海賊と孔雀の君2
一週間の準備期間を持って、クリストフ提督の宝石品評会潜入作戦の計画を綿密に練った。俺たちは金獅子の旦那たちと共同戦線を張り、公爵とその執事、その鑑定眼を買われた宝石商夫婦として変装、偽造した招待状で潜入する。隙を見計らって騒ぎを起こして、ドサクサに紛れて宝石大量にゲットと言う計画だ。騒ぎはメーヴォの爆薬に任せれば文字通り一発。偽造招待状は、情報屋レヴの特技『平面的な黒い物なら何でも自在に操れる力(大体略して影を操る力)』で招待状の名前を書き換えて作る。大本の招待状は既にある宝石商を襲撃して入手済み。
変装の準備も万端。金獅子の旦那と副船長は公爵貴族の服を揃えて試着もした。ディオの旦那の特徴的過ぎる折れた額の角はどう隠すのかと思っていたら、アデライド副船長が魔法だか錬金術の薬だかで、ちょちょいと消していて、メーヴォが僕も便利に変装したかったと渋い顔をしていた。コッチも商人らしいコートを揃えて試着済み。俺は普段三つ編みにしている髪を下ろし、キチンと整えてストレートにして高い位置で結い上げる。バンダナは外して、髪の分け目を変えて右頭部の傷跡を隠せば、普段とは大分違うイメージになる。アデライド副船長の寄越した洗髪石鹸と整髪料がとんでもなく上等なヤツで、洗い上がりから髪の毛がつるっつるのさらっさら!根元からクセと言う癖が全部洗い流されてストーンとストレートの髪が出来上がった。更に整髪料もとびきり良いヤツで、自然な髪の流れで髪形が決まったりするから、金獅子海賊団副船長の錬金術はやばいと言う噂は間違いないと確信に至ると同時に、ディオニージ同様敵に回したくないと再度心に決めるのであった。
何より一番の難易度を抱えるメーヴォの仕込みっぷりがハンパない。ほぼ毎日金獅子の船に行ってはダニエル船医からアレコレ指導を受けていた。その指導の成果が目に見えて現れて驚いている。
まず歩き方がヤバい。ヒールの踵を鳴らしながら歩いているのは変わりないが、今までズカズカ歩いていた歩幅が、女っぽくしゃなりしゃなり歩くようになっていてギョッとした。他にもちょっとした仕草や食事作法まで丁寧になっていて、その徹底振りに舌を巻いた。メーヴォは元々しっかりフォークとナイフで食事をするが、大雑把にぶつ切りにして大口を開けて口一杯に頬張って食べるクセがあった。それが小さく切り分けてしずしずと食事をするようになっていて、コッチが違和感にゾワゾワしたくらいだ。
パンプスを履いた当日に、早くも靴擦れが出来て苦い顔をしていたメーヴォだったが、歩き方や食事の仕方一つで妙に色っぽくなるもんだなと感心する一方、女ッ気のないウチの船じゃあアレは妙に浮いて目に付く。頭に引っ付いてる鉄鳥もコサージュで飾られたのが気に入ったらしく、金獅子の船に行く度に違う飾りになっていてやっぱりギョッとする。アレが癖になったら困りもんだぞ。
「ところで、外見は変装出来ても、声まではどうにもならないんじゃないか?」
「そう言うと思ってました」
そこでウチの船医マルトと、ダニエル船医、アデライド副船長が協力して作った魔法薬の登場だ。それが準備期間中だった四日目の事。風の魔法で作り上げた魔法薬は、声帯に魔法をかけて声を自在に変える事が出来る逸品。一瓶飲むと一日は効果が持続する。それを一口試飲したメーヴォが薬の切れるまでの一時間程、最初に二言発した後一切喋らなくなったのはからかい甲斐があった。
徐々に仕上がっていくメーヴォを見るのは楽しかった。こうして見栄えの良い女を連れて行くってのは男として楽しみだ。女じゃねぇけど!
