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東方極限想  作者: みょんみょん打破
紅い館編
20/67

紅い館の半人半妖






「「お兄様ー!」」


 赤い館にて大きな声で俺を呼ぶ女の子が二人。

 金髪のサイドテール。宝石の様に綺麗な羽を持つ女の子。フランドール。

 青い髪に蝙蝠の羽を持つ女の子。レミリア。

 俺は彼女からお兄様と呼ばれている。その理由だが、少し長くなってしまう。簡単に言ってしまえば、クレインが俺の事を家族の様に接してくれるからでもある。

 フランドールが俺の事をお兄様と呼んでいる所をレミリアが見たのだ。それの対抗意識なのか、はたまた本当に兄だと思ってくれているのかは定かではない。

 しかしどうでもいいことだ。こうして俺の事をお兄様と呼ぶ。それだけで嬉しい。

 廊下で歩いていた俺はその声に気付き、振り向いて声に応えた。


「どうしたんだ? レミィにフラン」


 俺は呼び名をかえている。フラン、レミィだ。

 二人からこう呼んでと言われたのだ。


「お兄様! 晩ごはんだよ!」

 フランが俺の向かい、はしゃぎ、ジャンプしながら晩ごはんだと伝える。

 しかしレミィがフランの言うことを教え諭した。


「フラン、晩ごはんは食べたでしょ? それに今は深夜。お夜食のが正しいわよ」


 もうそんな時間なのか。

 俺は吸血鬼の生活に合わしているから朝に起きなくなっている。逆に朝、寝るのだ。


 レミィやフランはあの時よりあまり姿は変わってないように思えるが、あの頃のように舌足らずなしゃべり方は抜けている。今じゃ立派なレディなのだと。


「そうなの? お姉様博識だね!」

「ふふん! 当然よ! フランの姉でお兄様の妹なんだから!」


――しかし、まあ、微笑ましい光景だな。


 フランに言われ、胸を――ない胸だとは思っていない。断じて――はる。その姿は鼻の長い天狗の様だ。


「クックック……。さて、行こうか、妹達」


 笑いを堪えようとしたが無理だったみたいで、変に気取ったような笑い声が出てしまった。


「「うん!」」


 同時に同じ返事をする姉妹。

 そして俺とフラン、レミィは食堂に向かった。



 食堂の俺が座る席の両端に座るフランとレミィ。

 それを笑って見ているクレイン、クレセット。


「早く孫の姿が見たいわ」

「そうだな……、いつになる?」

「お前達は本当にそれでいいのか」

「はっはっは! 神楽なら大歓迎だよ! むしろ早くしろ」

「うふふ……。そうね、早くしてほしいものだわ」

「私はいつでも良いわよ! お兄様に身も心も捧げるわ!」

「私もー!」


 お前達も何を言っているんだ。今は深夜……だからいいのか? いや、そういう問題では無いだろうに。

 最近は毎日こんなやりとりばかりしている。

 ついこの間、クレインが俺に次期当主になってくれと頼み込まれた事もあった。あの時は慌てた。柄にもなく。


――しかし、何故俺に当主になれと言うのだろうか? クレインがしたらいいのに。

 その疑問を頭の片隅に追いやり、笑ってはぐらかす。


 食べ終わり、レミィ、フランと話したり遊んだり。

 それが終わるとクレインとヴァンパイアハンターを蹴散らす。それが終わると書斎で魔導書を読み漁る。

 今回は次元魔法の書(中級)だ。初級は次元の説明、イメージの仕方、簡易的に次元を歪ませる――といっても、蜃気楼みたいな感じ――という内容だった。

 少し前に魔力は開放した。今の魔力量は霊力の一分にも満たないが、生きている内、使っていく内に増えると書いていた。

 しかし何故次元なのか。それは紫のスキマみたいに収納出来たりするものが欲しいからだ。予め魔法の扱いの限界を無限にしている。

 魔導書に書いてる詠唱を唱えてみる。


――紫のスキマをイメージしながら……。


「我が思う場所に来たれ、四次元の狭間。『インフィニティボックス』!」


 詠唱を終え、名前を叫ぶように唱えると、赤色のスキマが出てくる。両端にリボンはない。目玉もない。ただただ、赤色のスキマ。


――赤い……。なんで赤いんだ……。


 ま、まあ俺は赤色嫌いじゃないし? むしろ紅魔館的に好きだし? うん。

 若干自分を奮い起たせる感じがするがまあ出来ただけよしとしよう。

 しかし無詠唱は出来ないのだろうか? そう思い、俺はボックスに紙を創造して入れ、ボックスを記憶する。

 そしてボックスが消えるように念じる。すると何もなかったかの様に消えた。


――ボックス……出ろ!


