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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
32/67

異変、解決。

「異変は解決! 乾杯!!」


 乾杯!! グラス、コップ、盃をそれぞれ傾ける。

 ここは博麗神社。俺は紅魔館の嫁、永遠亭の輝夜と永琳で乾杯して、一気飲みをする。心地よく、温かく感じる。

 異変を起こす。解決。宴会。それがここ、幻想郷のルールでもある。尚、異変を起こした者が、酒なんかを用意したりもするようだ。

 俺が当主だ。よって、俺が異変を起こしたも道義だろう。なにが言いたいかと言うと。



 ワインや日本酒をボックスに入れて持ってきた。

 紅魔館でゆっくり呑めないのは残念だったが、妹がやったことだ。仕方ないと言えるだろう。むしろ、レミィが無事なら喜んで差し出す。献上する。泣いて喜ぶ。

 俺は嫁達に断りを入れ、巫女の所に行く。


「やぁ、初めまして」

「ん? 誰?」


 俺が挨拶すると、少し不機嫌そうに返してきた。


「俺は紅魔館の当主。未知 神楽だ。よろしく」

「あ、そう。私は霊夢よ。博麗 霊夢」


 博麗霊夢。

 黒髪に大きい、赤のリボン。横の髪はまとめて、赤い髪飾りをつけている。赤と白の巫女装束。胸元のリボンも赤になっている。そして、腋が出て、そこから見える、白い布――サラシだろう――を巻いている。

 霊夢は頬杖をして、左手に酒の入ったグラスを持ち、傾けて、こくこくと喉をならしている。 


「妹が迷惑を掛けたな。悪い」

「良いわよ。謝ってくれたから」


 

 呑んだ事で、少し顔を赤くしながらも、俺を見る。

 無表情に近い。しかし、優しさを感じさせる顔で、俺を許してくれた。結構優しい。もっと傍若無人な子なのかと思った。ごめん。


 心の中で謝って、少し雑談をする。

 その時、少し低い、ボーイッシュな声が聞こえた。


「おーい! 霊夢ー! 一仕事終えた後の酒はうま――誰だ?」


 声の方向を見る。

 すると爽やかに、快活な笑みを浮かべている女の子がいた。

 黒い帽子、金髪の長く、ウェーブがある。左の横髪には、密編みで括っていた。服は白と黒だけの、モノクロな服。言ってしまえば、典型的な、魔法使いないしは、魔女のような服。


 これを見て、『練れば練るほど色が変わって……美味い! テーレッテレー』を思い出した俺は悪くない筈。


 霧雨 魔理沙だ。


 魔理沙は俺と霊夢を交互に見て、疑問気に問い掛けた。


「俺は紅魔館の当主、未知 神楽だ。妹が迷惑掛けたな」


 優雅にお辞儀をして、自己紹介する。それを見て、聞くと握った右手を、開いた左手に『ぽん』と叩いて、合点がいったように言った。


「あー! お前があのちび吸血鬼の言っていた『お兄様』とやらか!」


――あはは、お前って……。随分と元気な女の子だな。


 まあ、絶対に俺のことだろう。だがレミィの事をちび吸血鬼って。この子は……なんだろうか……。しかし、『ここ』だから許される事なんだろうな。外だったらもう殺されている。


「まあ、十中八九そうだろうな」

「神楽さんはなんであそこに居なかったの?」


 神楽さん。この子は常識がわかるようだ。いい子なんだな。うむ。

 あそことは、紅魔館の事を言っているんだろう。何故……か。どう言い訳しようかな……。


「ああ、スペルカードルールにまだ慣れていないし、まともなのを作っていないからね。だから外にいたんだ」

「ふーん。貴方には勝てそうに無いわ。私の勘がそう言ってる」

「はははっ! そうかい? 伊達に長生きしてはいないからね。でも、俺も君には勝てそうに無い」

「お! お前強いのか? ならわた――」

「君、名前は?」


 まだ俺は名前を聞いていない。挨拶は礼儀で、最低限しないといけないことだ。


 俺が目を細めて、何時も通り無表情で問い掛けると、少し威圧を感じてしまったのか、吃りながら。


「す、すまない……。私は霧雨 魔理沙だ」


――少し怖がらせてしまったか?