作戦当日。金獅子が泊まっている宿に出向いて合流すると、そこから実行班の変装を開始する。大体は服と髪型の変更で済むが、そうは行かないのが約一名。ドレスを着るために胸に布を詰めるわ、腰周りにも布を巻くわ。カツラに化粧とやる事は盛り沢山。どう化けていくのか過程を見たかったが、やっぱりダニエル船医に部屋を追い出された。別に良いじゃねぇか知らない仲じゃねぇんだから。
「残念だったなぁラース船長」
角と傷跡を隠し、髪を下ろしたディオニージの旦那が無邪気に笑う。うぅーん、男前ぇ。
「今は宝石商エルク=ヴァレンタインですよ、ディランドの旦那」
「おっと、そうだったな、エルク」
偽名は本当の名前に近いものか、知り合いの名前を使うのが何より覚えやすい。ディオニージの旦那はディランド=ベジャール公爵、アデライド副船長は執事ライト。俺は宝石商として普段から使っているエルク=ヴァレンタインを使う事に決めている。
「ラー……じゃなかった、んっん……エルク様、お待たせしました」
あまり聞き慣れない女の声がする。扉を開けて出て来たのは、緑の長い髪に深紅の瞳の美女。青のドレスが緑の髪と相まって透き通った南の海のようだ。本当に良く化けたな。そこそこ身長のある美女にしか見えない。
「我が愛しのパーヴォ。今日も君は世界一美しいね」
棒読みにも程がある芝居がかった台詞で美女の手を取る。ニコリと微笑む美女がメーヴォだと誰が信じよう。
「エルク様、参りましょうか」
変声薬を飲んで声も変え、完全になりきっている。メーヴォは役にハマり込むタイプのようだ。
「そうだね愛しのパーヴォ。ディランド公、いざ参りましょうか」
おう、と答えた金獅子の旦那の顔が少し引き攣っていた。ちなみにメーヴォが選んだ偽名パーヴォは、自らの手で殺した妹の名前だった。本当にコイツは最高だぜ。
馬車に乗り込み、アデライド副船長が手綱を持って出発する。時刻は昼を少し過ぎた頃。馬車で一時間ほどの道程を移動する。準備をしていたのは品評会が行われる場所の隣町。入港する船の監視も海軍が厳しく執り行うため、少し離れたところで準備するのがいい。借りた豪奢な馬車に揺られる中、これから作戦を決行すると言う緊張感に、誰も口を開かない。ディオニージの旦那なんかはこんな風に静かに敵正面から突破する事なんて滅多に無いだろう。魔弾のラースこと、トリックスター・ラース様も、ココまで大掛かりにやる潜入作戦は滅多にしないが……。ついでにエリーを船に置いて来なくてはいけなくて、運が離れそうで落ち着かないのも事実だ。
初の潜入作戦で女装とか大役過ぎたメーヴォも、黙って窓の外を眺めている。その手が忙しなくリズムを取っていて、やはり緊張しているんだなと察する。しかしその横顔もかなり美人だ。ふぅっと細く息を吐く様なんて色っぽいにも程がある。
「……ラース、見すぎだ。穴が開く」
いつもの口調が女の声で小さく抗議する。
「お、素に戻ったか?」
「今なら、誰かに見られると言う事もないだろう。宿では誰に見られているか分からなかったしな」
「あぁーそんなトコまで気にしてたの」
「海軍提督の年に一度の社交会、隣町に滞在して行く貴族連中が居ないとも限らない」
「流石死弾の軍師殿だな。あ、軍師じゃねぇんだっけ?」
「しだん?アレか、ウチの通称そんな事になってんの?」
「そうそう。お前さんとこのジョリー・ロジャーから、最近ヴィカーリオの事を死の弾丸、死弾の海賊って呼んだりしてる奴が増えてるんだぜ。俺も最初ドコの船だって思ってたんだけどさ、聞けば魔弾のラースと元殺人鬼のいる船だって言うじゃん。あーお前らんとこかーってさ」
「光栄な事じゃないかラース」
「へ、へへへ……金獅子、海神に並んで死の弾丸ってか。悪くねぇなぁ」
割れた頭蓋骨の背後に銃、頭蓋の口元には弾丸を咥えさせた意匠のジョリー・ロジャー。それが俺たちヴィカーリオ海賊団の旗だ。格好付けてアレコレ盛り込んだ意匠だったが、生き物の呼称で一貫性を持って通っていた名だたる海賊の中に、生き物を殺す弾丸の呼称で加わると来れば、それはそれで面白い。何て挑発的な名の広まり方だ。良いぞ、このまま金獅子の旦那も、ゆくゆくは海神ニコラスも追い抜いて、人種でありながら王と謳われた、海賊王アランのように登り詰めたいもんだぜ。
そうこう話をしているウチに、片道一時間の距離はあっと言う間に過ぎ、手綱を握るアデライドが声をかける。
「見えてきました、提督のお屋敷です」
白い壁の民家が特徴的な港街。その中央に一際大きな屋敷が鎮座していて、まるで街全体が要塞になっているように見えた。難攻不落の要塞から、お宝を奪取出来るか、とかなんとか。
馬車はまっすぐ屋敷の門をくぐり、広い庭を横切って入り口へと進んでいく。執事役のアデライドは馬車馬と共に納屋で待機する。脱出、逃亡する際の足は確実に確保しておく必要があるからだ。