 念じる。いまさっきのように赤色のスキマが姿を現した。中を見るとちゃんと紙が入っていた。

 成功したことにガッツポーズをする俺。

 やはりいつまで経っても成功は嬉しいもんだ。



 それが終わり、風呂に入って寝る。これが今の生活だ。


 日が沈む頃に起きて。


 「……ん。顔洗うか」


 身なりを整えて。


「いつもありがとう。しかし毎日来なくていいんだぞ? もう大抵は分かるし」

「いえ、お構い無く。この案内は好きでやっているので」

「そうか」


 無表情メイドと食堂まで一緒に行き。


「神楽! 口開けて!」

「神楽! あーん!」


 レミィとフランからせがまれたり。


「はっはっは!」

「うふふっ」


 クレインとクレセットに見られて笑われたりと。



 しかし今日の晩飯を食べたら大事な話があるとクレインから言われていた。

 そして今はクレインの部屋に俺、クレイン、クレセットがいた。

 テーブルの上に置かれた紅茶を飲みながら話をしている。

  

「さて、今日は大事な話があるんだよ。神楽」

「なんだよ改まって」


 いや、それがな……。と酷く深刻そうな顔をして溜めるクレイン。

 一体なんなんだ。


「私達……





紅魔館を出ようと思う」



「は? 何故だ?」


 なんとここから出ると言ったのだ。

 クレインの話によると、レミィやフランには一人立ちのようなものをしてほしいらしい。

 なんでも、私達がいると全て私達だけで良いじゃないかと思うようになってしまうのだと。要するに脛をかじるというか、任せっぱなしで成長しないらしい。だから私達はここを出て、神楽が当主としてここを支えて欲しい。と、言われた。

 勿論俺は反対した。俺には荷が重いし、レミィ達と相談してもいないのに勝手に決めるのは可哀想だ、ちゃんと話をして、皆で決めよう。と。

 結局明日の晩飯終わりの時に改めて相談するという話になったが。



 次の日。



「レミィ、フラン。大事な話がある」

「「なに? お父様」」


 晩飯が終わった頃。昨日と同じように深刻な顔をして話を切り出した。

 その真剣な空気を感じたのか、全員が姿勢を正し、真剣な顔をしてクレインの話を聞く。


「明日から私とクレセットは三百年の結婚記念日として出掛ける!」


――……え? 話が違うぞ? ていうか三百年だったのか……。


 俺はその言葉に唖然とした。

 レミィとフランも唖然としている。なんせいきなり結婚記念日で旅行すると言われたのだから。


「あ、そうなんだ……、わかった。うん」


 レミィはなんとか絞り出したものの、まだフランは口を開けて固まっている。


「今から神楽が当主だ!! むしろこのまま神楽が当主になってくれたほうが私達として嬉しい。頼まれてくれるか?」

「えっ……、あ、ああ。わかった」


――しまった!! 了承してしまった!!


 皆さんはあるだろうか? 少なくとも俺は何度も――というかたった今――ある。唖然として、思ってもいない事を口にしてしまう。というか返事をしてしまう。

 誰に向けているか分からないが、一人で正当化する。

 返事をした俺を見て、二人は満面の笑みを浮かべる。そしてこう言った。



「よろしく! 現、紅魔館の当主、神楽!」

「これからよろしくね、神楽君」



――ちくしょう……。嫌ではないんだが……。やられた……。そうだ、レミィ達が嫌だと言ったら考え直すだろう!



 答えはわかりきっているが、少しの期待にすがり、レミィ達に聞いた。


「レミィ、フラン。お前達は俺が当主になってもいいのか?」

「え? 逆にお兄様以外誰がいるの?」

「お兄様以外ありえなーい!」


 わかっていたさ。わかっていたけど。ていうかレミィ、お前がいるだろ? 逆にお前以外ありえなーい! って声を大にして言いたい!


 なんかテンションが上がって変な事を考えてしまうが冷静になれ。と自分に言い聞かせる。

 まあいいか。兄でもあるからな……。


――しかし、後で覚えておけよ……!