 俺は魔理沙の帽子を取って、直に頭を撫で、謝る。



「ふむ、こちらこそすまないな。怖がらせてしまった」


 俺は魔理沙の帽子を取って、直に頭を撫で、続けた。


「だが、挨拶や自己紹介は礼儀だ。しなくてはまともに話すことも出来ない。それを知ってほしかったんだ」

「べ、別に気にしてない……」

「ふふ、なに照れてんのよ。魔理沙」

「う、うるさいんだぜ!!」


 撫でられ、紅潮した魔理沙を見て、霊夢が冷やかす。すると、魔理沙はそれを払うようにして叫ぶ。

 叫んだ事で、周りに注目される。

 居た堪れなくなり、魔理沙は鍔を持って、帽子を傾け、顔を隠す。


「ははは。まあ、挨拶したかっただけだ。これで失礼する」

「じゃあね」

「じゃあな……。また」


 また。か。ふむ。


 俺は霊夢と魔理沙から離れ、慧音と妹紅のいる場所に行った。


「やあ、昨日振りだな」

「あ! 神楽!」


『たっ、たっ、たっ』という、駆け足の音が聞こえ、身体に衝撃を感じる。

 妹紅が抱きついて来たのだ。


「妹紅、大衆の面前だ」


 抱き返し、そう言うと、妹紅は顔をすりすりと、猫のように押し付けながら、いいんだよ! と返してきた。


「お熱いな、二人とも」

「やあ、慧音」

「どうも、神楽」


 お互いに片腕を挙げて挨拶する。右手にはコップ――透明な液体が入っている。恐らく、日本酒だろう――を、持ち、優しい笑みを浮かべていた。


「調子はどうだ?」


 撫でながら、顔は慧音に向ける。ちらっと妹紅を見ると、だらしなく、顔を緩ませていた。


「ああ、良好だよ。この日本酒は美味いしな」


 そうだろう。俺の酒だしな。


「だろ? 良い酒を持ってきて良かったよ」


 慧音は少し驚いたようにして、


「これは神楽の酒だったのか? 失礼、酒、頂戴する」

「はっはっは。律儀だなぁ」

「これが私の取り柄でもあるからな」

「そうでもないだろうに」

「その言葉、ありがたく頂くよ」


 そう談笑をして、妹紅の髪を手櫛で整えて、他の所に行く事を伝える。


「よし、他の所に挨拶してくるよ。じゃあな」

「ああ。また会おう」

「じゃあねー!」



 妹紅達から離れると、すぐ近くに、一人の少女がいた。

 肌は白く、目は青い。青色のワンピースのようなノースリーブに、長いスカート。

 肩にはケープのようなものを羽織って、頭にはヘアバンドみたいに赤いリボンが巻いている。

 周りに小さい人形が浮いて、お菓子、食べ物等を皿に盛り付けたりしている。

 よくよく見ると、両手の全ての指に、第二関節辺り、指輪らしき物をはめている。

 全体的に見ると、小さい人形に囲まれた、人並みに大きい人形。と、見えなくもない。そして、言ってしまえば、信号みたいだ。赤、黄、青い。



 アリス・マーガトロイドだ。

 アリスは、優雅にクッキーをかじり、ワインを呑む。



「初めまして、俺は未知 神楽。紅魔館の当主をやっている」


 そう挨拶して、お辞儀をする。


「……、私はアリスよ。アリス・マーガトロイド」


 ワイン、クッキー等を取り揃えた皿をテーブルに置き、人形と共に、スカートの端を摘まみ、お辞儀をした。


「では、アリス。この近くにいる、可愛らしい人形さんは何かな?」


 俺は近くに浮いている、人形の一つに目線を合わせ、人差し指で頭を撫でる。されるがまま。表情は変わらない。


「それは私が編んで、作った人形よ。半自立式なの」

「ほう、それは凄い。動かすだけでも相当練習しないと駄目だろう。なのにここまでとは……」


 ふーむ。そう唸りながら、人形を観察する。

 アリスと同じ金髪。布を括り、ポニーテールにしていたり、ハーフアップにしていたりと、結構バリエーション――と言ったら失礼だろうが――豊富。

 青のドレスや、アリスと似たり寄ったりの服。

 これを全て手作りなのだから圧巻だ。


「私は完全自立式の人形をつくるのが目的なの」

「それは、魂を人形に入れるのと同義じゃないか?」

「そう、なのかしら……ね。やっぱり無理なのかしら……」


 アリスの顔に陰がさす。

 しまった、まずかったか。

 後悔し、あたふたしながらも急いで謝る。


「いや、すまん。無理と言った訳じゃないんだ……。いや、なんだ、その――」

「ふふっ」


 冷や汗が出て、必死に考える中、笑い声が聞こえた。

 アリスを見ると、口を手で隠し、笑いを堪えている。


「ごめんなさい……。ふふふっ。少し意地悪したくなっちゃって」

「冗談か……? なんだ、焦ったよ……。あはは」