入り口に留まった馬車の扉が、アデライドの手で開かれ、一番最初にディオニージの旦那が降りる。それを出迎えたのはクリストフ提督の執事だった。生真面目そうな初老の男は、来客の持つ招待状を丁寧に確認していた。
正直な話、ディオニージ程の海賊だ。海軍には名も顔も知れ渡っている。しかもこの人はああ言う性格だから、フォーマルな社交場の対応が出来るのだろうかと、内心ハラハラしていたのだが……、それも杞憂に終わった。
「ディランド=ベジャールだ。この度のご招待感謝する」
「宝石交易で一代で財を成した……ディランド公。お初にお目にかかります。宝石商の方のご来訪は旦那様もお喜びになりますでしょう」
「今日を良い商談の場として、末永くご縁を頂ければ幸いだ」
流暢に出てくる謝礼事項に内心で感嘆の声を上げる。
「秘書殿、コチラは私が最近契約をした商人のエルク=ヴァレンタインだ。よい目利きでね。掘り出し物を捜し当てるのが得意なんだ」
「これはこれは……」
何だその流れるような紹介。テンポいいな。
「ご紹介に預かりました、ヴァレンタインです。こちらは妻のパーヴォ。どうぞ、お見知り置きを」
そしてぺこりとお辞儀するメーヴォの美人ぶりよ。
「本日はお招き預かり光栄です」
「お美しい奥方ですな。さて、ご挨拶が長くなりました。ディランド公、こちらへどうぞ」
柔和な笑みを浮かべた秘書はディオニージの旦那を筆頭に俺たちを屋敷の中へと案内した。しかしディオニージの旦那はこんな社交辞令にまで精通していたってのにまず驚いたんだが……。
「旦那やるねぇ」
小声でメーヴォに呟くと、組んでいた腕の陰で足下を指さされた。
「よく見ろ、影に糸が延びてる。おそらくアデライド副船長だ」
よくよくディオニージの足元を見れば、細い糸のような影が延びていた。影腹話術ってところか?錬金術だけじゃなくて闇魔法にまで精通すんのかよ、アデライド副船長も絶対に敵に回したくないぜ。
そんな事を考えながら、秘書に通されたパーティーホールでは、既に各界の有名人が顔を揃えている上、ケースに入れられたとりどりの宝石が展示されていた。
さぁて、お宝を拝借する準備をしましょうかね。
海軍提督クリストフがホールに現れ、親しい署名人たちと挨拶を交わす中、馬の上の将はディオニージ(とアデライド)に任せ、場の空気に融け込むようにラースと僕はダンスの輪に入った。
ダニエル船医に突貫とは言えステップ指導を受けていた僕はともかく、ラースが普通にステップを踏んでいたのには驚いた。海賊家業が長い上に、こう言う潜入、変装事も場数を経験していると言う事か。途中からはすっかりラースのリードに頼った。
オーケストラの奏でる曲に合わせて踊り、曲の切り替えと共にそっとその輪を抜ける。
「驚いた。踊れるんだな」
「そりゃ、まあ多少は?」
ダンスを終え、壁際のソファに座って一息吐いていると、何人かの男に次のダンスの相手にと誘われた。ばれていないと言う安心感はあったが、流石にこの格好で見ず知らずの男と踊ってやるほど僕は出来ちゃいない。
「申し訳ありません。主人が参りますので、またの機会に」
ラースの妻と言う役柄を盾に上手い事やり過ごした。なるほど、恋人ではなく夫婦役なのはこう言う時強いのか。飲み物を取りに離れていたラースが帰って来るまでのたった数分で、若い男たちに囲まれてしまった僕をラースが笑う。
「愛しのパーヴォ、君の美しさに皆虜のようだ」
大らかそうに冗談を口にするラースの登場に、男たちはそっと退場していった。身長もあるしそれなりに貫禄の漂うラースを前に、嫁探しに夢中の若造が叶うはずがなかった。
「アナタはまたそうやって嫉妬なさる。あの子たち、怖がっていましたわ」
「嫉妬ではないよ、事実を言ったまでだ」
仲睦まじい夫婦を演じるのは多少のむずがゆさがあるが、それはラースも同じだろう。
ラースの持ってきたシャンパンで喉を潤す。さあ此処からが僕らの仕事だ。
外の空気を吸いたいから、とホールから出て屋敷の奥を目指す。廊下に出て屋敷の奥へ足を向けた途端、覚えのある臭いが鼻を突いた。
「……おかしい、火薬の臭いがする」
「え、マジで?」
ドレスの裾を踏まないように小走りで、廊下の壁に並んでいた壷の蓋を開け中を確認する。声無く鳴く赤い鳥がフワリとそこから出てきた。
「ファイアーバード……の雛か」
「当たりだ、この壷の中に火薬袋が入ってる」
どうやら鳥には縁があるらしい。火薬袋の紐で繋がれた雛を解放してやると、しきりにすり寄ってくる。腹でも空かせいてるのだろうと、火薬袋を開けて少し取り出して食べさせてやる。手のひらに出した火薬の粉を啄むファイアーバードの雛が愛らしいが、この中に火薬袋と共に入れられていたと言う事は、これは連鎖爆弾のつもりだったのだろうか。
ファイアーバードは火薬などの発火物を好んで食べる魔物で、その身が炎に包まれ死滅する際に大きな爆発を起こす。火薬とそれが連鎖すれば、この屋敷を吹き飛ばすのも造作無い威力になるだろう。
