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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
42/67

さとりとデート

 午前七時半。

 身仕度を終え、城を五人で出ていく。

 昨日のようにヤマメ、キスメ、パルスィに会った。三人合わせて約四十分位話をしてしまったが、概ね問題はない。






 旧都。

 昨日と変わらない雪江戸が目にうつる。屋台を、店を開け、客を待つ。

 朝から居酒屋も開いているが、鬼や妖怪にとっては、朝から開いている店というのは結構ありがたい。それは何故か。


 理由は極々簡単。朝から呑みたいから。鬼は建築を頼まれるが、それをする前に酒。休憩に酒。終わっても酒。酒ばかり。だから店も開いている。

 妖怪や幻想郷にはこれといって娯楽がない。酒を呑むだけ。とはいかないが、大抵は酒だ。

 外では未成年が酒を呑んでは駄目だ、と言われている。しかし、幻想郷なら問題ない。寧ろ呑めなくてはいけないのだ。

 現に魔理沙や霊夢、まだ未成年である咲夜達も呑んでいる。

 因みにだが、外で育った早苗は呑まない。今も頑なに呑めない、呑まないと拒否している。いい子だ、偉い子だ。お父さん嬉しいぞ。



 そんな事を考えていたらいつの間にか旧都を越え、地霊殿前にいた。驚きだ。

 腕組を解く。目瞑りは流石にしていない。

 インターホンらしきものを押し、暫し待つ。

 昨日とは違うゴスロリ服を身に纏ったお燐が出てくる。


「あ、お兄さん! 来てくれたんだ。場所は分かる?」


 いきなり出てきて、場所は分かる? とは何事だ。多分恐らくきっと、書斎の場所は分かるか? と言っているんだろう。それなら昨日覚えた。記憶力には自信があります、神楽です。




「ああ、わか――――」




 わか。そこまでしか言えなかった。目の前のお燐は猫になっていて、俺に飛び付いたからだ。


 最初からこれを狙っていたな。こやつ。可愛い奴め。うりうり。


 手を頭に軽く押し付け、ぐりぐりする。

 それでも気持ち良さそうに喉を鳴らしているが。

 お燐が猫になった所を見て、サニーは驚き「すごーい! 猫になったー!」大喜び。

 ルナ、スターが感心したように溜め息を吐く。


 ルナ、スター。お前ら大人っぽいな。サニーが子供に見えるよ。

 いや、一応子供ではあるんだが。それ以上に家のルナとスターが落ち着いている。これも元メイド長のお陰だろうか。凄いな。


 絶賛を贈る。拍手もしたいが。この場に置いて、それをすると頭があれな人に見られる。何よりお燐が落ちてしまう。それだけはなんとか阻止しなくては。



 使命感のような何かを感じる。

 扉を開け、黒と赤、照明のコントラストが綺麗だ。俺の城もこんな風にすれば良かったか?


 少し後悔してしまうが、今からでも遅くはない。そう元気付け、床を歩く。

 何番目かの扉を過ぎた所で「にゃーん」と共に、一つの扉を示すお燐。

 そこに入ると、昨日と同じ書斎。


 読書スペースで、眼鏡をかけたさとりがノートに何かを書いている。

 ここからはちょうど、背中を向けているように書いているので、俺に気付いていない。

 忍び足で近付き、驚かそうとする。



『十二月二十八日

 昨日は未知 神楽という半人半妖と友人になった。

 これはクリスマスプレゼントなのかもしれない。

 私でも良いのか。そう聞くと、彼は優しい顔で『さとりだからなってほしいんだ』そう言ってくれた。ドキッとしたのはここだけの秘密。』



 しかし、見てしまった。


 あれ、無表情じゃなかったのか。いつも無表情だと思ってたんだけどな。しかし、可愛い。

 なんだこの子。純情可愛い。


「やあ、さとり」真後ろでお燐を抱きながら挨拶する。

「――――!?」


 その声を聞いた瞬間、椅子を乗り出し、全力で、体全体を駆使して、日記を隠す。


「お、おはよう。早いのね……」振り向き、一応挨拶するが、どんどん顔が林檎のように赤くなって「……みた?」ついには涙目になった。


 見た。と言っても良い。でも、ここは黙っておこう。



「う……。見たんだ……。恥ずかしいよぉ……!」両手で顔を覆いへたりこんでしまうさとり。



 あ、よめるの忘れてた。失敗したな……。ごめん、さとり。ごめん。



 必死に謝るが、さとりは顔を隠している。耳まで真っ赤になっているが、そこにふれてはいけない。


「うぅ……!!」未だに悶絶。「ひどい……。盗み見るなんて……」


 本当に悪い事をしたな……。



「本当にすまん……、お詫びにはならないかもしれないが、さとりの言うことを聞くよ。それで許してくれないか?」


 こんなことで許してくれるかはわからないが――――



「……ほんとう?」ずっと俯き、隠していた顔を上げて、問う。まだ顔は林檎みたいだが、涙目だが、それでも上げた。




「それで良いなら……。だが」一先ず、ルーミア、サニー、ルナ、スターに「少し出てくれ。さとりと二人になりたい」出るようお願いした。

 同様、さとりも「お燐、貴方も出て」命令する。



 書斎で二人っきりになる。棒立ちの俺。へたりこんでいたさとりは立ち上がり、深呼吸して「じゃ、じゃあ、今日だけでも良いから――――」より一層赤くして、俺の手を握り「恋人になってほしい……」





 何故。

 予想外。

 想定外。

 斜め上どころか、もはや真上にいっている気がしないでもない。

 いきなりどうしたんだろうか。ていうかなんでそうなったんだろう。


 いや、寧ろばっちこいだけどさ。恋人っていうのが新しい。

 さとりも憧れを持っていたんだろう。友達と呼べるのもあまりいないみたいだしな。

 


