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東方極限想  作者: みょんみょん打破
幻想郷編
30/67

移住、永住。

「これから、幻想郷に移住しようと思う」




 重々しく、食堂という所で、会議をし、そう発言したのは俺。皆は何故? とでも言うように、首を傾げる。

 咲夜も少し大きくなり、更に大人っぽくなった。まだ十――おっと、咲夜が見ている。年齢の話は止めようか。

 やっと、この年代になった。逆に言うと、この年代まで『来てしまった』。昨日、紅魔館に来たのだ。俺の嫁、紫が。

「貴方もそろそろ幻想郷に来ないかしら? 丹精込めてつくったのよ? そこで感じて、思って、生きてほしいわ。この美しくも残酷な幻想を」

 と、言われた。そろそろ人間も古典的な武器を使わないらしい。兵器を使ったりもすると美鈴が言っていた。この前は少し怪我をしたらしい。その時は慌てた。本当に。

 老公、慌てすぎです。と宥められたが。今度も怪我をすると思ったら気が気ではない。

 よって、近々幻想郷に移住、及び、永住しようと思っている。

 それを話したのだ。


「最近は前より力を増した。兵器を使って、俺達を殺そうとしてる政府だって出てくるかもしれない。この前だって美鈴が怪我をした」


 そこでちらっと、美鈴を見る。

 美鈴は、たはは……。と照れ笑いを浮かべている。


「お兄様ならそんなのやっつけられるでしょー?」


 この場でフランが、誰もが思ってる事を言う。

 そりゃあ、俺はこれでも、未来に生きていたし、銃なんかは人並みにわかる。殺られる前に殺る事だって容易い。しかし、レミィやフラン、ルーミアに美鈴。パチェやリリー。咲夜と妖精メイド達に三月精。背負ってる命がある。全員を守る。脅威に晒させないなんて、おこがましく、愚かしく、傲慢な事は考えていない。

 だから、移住するんだ。


「俺だって守れる者の限界がある。ここは俺だけの場所じゃない。皆がいるから成り立ち、幸せで、最高の場所なんだ。それに、クレインとクレセットが帰って来れるように、この場所、お前達を守らなくてはいけない」

「そうね、でも、私達も守られるだけじゃないわ。肩を並べて、夫婦として歩みたいの」

「そうよ、私達はそんな弱くないと自負してるわ。兵器や人間に遅れを――」

「……レミィ、ルーミア。神楽の事をわかってあげなさい。神楽だって悔しいのよ」

「……ごめんなさい」

「申し訳ありません……」

「いや、良いさ」


 ありがとう、パチェ。そう目配りをして、テーブルの上の蝋燭を見る。火がゆらゆらと小さい陽炎をつくり、暗い雰囲気を出している。まるで今の食堂の空気のように。

 そんな場に似つかわしくない、子供のように、陽気な声が聞こえた。


「別に何か変わる訳じゃないし良いんじゃない? 私はお兄様と居れるならそれで幸せだよ?」


 フランだ。

 笑顔を浮かべて、甚だ、疑問だと言う風に言った。


「そうね。私もお兄様と居れたらそれで良いわ。なんか考えてたのが馬鹿らしくなっちゃった」

「……私は生涯を共にすると誓いました。お供させて下さい」

「老公! 私も賛成ですよー!」

「ふふ、やっと皆らしくなったわね。貴方が決めたならついていく。貴方といることと、本を読むことが私の存在意義だから」

「私もお供致します」

「私も行きますー! 行かせて下さい! ここから離れる気はないですよー! 離れる事にさせたら、大したもんですよ。なんちて!」



 上から、レミィ、ルーミア、美鈴、パチュリー、咲夜、リリー。妖精メイドや三月精達も口々についていく。と言ってくれた。

 しかし、リリー、それは某プロレスラーの物真似をしてる芸人のネタか? なぜ知っているんだ?