それがこんな風に仕掛けられていると言う事は、つまり。
「ラース、何かおかしい。僕ら以外にもこの屋敷の襲撃を企てている奴がいる」
「の、ようだな」
少し離れたところで、ラースが別の壷からファイアーバードと火薬袋を見つけていた。ヴィカーリオでも金獅子でもない、第三の勢力がこの屋敷に潜伏している。
「まずは旦那に報告だな」
頷きつつ、火薬の臭いのする壷を片っ端から開けてファイアーバードの雛たちを解放し、窓の外へ放してやる。ついでに火薬袋をドレスの下にしまう。
「ちゃっかりしてんなお前」
「貴重な物資だ。捨てておくのは勿体無い」
流石ぁと呟いたラースが、突然僕の腕を引っ張った。途端、目の前にあった壷がパン、と音を立てて割れた。
「なっ」
「誰だ!」
引っ張った僕を抱き留めながら、ラースが廊下の奥を見る。
「大人しくしろ!次は当てるぞ」
廊下の曲がり角に銃を構えた男が二人。その後ろにもう一人大柄な男が見える。大きく構えた男の顔に見覚えがあった。いいや、忘れるものかあの顔を。
「ラース。アイツだ、偽金獅子だ」
「あぁー……なんか見覚えがあると思った」
アイツには大きな借りがある。あの顔を潰して破裂させてもまだ足りないくらいだ。
「宝石商人さんとその奥方様。今この瞬間から、この屋敷は金獅子海賊団が占拠した。命が欲しけりゃ大人しくしな!」
まだアイツら金獅子を名乗っているのか。懲りない奴らだ。ここは一発本気で伸してやらないと駄目だな。
「メーヴォ、お前旦那にこの事伝えろ。出来れば騒ぎまくって海軍提督様のお力をお借りしようぜ」
「なに言ってるんだ。此処でアイツ等を始末すれば事足りるだろう」
「落ち着けよ、ここは海軍提督の懐の中。そんでアイツらは俺たちの正体に気付いてない。お前が暴れるにはそのドレスじゃ困るだろ。男たち相手に淑女が大立ち回り出来るかっての」
確かにこの服では満足に戦えない。戦ってラースの足を引っ張るのだけは御免だ。
「俺の早撃ちならまず負けねぇし、騒ぎ立てて海軍の奴らに感づかせれば、こっちは海賊相手に奮闘した商人だ。さっさとずらかれる」
「……だったら今一緒に逃げればいい」
「お前が走ってく時間稼がなくちゃ何ねぇだろ。そのドレスじゃいつもみたいに走れねぇだろ」
「でも」
こそこそと話をしているウチに、偽金獅子が部下二人に銃を構えさせたまま、じわじわと距離を詰める。
「逃げなさい、パーヴォ!」
それを合図に背を押され、隠し持っていた銃を抜いたラースが素早く撃った。銃を構えていた男の一人が肩を撃たれて倒れ、打ち返して来た弾丸が近くの壷を割る。
「き、きゃああああ!誰かぁ!」
悲鳴の練習なんかしなかったぞクソ!棒読みにも程があるが、誰かに届けばいい。ラースを振り返る事も出来ず、女のようになんて走れず、ただ足元に絡むドレスが邪魔でイライラした。兎に角ホールへ戻ればディオニージ船長がいる。ついでに海軍提督がいるだろうからそれで助けを……。
ホールに差し掛かったところで、肩を掴まれるような感覚に足が止まった。
『メーヴォさん、待ってください』
鉄鳥と話をする時のような、念波のアデライドの声がした。自分の影に細い糸のような影が付いているのを見て、何か起こっている事を察した。
『アデライドさん?大変です、僕ら以外にも海賊がこの屋敷に』
『やはりそうでしたか……今ホールに行ってはいけません。何処かに身を隠してください』
と言う事は、既にホールも何らかの襲撃があっと言う事か。兎に角手近で隠れられそうなところ……と辺りを見回して、少し先の部屋へと駆け込んだ。
幸いにも薄暗い倉庫だったそこに身を潜め、辺りからの物音が一切なくなり、部屋が静寂に包まれるのを待った。
『あるじ様、お怪我はございませんか』
『ありがとう鉄鳥。僕は大丈夫だ』
左耳の上で、コサージュをつけて髪飾りに擬態した鉄鳥が辺りを照らすようにぼんやりと光る。手入れのされている倉庫に埃っぽさはなく、今日ホールで使わなかったテーブルなどが仕舞われていた。しばらくは敵も気付かないだろう。
『アデライド副船長。状況をまとめましょう。そちらは一体何があったんですか?』
『ホールで出された食事に何らかの薬品が仕込まれていたようです。口にした人たちが次々に倒れて……』
『ディオニージ船長は?』
『しこたま料理を食べていたので、イチコロでした』
だろうな、と言う何か確信めいたものを感じつつ、僕もあそこで出されたシャンパンを口にしていたのに何故?と疑問が沸いた。
『おそらく時間差だったのだと。薬の盛られた品と、そうでない物が混ざっていた。たまたまメーヴォさんは薬の入っていない物を飲んだとか』
『いずれにしろ、運が良かったのか……って事はラースは』
もしかしたらラースの飲んだシャンパンには薬が混入していたかもしれないのか?未だにラースがコチラに走ってくる気配も、探しているような声も聞こえないとなると、その可能性は高い。エリーがいないと本当に運のない男だな……。
