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7-5 フレイム・エンド

 何者かに後ろから袖口を引っ張られる。

 見上げる程に巨大化したギルクの真の姿に圧倒されたのか。皐月が傍に近づき、俺の服を摘んでいた。


「皐月か?」

「せっかくがんばってくれたけど、あんな化物に敵いっこない」

「そうだな、普通の人間なら勝てないだろうな」


 小さく耳元で呟く皐月の口調は固い。


「最後のおとりになるから、マスク男だけでも逃げ――」

「だから最後の一撃は皐月に託す。残った『魔』をすべて投じて、ガスタンクを爆破してくれ」


 勝利を目前とした少女の声質としては、随分と気合が入っている。俺も、兜の代わりにマスクの緒を締める事にしよう。

 近くに撫でられる頭があるが、気を引き締めた俺は撫でたい欲求を排除する。皐月の細い肩に手を置いてギルクへのトドメの一撃を依頼した。


「まだ、勝つつもりでいるの??」

「そのためにガスタンクを選んだつもりだが?」


 巨大化したギルクは未だにタンクを頭上に掲げている。どうせ、意趣返しとして、俺をタンクで潰そうとしているのだろう。

 さっさと投げ捨てていれば、勝者と敗者は違っていたかもしれないというのに、愚かなオークだ。異世界の化物だから中身を知らなかった、という弁護もしてやれない。

 斜め後ろに向けていた視線を前方上空に移動させて、俺はギルクに告げてやる。


「ギルク、お前はやっぱり人間を怖がっているんだ!」

「そう思いたければ思えば良い。そう思う事でしか死に逝く己を慰められないのであれば、思えば良い」


 巨大化した化物の声は太鼓を近場で叩かれたかのようで、一声一声が体全体に響く。

「なら、どうして見下している人間に本当の姿をさらしている?」

「それはお前達に最大の恐怖を目撃させるためだ」

「違うな。いつものお前なら、本当の姿を見せて人間を対等の敵扱いするはずがない!」

「くどいぞ、人間。水掛け論で後味を悪くするつもりはない。そうやって時間を稼ごうというのなら無駄だ。今からこの鉄球でお前達を潰してやろう」

「そうだな。言葉だけで屈服させてやるつもりは俺にもない」

 皐月に摘まれていない方の腕を上げて、顔に付けている黒マスクに手をかける。


「本当の姿を見せてくれた礼だ。俺も、本当の顔を見せてやろう」

「面を脱いだところで、それがどうした……と…………?」


 百五十キロで走行しても脱げないように強く固定していたため、片手で取り外すのはやや苦労しながら、ギルクに素顔を見せてやる。

 取り外したマスクを片手に、マスクのない顔は上空を。


「……なんだ? そっ、その顔は??」


 言葉に詰まり、筋肉を緊張させたギルクを不審がる皐月。

 背後から前に出て、俺の顔を見ようとする皐月を空いている片手で止めて、魔法の詠唱を促した。


「人間……アサシン……いや、お前はいったい何者なんだ??」

「人間で正しいし、アサシンでも正解だ」

「……あ、ありえない。ありえない。ありえてたまるものか! きっと、どこかの魔族が化けているんだろ、人間をかたるなッ!!」

「俺は人間であっている。だから、お前は今、得体の知れない人間に恐怖を覚えている」


「嘘を言うな! 顔のない人間など、いてたまるものか!!」


 怯えるギルクの両方の腕に不要な力が加わり、ガスタンクの球面全体に亀裂が入る。

 タンク内部の気圧が急変動し、液体化していたガスの気化が始まる。

 ガスタンクは本当に優秀な構造している。爆発させようと思ってもなかなか爆発させられない。内圧が上昇すれば各バルブが開いて圧力を下げようとするし、仮に爆発したとしてもまず上部の構造物が吹っ飛ぶ事で威力を上に逃す構造をしている。

 だが、ガラス球が割れるように、鋼鉄製の入れ物全体が軋んで一気に崩壊したのなら、そういった安全処置も正常に機能はしない。


「皐月、今だッ!」

「全焼、業火、疾走、火炎竜巻ッ――フレイム・エンド!」


 皐月の最大範囲魔法が発動する。

 ギルクを中心とした火炎の竜巻が舞い上がり、見上げても先の見えない上空まで続く赤い火柱が形成された。

 分厚い炎の壁にギルクと頭上のガスタンクは完全に覆い隠されてしまい、内部がどうなっているのか確認できない。

 よって、直後に起きた事は全部想像だ。

 魔法の猛熱に加熱されて、崩壊しかけていたタンク内のガスは一斉に点火。ミリ秒以内に、体積を倍化させてタンクを完全に破壊する。

 地方都市の一年間の消費を賄えるだけのガスが爆発した事により、まず、化物の両方の手の平は消し炭さえ残らずに弾け跳ぶ。

 爆発の余波は衰える事なく、腕、肩を吹き飛ばしていき、胴体部分に襲いかかり、全身を焦がした。

 最終的に残った部分は一番分厚かった胸から下の部分だけだった。タンクの真下に位置していたギルクの頭部を含めて、体の上半分の突起物はすべて取っ払われてしまったのだ。

 魔法の火柱が消えた後、化物の結末を確認する。

 最終的に、頭部という思考中枢を失い、もう何も考えられなくなってしまった半生の化物の死骸がゴルフ場に直立していた。

ギルク戦とうとう決着です。

幹部一匹倒すだけでも文章にすると長いものです。


次々回ぐらいから新章開始予定で、

アジサイを中心に話を展開させるつもりです。


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 第二作 誰も俺を助けてくれない

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