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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
37/67

神楽の妖怪の山探検、雛、大蝦蟇の池、文編



 あれから少しして、今は妖怪の山中腹にいる。

 俺が飛んでいると、一人の踊り回っている女の子がいた。その女の子の少し離れた所で降りる。


 向かって、女の子が見えてきた。周りに黒い物を携えて、くるくると優雅に回っていた。


 目押しするように見て、髪は緑。髪を全て胸元でまとめていて、頭にはフリルのついている暗い赤? のリボンを結んだヘッドドレス? そしてリボンに何か書いている。

 服はワンピースのようなもので、半袖で襟は三角形で腹に垂れている。スカートの所で色が変わっていて、上は黒に近い赤。下は赤だ。裾は白のフリルがついている。スカートの左側に『厄』を崩したような字が見えた。左右に伸ばしている両腕の内、左腕にフリルの赤いリボンを巻いてある。

 なんか、ひし餅みたいだな。色的に。



 近づきすぎないよう、少しだけ離れて話し掛けた。


「今日は良い天気だ。そう思わないか? 回る少女」

 踊るように回転していた体を止めて「そうね、見知らぬ見学者さん!」歯を剥き出した笑顔で言った。


 所で、今は十メートル位離れている。少し近づいても、相手はそれと同じくらい後退りする。

 だがこれは嫌われてる訳ではない。厄が移らないように。なのだ。

 このままの距離で話さなくてはいけない。俺は厄を祓う事も、自分自身に厄が憑かないようにするのも無理なのだから。


「君はなんで回っているんだ?」

「私は厄神様なのよ、だから回って厄を集めているの」


 曰く、厄を集めれば、それだけ力になるらしい。

 それに、人間を厄から守るのだと。


「えんがちょの向こう側に私がいるから人間は平和に暮らせるのよ」

 等と言っている。

 えんがちょの説明はいらないだろう。長くなる。


「妖怪の山で回っているのは、ここの厄を集めているからか?」


 そうだ、これが聞きたかったのだ。彼女の主な活動場所は『玄武の沢』『無縁塚』『中有の道』な筈だ。


 それがここにいるということは、家がここにあるのか、もしくは――


「出張のようなもんよ。貴方の言った通り、ここの厄を集めているの」


 だよな。


 それしかないだろう。


 そういえば、まだ自己紹介をしてなかったな。俺としたことが。


 頭を下げ、一つ謝って「すまない。俺は未知 神楽だ。よろしく頼む」

 それを聞いた少女は、同様に「良いわよ。私は鍵山 雛って言うの。よろしくね!」名乗り、人懐っこい笑みを浮かべた。


 しかし、その笑みを崩して、少し寂しそうに「でも、私の近くに居たり、同じ道を歩いたり、果ては私の話題をしただけで不幸になるのよ……」そのまま俺を遠くから見て「貴方も不幸が訪れるわ……。これ以上居たら大切な人に何かあるかも知れないわよ?」