『そちらは何があったんです』
『偽金獅子の一団です。懲りずにアイツら、この屋敷内に潜入していたんです。ラースが応戦して、こんな格好で戦えない僕だけ逃げて来ましたが、恐らく彼も捕まったかしたかと……』
『つまり、無事に動けそうなのはメーヴォさんだけと……』
『アデライドさんは大丈夫なんですか?』
『私は無事ですが、同じく身を潜めています。今も目の届くところに見張りがいますから、出ていくのは難しいかと』
戦力として期待していなかったが、本当に自分一人しか動けないとなると気が重い。
『私は影を使ってアチコチの状況を見てお知らせしますから、中の事はお任せします』
『お任せしますって言われても……』
どうする。なんにしろ今僕が動かなければ、ホールの宝石も何もかも全て偽金獅子の手の中だ。覚悟を決めろ。一度は捨てたはずの命だ。
「……まずは、このドレスだな」
一番着けていて苦しかった革のコルセットを外す。次に袖を切る。幸い倉庫の中に鋏を発見したのでバッサリやってやる。更に長くて邪魔だったスカート部分を大胆に切る。下にショートパンツを履いていたのが功をそうした。鉄鳥に付けてあったリボンを外してバンダナ替わりに頭へ結ぶ。首元のフリルを開けてスッキリさせて良しにする。
『カツラはお外しにならないので?』
『流石にこれだけ化粧しているし、こんなヒラヒラした格好で素に近い姿はしたくない……いっそ女海賊でも演じてやるよ』
『なかなか素敵な格好になりましたね』
『あまり追求しないで下さい。黒歴史決定なんですから……』
淑やかな淑女がすっかりワイルドになってしまったが、動きやすさを取るなら仕方ない。派手にドレスを切り刻んだが、あの娘の作ったドレスならきっと平気だ。隠し持っていたヴィーボスカラートを右手に、同じく隠し持って来ていた爆弾と、失敬した火薬を懐に忍ばせ深呼吸する。
私は女海賊、私の名前はパーヴォ=ヴァレンタイン。いや、違うな。名前……パセーロ。あとは、薔薇……薔薇の女海賊パセーロ=ローゼス。
よし、行くかと扉に一歩踏み出した瞬間、窓を叩く音に気が付く。振り返ると先程窓の外に逃がしたファイアーバードの雛が窓辺に止まっていた。
「……何だ、お前たち逃げなかったのか」
窓を開けてやると五羽の雛たちが僕の周りを飛び回った。相変わらず空腹なのだろうか。このまま纏わり付かれても困ると、火薬袋から少しだけ火薬を取って食べさせてやる。五羽の雛たちは僕の手の平の火薬を啄ばむ。
「……お前たち、自分を閉じ込めたアイツらに仕返ししてやりたいか?」
雛たちが此方を見た気がして、鳴くはずの無い雛たちの声が聞こえるようだった。
『あるじ様も、生ける者の声をよくお聞きになられますな』
『……以前の主人もそうだった?』
『蝕の民の血でございましょう。わたくしもそうして使役された者でございます』
人心を惑わす金環蝕の瞳、か。
さあ、奪われたものを取り返しに往こう。
「お前たち、私の服の中に隠れておいで。さあ、往くよ」
クイーンオブパイレーツ、パセーロ様のお通りよ。
倉庫の外の様子を隙間から鉄鳥を飛ばせて確認し、ホールへと向かう。ダンスホールでは客人とクリストフ提督たちが隅に集められて倒れている。意識のある者、無い者と様々なようだ。そこにディオニージの姿も確認する。意識はあるようで、その視線の先にはあの偽金獅子が居る。
展示されていた宝石たちは大方ケースを壊されていた。しかし幾つかのケースはそのままだ。確かアレには防御の魔法がかかっていたはずだから、一定以上のダメージを与えなければ破壊は出来ないはずだ。そう言う点では爆薬を使った爆破の効果は大きい。さて、どうやって乗り込んでやるか。
『鉄鳥、防御の全てはお前に任せる。いけるな』
『勿論でございます。わたしくめにお任せを!』
破裂しそうな心臓をぐっと押さえて、ホールの中に足を踏み出す。私はパセーロ。女海賊パセーロ。
「ちょっと、これはどう言う事なの?」
女の声の高いはホールによく響く。一斉に偽金獅子たちの視線が此方に向けられる。その視線が全て驚愕の目をしていた。ソレはそうだろう。見張りのいた屋敷の外から入って来たと思っているんだろうから、どうやってと思うのが正しい。
「誰だ貴様!」
「それはコッチの台詞だよ!テメェらのお陰でコッチは計画が狂いっぱなしなのよ!」
いけない、口調が安定しない。口調を強く、女言葉はそのままに……。
「威勢が良いな、お嬢さん。俺たちは金獅子海賊団だ。恐れ戦いて逃げるなら今のうちだぜ?」
「金獅子なんて聞いた事がないわ!アナタたちはさっさとこの場をクイーンオブパイレーツ・パセーロ=ローゼス様に譲りなさい」
「聞いた事ねぇな、そんな名前はよ!」
「だったら覚えておきなさい!世界中の海がアタシのモノになるんだからね!」
言いやがるぜこのアマァ!と、海賊たちが武器を構える。大抵は飛び道具。頼むぞ鉄鳥!
