼……をしたいんだけど……」


 べつに良いのに。お礼。楽器か? それしか思い浮かばないが……。なんだろうか。少しどきどきするな。甘酸っぱい感じ。


 俺に近づき「ありがとう――――」


 ルナサの顔が目の前に来て、俺の頬に口付けをした。


 リップ音の後「神楽!」赤い頬に見惚れる程の笑顔をして、蜃気楼のように消えてしまった。





                 

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