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東方極限想  作者: みょんみょん打破
紅い館編
21/67

紅い館、当主の生活




「いたぞ! 殺せ!!」



 四人のローブを着ている男が俺を指差し、殺意の刃を持って俺と対峙している。

 長身の男が剣、大柄な男が斧、逆に小柄な男がナイフ、その次に小柄な男が杖。

 バランスが良いチームだ。感動的だな。だが



「炎よ。焔よ。我の思うままに姿を変え、彼奴を襲いたまえ」


 無意味だ。

 詠唱をして名前を唱える。連日連夜襲撃してくるヴァンパイアハンターを相手に、魔法だけを使っていたら結構上達し、魔力も増えた。

 しかしここは森だ。森なのに何故炎の魔法なのかと言うと。


 あまり意味はない。ただ使いたかっただけだ。

 もし燃え移ってもすぐに消せる。大した問題はない。


――しかし、面倒くさいな。


 俺は人間の焼ける音と、喉から酸っぱい液体を誘うような臭いを発しているものを見ながら考える。

 毎日毎日――それも朝や昼、夕方、夜、深夜問わず――来るのだ。

 日が出ている内はメイド達が殺ってくれている。

 日が落ちている時は俺が対処している。だがやはり面倒くさいのだ。一瞬で殺せるが、面倒。

 どうしたら来なくなるだろうか……。圧倒的な力を見せてもあまり効果はない。なにか魔法で出来ないだろうか? 結界的な……。これから少しの間その魔法を探すか。不可視の魔法だかなんだかってやつを。

 そう思い、俺は館に入った。真っ先に書斎へと向かう。


――まあ、一応あったのはあったが……。これは少し難しいな……。


 俺は今書斎にて一つの魔導書をもっている。

 結界魔法(超級)

 書斎には何千と本がある。絵本、魔導書等々。

 この魔導書はその中の一冊だ。そんな本をペラペラと流し読みする。

 詠唱を唱えるも、魔力が足りない。


――結局無理……か。このまま殺していたら諦めるかヴァンパイアハンターがいなくなるだろ……。


 気楽に考える事にして、魔導書を読み漁る。


 俺が座って魔導書を見ていると扉が勢いよく開き、声が聞こえた。


「お兄様! 遊ぼー!!」


 どうやらフランが俺と遊びたいらしい。

 全速力でこっちに走ってくる。加減抜きで。吸血鬼の速さは天狗並みだ。力は鬼に勝るとも劣らないとも言われている。何が言いたいかと言うと。


「……ぐっ……!!」


 痛さに顔を歪める俺がいるからだ。流石に硬化をしていない状態で天狗の速さ、力で脇腹を頭突きされたら痛い。

 そんな俺を見て、心配そうにして。


「あ、大丈夫? 痛い? もうしないから、ごめんなさい……」


――そんな顔されたら何も言えないな……。


 フランは申し訳なさそうにして謝る。その顔を見て、俺は怒っていない事を伝える。


「大丈夫だ、俺はお前の兄だからな。受け止めるのは当たり前だ」

「えへへ……。ありがとう! お兄様!! 大好き!!」

「ああ」


 わかったわかった。そう言って俺はフランの頭を撫でる。

 フランは気持ち良さそうに目を細めている。

 そして俺とフランは書斎を出る。

 道中会話をする。


「なにして遊ぶんだ?」

「んーっと……、お姉様と私とお兄様でかくれんぼも良いなぁ」


 俺は良いがそれは長くならないか? ただでさえ紅魔館は広いんだ、それを三人だけでやるとなると一日掛かるのでは無いだろうか? 一向に構わんが。

 しかし、まあ、やはり時間的に無理だろうな。いつヴァンパイアハンターが襲撃に来るかはわからないんだ。ならすぐに出れるような遊びにするべきだろう。

 まあ、メイド達に任せればいいんだが。あまりメイド達を無理させたくはない。彼女達は人間なのだ。強くて有能で大抵なんでも出来そうだが結局は弱い人間。

 寝なければいけないし飲食しなければ生けない、精神的に弱ってくるし肉体的にも弱ってくる。

 妖怪なら人間の畏れ等によってまた話はかわってくるが。


「なあ、フラン。かくれんぼじゃなく座ってやる遊びとかは無いのか?」

「え? んー……、わからないかな」

「そうだ、これをやろう」


 俺が創造したのはトランプ。トランプの歴史は知らないから、フラン達が知ってるか分からないが、教えれば良いだろう。


「なにそれ?」


 やはり知らなかったか。フランは目を細め、訝しむようにトランプを見て、問うた。しかし、知らなくて当然。これは未来の遊びだからな。


「これはトランプって奴だ。詳しい話はレミィを交えてしよう」


 凄く面白いぞ。そう付け加え、フランの歩幅に合わせて歩く。

 フランは鼻歌をしながら機嫌よくスキップして、進んでいく。

 そんな姿もまた可愛らしくて、俺は自然と笑みが出る。


「お姉様ーー!!」


 フランはレミィの部屋の扉を思いっきり開き、大声でレミィを呼ぶ。しかし、この扉凄い耐久力だな。


「フラン、レディは大声出さないのよ。はしたないわ」

「良いじゃないか、レミィ」


 椅子に座って何かの本を見ていたレミィがいきなり開けて、大声を出したフランをたしなめる。

 しかし、俺が入って、レミィを逆にたしなめると少し驚いた顔をして本を置き、此方を見た。

 