――なに? それは不味い。非常に。俺でも不幸からは守れない。絶対に。だが、それを聞いてさっさと逃げるのはあまりにも失礼だ……。

 どうしようか……。俺の嫁達は強いから大丈夫なんだが、不幸なら別だと思う。だが、あるかも知れない、だろ? なら大丈夫か。


 気楽に考え、雛に「俺の嫁達は強い。不幸には負けないだろう」


 俺も強くならないと駄目だからな。守るばかりじゃない。信頼しないと駄目だ。嫁達なら大丈夫。


 そう言い聞かせるようして、無理矢理にでも納得させる。


 嬉しいのか、笑顔を浮かべて「あっ、そう! なら少しお話しましょう!」両手を叩いた。

 そんな雛に感化され、俺も自然と笑顔を出した。




 気が付けばもう辺りは薄暗くなっていた。金の懐中時計で時間を確認すると、午後五時半。

 通りで暗い訳だ。

 結構長く居たな……。後が怖いが……、楽しめたのでよしとするか。

 俺は雛に断りを入れ、また会うことを約束して飛んだ。



 次で今日最後の場所だ。

『大蝦蟇の池』

 そこは妖怪の山中腹にある小さな池。池の水は神水で、神事には欠かせないと言われている。水面に蓮があり、俺の心を癒してくれるように、プカプカと浮いている。

 ここには子供を丸飲みするほどの大蝦蟇が棲んでいて、池を冒涜すると襲ってくるのだ。


 しかし、綺麗だ。暗さと相まって。妖しくも神秘的な雰囲気を醸し出している。

 残念ながら、ここには誰もいなかったが、大人しく見ているだけでも心が洗われるようだ。


 三十分座って景色を堪能した所で、帰ろうと立ち上がる。

 他の場所も見てみようと、畔に行ってみる。すると、そこには一つの祠があった。

 これはかの天人。比那名居天子の親の、上司。名居守の祠とも言われている。真実は定かではないが。


 俺はその祠にお供え物を差し出して、立ち上がり、歩きだした。

 すると、後ろから『ゲコッ』という、蛙の声が聞こえる。これは帰り道を安全に渡れるよう、蝦蟇を使わし、加護を与えてくれる。これで山の妖怪達から守ってくれるのだ。


 これで不幸からも安心?


 後ろを振り向かないようにして、早歩きで帰る。

 その間もピョコピョコと着いてきている。


 更に三十分経ち、城に着いた。

 俺は居るであろう、蝦蟇に「加護を感謝する」両手を合わせて問い掛けた。

 それを聞いたのかは俺が知り得ることではないが『ゲコッ』と、返事にも似た鳴き声を発し、消えた。



 扉を開けて「ただいまー」片手を挙げながらルーミアと三月精に挨拶をする。

 四人は頭を下げて「おかえりなさい」ルーミアは俺の腕に絡み付き、サニーは俺の背中に飛び乗るようにして抱き付き、ルナは俺に水をくれる。


 水を飲んでルナに渡したあと、頭を撫でて礼を言う。その後にスターが空いている手を握ってきた。



 俺達が食堂に行こうとしたとき、玄関――玄関はないのだが、形式上玄関にしておく――の扉を叩く音が俺達の耳に届いた。


「夜分遅くすいませーん! 帰ってきたと聞いたのでうかがいましたー!」


――いま帰ってきたのに……、なんだ? 早すぎないか? えっ、俺ひょっとしたら見張られてる?


 不安を押し退け、扉を開けてやった。


 そこに居たのは一人の女の子。黒髪のショート、幻想郷でお馴染みと化している紅い目。赤の山伏風の帽子。赤い、一本下駄。フリルのついた黒いミニスカート。白の半袖シャツ。

 左手にインスタントカメラのような物を持っていて、右手には葉団扇。

 背中には羽根がないが、仕舞っているのだろう。


 その女の子は姿勢を正し「初めまして! 私は清く正しい、射命丸 文と申します!」自己紹介した。

 俺も姿勢を正して「俺は未知 神楽だ。よろしくな、文」

「あやや、いきなり下の名前呼びですか……、大胆ですね」顎に手をやり、目線を俺から外して言った。


 あ、そうか。普通はいきなり会った人に馴れ馴れしく呼ばないよな。

 久し振りにそんなことを言われて思い出した俺。


 手を頭に置いて気まずそうに「あー、すまないな。癖が出てしまった」そのまま無表情で文を見ながら「嫌だったなら射命丸に変えるよ。ごめんな、射命丸」


 その言葉を聞いた瞬間、文の顔が青くなり、汗を垂らす。

 ややぎこちなく、俺の近くに来て「い、嫌ですねー、そんな嫌だなんて言ってませんよアハハハ。私と貴方の仲です。どうぞ文とでも呼んでください!」


――この一瞬でなにがあったんだ?


