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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
39/67

神楽の旧都探検、前編






 守矢神社が妖怪の山に引っ越してきた。

 その際、一悶着あったのだ。しかし、俺と神奈子、諏訪子で、天魔と話し合い、住居を移した。

 一難去ってまた一難。早苗が霊夢に喧嘩を売る。

 霊夢と魔理沙にこてんぱんにされたみたいだが。

 後で聞いた話では、神奈子が唆したのだと。


 まあ、なにはともあれ――











 博麗神社に守矢神社の分社なるものが建ちました。はい。



 なんで建てなきゃいけないのよ。と嘆いていた。全くその通りだと思う。すまん、霊夢。


 それから一年後、博麗神社は倒壊したが、概ね平和。

 今は二千八年、十二月二十七日。そんなこんなで、俺は今、天魔の部屋に、遊びに来ている。



 フカフカのソファーに寝転び「てんまー、なんか面白いもんないかー?」

「知らんのー、それに――




妾、今は仕事しとるんじゃが」


 そうだ、仕事してるんだ。机に書類、社長椅子に腰掛けて。

 でもそんなのお構い無しと俺は遊びに来ている。嫌がらせ、冷やかしも甚だしい。


 足を跳ねさせて、体を飛ばし、ソファーから飛び降りるようにして立ち「真面目だなぁ、天ちゃん」

「天ちゃんと呼ぶでない」キリッとした顔に凛とした声で俺に注意した。

 最近は大体こんな感じだ。天魔の部屋に来ては冷やかしたり弄ったり。天魔も満更ではない感じで返してくれる。


――まあ、天魔の仕事は大事な事なんだけどな。


 考えながら、天魔を見る。

 ペンを恐ろしい速度で紙に走らせたり、判子を押し付けたり。残像が見えなくもない。いや、やっぱ見えない。

 忙しそうだ。が、天魔からしたら、全然楽勝。とのこと。

 俺が話し掛けてもちゃんと顔を俺に向けてくれる。

 手は全くもって止まらないが。

 少しは休憩してほしい。朝からこればっかりだ。

 それも毎日。少しは替わったりもしてあげたいが、これは天魔だけにしか出来ない事だ。

『天魔』にだけ与えられる仕事。俺が出る幕ではない。


 溜め息一つ、大理石の床を歩く。

『かつかつ』と、音が鳴る。尤も、喧しい紙の捲る音が邪魔してあまり聞こえないんだが。

 俺は天魔の側にある、窓に向かった。

 窓を覗くと天狗が飛び回っている。それに雪が見事な化粧を施している。


――冬か。寒いな……。ん?


 冬景色を堪能していると、博麗神社の方で、水が湧き出るというのが伺えた。


 そうか、もう地霊殿の季節か。

 地底に行くかな。勇儀にも会いたいしな。


「天魔、地底に行ってくる。面白そうな事が起きるからな」

 顔を向けながら、しかし手は動かしたままで「ほう、地底とな? 気を付けての」


 背中越しに片手を挙げ、振る。

 扉を開けて、家を出てから飛んでいく。


 妖怪の山、博麗神社の反対の場所に深い縦穴がある。そこは地底。または地底世界と言われている。



 幻想風穴と呼ばれる穴を降りて少し進むと一軒の家がある。

 そこから出てきたのは――


「誰だい? こんな所に来るなんて何年振りだろうねぇ。まあ、楽しんでおいき」


 欠伸をした。

 金髪を茶色のリボンでポニーテールにしている。瞳は茶色。

 服は黒のだぼっとした服の上に焦げ茶色のジャンパースカートを着ている。スカート辺りに黄色のベルトのようなものでクロスさせ、何重にも巻いて裾を絞っている。胸辺りに六個のボタンがついている。


 蜘蛛だ。蜘蛛に見えるような見えないような妖怪だ。


 その妖怪は少々――失礼極まりないが――おばさんみたいな口調で話し掛けてきた。


「俺は未知 神楽と言う。よろしくな」

「へぇ、あんたが最強の半人半妖? わたしゃ黒谷 ヤマメだよ」よろしくね。片手を挙げて、眠そうな表情で自己紹介してくれた。


 そう言えば前世の名前と同じなんだよな。

 黒谷 聡。黒谷 ヤマメ。

 昔は喜んだもんだ。今はどうでもいい。


「旧都に向かいたいんだが、ここから真っ直ぐでいいのか?」俺は来た道とは反対の道を指で示す。

 その示す道を見ながら「そうさねー、一本道だから迷わないはずさね。ただ」俺の方に向き直り、右手の人差し指を立てて「地底の妖怪には気を付けな。可愛い顔してるけど怖いんだよ? 食べられちゃうよ」ぺろり。と、舌舐めずりした。