 苦笑いを浮かべ、正直に伝える。


 寿命が縮まる思いだった。実際はほぼ無限だが。 

 しかし――結構お茶目な……。もっと取っつきにくい性格かと思った。


 安堵して、溜まった息を吐き出す。

 アリスは人形に、テーブルに乗るよう、命令して、話し掛けてきた。


「この子達に命令をすると、その内容をやってくれるけど、少ししたら更新しないと駄目なのよ」


 はぁ、なるほどな。


 そう、感心の息を吐く。



 つまり、今アリスは上海人形に『座っていて』と命令した。しかし、時間が経つと、飛んで、アリスと並行したり、命令を忘れてしまう。だから、アリスはまたその時、もしくはその直前に命令し直さねばならないのだ。

 こう考えると結構不便だ。しかし、どこまで、アリスが操っているのだろうか?


 命令し直さねばならないというからには、半自立式と言うからには、普通の妖精みたいなものなのか?


 例えば、妖精に「『薪火』をするから、枝を持ってきて」、そうお願いして飛んでいっても、何か興味をそそる物があったとしたら、忘れてそれで遊んでしまう。そんなものか?

 なんか違うような気もするが……。


「アリスはどこに住んでいるんだ?」

「『魔法の森』よ」


 魔法の森。か。今度行ってみよう。


 まあ、森だから、なにがあるかわからないし、魔法の森と言うからには、なにかあるんだろう。


「魔法の森。そこにはなにがあるんだ?」

「茸、香霖堂。霧雨魔法店。私の家。それくらいしか知らないわよ」


 アリスは左腕を台にして、右の手で頬杖をし、片目を閉じて言った。


 それぞれ、思うところはあるが、今度にしよう。

 幻想郷を見て回るのも楽しそうだ。いっそのこと、レミィに紅魔館を任せて、俺は屋敷ないしは、館をつくろうかな。


 それも良いな。

 自由に嫁達が行き来出来るし。

 そうしようかな……。


 考えれば考える程やりたくなってくる思考をなんとか止めて、いつの間にか目を瞑り、組んでいた腕を解く。

 急に無言になった俺を、訝しげに見ていたが、目を合わせると、顔を緩めた。


「そうか、今度行ってみるよ。もし見つけたら訪ねても?」

「歓迎するわよ。でも魔理沙に案内してもらった方が良いんじゃない? 霧雨魔法店とやらは、よろず屋みたいよ?」


 そう言って、ちらりと魔理沙の方を見るアリス。

 俺も横目で魔理沙を見た。

 魔理沙は右手に酒の入ったコップを持ち、左手に箒を持っている。そして霊夢と談笑している。対する霊夢は、右手に酒の入ったコップだけを持っている。酒を変えたのだろうか。そして両利きだな。

 確信にも似た何かを感じた。

 両利きとかどうでもいい事だが。もし戦うことになるとしても、これを知れたのは大きいかもしれない。戦う気は今のところ無いが。

 右手が使えなくても同じ利き腕の左手が使える。これは大きなアドバンテージでもある。



「うーむ、一人でのんびり好きにするのが性にあってるからなぁ」


 昔、妹紅やぬえ、小傘と旅をしていた時は、やっぱり一人のが好きだなぁ。と考えていた事を思い出した。

 妹紅は良いが、小傘とぬえは、どう扱ったら良いか分からないのだ。

 娘でもないし、嫁でもない。メイドでもなければ式でもない。妹でも姉でもない。果ては――これからは分からないが――家族ではないのだ。

 ぬえからすると、俺の舎弟のようなものだと言っているし、小傘は持ち主だと言う。舎弟がわからないし、持ち主ってのも曖昧でわからない。


 だから、付き人はルーミアのような、言ったら大抵の事をしてくれる人が良い。



「あら、そうなの? まあ、貴方なら魔法の森程度、どうにでも出来るだろうし、そんな事を心配するほどでも無いわね」


 アリスは俺の事を知っているのか?


 疑問が過り、そのまま口に出す。


「貴方、霊力と妖力、魔力を制限してるでしょ?」

「なんでわかったんだ?」

「それはね、貴方が霊力、妖力、魔力を均一にしてるからよ」


 私なら判るわ。そう言って、自慢気に身体を反らす。


 要するに、俺の中の霊力が一万とする。妖力も一万。魔力を五千とする。何時もは、三つとも、百や、五百にしているのだ。均一に出来るなら、相当練習するか、相当強いのか、どちらかだろう。他にもありそうだが。

 そこを見破り、それなら大丈夫だろうと言ったのだ。


――中々に聡明で、利口だ。そして可愛い。


 身体を反らすアリスを見ながら、そう思うのだった。


       

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