『あるじ様、わたくしを前に!』
一斉に撃たれた銃砲と、投げられたトマホークが迫る。右に体を反転させ、鉄鳥の広げた翼で全ての飛び道具を防ぎ、弾き返した。
『流石』
『朝飯前でございます』
ざわつく偽金獅子たちを他所に、回転した惰性にくるりと長い髪を翻し、正面に構える。右手のヴィーボスカラートでピシャリと床を叩き、ボッボッと小さな爆発をいくつも起こし、敵を威嚇する。
「アナタたちの攻撃ってのはそんなモノなの?この海域の海賊ってのは貧弱なのね。魔法生物のひとつも飼ってないなんて可哀想だわ」
敵の神経を逆なでするように言葉を紡ぐ。こう言う相手にはまず冷静さを欠かせる事が有効だ。
「さあ、大人しくアタシにその宝石たちと、ヴァレンタイン様を返してくださる?」
「ヴァレンタイン……さっき捕まえた宝石商人か?……てめぇら仲間だったってのか」
飛び道具が聞かないと分かってか、手下の男たちが後ずさって偽金獅子の後ろに隠れる。情けない奴らだ。
「てめぇ、舐めた真似すると、この屋敷を吹き飛ばしてやるぞ!人質もろともぺしゃんこだぞ!」
「ふぅん。やって御覧なさい」
「なんっ……本気で言ってんのか」
「テメェも本気ならさっさとやってみろって言ってんのよ!この玉無しが!」
言葉を崩して威嚇する。かぁーっと顔を赤くした偽金獅子がやってやるぞこのぉ!と叫んで起爆スイッチらしきを押した。ホールの外で爆破音が一つ。その後に続く音は無かった。
「……なんでだ、何で爆破しないんだ」
偽金獅子の余りの動揺ぶりに、コレには流石の僕も演技を忘れかけた。
「あっははは!玉無しの上に弾もなかったってのか、おっかしいわ!」
「てめぇ……」
「あんなに火薬の臭いをプンプンさせてればすぐに分かるわ。起爆装置は細工させてもらったわ。で、アナタの言ってる弾丸は、この子らでしょう?」
素早く取り出した爆弾をヴィーボスカラートで着火して、未だ破られていないケースに向かって放つ。飛んでくる爆弾に萎縮した周囲に居た手下たちが一斉にその場を明け渡し、コン、と音を立ててケースに当たると同時に爆弾が爆発する。
「お行き!」
大きく袖を振って、中に隠れていたファイアーバードの雛たちを飛ばせる。爆破して割れたケースの中から、雛たちが宝石を咥えて飛び立つ。蒼石、緑石、金剛石、黄石、そして赤石。五羽の雛たちがそれらを持って一斉に戻ってくる様は中々絵になった。
「良くやったわね」
懐から火薬袋を出して火薬を雛に食べさせつつ、取ってきた石を火薬袋に滑り込ませる。
「きっさまぁ……魔物使いの類だってのか」
「本当に馬鹿な男ね。大方適当な魔獣商人から買って、その後ろくに餌もやらないでいたんでしょう?そんなのあっと言う間に乗り換えられて当然よ」
すっかり僕に懐いたファイアーバードたちを撫でながら偽金獅子を一瞥すれば、真っ赤な顔のまま怒りに震えていた。いい仕上がり具合だ。
「ヴァレンタイン様は何処?さっさと教えてくださらない?」
「てめぇら、あのアマやっちまえ!」
思惑通り男の合図で手下の男たちが一斉に剣を構えて向かってきた。
「本当に、馬鹿な男たち」
爆弾をヴィーボスカラートで着火させつつ上へ飛ばす。爆弾の行き着いた先は天井のシャンデリア。その接合部を爆破し、巨大なシャンデリアは地上にいた手下の男たちを押しつぶしながら、派手な音を立てて床に落下した。
「んんー……ちょっともったいなかったかしら。綺麗だったけど、仕方ないわね」
手下の男たちを一掃され、偽金獅子がうう、と呻きを上げる。
「さあ、次の手は?」
「てぇんめぇ……」
男は大斧を構えるが、それで突進するより僕のヴィーボスカラートの方が早い。
「うぅおぉぉぉ!」
雄叫びを上げる男の足下にヴィーボスカラートを走らせ、床をいくつもの爆破で埋め尽くせば、足下を焼かれて男が大げさに転んだ。大股で駆け寄り、転んで仰向けになった男の左肩を渾身の力を込めてヒールで踏みつける。
「うぎゃぁ!」
「さあ、ヴァレンタイン様は何処?」