 その思念を送ろうとクレインを睨むが当人はどこ吹く風。口笛を吹こうとしてるが掠れて出ていない。それに気づくと口笛をやめた。


 話し合いが終わり、クレインを呼んだ。


「おい、どういう事だ……! 昨日とは違うじゃないか!」


 俺が追及すると、クレインはばつが悪そうにして、肩を竦めて言った。


「仕方ないじゃないか。レミィ達に面と向かって、お前達の成長の為に出ていく。なんて言えるかい?」

「…………」


 あまりの正論に沈黙してしまった。

 確かに言えないが……。


「しかし、騙したのは本当の事だ。すまない。最後のお願いだ。ここの当主になって、紅魔館を、私達の愛娘を導いてくれ」


 そう言って頭を下げる。


――そんな事……、卑怯だ、断れる訳がない……。それに怒るに怒れないじゃないか。



「……。わかった。その役目、引き受けよう」

「そう言ってくれると信じていたよ。ありがとう、神楽」

「……、ああ」


 こうなった以上やるしかないな……。

 俺は軽く決意する。


――また守るものが増えたな……。今度は紅魔館か……。


 建物まで守る事になるとは思わなかったが、しかし、まあ、これも良いだろう。原作通りは面白くない。

 しかしどこに行くんだろうか? それを聞いたら「海の向こうの大陸に行くことにするよ」なんて事を言っていた。お前ら吸血鬼だろ。海とか渡って大丈夫なのか? とつっこみたいが、ぐっと堪える。というか船なら大丈夫なのだろうか?

 まあクレイン達なら大丈夫だろう。強いし。いや、強さとか関係無いだろ。と一人つっこみをした。





 そんなこんなで次の日の夜。


 クレインとクレセットは何も持たずに俺とレミィ、フラン、無表情メイドと向き合っている。


「神楽、後は頼んだ。レミィ、フランも元気でな」

「頼んだわ。レミィ、フラン。幸せになるのよ」


 クレインから頼まれる。そして別れを告げた。

 しかしクレセットは違う事を言っているように聞こえる。そこですかさずつっこんだ


「クレセット! 違うだろ! いや、違わないけどさ」

「なら良いじゃないの」

「…………」


――……なんだろうか、この納得いかない感じは。

 しかし別れとは思えないな。


「お父様、お母様、私とフランは幸せになります――」

「えっ」

「なに? お兄様」

「なにもない」


 幸せになります。という宣言に驚いて思わず声を出してしまった。それをレミィに聞かれて、レミィが俺に何事か聞いてきた。しかし必死に平静を取り繕ってなにもないことを言った。

 そんな所見てくすくすと笑うクレセット。


「本当に、元気でね」

「ええ、お母様、お父様もお元気で。また会える事を心待ちにしています」

「またね! お母様! お父様!」


 レミィは優雅にスカートの裾を持ち、お辞儀した。

 フランはジャンプして大きな声で言った。


「クレイン、クレセット。また会おう。元気でな」

「君もね。じゃあ、そろそろ行くよ」


 最後の別れの言葉と共に、クレインは手を伸ばし、クレセットの名前を呼ぶ。クレセットはその手をとり、微笑みながら芝居掛かった仕草で返事する。


「はい、いきましょう。クレイン」


 三人で手をふり、メイドは綺麗なお辞儀をしている。



 こうして現当主から元当主となった、クレイン・スカーレットとその妻、クレセット・スカーレットは紅魔館から出ていった。


 俺達四人は姿が見えなくなって、漸く手を下ろし、腰を上げた。



 中に入り、まだ食べていなかった俺達は食堂に向かう。

 道中、レミィは俺と向き合い、膝を床に付け、こう言った。



「これからよろしくお願いしますわ、神楽当主」


――や、やめろよ……。冗談でもそんな他人行儀な……。


 一瞬だが俺は虚をつかれて反応が出来なかった。

 すぐに平静を取り戻し、言った。


「おい、やめろよ。お前達は俺の妹だ。他人行儀は許さないぞ」

「ふふ、わかったわ。これからよろしくね、お兄様!」

「お兄様ー!」


 そう言って俺の両腕に抱き付く二人。


「しかし、神楽様。貴方はこの紅魔館の当主になりました。私達、メイドを自由に仕えて下さいませ」

「俺は当主になったが、お前らも家族だ。そんな物のようには扱わない」


 そう宣言した。


「……ありがとうございます」



 メイドが頭を下げて礼を言う。





 頭を上げて見せた顔は、俺には少し笑ったように感じた。       

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