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10-1 廃墟の三人

 廃墟同然のホテルに黒バイで乗り付けた御影達は、従業員通路を経由して階段をのぼっていく。

 エレベーターは設置されているが、乗っている間に落花生に強襲されては目も当てられない。そうでなくても定期点検を受けていない機械に搭乗する気はなかったので、足で階段を一段一段上がっている。

 『力』は皐月の方が何倍も上回っているが、男は手ぶらで女が労働というのは構図的に違和感がある。今は御影が浅子を背負っていた。


「マスクの手、借りる、つもり、ない」

「俺もアジサイを助けているつもりはないから、安心しろ」


 時間経過により魔法の麻痺が解け、声帯がほぐれてきている浅子だったが、今は御影の背中で黙り込む。


「アジサイが言った通り、アジサイ姉に手は出していないだろ?」

「……へりくつ」

「俺だって状況も分からずに助けに入りたくはなかったさ。だいたい、敵の黄色いのは格好を見る限り魔法使いだろ。どうして敵対している?」

「黄色じゃなくて落花生。敵に寝返ったのよ。まあ、状況的に寝返るしかなかったのでしょうけど」


 浅子の代わりに皐月が疑問に答えた。嫉妬をエネルギーにして発電していた落花生の反応から、どういった理由で襲ってきているのかを想像するのはそう難しくない。

 落花生という魔法使いの現状を語れば、御影が助けにこなかった皐月となるだろう。

 天竜川の魔法使い全員が化物に屈服したのであれば、単純に化物だけを憎んでいられたはずだ。しかし、皐月が御影に助けられた所為で、哀れな犠牲者は落花生一人しか存在しない。こんな仲間外れ、一人ぼっちの落花生に許容できるはずがない。

 自分が助かる側に入れないのはただの不運だ。

 不運であったとしても、他全員を助からない側に引きずり込みたいという歪んだ衝動に駆られてしまったとしても、仕方がないのかもしれない。怨霊や悪霊ならば間違いなくそうする。

「御影は悪くないからね。私は感謝している」

「俺もそう思うよ。……本物がどう思うかは知らないがな」

 口がマスクに隠れていないため、後半の言葉を少女達に聞かれないように小さくつぶやいた。



 最上階――城の外観をしているこのホテルでは天守閣に相当する場所――に到着した後、御影は背負っていた浅子を下ろす。

 逃走は一旦止めて、皐月が『魔』の気配を隠す魔法を唱え終わるまで小休止となった。

「あー、んー、遮断、迷子……は違うか。あれは方向音痴になるだけだし」

「……ちがう、そうじゃ、ない」

 御影だけならこのまま隠れられただろうが、この場には高レベルの魔法使いが二人も存在する。高レベル者特有の膨大な『魔』を検知されて、直ぐにでも落花生が追いついてくるだろう。

 屋内に入った程度では三桁以上の『魔』を誤魔化せない。魔法に対抗するには魔法しかないのだ。


「えー、んんー? 遮断、防滴……も駄目か。防水にしかならないし」

「センス、ぜろ」

「アジサイねぇ。横からいちいち、何?」

「私が、ステータス異常から、回復する方が、早い」

「アジサイなら補助魔法ぐらい使えるでしょうけど、回復まで残り何分くらい?」

「……一時間?」

「絶対に三十分以内に完成してみせるから、黙っていなさい」


 皐月の魔法詠唱はかんばしくなく、額に整えた眉を寄せながら苦労している。

 派手な攻撃魔法ばかりを好む皐月には、使った事のない補助魔法の詠唱は荷が重いようだ。


「そもそも、使いどころがあるのか分からない魔法を覚えているアジサイがおかしいのよ!」

「皐月が、ぶきような、だけ」

「――がんばってくれとしか言いようがないな。俺は俺で作業をするからよろしく頼む」


 壁にもたれて寄り添う二人の少女は、仲が良いのか悪いのか御影では判断できない。本物ならば、どうだったのかと御影はマスクの裏で思わなくもないが。

 暗がりでマスク越しという悪条件であるが、御影は浅子の顔は確認できた。

 偽者である御影の使命とは、可愛いという噂の魔法少女の顔を確認するという一点である。彼女達を助けたのは顔を確認するついででしかないのだ。

 そろそろお役御免だろうと思いつつ、二人に背中を向けてから折り畳み式携帯電話を取り出す。


『件名:敵は黄色い魔法少女 

 本文:戦えるのか?』


『件名:RE:敵は黄色いのか 

 本文:想定はしていた。アジサイ姉から誰かをつまみ食いしたと聞いていた』


『件名:RE2:ああ、黄色い  

 本文:そうかよ。こっちは魔法で隠れたらそのまま移動する。敵の対処は任せた』


『件名:RE3:黄色の名前は? 

 本文:セーフハウスまで案内したら、今日はもう帰っていいぞ』


『件名:RE4:ピーナッツ

 本文:本望だが、女二人を連れ込ませて後はもう帰れって、お前酷ぇな』


『件名:RE5:ピーナッ』


 メールの返事は途切れたまま届かず、御影は首をひねる。が、特別気にする必要はないだろうと携帯をしまう。

 そのままのぼってきたばかりの階段に向かう。


「色々と散乱していて足元が危ないから、最上階からりてくるなよ。大きな音がしても、たぶん罠が発動しただけだから心配するな」


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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミカライズ「魔法少女を助けたい」 1~4巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない


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