 頭を下げて「気を付けるよ。ありがとう」礼を言って道を進む。

「じゃあねー、気を付けるんだよー!」


 片手を振って、もう片手でメガホンのようにして叫んだ。



――そんなことしなくても洞窟だから響くんだけどな。

 そう思いながら、此方も振り返した。



 幻想風穴を越えそうな頃、歩いている俺の頭上から殺気を感じた。

 咄嗟に後ろに下がる。

『ガコン』重く、木のなにかが石の上に落ちる音がした。


「うー……、駄目だったよぉ……」

 人が入れる位の桶にその体を入れて、頭を抱えている女の子がいた。しかし、片手には鎌があった。

 危なっかしい事この上ない。



 女の子の容姿は、緑髪のツインテールで水色の二個、玉がついたゴム留め。

 桶の取っ手にはロープが垂れており、白装束を着ている。


 薄暗い中、目を細めてその子に「おい、いきなり襲ってくるとはどういう事だ」


――我ながら可笑しな事を聞くもんだ。実際、これが妖怪の正しい姿なのに。


 少しの自虐をする。


 女の子は、ビクッ。と小さな体を大きく震わした後、鎌を桶に入れて「な、なんでもないですぅ! ごめんなさい!」頭を勢いよく下げた。


 下げた事で桶に頭をぶつけ「あう!」悲鳴をあげた。


 俺は更に目を細めた。


――なんだこの子。俺の頭を刈ろうとした割には弱々しいな。確かに結構強い殺気を感じたんだが……、気のせいだったのか? まぁいいか。


 未だ涙目で額を押さえている女の子を見ながら考える。


 細めた事で少しぼやけるが「本当に何もしようとしてなかったのか?」

 両手をぶんぶんと勢いよく振りながらも「何もないです! 素敵な頭があったから欲しいなぁと思って刈り取ろうとしたなんて思ってないです!」


 言っちゃった。白状しちゃった。色んな意味で怖い。この子怖い。


 桶を掴み、身を乗り出して「そもそも素敵な頭をしてるから悪いんですよ! 刈り取られても文句言えません!」無理矢理正当化した。


 そうなのか、俺が悪かったのか……。いやいや、明らかに刈り取る方が悪いだろ。おかしい。


 あまりの堂々とした正当化についつい揺らいでしまうが、そこまで常識を捨てていない俺はなんとか持ち直す。


「お前――いや、何も言うまい。俺は未知 神楽だ。お前は?」棒立ちで名前を聞いた。

 俺の名前を聞くや否や「えぇ!? あの、最強の半人半妖ですか!? ひぃぃ!!」顔を真っ青にして、素早く桶に体を引っ込ませた。


 しかし、話が進まない。名前すら聞けていないぞ。なんか怖いが、仕方ない。


 泣く泣く――泣いてはいない――落ち着かせる為に頭を撫でた。触れられてまた大きく体を震わせたが、徐々に落ち着きを取り戻す。













「えーへへー」


 だらしなく顔を緩めて頬を紅潮させている女の子。


 今ではこんな感じである。


 落ち着いたところで、再度「名前は?」聞いた。

 女の子は尚も緩やかに「キスメですぅー」


 まあ、知ったところであまり意味をなさないんだが……。早く旧都に行きたい。結構足止めさせられてるぞ。霊夢達はまだ来ないから良いが。


「さて」撫でた事で、乱れた髪を手櫛で整え「そろそろ行かなきゃな……」伝えた。

 キスメは寂しそうにして「もうお別れですか……? まだ一緒に居たいですぅ……」甘ったるく言う。

「駄目だ。俺にはやることがあるんだ」



――そう、勇儀や覚り妖怪に会うという事をな。


 するといきなり悲しそうにし、ついには涙目になる「すいません、迷惑ですよね……」       


 なかなかに強かだ。

 これは嘘泣きだろう。嘘泣きを見てきた俺が言うんだ。間違いない。


 幾度も嫁に嘘泣きされ、騙され続けた俺に死角はない。

 そんな自慢するものではないが、今、この場においては、嫁達よ、ありがとう。そう口に出したかった。


「やはり駄目だ。だいじな事なんだ」無表情で、キスメの目を見る。

 嘘泣きを止めて「ごめんなさい、本当に迷惑でしたね」頭を下げる。続けて「でも、また会えるなら会いたいです……」頬を赤く染めて俺を真っ直ぐ、上目使い。

「そうだな、また会おう。帰るとき、また寄るよ、じゃあな」そう言って手を振る。

「待ってますから! また会いましょう!」座っていた桶から立ち上がる。緑のツインテールが揺れ、白装束が桶から姿を表した。そのまま手を大きく振り、また会うことを約束して、俺は旧都に向かった。

      







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