神楽、ルーミア、三月精の魔法の森探検
まず、行くところは紅魔館だ。
俺は飛んで向かった。
探知をして、食堂に行き、片手を上げて「早苗が落ち着いたから幻想郷に戻ってきたよ」
「お兄様! おかえりな――」上げていた片手でレミィを静止して、「当主はレミィに任せる。俺は館を建てるよ」言う。
いきなりの事に、紅魔館、全員が顔をひきつらせて、俺を見る。
「レミィももう五百は生きてるんだ。」俺がレミィを諭すように「当主位簡単だろ? なに、やることは今までとあまり変わらないよ」続けて「お前を信じてる。だから止めないでくれ」
レミィは熱っぽい視線を向けて「お兄様……! わかったわ。このレミリア、夫であるお兄様を何時までも待っているわ……!!」
他の皆は唖然として俺とレミィのやり取りを見ている。
あ、ルーミアと三月精は連れていこう。
ルーミアを見て「ルーミア、お前と三月精をつれていく。用意してきてくれ。俺は人里で待っている」返事を聞いてから、食堂の皆に「館が出来たら招待するよ。また会おう」そう言って、出ていった。
この間、僅か五分足らず。我ながら見事だ。
人里に行く途中、妖精が二人いた。
一人は青く、一人は緑。
身長が十歳にも満たない子供位で、頭に緑の大きいリボン。髪は薄めの水色。ふわふわのウェーブがかかっているセミショートヘアー。目の色は青い。背中に氷のように透明で、結晶のように綺麗な羽が三対ある。服は白いシャツの上に青いワンピースを着ている。さらに首もとには赤いリボン。
チルノだ。
もう一人は、髪が緑。黄色の布でサイドテールにして、服はチルノの緑版。しかし、胸元のリボンは黄色だ。背中になんと言ったらいいか、虫? 鳥? よくわからないような一対の羽がある。
大妖精。
チルノは俺を指差し、「おい! そこのお前! 最強のあたいと勝負しろ!」
大妖精はチルノの服の、裾を持って「だ、駄目だよ……。失礼だから……」
俺は大妖精に笑顔で「大丈夫だよ」安心するように。
そのままの顔で「君、名前は?」と聞くと、手を挙げて、「チルノ!」大妖精は恥ずかしそうに「だ、大妖精です……」と、自己紹介してくれた。
「そうか、じゃあ、最強のチルノ。俺は弱くて戦えない。だから見逃してくれないか?」俺がしたでにでて、言うと、チルノは嬉しそうにして、「ねえねえ! 大ちゃん! あたい最強だって!! やっぱりあたいって最強なんだね!!」言い、大妖精はそれを聞いて、微笑みながら「そうだね、チルノちゃんは最強だね!」喜んでいた。
そのあと、チルノは快く許してくれて、俺は人里へ向かった。
寺子屋に行って、慧音に挨拶する。
「や、慧音。早苗が世話になったな」
「いや、私も楽しかったよ。他の子と違って真面目だからちゃんと聞いてくれるし、理解してくれる」
俺は頬を上げて、からかうように「慧音の授業はつまらないと評判だからな」
早苗から聞いた話じゃ、なんでも、子供には難しく、堅苦しくて解りにくいのだとか。
真面目な性格ゆえに、そうなってしまうんだろう。難儀な事だ。
『外』なら大人気だろうに。
しかし、ルーミア遅いな……。何をしているんだろうか。
少し雑談して、寺子屋を出る。
すると、壁にルーミアと三月精が立っていた。
そこら中の目線を集めて。
そりゃあ、ルーミアは美人だし、スタイルも良い。三月精も可愛い。そんな子達がメイド服を着ていたら目線も集めるだろう。再確認させられた。
俺は「悪いな、待たせた」と、謝る。
少し妬みの視線を感じた。
ルーミアは優雅にお辞儀して、「ご主人を待つのも使用人の役目です」三月精も同様に、不相応な見た目で可憐にお辞儀する。
では、魔法の森に向かうとしますか。
俺は魔法の森まで飛んで向かう。その間、思考の海を泳ぐ。
さて、俺的には妖怪の山麓か、どこか普通じゃない場所に建てたいとは思っている。妖怪の山は許可がいるし、魔法の森はなんか嫌だし。霧の湖は紅魔館があるし、迷いの竹林は永遠亭、妹紅の家等、どうするか。
むしろ空でも良いような……。地底? 魔界? 虚をついて外? ……無しだな。
はぁ、迷うな……。
俺が考えていると魔法の森に着いたようだ。
魔法の森。
木々が忙しなく俺達を歓迎しているように、ざわめいている。
『森』というだけあって、木が所狭しと並んでおり、動物の鳴き声もする。木の生えている所や、地面には色んな茸があった。
俺にはどんな茸なのかさっぱりわからないが、見た目でわかる、毒々しさ。
俺達はそんな魔法の森に足を進めていく。
少し歩くと、一つの建物があった。それは、色んな『外』の物が置いてあり。
申し訳程度に『香霖堂』と書かれた看板が立て掛けられている。
迷いなく俺は入った。後ろで着いてきてるか確認しながらも。
カランカラン。心地いい、風情を感じるような音が鳴る。カウンターらしき所には一人の男性が座っていた。
白い髪。眼鏡を掛けて男性用の着物を着ている。
森近 霖之助だ。
霖之助は人当たりの良さそうな笑みを浮かべて。
「いらっしゃい。初めて来るお客さんだね」
腰を曲げる。同時に左腕を腰に当て、右腕を腹の辺りに置いて
「初めまして、俺は未知 神楽と言う。よろしく頼む」
霖之助は驚いた顔で
「……驚いた。随分礼儀正しい人が来たもんだよ」言って、「うちには『ツケだ』と言って持っていく人が二人もいるからね」と、続けた。
――その二人とは霊夢と魔理沙か?