「う、ぎぎ……ホールを出てすぐ」
「すぐの何処!」
「あぁぁだだだ!関節にヒールが入ってる!いででで!ホール出てすぐの調理場だよあああいでぇぇぇ」
「そうやってさっさと吐けば良いのよ」
調理場か。ラースを早く助けないと。いつ異変を察知した海軍の増援があるか分からない。
もう抵抗する気はないと踏んで、トドメを指さなかったのは迂闊だった。ホール出口に向かおうと背を向けた瞬間、背後で偽金獅子が雄叫びを上げた。
「ぶっ殺してやるぅ!」
鉄鳥がその翼を広げ防御すると同時に、男の振り上げられた大斧が、その頭上でピタリと止まった。
「おっ?あっ?」
「はーい、そこまでぇ」
偽金獅子と同じくらい巨躯の男が、片腕で大斧の柄を掴んで止めていた。
「ディッ……ディランド、様」
「女海賊さん、遅くなったな。ようやく体が動くようになって来たぜ」
コイツらの使った薬なら、恐らく以前僕が飲まされた物と同じだろうが、この短時間で効果が切れるとか、ディオニージ船長の体はどうなってるんだ。これが鬼人族と言うやつか。
「さぁて、金獅子さんよ。このディランド様を怒らせたその報いはきっちり払ってもらうが、覚悟は出来てるか?」
本物の威圧はやはり違う。圧倒的な力を持つ者の存在感が小さき者を喰い尽くさんばかりに迫る。魔法で隠したはずの額の角が見えるようだ。偽金獅子がひきつった顔で無言の謝罪と慈悲を請うが、ニコリと笑ったディオニージはそれを許さなかった。バキン、と大斧の柄が握り潰される音がホールに響く。
「ダ、メ」
語尾にハートが付いたようなにこやかな拒否の言葉と共に、ディオニージの左フックが偽物の腹にめり込んだ。偽物の体が良く破裂四散しなかったと人体の不思議に驚くレベルで、巨体が宙を舞ってホール端まで吹き飛んでいった。
「よし、えー、エルクを助けてずらかるぞ」
ぱんぱんと手を払いながら、ディオニージが何事もなかったようにホールを出ていく。
他の客人たちが絶賛と畏怖の混ざった複雑な眼差しを向ける中、どうせ動けない連中だし、僕自身は変装しているワケだし、と気持ちが大きくなった。
「さぁて、みなさんも命が助かったわけですし、それなりの謝礼をして頂きましょうかしら!」
笑顔で振り返り、動けない貴族たちが身につけているアクセサリーの類を片っ端から取り外して回った。
「命の代金ですもの、これくらい安いですよね」
にっこり笑って見せれば、大概の人間がひきつった笑いで返してくるからチョロいもんだ。
「おぉーい……私の愛しのパーヴォぉ……」
「女海賊さんよ、旦那は返してもらったぜ」
ホールにヨロヨロしたラースの声と、ディオニージの声が響く。入り口にはディオニージに担がれたラースの姿が見えた。そろそろ潮時だ。
「それでは皆さん、ごきげんよう」
ホールで未だ動けず転がるクリストフ提督とその客人に優雅に一礼して、女海賊パセーロ=ローゼスの華麗な活躍は幕を閉じた。
ディオニージの旦那に担がれて屋敷を出ると、丁度馬車を引いたアデライド副船長が出迎えてくれた。
「海軍の援軍が来ます。早く行きましょう」
馬車に駆け込み、猛スピードで隣町を目指しその場を後にした。
敵の仕込んだ薬を飲んでしまって、偽金獅子と対峙して時には手が痺れ始めていた。ドレス姿でまともに戦えないであろうメーヴォを先に逃がすので精一杯。よく俺だとばれず、人質として生かされていたもんだ。
「貴方はそれなりに顔がいいですから、そう言う趣味の相手に売り渡そうとしたんじゃないですか?」
え、なにそれ怖い。アデライドの冷静な分析にゾッとしつつ、未だ薬が抜けずにダルい体を馬車の背もたれへ押しつける。コイツが以前メーヴォも体験したしびれ薬の効果か……などと思いつつ、すっかり薬の抜けきったディオニージの旦那の鬼人族の強さを思い知った。
そして隣に視線を移せば、女海賊に扮したメーヴォがいる。ボロボロになったドレスが、女海賊を名乗るには様になっている。本当にいい女だなコイツ。女じゃねぇけど!
