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3-1(表) A.M.9:30

(裏)の裏の話です。

2章終了からまだ一日も作中時間が経過していません……。4章は改善したいところです。

 日はまた昇った。

 天竜川に黒幕が現れようと、その黒幕に怖気づこうと、無為に時間は過ぎていく。


『――で、講義を休んだ理由は分かったが、講義休む程に切迫した状況で何故俺に電話している? もっと励めよ』

「登校中の学生の顔を確認する作業が無駄に終わって時間が余ったからね。悩み事を聞いてもらおうと」


 女学生の顔を眺めるたび、不審者を批判する視線を返される作業に心が磨耗しきった午前九時の半ば。

 大学は丁度講義と講義の合間の小休憩。

 天竜川で惨めさを味わってまだ十二時間も経過していない。

 通学路の脇でへばる俺は、携帯電話に登録されている大学唯一の友人に連絡を取っていた。


「悩みって喋るだけでも軽減されるって言うからね。優太郎は話を聞いてくれるから助かるよ」

『俺をナチュラルに巻き込むな。お前と違って、俺は魔法少女とやらと出遭った事はない。顔も知らない赤の他人では動きようがないな』

「俺は顔を知っちゃっているから頑張っているんだって。魔法少女は確か学校とか喋っていたから、たぶん学生だとは思うけど」

『地方都市とはいえ、学舎は多いぞ。ギルクとやらが魔法少女を襲うまでに見つけられるのか? ……ん、そもそも見つけてどうするつもりだ?』


 携帯電話越しに紙屋優太朗のもっともな疑問を受けて、俺は返答に苦労する。

 天竜川で最悪の事実を知ってしまった俺は、朝眠る事もできずに、充血した目をしたまま市内の学園を巡回している。

 目的は魔法少女を探し出すためであるが、探した後の事は正直考えていなかった。何かをしなければという焦燥感に駆られた無意味な行動だとは分かっているのだが、気持ちが急いて考えがまとまらない。


「余裕はない。一番目に狙われるのは紅袴の子だから、早く危険を知らせたい」

『レベル150付近らしき黒幕の会話、録音でもしていたのか? まぁ、録音があったとしても信じてもらえるとは思えないが』


 寝不足で頭が回っていないのも悪因で、脳細胞というギアが空回りしていた。

 思考力もそうだが、体の不健康具合も無視できない。近くのコンビニで買ってきたエネルギードリンク『ブルーカウ』を一気飲みしたため、徹夜と疲労で荒れた胃が不調に悶えている。

 四車線道路の向かいに見えるファーストフード店で、一度体を休めるべきかもしれない。


「レベル差を考えると何もかもが馬鹿らしいけど。……俺は俺にできる事をやろうと思う。多少なら悪事もいとわない」

『ま、無理はしても良いが学園校内に突入はするなよ。最近は防犯意識が高いから、校門を越えただけで即時ロリコンとして捕縛されるぞ。大学生だから一、二歳しか離れていないなんて言い訳誰も聞いてくれない。留置場に拘束されたら、もう何もできないからな』

「心得る。幸運を祈ってくれ」


 優太郎にはやせ我慢してみせるが、顔しか知らない女学生を市内から探し出すのにさえ限界を感じ始めている。


『とりあえず飯でも食べて落ち着け。じゃあな』


 通話の切れた携帯電話を折り畳んでしまい込む。優太郎のアドバイスはいつでも的確だったので従うつもりだ。

 最近買い換えたばかりの真新しい財布の中身を確認。歳の数の千円札を常に入れておくように心掛けているので、ファミリーレストランやファーストフード店で食事するぐらいでは資金は揺るがない。が、俺はあえて先程行ったばかりのコンビニを目指す。


「さっき、レシートで十円引きのクーポン手に入れたしな。節約、せつや……く?」


 歩行のために踏みおろした足が、強く音を鳴らす。

 目線を道路の向かいに移動させて、思い出したかのように天を見上げる。今日も良い天気だ。


「優太郎と話したのは正解だったな。真剣に思い詰め過ぎている。欠伸でもしてから、もう少し小利口な方法を考えるか」


 口を盛大に開いて大気を体内に集めると、良くない物が出てくれるようにと欠伸を吐いた。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミックポルカ様にて連載中の「魔法少女を助けたい」 第一巻発売中!!◆  
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない  (絶賛、連載中!!)


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