「喜んで、さとり。じゃあ、行こうか」ちゃんと手を繋ぎ、連れ出す。



 因みに言うと、俗に言う、恋人繋ぎをしている。


「ど、どこに行くの?」まだ赤の抜けない顔で疑問気に。

「旧都だよ! これからデートっていうのをするんだ」書斎の扉を開いて、ルーミア達に「これから二人だけで、旧都観光をしてくる。休んでいてくれ」そう言って、さとりと地霊殿を出た。


 ガヤガヤと賑わい、厚着をしてもその冬の寒さに身を凍えさし、白い息を風に散らす中、手を繋ぎながら、歩く。

 おい、あそこ。

 うわ、あの覚り妖怪だ……。

 俺やっぱ嫌いだぜ。

 しかもあの横にいる男。昨日もいた男じゃねぇか?

 信じられねぇ……。



 そんな妖怪達の誹謗中傷等々が聞こえる。

 横を見ると、さとりが俯いていた。

 やはり悲しいだろう。



 立ち止まり、俺の胸辺り位のさとりに目線を合わせて「さとり、誰が何を言ったって俺はお前の味方だ。お前を守ってやる。幸せにしてやる。他人なんか気にするな。今だけは俺を見ろ」わかったな。そう諭し、手を離して、代わりに頭を撫でて安心させる。

「ふふ、ありがとう、神楽」そう微笑むさとり。



 おい、見たかよ。

 ありえねぇ……。


「私は貴方だけを見るわ。行きましょ! 私が案内してあげる!」さとりが再び指と指を絡めるようにして繋ぎ、道案内をしてくれる。

 素直に着いていき、旧都を見学する。


 旧都一番の居酒屋、妖伝来。《ようでんらい》

 建築ならお任せ。鬼早い建築。鬼築きちく

 コンビニ的役割、マート・マーク。


 さとりは案内しているときも、にこにことしていて、凄く楽しそうだった。

 俺もそれにつられて頬が上がる。


 二時間程歩き、旧都の外で、高台のような所のベンチに二人で座る。

 まだ朝だが、雪で真っ白に彩られた旧都が全貌出来る。

 冷たい風が吹き荒ぶ。それはまるでナイフのように鋭く、俺とさとりの火照った体を急激に冷やしていく。


「はぁ」さとりは今まで歩かせていた足を休ませ、一息吐く。その息は白く輝き、風にのってどこかへ旅をしにいった。

「久し振りに充実したわ。ありがとう、神楽」薄紫の髪が揺れ動き、感謝の意を俺に伝える。


「まだまだ時間はある。これで終わりじゃないぞ」寒さには勝てず、黒の長いマフラー創造した。

「でも、やっぱり寒いわね、私も襟巻きを持ってくればよかったわ」手を擦り、寒そうに、両手に息を吐く。


 襟巻きとは、現代で言う、マフラーだ。さとりはそれを巻かずに出てしまった。尤も、俺が連れ出したから準備する事は出来なかったが。


「ならこうしたらいいんじゃないか?」そう提案して、俺の首にマフラーを巻き、そのあと、横に座っているさとりに近づいて、残りをさとりに巻いた。


「……、ありがとう……」寒さで赤い顔を、違う意味で赤くし、礼を言う。


 手を三度繋ぎ、繋いだまま、俺の腕に抱きつき、もたれかかってくる。

 右腕が人肌で暖まる。同時に心も暖かい。


「ねえ、神楽」俺の名前を呼ぶ。旧都から右下に視線を移し、薄紫の髪が目の前に広がる。風にのって石鹸の良い匂いがする。

「楽しかった? 私、初めてだから少し自信がないの……」俺を見るまでもなく、旧都をボーッと見て「私だけはしゃいで、神楽が楽しめて無いんじゃないかって」ぽつりぽつりと、不安を口から漏らす。


「さとり。こっちを見てくれ」

 その声を聞き、旧都から俺の方に顔を動かし「ん? なぁに? かぐ――――」



 顎をつかみ、顔を少し上に向け、優しく唇を重ねた。

「ん――――!?」


 重ねた唇を離す。いきなりのことで呆然と俺を見る。息を忘れたように。

「これが答えだ。お前と居れるならどこでも、何をしていても楽しい。もっと自分に自信を持つんだ」


 徐々に状況を認識していく。それと共に、また赤く顔を変えていく。

 そして、さとりはベンチから立ち、座ってる俺の前に来た。同じマフラーを巻いているさとりに引っ張られ、上半身が前に出る。


 何事か。そう思った時、さとりが俺の膝の上に座って、正面から抱き締めてきた。

 唖然として、さとりを見てしまう。


「少し……、このままが良い……。今は貴方の心じゃなく、温もりを感じたいの……」顔を胸に埋めて、くぐもった声でそう伝えてきた。


 俺も抱き返し「好きなだけ」一言。











 一時間だろうか。そろそろ景色も飽きてきたところだ。さとりはいつの間にか寝ていた。抱いてるおかげで寒くはないが。



 しかし寝顔も可愛い。

 凄い可愛い。


 寝ている間は能力を使えないのか、こういうときは存分に考えられる。今まであまり考えないように、ほぼほぼ無心で話していたのだ。

 何かを極めてそうだな。


「んん……」俺の膝の上、腕の中でもぞもぞと動き「んっ……。あ!」寝ていた事に気づいたのか、はっと顔をあげて「ご、ごめんなさい。寝ちゃった……」謝ってきた。

「いや、可愛い寝顔も見れたし、寧ろお礼を言いたい」さとりの顔を見ながら、笑顔になってるかは心配だが。笑いかけた。


「もう……。格好良すぎよ……」そう言って、また胸に顔を埋めた。


 





        

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