「お兄様?」

「レミィ、遊ぼう。新しい遊びを用意した」

「そう。お兄様、どこでするの?」

「ここでも良いし食堂でもいいしどこでも良いぜ」


 どこでするかと聞かれると、いつも遊びに使う部屋はまちまち、ばらばらなのだからどこでも一緒だろうに。それを伝えるとなぜか目を少し輝かせ、言った。


「じゃあお兄様の部屋がいい!」


 なぜわざわざ俺の部屋なのだろうか。別に良いが。レミィ、俺の部屋が好きなのか?


「あ、それ名案!!」


 おい、なぜフランは名案だと言っているんだ。俺の部屋で遊ぶのは名案なのか? ……。しかし意味深な言葉だな。俺の部屋で遊ぶ。

 なにか変態的な事を考えてしまうが、その考えを振り払う。いきなり首を振った俺を不思議そうに見る二人。なんでもない。そう言って俺の部屋に向かった。



「わー! お兄様のベッドー!!」

「おいおい、お前達と同じベッドだろ?」

「全然違うよ! お兄様の匂いがする!!」


 フランは俺のベッドに勢いよく助走をつけて飛び付いた。しかしそんな強く言わんでも。俺の匂いってなんだよ。


「フ、フラン……。はしたないわよ……」


 そんなレミィは顔を赤くしてぷるぷる、ウズウズして言った。説得力が無いけど……。


「そんな俺のベッド良いか?」

「いや、だからお兄様の匂いがするから良いの!」

「あっそ。じゃあ使う? なんなら一緒に寝ても良いけど」


 俺としてはなんでも良いし。しかしそんな良いもんかね?


「良い――」

「だ、だめよフラン!! お兄様に迷惑でしょ!? なにより……、そ、そんな……男と女が同じベッドで……」


 ……。何を……。いや、ナニを考えてるのか手にとるように分かるぞ。レミィ。

 そんな真っ赤な顔で人指し指と人指し指をくっつけたり離したりをしているレミィを見て思う。

 俺としては本妻ともしてないのにまだ行為をする事はしたくないが。


「レミィも一緒に――」

「良いの!? いや……。でも……。これはチャンスよレミリア……! 身も心も捧げるって言ったじゃないの……! 頑張るのよ……!!」


 レミィの心の声? が丸聞こえだが聞こえないふりをする。ませてるなぁ……。いや、かれこれ結構生きてるから、ませてはいないのか?

 依然として、俺のベッドに寝転んでいるフランと、自分の世界にトリップしているレミィを見て、思うことが一つ。


 






――こいつら遊びにきた事を忘れていないか!? トランプの出るところ無いじゃないか!!


「なあ、遊びはしないのか?」

「するー!」

「あ、遊び!? 今ここで始めるの!? 私まだシャワー浴びて――」


 フランは飛び起きて俺の横に立つ。可愛らしいな。

 しかしレミィ、お前は駄目だ。

 俺が軽く手刀をレミィの頭に落とした。

 もうナニをする気まんまんじゃないか! いつからそんな子になったんだ!?


「きゃ! いったぁーい!」

「お前が考えてるような遊びはしない」

「えぇー……」


 見るからに残念がっているが、俺は強引にトランプの説明をする。神経衰弱、ババ抜き、ポーカー、ブラッディセブン。

 やはり賢い妹達だ。すぐに飲み込んだ。


 結局、その日は俺の勝ち越しだった。当たり前だが。ていうか負けたくない。負けられない。面子的に、歳的に。その他色々な意味でも。

 しかし、まあ、俺が負ける日も近いかも知れないな。

 忘れていたが、今度から魔導書を集めていこうかな。魔法をもっと覚えたいし、使いたい。それにここを書斎じゃなく大図書館にしたい。まあ大図書館にするにはあの時を操る女の子をメイドにしないと駄目だが。

 別にメイドじゃなくてもいいっちゃいいんだがなぁ……。


 そうして考えてる内に寝る時間だ。


 真ん中に俺、右腕に抱き付いてるのはフラン。同じく左腕に抱き付いてるのはレミィ。しかしその顔は真っ赤に染まっている。


――夜起きたら裸とか……。


 密かに期待しているが、そんなことはおくびにも出さない。俺も男子だからな。


「おやすみ、二人とも」


 そう言って二人の額にキスをして寝る。


「えへへ、おやすみなさい。お兄様!」

「お、おやすみなさい。お兄様……」


 フランは元気に、レミィは吃りながらも。


 俺は電気を消して、就寝した。 



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