19-5 平然と嘘をつくアサシン
御影ステータス
===============
“●レベル:22”
“ステータス詳細
●力:18 守:6 速:36
●魔:0/0
●運:10”
“スキル詳細
●レベル1スキル『個人ステータス表示』
●アサシン固有スキル『暗器』
●アサシン固有スキル『暗視』
●アサシン固有スキル『暗躍』
●アサシン固有スキル『暗澹』(New)
●実績達成ボーナススキル『エンカウント率上昇(強制)』
●実績達成ボーナススキル『非殺傷攻撃』
●実績達成ボーナススキル『正体不明(?)』
●実績達成ボーナススキル『オーク・クライ』
●実績達成ボーナススキル『吊橋効果(大)(強制)』
●実績達成ボーナススキル『成金』
●実績達成ボーナススキル『破産』
●実績達成ボーナススキル『一発逆転』
●実績達成ボーナススキル『救命救急』
●スキュラ固有スキル『耐毒』
●実績達成ボーナススキル『ハーレむ』”
“職業詳細
●アサシン(Bランク)”
===============
レオナルド(勇者)ステータス
===============
“●レベル:102”
“ステータス詳細
●力:502 守:485 速:98
●魔:202/202
●運:104”
“スキル詳細
●レベル1スキル『個人ステータス表示』
●勇者固有スキル『全・良成長』
●勇者固有スキル『強い者いじめ』
●勇者固有スキル『強靭なる肉体』
●勇者固有スキル『蛮勇』
●勇者固有スキル『第六感』
●実績達成ボーナススキル『自然治癒力上昇(強)』
●実績達成ボーナススキル『色を好む』”
“職業詳細
●勇者(Sランク)”
===============
レオナルドの『第六感』スキルを上回る方法は何ぞ?
この難題の答えに至るための次のヒントは、『第六感』スキルが何に対して反応するか、である。
前回の戦闘で、レオナルドは人間にあるまじき事に、顎にSIGの銃口を押し当ててからの零距離射撃を耐えてしまった。ミドル級ボクサーがフライ級のボクサーのアッパーカットを食らった程度の痛みに眉間を歪めていただけであった。
弱者に対して、攻撃の無意味さを知らしめる手段としてはかなり有効だったとは思う。
だが、生身で銃弾に耐えたという衝撃ばかりが強いが、後から冷静になって考えるとレオナルドの行動はあまりにも無謀だ。レオナルドは異世界に精通しておらず、銃という武器の特性を知らない。それなのに、敵の士気を削ぐためだけに体を張るとは思えない。
己の『守』の高さに絶対の自信があった。この解釈は、全身鎧で体を守っている者の行動としては不自然である。
やはり『第六感』スキルに備わっている機能が、レオナルドを強気にさせているのだろう。
レオナルドの無謀から推測するに、『第六感』スキルは受けるダメージ量を事前検知できるようだ。銃弾で顎が砕かれないと分かっていたからこそ、レオナルドは銃を受け止められた。
被害を数値として検知できるかは不明だが、レオナルドが過信できる程の精度はあるのだろう。
ここまでの推測が事実だとすると、俺の実績達成スキルである『非殺傷攻撃』を発動させた場合、はたして『第六感』はどんな反応を見せるか。
===============
“『非殺傷攻撃』、致命傷にできる攻撃を任意で加減可能”
===============
『非殺傷攻撃』スキルを強度最大で発動すれば、本物のナイフが玩具よりも安全安心な状態に変化する。
そんなナイフに脅威など有るはずがなく、『第六感』スキルはナイフを見逃した。無害な物体に逐一反応を示してスキル所持者を悩ませるだけの駄目スキルが、勇者職のSランクスキルであるはずがなかった。
だから『第六感』スキルの判定に問題はない。
……レオナルド本人がどう捉えるかはまったくの別問題であったが。
結論その二。『第六感』スキルは受ける攻撃のダメージ量を事前に検知でき、自動で迎撃を行える。一方で、攻撃とも呼べない無害なものに対しては一切反応しない。
「ッ!? マスク野郎、どうやって!」
鎧を一度微動させてから、レオナルドは硬直する。
『オーク・クライ』が要因ではない心的重圧に、レオナルドは額から冷たい汗が生じて肌を伝って落ちていく。
「どうした、レオナルド。弾を防いだ人間が、ナイフぐらいで怯えるのは可笑しいだろ」
