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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
40/67

神楽の旧都探検、中編






 地獄の深道。

 そこは幻想風穴を越えるとある、広場のような所。橋があり、そこには一人の女の子がいる。橋姫。

 地上と地底を往き来する者を見守る女神と呼ばれている。

 しかし、彼女は嫉妬深い性格のためか、通行者に茶々。

 悪戯。

 邪魔。

 煽ったり等もする。

 神楽も例に漏れず、止められ、嫉妬されていた。










――困った。盛大に困った。


 俺はさっきから、橋姫に嫉妬されている。


「幸せそうで妬ましい……。顔が良くて妬ましい……。妬ましい……」


 爪をガリガリと噛み、怪しく光る緑の瞳で俺を睨む。


 金髪ショートボブのハーフアップ。緑の瞳に、尖ったエルフ耳。服は、なんだろうか。ドレスのようなものなんだが、裾は赤の紐っぽいものが星形? 蜘蛛の巣形になっている。

 首に白のスカーフ。

 駄目だ。わからない。見れば見るほどゲシュタルト崩壊のようにわからなくなる。色は落ち着いた色なんだが……。どう説明したらいいんだろうか……。まあ、不思議な服ではあるような……不思議ではないような。


 まあいいか。気を取り直して。


「なあ、通してくれないか?」

「なに? 通りたいの?」噛んでいた爪を下げ、不機嫌そう睨み、静かに怒気の入った声で問い掛けてきた。


 少しばかり前にそう言った筈なんだが。最初は確かに良好的。機嫌良さそうに顔を綻ばせていた。自己紹介もした。しかし、いきなり豹変して嫉妬しだした。

 なんで。そんな疑問を言うまでもなく爪を噛む。という行為をする。

 確か最初の言葉は……、そうだ、思い出した。『あの最強の半人半妖? 妬ましいわね……』そこから始まったんだ。厄介極まりない。手に負えんわ。


 若干訛ってしまった。それくらい困惑していると言ってもいい。かもしれない。

 しかし、可愛い顔をしているのに。顔に嫉妬することじゃないだろう。

 まあ、口には出さないが。もし言ったら『なに? 口説き? 妬ましい』そう言われるに決まっている。この子はあれだ。面には出さないが、裏では文句や嫉妬が渦巻きに渦巻いてる子だ。

 失礼だが。

 今は全面に出している。俺に能力を使っているようにも伺える。さっきからモヤモヤするのだ。

 効果はいまひとつだ! て、やつか。嫉妬することがないからな。当然とも言えるかもしれない。


「橋姫、通らしてくれないか?」

「ちっ、パルスィよ。水橋パルスィ」舌打ち一つ、名乗った。


 水橋パルスィ。頭に名前を刻み、覚える。


「じゃあパルスィ、通らしてくれないか」


 なにが、じゃあ。なのかわからないが、パルスィは溜め息を吐いてから、今まで通せんぼのように立っていた真ん中から端に移動し「どうぞ、最強さん」興味が無くなったかのように俺から幻想風穴の方へと視線を向け。


 横を通りすぎ、振り向く。


「未知 神楽だ」

「じゃあ、神楽、気を付けなさい。地底の妖怪は少しばかり――」振り向き、怪しく光る緑の瞳で俺を見て「危険よ」忠告した。















 旧地獄街道。

 いつか見たような江戸風景が広がる。

 地底なのに雪が降っており。所々、雪に埋もれ、屋根は白に染まっている。寧ろ旧都が白に染まっていると言っても過言ではない。そんな街を歩く。

『ザクザク』そんな音が聞こえるように、雪をかき分け、進む。

 おでん、ラーメン。その他諸々。冬の寒さには沁みるだろう料理の数々がここに住む、来た者の鼻腔を通り抜け、誘惑する。


 俺はその誘惑に負けた。



「ふう、美味い。焼酎もう一杯。あとこんにゃくと牛スジ、たまごも」

「あいよ。しかし、あんた見ない顔だね。新しく住む妖怪か?」


 頭にねじり鉢巻をつけたおやっさん――見た目からして妖怪。はっきり言うと赤鬼――は訝しげに問い掛けてくる。

 差し出された焼酎を呑んでから「ん、古き友人に会いに来た」

 皿にこんにゃくを入れ「へぇ」次に牛スジ「遥々」お玉を持ち、たまごを掬う「地上からかい?」そして俺に手渡す。「ほい、お待ちどうさん」

 皿にあるこんにゃくにかぶり付き、咀嚼。その間に頷いた。

 程よい弾力、汁が染みたようで味がする。


「まあ、気を付けな。ここいらは物騒だから」何度も聞いた忠告を頷きながら牛スジを食べる。

「地上ではスペルカードなんてもんが流行ってるみたいたが、ここにはそんなもの無いに等しい。まあ、酒、美味いもんがあれば、俺はそれでいいがな!」そう言ってから、豪快に口を開けて笑う。