 でも、まあ、ありがとう。


「皆ありがとう。幻想郷に行っても、特に変わる事は無いんだがな……。なんかしんみりとしてしまった」


 それを聞いて皆が笑ってくれる。

 そして、俺達は何時も通り、なんの変わりもなく、外の世界の、最後の日を過ごす。


 次の日。



「紫。いるか?」

「はぁい、いるわよー。決断してくれた?」

「ああ、紅魔館は幻想郷に移住し、永住しようと思う」

「その言葉を待ってたわ。一体何百年かしら、皆、貴方に会いたがってたわよ」

「はは、俺も会いたかったさ。今日から幻想郷にいるんだ。いつでも会えるようになる」

「この為に力を蓄えていたのよ。張り切るわよ!」


 程ほどにな。そう言って、紫を図書館に案内する。一番広いのは図書館だ。ここなら紅魔館の皆が入ってもまだ空きはある。


 図書館の扉を開く。全員が俺の横にいる、紫を見る。


「初めまして。私は八雲 紫と申しますわ。幻想郷の創造者で神楽の嫁をしています」

「貴方がお兄様の言ってた妖怪ね。私はレミリア・スカーレット。嫁同士、仲良くしたいもんだわ」


 紫は初対面の者と話す為、しゃべり方を変えている。これは威厳を出すためだろう。

 それにいつのまにか、扇子で目から下を隠している。胡散臭い。

 レミィが代表してなのか、紫と握手した。非対称的だ、真逆だ。なにがとは言わないが。いや、言えないが。

 紫は、仲良くしましょう。そう言って、目立つ場所に行く。


「これから、幻想郷へと、ここ、紅魔館を移動させますわ! 床に伏せて下さいな!」


 一斉に言われた通り、床に伏せる。全体的に、俺の近くに集まっている。一瞬の浮遊感の後に、地震が起こる。恐らく幻想郷の地についたんだろう。

 その拍子に、本が何冊か落ちてしまった。

 その事について、リリーが「また掃除しないと駄目じゃないですかやだー!」と言っていた。

 しかし、これで俺達も幻想郷の住人か。業に入っては郷に従えという諺がある。なにか守ることはあるだろうか?


「紫、ここのルールは何だ?」

「そうねぇ、最近は少し、『スペルカードルール』と言うものが流行ってるわね」


 『スペルカードルール』とは、紫が共存出来るよう、考えた決闘の一つである。美しさを重きに置いた、魅せる決闘である。『スペルカード』とは、あらかじめ技の名前と、その技名を体現した技をいくつか考えておき、技名を契約書形式に記した紙を持っておく。

 その契約書を『スペルカード』と呼ぶのだと。スペルカード名を宣言して発動するのがスペルカードルールであるが、そのカード自体には何の力もないらしい。ただの紙なんだと。

 何回被弾すると負けか。何枚スペルカードを使うか。等を決めたりするらしい。が、耐久スペルカードと言うのも存在する。使うと、何分後かに、自動的に消える。消えたら勝ちみたいな。人が通れる位の隙間はどこかに絶対開かなくてはいけないらしい。遊びとして成り立たないからだ。

 一通り説明を聞いて、スペルカードの紙を、数百枚もらった。紫曰く、新しい嫁、俺にだけの特別らしい。


 

 メイド達は出ていき、紫に、嫁を全員連れてきてくれと頼んだ。新しい紅魔館の門出を祝おうじゃないか。

 そこから、諏訪子、神奈子、永琳、輝夜、嫁ではないが、妹紅、小傘、ぬえ、玉藻改め、藍が来た。再会したと同時に、全員から抱き付かれた。懐かしさに笑みが出る。


「集まってくれて、ありがとう。ここ、紅魔館も幻想郷に永住する事になった。いつでも来てくれ。歓迎しよう。それでは、新たな門出に! 乾杯!!」


 皆が笑顔で、乾杯。と言って、グラスを鳴らしてくれる。紅魔館の事を知らないのに、新しく出来た嫁の事も知らないのに、祝ってくれる。最高の嫁達だ。


 そして少し経つと、永琳と紫が聞いてきた。


「ここに何百年も居たのね」

「で、彼女達との馴れ初めや営みをしたか、聞かせて貰うわよ」


 と。その後、お前達より先には出来ない。と言って、馴れ初めやら、今までの事を全員に言った。


 その時に何故か紫と永琳がにこやかな顔をして、意味深に視線を合わせていたが、なんだろうか。



 話している途中、何故か急に眠くなり、意識を失うように眠ってしまった。







「ん……?」


 朝だ。素晴らしい朝。何故か裸になっているが、朝だ。嫁達や小傘、ぬえ、妹紅が裸だが、朝だ。












――やってしまったああぁああ!!! 何故だ!! ちくしょう!! なんでこうなった!!