「俺の『第六感』が効かねえなんて冗談、笑えねぇんだよ!!」
レオナルドは大剣を振り回しながら振り返るが、焦っているのかかなりの大振りだ。バックステップで悠々と回避してみせる。
回避の際に、ナイフがレオナルドの首筋に触れないよう注意した。ナイフに殺傷性がないと、レオナルドに斬れない事を悟らせたくなかったからである。
このナイフはレオナルドを斬るための武器ではない。レオナルドに『第六感』スキルに対する不信感を抱かせるためのものだ。
「たとえなッ! 『第六感』を本当に騙せたところで、それでどうにかなると――」
「そう思うなら、ほらッ」
ナイフをレオナルドの眉間目掛けて投擲する。
レオナルドはまたしても警告を発しない『第六感』スキルに失望しながら、六感ではなく視覚でナイフを捕捉し、左手の甲で弾き落とした。反射的な行動だろうが、俺としては期待通りである。
「レオナルド、『第六感』に限らず、お前の勇者職スキルはすべて俺には通じない。アサシン職のスキル、『暗鬱』は対象のスキルを妨害する効果がある」
「スキル封じのスキル、だと!」
「お前は終わりだ。スキル補助のないお前に、何ができる?」
俺の口から発せられるまったくの出鱈目に、レオナルドは耳を傾ける。
異世界ではアサシンが絶滅しているようなので、職業スキルについて伝わっている可能性は低いと思っていたが、やはりレオナルドはアサシンのスキルを知らないようだ。『第六感』スキルへの疑いも合わさって、存在しない『暗鬱』スキルの存在を信じてしまったのだろう。
『暗鬱』なるスキルの存在は真っ赤な嘘であるが、実際に現在のレオナルドが発揮できるスキルには制限がある。
『第六感』スキルは正常に動作しているが、レオナルドの心に疑念が沸いている。
『強い者いじめ』スキルについては、レベル100近いレオナルドとレベル22の俺とでは条件を満たせない。
『蛮勇』スキルについても、『オーク・クライ』で精神を圧迫している状態で完璧に発揮できるものではないだろう。
最後は『強靭なる肉体』であるが、こちらは次の攻撃には適用されない。
「……まったく、お手上げだ。まいっちまうな」
レオナルドは敵前だというのに目元を手で覆い、やれやれと首を振る。
「いや、マスク野郎には降参だ。参ったぜ。まさかな……スキルを封じたぐらいで、勇者の俺に勝てると思っているのだからな」
目元を隠していた左手を口元に移動させて、体内から漏れ出る侮蔑の笑いを押し止めようとしている。
「どうしてそんな勘違いをしてしまったのか、本当に分からねえなっ! 非力なアサシンが努力して俺のスキルを妨害したところで、パラメーターが段違なんだぜ」
アサシンへの嘲笑を噛み殺した事で、口の蓋をしていた左手の役目は終る。
「そもそもよ、『第六感』は勇者職がSランクになってようやく開眼したスキルだ。俺がスキルばかりに頼って、魔族共と戦ってきたとでも思っていたのか?」
最終的に、レオナルドの左手が到達したのは、大剣の柄だった。
レオナルドは両手持ち、両刃の大剣を地面と平行になるように構えて、剣先を俺の心臓に向けてくる。
レオナルドの指摘は正しかった。頭を悩ませて勇者職スキルに対策に施しても、そこが俺の限界だ。たった18の『力』では、300オーバーと予測されるレオナルドの『守』は突破できない。
「じゃあな、間抜けなマスク野郎ッ!」
圧倒的な『力』と圧倒的な『速』、そして圧倒的な『守』を信じてレオナルドは突進し、大剣を突き出す。
レオナルドとの相対距離はたったの五メートル。
廃墟を背後にしていて、俺が逃げ込める場所は存在しない。
正しく、絶体絶命の窮地というのだろう。誰にとっての、という命題はこれから判明するだろうが。
俺の足元の影の濃密さが増していく。
レオナルドは慎重さに欠いていた。『第六感』スキルに不信感を抱いたまま俺の五メートル圏内に足を踏み入れるなど、自殺志望としか思えない。そんな状態で闇夜の夜に迷い込んだら、勇者と言えど溺れ死ぬだけではないか。
「『暗澹』発動ッ!」
スキル発動を切っ掛けに、俺の足元から湧き上がる濃密な黒い霧が朝の柔らかな日差しを完全に遮断する。
突撃中だったレオナルドは不測の事態に対して急制動を試みたが、停止できない。迂闊にも、どっぷりと全身を暗澹空間に浸していった。