 美味い。酒もおでんも美味い。至福の一時だな。


 心なしかほっこりする。早く次に行きたいのだが、おでんと酒が俺を離さない。まるで心をがっしりと捕まれているかのように。

 次か。ラーメンにしようかな。


 いや、違う。覚りや勇儀に会いたいんだ。こんなゆっくりしている暇ではない。


 しかし、まだ時間はあるよな。……。少しくらい……。やっぱ駄目だ。霊夢が来てしまう。

 たまごを食べ、焼酎呑む。ちょうど無くなった。


 お代を聞いて払う。

 屋台を出る。

 まだ雪は降っていて、俺の体温を下げる。

 だが酒とおでんを食べた俺には効かない。今ならチルノの能力をもらっても平気……、だと思う。やっぱ無理だわ。うん。老体には堪える。


 アルコールを摂取した事で、体は暖かい。

 ……、勇儀は何処にいる? 聞くのを忘れていたな……。

 探知出来るか? やってみよう。


 道の端に行き、腕を組んで目を積むり集中する。

 まず半径一キロ。無数の妖力を感じる中、強大な力を探知した。

 それはすぐ前の酒場らしき場所。

 名前は『妖伝来』

 暖簾を潜り、引き戸を開ける。『ガラララ』

 視線が俺に集まる。鬼達だ。赤い鬼。青い鬼。服はちゃんと着ている。しかし、一人、畳みのテーブルに座り、大きい盃を片手に、一升瓶の酒を傾けて淹れている女性がいた。

 真っ先にその女性に近付いて、話し掛ける。


「やあ、久し振りだな、勇儀」


「ん?」振り向き、俺を見る。「……、アンタ!」一瞬後、目を見開いて叫ぶようにして「神楽じゃないかい!」


 ざわざわと騒がしくなる。


 勇儀は立ち上がり、俺の肩を叩く「あっはっは! 久し振りだねぇ! 何年振りだい!?」



――痛いです勇儀さん。叩かないで下さい。


 流石の俺でも勇儀の力で叩かれると痛みを感じる。


 しかめそうになるが、平静を装う。


『あの勇儀姐さんに叩かれても顔をしかめてない!』

『おい! 今神楽って言わなかったか!?』

『まさか、あの四天王三人を連続で負かした!?』


 説明ありがとう。そしてお疲れ様。



「お前に会いたくてここまで来たんだよ。どうだ、元気にやってるか?」

「本当かい? 嬉しいこと言うねぇ神楽! 元気も元気さ! 毎日酒を呑んでさ! ただ、欲を言うなら刺激がほしいね」下を向いて少し陰をつくる。


 お前の刺激ってなんだよ。並大抵の事じゃないだろ。ん? 勇儀さんよ。


 心の中で少し煽りながらも「お前の刺激って並大抵の事じゃないだろ」しかし言ってしまった。

 それを聞いて怒るではなく、逆に笑う。豪快に笑い、また俺の肩を叩いてくる。


 本当にやめて。肩赤くなってないか? 妖力で硬化しようかな。いやいや、なんか負けた気分になる。やめよう。


 俺にも少なからず、まだプライドはあったようだ。


 勇儀は元居た場所に座り、隣に座るよう促す。

 大人しく横に、胡座をかいて座る。

 コップを店主が持ってきて、また一升瓶酒を取り出した。

 

 日本酒をコップに並々注ぎ、景気付けに一気呑みし「あー、美味い」一言。

 勇儀が自分の事のように喜び俺の肩に手を回した。胸に視線が行くが、止める。


「そーだろー? 所でアンタ、格好よくなったねぇ」酒のせいか、頬を赤くして言ってくる勇儀。



 最近そればっかり聞くな。変わったか? 鏡を見ても変わってないんだが……。


「そんな変わった?」

「いやいや、顔は元から良いんだけど、なんかこう、雰囲気? が変わった。垢が抜けたというか、大人になったというか」語る。



 おい、誰かこいつを止めろ。本格的に酔ってるんじゃないか?


 姉御肌な勇儀がここまで言うのはおかしい。そう考えるようになったとき。



「アンタ、今までどうしてたんだい? 萃香も探してたよ? お礼がしたい。ってさ」


 なにかしたっけか……。いやいや、結構一ヶ所に留まっていたぞ? 本当に探していたのか? 案外酒呑んで寝転んでたりしてそうだな。


 そんな光景がありありと想像出来る。瓢箪片手に胡座をかいて呑んだり、景色を見ながら酒呑んだり。

 どれも呑んでばっかじゃないか!


 一人つっこみ。虚しい、寂しい、悲しいの三点。



 勇儀が回していた肩を解く。


 酒を淹れてまた、一口。

「ふぅ。女の子を拾って娘にしたり、当主になったり、嫁が十人を越えたり、本当の娘をもったり、かな」


 思えば色々あった。本当に。色々。転生させてくれた神には感謝をしてもしきれない。

 神様、ありがとう。


 適当に聞こえるかも知れないが、お礼を言っておく。


「へぇ……! アンタお父さんになったのかい! そりゃすごい!」店主! もう一本酒! 注文して祝い酒と言わんばかりに無理矢理乾杯させてくる。


「ほら、乾杯だ。早く!」コップを持たし、俺の腕を掴んで上にあげ「へい、かんぱーい!」自分のコップと当てた。まあ、当然――





『パリン』割れた。コップが。かかる。俺と勇儀に。



――うわぁ、酒臭……。最悪だよちくしょう……。


 心の中で悪態をつく。


 勇儀が謝ってくるが「いいよ、大丈夫」片手を挙げて静するように。立ち上がり、勇儀を手招きして、トイレに向かう。



 そして俺と勇儀の服を創造した。服といっても、俺のはジーンズに白いシャツ。勇儀はジャージだ。下着は……、まあ、黒で。


 それを渡して男女別のトイレにお互い入った。


 着替えて出る。少しして、ジャージ姿の勇儀が出てきた。

 まだアルコールの抜けきってない赤い顔で「アンタ、黒が好きなんだね……」耳元で静かに言った。



         

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