 考えながらも無表情で文を見る。


 ついには手を握って「お願いします、機嫌を損ねたなら謝りますから天魔様に言わないでくださいお願いします!」



――……ああ! そういえば天魔が『妾の友人だ。厳重に処罰する』と言っていたな。あれを危惧しているのか。なんだ、可愛いじゃないか。


 そう思い至ると、急に文が可愛く思えてくる。いや、容姿も凄く可愛いのだが。


 無表情を崩し、出来るだけ優しく「大丈夫だ、怒ってない。この顔は素なんだよ。ごめんな、怖がらせて」


 文は紅潮して「あ、あやややや! 優しいんですね……。ドキドキしてしまいます……」握っている手をボーッと見ていた。


 それ、ただの吊り橋効果じゃないかな。多分。いや、絶対に。でも面白いし、吊り橋でも好かれるのは嬉しいから放っておこう。


 悪魔が囁く『今すぐ嫁にしようぜ!』

 天使が囁く『駄目だ! 今すぐなら断られる可能性がある。ここは安全にアピールして、虜にするんだ!』

『流石天使だぜ!』『ふふ、当たり前だ』



 …………。なにこれ。

 嫁にするのは確実なのか?

 なら食事だな。

 毒されて、何故か嫁にする方向に持っていく。



「文、食事にするか?」

 まだ冷め止まぬ顔で「あ、ありがとうございます……。お供させて下さい……」視線を合わせた。


 そうと決まれば食事だ! 食堂に行く、料理は既にテーブルの上へと並べられていた。

 ルーミアと三月精が端に立っており、料理が湯気を出している。

 ルーミア達に「食べよう。座って」言ってから俺が座る。いち早く文が俺の隣りに座り、ルーミアは隣の空いている席に座った。


 それを見てサニーが頬を膨らませていた。


 嫉妬か。嫉妬なのか。可愛い奴め。後で存分に可愛がってやらねば。うんそうしよう。


 使命感にも似た何かが頭をよぎる。

 文がちらちらと俺を見る中、食事を終える。片付けをルーミアと三月精が終わらし、居間に入って文と向き合うように座る。



 文の目を真っ直ぐ見て「さて、何か言いたい事があったんだろ? 言ってみなさい」

「えっ! た、確かにありますが……」何故か言い渋る文。顔を伏せて、黙っている。



 何かあるのか? 俺、新聞のインタビューみたいなものかと思ったんだけど……。


 何を決心したのか、いきなり顔をあげる。その顔は赤く染まっていた。


「貴方の事が好きなのかもしれません!!」


 あやや、言っちゃったわ……。という声が聞こえる。



 …………。思ったのと違うなぁ。なんでだろうなぁ。おかしいなぁ。あ、記者として、もしくは私の上司としてかな?


 すっとぼけ、現実逃避をして、無表情で文を見る。

 両手を頬に当てて、顔を左右に振っていた。


 もういいや。


 考えることをやめた。



「なら嫁に来い」恐らく、光の無い目で言っているだろう俺。

「良いんですか!?」対称的に目を輝かせ、身を乗り出して俺に言う文。

「アハハ、うんいいよ。寧ろ大歓迎? みたいな?」両手を広げて、もう良いだろう。と本当の事を言う。これを俗に開き直りと言うのだ。


 良いじゃん、可愛いし? まだあまり知らないけどこれから知っていけば良いだろ? な? うん。


 誰に言うでもなく、正当化した。


 両手を広げている俺を見て、文は正面から俺へと飛び込んできた。恐らく、両手を広げる行為を『俺の胸に飛び込んでおいで』と、美化されたのだろう。今の文からはありありと聞こえるようだ。


 恒例の指輪をはめた。

 その後、文が嫁全員に挨拶した。





 挨拶終わった午後十時、居間にて。


「結局何しに来たんだ?」

「あ! そうだ! 忘れてたわ……。記事のネタにしにきたのよ!」



 だろうね。知ってた。


「うむ。で――」いつのまにか鉛筆とノートを持っている文を見て「今から記事にしたいから質問に答えてくれ。と?」

「はい! お願いします! 旦那!」


 あれから俺の事を旦那と呼ぶようになった。

 天狗らしいと言えばらしい。



 いくつもの質問を答え、満足したのか「新聞作ってきます! 作ったら毎回持ってくるので見てくださいね! 旦那!」

 出ていってしまった。


 ゆっくりしていけば良いのに……。

 そう思いながらも、ルーミアと一緒に寝た。

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