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2-3 赤いのと青いの

 二人の魔法少女が未確認生物を蹂躙している。


「まさか複数魔法少女が存在するとは……」


 片方はお馴染みの紅袴の魔法少女だが、もう片方は初見の魔法少女だ。

 初見の魔法少女は川の水面を忍者のように動きまわり、残忍にも間合いに入った獲物を鋭利な物体で串刺しにしまくっていた。

 暗視スコープ越しでは解り辛いが、川の水が円錐状に盛り上がったまま固まっているので、魔法少女二号は氷属性なのだろう。

 どちらの魔法少女が優れているかは要調査だが、属性的にも戦闘スタイル的にも紅袴の魔法少女とは相性が悪そうだ。


「数が多いから応援を頼んだのか。だがさっきの言い争いを聞く限り、良好な協力体制を敷いている訳でもないような」


 出現位置が近く、声が大きかったので少女達の会話は筒抜けだった。そのお蔭で色々と推察できる。

 魔法少女が未確認生物と戦う理由は、個人的な利益の追求、レベルアップなのだろう。もちろん、街に被害がでないように配慮し、敵の数が多ければ仲間を呼びはする。

 けれども配慮もそこまで。第三者の安全第一ではなく、獲物の撃破を最優先した行動を取っている。二人の魔法少女の間に連携という概念は存在しない。各々が好き勝手に目に付いた獲物を倒していっている。

 魔法少女が悪いとは言えない。今回の二名動員も賢明な判断だ。お陰で敵を翻弄しながら圧倒的な火力で未確認生物の数を減らしていっている。特別、青着物の魔法少女の方は乱戦に強いらしく、傍目はためにも圧倒的だ。


「レベルアップなんて特典があればこそ、魔法少女なんて厄介やっかい事しているんだろうな」


 そもそも街を守る義務は彼女達にはなく、本来治安維持は警察のお仕事。彼女達の行動を非難する権利など誰も持ってはいない。

 魔法少女とは、魔法が使える強い女の子でしかないのだ。

「レベルアップのついでに人助けするのも、人助けのついでにレベルアップするのも所詮は同じってね」

 卵が先だろうとヒヨコが先だろうと、卵は産まれてくれさえしてくれば良い。


「ついでの善意に命が救われたのが俺だし。魔法少女は悪くないか……」


 上辺だけの言葉が口から零れ落ちた。

 藪に潜んでいるので他人には見えないだろうが、今の俺の顔はまったく納得していない表情をしているだろう。レベルアップごとき報酬で危険に身を投じる魔法少女のあり方について、不満しかないので当然の表情だ。

「ま、今日はそれでも良いんだろうね」

 息を潜めたまま戦場の締めくくりを見届ける。

 三十以上はいたはずの未確認生物が僅か十分で全滅しかけていた。残りはアナコンダ型が数本。人型はいつの間にか全員消失している。


「あの魔法少女達、レベルをどれだけ上げているのやら……」





「最後は貰ったッ! 炎上、炭化、火炎撃!」

「凍結、崩壊、氷結撃――フリーズエンド」


 アナコンダ型の未確認生物は終始水中移動していたため、紅袴の魔法少女の火炎魔法で即死はしなかった。

 その代りに、青着物の魔法少女が発する冷気によって全身をセ氏マイナス五十度ぐらいまで冷やされた後、粉々に砕かれて消滅する。炎を苦しみ抜いた分損な死に方だ。

 天竜川に出現した未確認生物の最後の一体は、このように討伐された。

「ああっ、取られた!」

 掃討し終えた魔法少女達が天竜川中央から岸に戻ってくる。

 紅袴の魔法少女は青着物の魔法少女に対して悔しそうな表情を向けてから、言葉を投げ掛ける。


「ねぇ、レベルアップした?」

「……した。今のでレベル59」

「そう、おめでとう。一応祝ってあげる」


 あまり親しい間柄ではない、と言うよりも青着物の魔法少女の愛想が冷凍庫で冷凍保存されているのか。会話が途切れて二言以上続かない。

「……もう済んだから帰る」

「帰れ帰れ。困った時しか呼ばないけど、その時はまた力を貸しなさい」

 同じ魔法少女でなければ共通項はない、と言いたげな二者に親しみはない。

 戦闘が終わって用事はなくなったと、青着物の魔法少女は天竜川の上流を目指して跳んでいく。

 ふん、と不満げに長髪を揺らして、紅袴の魔法少女は天竜川を飛び越えて中心街の方へと消えていった。

話は落ち着いたように終わっていますが、次回そこそこ話が展開します

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミックポルカ様にて連載中の「魔法少女を助けたい」 第一巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない  (絶賛、連載中!!)


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