「ディオニージ船長、これを」
メーヴォが破れたドレスの胸元をゴソゴソやって布切れを取り出すと、ポケットや腰周りからゴロゴロとアクセサリーの類を取り出して包みあげた。
「そちらの取り分です。あとこれを」
更に火薬袋の中から何かを取り出そうとしたところで、袖の中からファイアーバードの雛が飛び出して来た。
「わっ!」
「うわっ」
「まだ連れてたのか!」
狭い馬車の中は飛び回る雛たちでごった返した。火薬袋の中身を食べれると思ったのか、雛たちがメーヴォに群がる。
「待て、待てって!それは食べて良い物じゃない!こら、啄むな!」
埒が明かないと旦那が馬車の扉を開けると、雛たちが一斉に外へと飛び立って行った。
「あっ、あっ!あぁー……」
「おい、あぶねぇぞ!」
何かを掴もうと身を乗り出したメーヴォを旦那が引っ張ると、メーヴォが体勢を整え直してから馬車の外を仰いだ。
「ディオニージ船長!何で扉を開けたんです!今、あいつらに石を、赤石とか、持って行かれたじゃないですか!」
「え?」
えっ?
「はぁ?何ですって!」
手綱を握っていたアデライドまでも声を上げた。
「う、嘘だろ?」
「嘘じゃありません!さっきの火薬袋の中に僕が奪った五つの石を隠していたのは貴方も見ていたでしょう?」
「あ、……あー確かに。え、えぇーと……」
ダラダラと脂汗をかくディオニージの旦那に、メーヴォの冷たい視線が刺さるし、手綱を握るアデライド副船長の殺気まで伝わってくる。
は、ははは!何てこった!あんだけの博打を打って儲けはこの程度か!だるい体で、俺は精一杯笑ってしまった。
一時間ほどかかるはずの陸路を、殺気立ったアデライドの手綱さばきで半分くらいの時間で移動した。馬車を港に置き、メーヴォが客人から拝借してきた宝石類を当初の予定通り四対六で分け、俺たちは解散。夜明けを待たずに金獅子の船は出航していった。
窮屈だった商人の服を脱ぎ、マルトの用意してくれた激苦解毒薬を飲み干して、ようやく俺は一息吐いた。
「しかし、重要な宝石は全部逃がしちまったな」
「僕がそんなに軽率だと思うのか?」
すっかり元の声と姿に戻ったメーヴォが、自慢げな顔で船首に立つ。
此処だと合図を送るように手を上げてそれを誘導する。夜明けの朝日と共に、そこへ五羽のファイアーバードが飛来した。
もしかして、もしかするのか!
「よしよし、良くやった。たくさん食べな」
手のひらの火薬を啄む雛たちが、メーヴォの足下に大振りなその宝石を置く。
「金獅子を出し抜くには危険と言えど博打を張らないといけなかったからな。コイツらが従順で良かった」
フェリペ司祭の蒼石、黄石、金剛石、緑石、赤石!五色の輝く石がそこに揃っていた。
「は、ははは!流石だぜ相棒!」
フラフラの足で船首まで走ると、最後に足がもつれて転びそうになった。
「危ない!」
差し出された腕を掴んで何とか持ちこたえ、そのまま逆にメーヴォを引っ張って抱きしめた。
「最高だぜ、俺の宝の鍵!」
とにかく笑いたかった。抑える事の出来ない嬉しさに、顔が緩んだ。朝日を受けて輝く石を眺め、大活躍だったメーヴォを抱いて、俺はこの達成感を噛み締めた。
「何だよ、まったく……」
苦笑するメーヴォと一緒に甲板に転がって、金獅子すら出し抜いた今回の作戦成功を、大口を開けて笑った。
「あの可憐で力強い女海賊を見たか!あの鞭捌き、是非叩か……是非私の伴侶にしたい!」
後日、突如現れ颯爽と姿を消した女海賊が噂になった上、クリストフ提督がすっかり心奪われ、高額の賞金をかけた事。
「あのアマ、次に会った時はブチ犯してやる」
「お頭、惚れたな」
「だな……」
偽金獅子はまたもあの場から逃げ仰せ、謎の女海賊に復讐を誓ったことを追記しておこう。
おわり