むしろあの二人以外居ないと思う。
しかし、霖之助を見た感じ、悪意は持っていない。まあ、俺が気にする事じゃないから良いが。
自己完結して、店内を物色する。
扇風機、ストーブ、電池、工具類、コーラ。
色々ある。まあ、いらないんだが。創造出来るし。
少し経ち、霖之助に、また来る。とだけいって、香霖堂を出る。
――買う物が特に決まっていない買い物は嫌いなんだよな……。嫁は見てるだけで楽しかったりする。って言うけど、買わない、買おうと思っていない物を見ても楽しくない。
女の人特有なのだろうか? そんな事を考えながらも、再度魔法の森を歩く。
歩けど歩けどあまり景色は変わらない。木々と茸が。たまに人よりも大きい茸があるだけだ。
歩きながら話をしていると、香霖堂とは全く違う雰囲気を出す、洋風の家があった。
俺は取り付けられているベルを鳴らして、待つ。
扉が開かれて、出てきたのは、何時かの髪をハーフアップにしている人形だった。
その人形は着いてこい。と言わんばかりに扉を開けたまま家に入っていく。
俺と三月精、ルーミアはそれに従うように家に入った。
家に入ると玄関のような所が一応ある。
端にはスリッパが立て掛けられていた。俺達は靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。
玄関から真っ直ぐに扉があって、そこを開ける。内開きだった。
見えたのは広い部屋。入って右を見ると、棚に沢山の本と、読書スペース。前を見ると扉。左を見るとキッチン。その手前にテーブルがある。六人分の紅茶とクッキーをテーブルに置いて、アリスが人形を周りに浮かせて、座っていた。そしてこちらに向かって、笑顔で手を振っている。周りとも合わさって、凄く絵になる。
俺も手を振り返し、アリスの所に向かった。
向かい側に椅子が三つ、アリス側にアリスが座っている一つの椅子がある。
アリスは笑顔で。
「こんにちは、よく来てくれたわね。歓迎するわ」
次に、申し訳なさそうに。
「でもごめんなさいね、こんなに来るとは思わなくて、椅子が足らなかったの……」
うん、仕方ない。寧ろこんな人数で来て申し訳なく思っているよ。俺は。
俺もアリスに謝る。しかし、ルーミアは。
「私は使用人ですので、お構い無く」
流石ルーミアだ。その姿勢、素直に感心する。しかし、ここは使用人だから立っているんじゃなく、一緒に座って楽しんでほしい。
そう思い、アリスに椅子を出しても良いか、問う。
「アリス? 椅子を出してもいいかい?」
俺がそう聞くと、アリスは、「寧ろそうしてくれた方が助かるのだけど」と言い、でもそんな事出来るのか? と聞いてきた。
その言葉を聞いて、俺は椅子を出す。
想像したのは、足が四本、もたれる事が出来るような木の椅子。
それをテーブルの所に置いてアリスを見た。
目を細めて椅子を見ている。
驚いたというわけではなさそうだ。
「……すごいわね。驚いたわ……」
驚いていたみたいだ。少し優越感。
そのまま、「どうやって出したの?」と聞いてきた。
俺は能力を説明する。それを聞くと、目を少し開いた。
「規格外ね……」
全員からそう言われる。しかし、俺はなんでここまでの能力が使えるんだろうか? 殺した妖怪の中にこの能力を持った奴がいたのか? 今だから考えて言えるが、大量の妖怪の血が混ざったから。とか……?
