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東方極限想  作者: みょんみょん打破
古代編
15/67

西行妖と封印 後編



「う、うそ……、ゆ、幽々子……。いやああぁああ!!」

「幽々子様!!」


 

 悲痛の叫びをあげ、しゃがみ、塞ぎこんだ大妖怪、紫。


 妖忌もまた、見てしまった。

 主人の姿を。



 美しくも禍々しい妖気を出しながら、満開になっている西行妖。そのすぐ下には




 幽々子がいた。しかし正確に言うならば、幽々子“だったもの”だろうか。は、胸に小刀を刺し、血を出していた。


 そこから少し離れた所で紫と神楽、妖忌がいた。



 なぜこうなったか。それを知るには少し時を遡る必要がある。







 俺は今紫と白玉楼で世話になっている。

 幽々子と一緒に紫を弄ったり、妖忌と修業していたり。

 妖忌と戦ってみてわかったが、あいつはおかしい。

 なんだよ時を斬るって。

 しかも妖忌の太刀筋を予想しづらい。

 気づいたら斬られそうになっている。そしてよくよく妖忌を見ていると、最初は遅くしているのだが、どんどん振り下ろしたりの行為を早くしていることに――うまく説明出来ないが――気づいた。

 その事を聞くと「ほっほっほっ……、流石は神楽殿です」と、誉められたのかはよくわからんがそう言われた。


 しかし、そんなことをしていてもどんどん時間は過ぎていく。

 刻一刻と迫ってくる満開の時間まで何も思い付かずにいた。


 そしてとうとう満開の時が来た。


 見惚れるくらい美しい。けれどその美しさには棘『死』がある。その言葉がありありと思い浮かぶ様だ。

 俺と紫、妖忌は庭にある西行妖に近付くことが出来ずにいる。

 西行妖が枝で絶え間なく攻撃してくるのだ。

 しかしそんな俺達を嘲笑うかの様に、幽々子だけを導く。

 幽々子は光のない目をしていて、おぼつかない足取りで西行妖に向かっている。

 俺達は枝を切り落としたりしているが、無数にある物の中の一本を斬った所で意味がないのだ。

 斬った所から再生、その間、違う枝が無数に迫ってくる。

 その繰り返しだった。

 妖忌は少しづつ傷ついていく。

 流石の紫も辛いようだ。

 かくいう俺も少し辛い。

 幽々子は懐から小刀を出し、迷いなく横向きにし、自分の胸に刺した。


 俺達はいきなりの事に反応出来ずにいた。


「う、うそ……、ゆ、幽々子……。いやああぁああ!!」

「幽々子様!!」


 血を吐き、仰向けに倒れる幽々子を見て、紫は悲鳴をあげ塞ぎこむ。妖忌は主人が自害した事で枝に集中出来ないでいる。


 紫は今、格好の的だった。


「紫!!」


 俺は咄嗟に紫を抱きしめた。その瞬間、無数の枝が俺を襲う。足に、体に、腕に、頭に。

 軽く刺さったり鞭のようにしなり、当たる。


「か、ぐら……? ふふ……、ねえ。私は大切な友人すら守ることは出来ない。なんて無力な妖怪なのかしら……」


 光のない目をして紫が問う。


「紫……。今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ……! 封印するなら今しかないんだ! 幽々子を永遠の苦しみから助けてやれ!! それがお前に出来る最期の手向けだ!!」


 俺から激励を受けて、光を取り戻す。


「そうね……、こんなところで立ち止まってられないわよね……。神楽! 封印する!! 時間稼ぎをお願い!!」


 足は震え、涙を我慢しているがその姿は気高く、美しい。


「何時間でも稼いでやるさ……! 今の俺に出来るのはそれだけだ!!」


 ――そうだ!! 妖忌はどうしたんだ!?