 レミィも、フランも、ルーミアもパチュリーもリリーも美鈴も紫も藍も永琳も輝夜も諏訪子も神奈子も妹紅も小傘もぬえも加えてやってしまったああぁああ!! こ、これは夢ではないよな……?

 夢でありますように。そう心から願いながら、頬を力を一杯つねる。 


 しかし、そんな思いとは裏腹に、力を入れれば入れるほど痛くなる。


――……よくこの人数で……すごいな……。いや違う!!


 酷く混乱してる俺は、一先ず落ち着く事にする。

 頭を抱えて無心に……。その時、誰かが起きた。


「ん……。おはよう、神楽」


 そう言って、裸のまま抱きついたのは紫だった。

 俺は自己嫌悪に陥り、なんの反応も出来ない。だが少し反応した。なにがとは言わないが。

 その豊満な胸は、今だけ、落ち着ける、母のようだった。


 そして、次々に起き始める。そして、裸のまま挨拶。というか服が欲しい。


――……創造出来るじゃないか!


 その閃きは、今だけ、天が俺に与えた閃きだと。人生で最大で最高の案だと、この能力はこれの為に生まれたんだと。そう思えた。


 全員に、これじゃあ廊下も歩けない。着替えてくれ。そう言って、下着、服を渡す。その間俺は後ろを向いている。

 着替えている間、後ろで声が聞こえる。


「ん、まだ入ってる」

「なんか動きにくいわね……」


――お願いだから早く終わって……! そしてこの煩悩を止めて!!


 頭を抱えて願い、祈る中、こんな言葉が聞こえた。


「いや、激しかったわ。それも『あれ』のおかげかしらね」


 あれ? え、なにそれ。あれってなに? そう言えば――酒を飲んで少ししたら急に眠くなって寝てしまったんだよな……。俺は弱くない筈。


 パズルが解けたような感覚がした。

 多分、恐らく、きっと、酒に媚薬かなにかを入れられたんだ。永琳なら軽く作れる。おちゃのこさいさいだ。楽勝だ。屁のカッパだ。当り前田のクラッカーだ。


 本当におかしな事を考えてるが、これで合点が言った。真実は何時も一つだ。じっちゃんの名にかけたっていい。今日から俺は眠りの神楽だ。寝ていないが。そもそも何を言ってるか俺にもわからない。



「着替えたわよー……、なにしてるの?」


 永琳が着替え、俺の所に来る。そして、頭を抱え、座っている俺を見て、問い掛けてきた。

 絶賛自己嫌悪中だよ。そう言いたいが、黙っておく。

 そして、全員が着替え終わり、概ね昨日と同じ食堂になる。ただ違う事は、服が変わっていたり、濃厚な性を感じる所だろうか。


「皆……、ごめん……勢いに任せてやってしまったようだ」

「仕方ないわよ、媚薬を盛ったんだから」


 神妙な顔で、更に、青いだろう、顔をして謝ると、永琳があっけらかんと言った。

 やはりか……。


「でも、それでも傷つけてしまった。それは謝る」

「や、やめてよお兄様、私達がしたいからやったのよ?」

「そうよ、レミィちゃんの言うとおり、私がしたくないか? って聞いたの。満場一致だったわ。貴方そういうことには凄く奥手なんだから。仕方なくよ」


 何故か永琳がレミィちゃんと呼んでいるが、この際無視しよう。


――しかし、えぇー……。なんか、なんだろう。悩んだのが馬鹿みたいじゃないか……。でも、本当の夫婦になれた感じがする……ような。しないような。


 だが、まあ、もう我慢しなくていいか。これでも男子だからな。そういうのが好きなのは仕方ないと言えよう。うむ。


 そう結論付けて、考えないようにした。その後は全員風呂に入り、この心のもやもやも水に流した。



                

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