今更……、どうでもいいか。
結局はいつもの通り、放棄。考えることを止めた。状態になる俺。
全員座って、談笑をする。
気付いたら外は真っ暗だ。
そこで、アリスが「今日はもう遅いし、泊まっていきなさい」ありがたい申し出をしてくれたので、全員で泊まらしてもらうことにした。
翌日、俺は泊めてくれたお礼に、長時間座っていても疲れないふかふかのソファー、人形を作る用具を創造したら。使いやすいわ!! 神楽ありがとう! と、凄く喜んでいた。
そして、現在、また歩いて探索していた。
やはり奥に来たからだろうか。最初と違ってじめじめしている。茸も危なっかしそうなものばかりで、後ろの四人が心配だったが、平然と着いてきている。杞憂。
ぬかるみもたまにあり、足が汚れるから。と俺達は低空飛行中だ。
そのまま進んでいくと、また、一つの家があった。外に本、その他諸々置いてあって、その家の扉の上に『霧雨魔法店』と書いてある看板があった。
十中八九ここが魔理沙の家で、店だろう。
ベルを鳴らし、家主を待つ。
中から、『ばたばた、がたん!「痛ってー!!」』という音と声が聞こえる。
扉が開いて、涙目の魔理沙が出てきた。
「お! 神楽じゃないか! どうしたんだ?」
はつらつとして、聞いてきた。
俺は片手を挙げて、魔理沙に合わせるよう、フランクに。
「やぁ。魔法の森探検してるとき、家を見つけたから来たんだ」
魔理沙も片手を挙げて、軽く挨拶を返してくれた。
招くようにして、まあ入ってくれ。そう言って中に入る。
俺達も続き、入った。
中は散らかっている。というより、物が多すぎて収納する場所が無く、仕方なくそこら辺に置いてある。とでも言うように、本、鉱石、色んな物が積み上げられたりしていた。
居間――やはり物が積み上げられている――に入り、辛うじて五人座れるスペースを確保して、魔理沙に促されるまま、座った。
「ここは霧雨魔法店だぜ、なにか用はあるか?」
「いや、何もない。いった通り、探検していたらここを見つけたんだ」
魔理沙は口を尖らして。
「なんだつまんねーの……。でもまあ、ゆっくりしていけよ!」
そう言って、「飲み物を持ってくるよ」と、キッチンに行ってしまった。
待ってる間、三月精のサニーを愛でる。愛でると言っても、ただ頭を撫でているだけだ。
サニーとのスキンシップでもある。因みにルナとは夜、読書したり、落ち着いた事をしている。
ルナは妖精とかけ離れている。妖精というより、どっちかというと妖怪に近いような気がする。
スターとは一緒にだらだらしていたりだな。スターはたまに仕事をさぼる。それを見つけて一緒にだらだらしていると、ルーミアや咲夜に見つかり、連れていかれるのだ。そこで、俺が「まあ、いつも頑張ってるしちょっとくらい良いじゃないか」そう言って抑える。の繰り返しで、結構懐かれた。
そこまで考えていると、魔理沙がお盆で飲み物を持ってきて、テーブルに置いた。
魔理沙以外、全員コップに入った飲み物を見る。
『お茶』とは普段どんな色をしているだろうか? 茶色? 緑色? 黒? これは違う。見た目、お茶とは思わない。
似ている飲み物の色としては……、ミルクティー? そんな色をしている。クリーム色?
そんな俺達を見て、魔理沙は笑顔でこう言った。
「それは茸茶なんだぜ!! 私の自作だ!」
美味しいぞー! そう言って、すすめてくる。
恐る恐る、口に含んだ。
お茶の味の中に、仄かに茸の香りが鼻腔を通る。
――なんだろう。ほっとする……。落ち着く味だ。
感想が少し子供っぽいが、概ねこんな感じなのだ。
ベースとしては烏龍茶のような味だが、そこに茸の独特な風味がある。これは美味い。
ただ、好みがわかれそうだな。
サニー、ルナ、スターがほっこりしてる。可愛い。
あ、ルーミアが微妙な顔してる。ちょっと苦手みたいだ。
そんな中、俺は魔理沙に尋ねた。
「家を建てるならどこが良い。とかはあるか?」
「家……か。そうだな。ここは胞子とかじめじめが妖怪や人間には嫌われているから居を構えるなら安全だな。妖怪の山は……、天狗と河童がいる。色んな意味でうるさい。でも景色はきれいだ」
人里は安全だし、店があったりするから便利で住みやすい。霧の湖は、文字通り霧があって見にくいし、妖精達。それに紅魔館もある。今はそれくらいかな。
そう言って、休まずに喋っていた喉を潤すように茸茶を飲み、一息ついた。
「そうか、ありがとう。魔理沙」
俺が軽く頭を下げ、お礼を言うと、魔理沙は、にかっ。とした笑みで。
「なに、友達だからな!」
友達……。宴会で会ったきりずっと会ってなかったんだけど、それでも友達かぁ。うむ、男らしい。いや、女の子だけど。
寧ろこの可愛さで男だったら生命の神秘だ。
なにも信じられなくなる。
多分。
さて、聞きたいことも聞いたし、お暇するかな。
決めて、そこから少しだけ駄弁り、家を出た。