 俺はふと妖忌に違和感を抱く。そしてさっき妖忌のいた場所を見た。

 妖忌は横っ腹に血を流し、刀を杖にしてなんとか立っていた。


「妖忌ィ!! 無事か!?」

「ぐぬぬ、この妖忌、一生の不覚……」

「あとは俺に任せろ!! はっきり言って邪魔になる!!」

「ぐ……。わかりました。しかし、神楽殿……。無理はなさらないように……」


 俺の言葉を素直に聞いて、下がってくれた。


 そして俺は初めて本気をだす。

 霊力、妖力共に十割。


「スゥー……、ハァ!!」


 土や石が弾け飛ぶ。空間が歪み、擬似的に地震が起きる。


 西行妖は俺を最優先に倒さなければいけない敵だと判断したのか、全ての枝が俺を襲う。


 俺は全身を全力で硬化する。

 無数の枝が当たるが全く痛くない、なんとも思わないのだ。

 俺は西行妖に向かい、全身全霊の一撃を打った。

 しかし、やはりと言うべきか。全く意味をなしていない。


 ――有効打は……? いや、俺はあくまで時間稼ぎだ。

 ちらっと紫を見ると、手を幽々子の方に伸ばし、何かを口ずさんでいる。恐らく封印の呪文か何かだろうな。


 そこから数分経った。


 俺はずっと相手の攻撃を食らっていた。

 幸いな事に、枝一本はそんな痛くはないし、俺以外を狙うことも無かった。


「神楽! 出来たわ! 下がって!!」

「了解! この惨劇を終わらせろ!!」

「ええ! 『境界封印』!!」


 下がり、勝ちを確信したからか封印を見ているとふと思った。 


 ――無粋かも知れないけど。……、あの技の名前、ありきたりだな。たった今考えたのか……?


 そんな事を考えながら封印を見届ける。

 幽々子の体は光に包まれ、西行妖の木の下に沈んでいった。

 さっきまであった幽々子の体は無くなり。辺りにまばゆい閃光が走った。

 その後、満開だった西行妖の桜は蕾になった。



「終わった……。……、幽々子……!」


 紫は友人の死を思い出し、泣き崩れた。

 そんな紫に、俺は声をかけた。


「紫、幽々子は生き返るさ……」

「そういう励ましはいらないわ……! 無茶苦茶な事を言わないで!」

「そうだな。今日は寝よう。疲れた」

「ええ……」


 そういえば。と、俺が下がっていた妖忌を探す。


 すると妖忌は庭で気を失っていた。


「妖忌、今日はゆっくり休め」


 そういって、治癒能力をあげた。

 妖忌の傷はみるみる内に治っていき、出血で青くしていた顔は安らかなものになった。


 俺が妖忌を背負い――野郎を背負いたくはないが――適当な部屋の布団に運ぶ。

 俺と紫も適当な部屋を選び、一緒に寝た。





 次の日、居間に行くと一人の、いや。亡霊がいた。周りに小さな幽霊を数体浮かばせて。

 


「幽々子!!」

「ん~? どなたかしら?」

「え……? 冗談はよしなさいよ……。貴女は西行寺 幽々子よね……?」

「そうよ~」

「なら――」

「その話は私がしましょう」


 そう言ってどこからか現れた彼女は。

 緑色のショートヘアーで右側の髪が長く、青い目をしており、帽子は――なんと言ったらいいんだろうか、わからないが――下側にフリル? がつき、そこから金色の板らしき物が出ており、後ろ側には赤と白の布が見える。

 服は白のシャツを着て、その上に青いベストのような服を着ている。

 青いベストの肩には金色で何かの字が見えるが、読めない。

 そして下はスカートをはいている。

 身長は別に低くはない、永琳とそう変わらないのでは無いだろうか。

 右手には懺悔棒を持っている。


 四季 映姫だ。

 ヤマザナドゥは役職名で。

 それぞれ、ヤマは閻魔。ザナドゥは楽園なんだそうだ。


 彼女の話を簡単にするとこうだ。


 亡霊はいつか幽霊に戻って、閻魔の裁判を受け、天国か地獄に行くか、転生する筈だが。幽々子は例外らしい。

 西行妖の封印の力によって亡霊になった幽々子は、封印を解かない限り、幽霊に戻る事はない。

 そこで閻魔は彼女の能力を有効に使おうと亡霊のままで、この白玉楼に永住させる事にしたのだと。ただ、記憶は無くなっているが。


 それを聞いた紫は泣き、笑いながらもこう言った。





「前も親友になれたのだから今回も親友になれるわ!」      

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