モノローグ
初投稿です。
読んで楽しんでいただければ幸いです。
俺が彼女の存在を知ってしまったのは、昨日の夜十一時頃。
昨日は気まぐれに、通販の代金振込みのためコンビニに出掛けたのだ。振込み期限はまだまだ余裕があり、夜歩きする必要性はなかったのだが、思いたった事は即実行する性分に従ったためである。
一月の夜は冷え込み、寒かったと記憶している。
地方都市は街灯が少なく闇に対する恐怖心はあった。が、大学生たる己にとって夜の十一時は深夜とは呼べない。午前三時就寝が基本となって久しい。男子が夜道を気にするのもいかがなものである。
……これが酷い慢心であった。
治安の良さに感謝する訳でもなく、ただ胡坐をかいているだけの俺にはそれ相応の罰が下ったのだろうか。
本当は運が悪かっただけなのだろうが。
ともかく、俺は出遭ってしまった。
彼女……の前に、三メートル弱の巨大な化物と。
最初は車両の見間違えや遠近法による錯覚を疑った。
だが、川辺の闇から這い上がってきた巨体は、真冬にもかかわらず毛皮を腰に巻いただけのワイルドな不審者で間違いはない。服装に加えて単眼という特徴が加われば、もう化物としか言い表しようがなかった。
頭部の中央にボーリング大の目玉が一つ。
重機を彷彿とさせる筋肉質な四肢。
正反対にだらしなく垂れた下腹。
どう見間違えても空想上の異形、サイクロプスとしか思えない化物は、たまたま傍にいた通行人、つまり俺を巨大な一つ目で視認するとグワグワと呟く。行儀悪く涎を垂らした。
蛇に睨まれたカエルの気持ちを察してしまう。が、より早く、化物が美味そうな獲物を発見して喜色を零した事を理解できてしまった。
そして次に理解したのは俺の死因。
化物が振り上げた手には野太い棒が握られていた。それが俺の頭の上に落とされて、脳が潰れる頭部陥没が死亡理由だった。
「――炎上、炭化、火炎撃」
何者かの声が聞こえると同時に、頭上から熱と光を全身に浴びる。
振り下ろされていた棍棒は、俺の頭に到着するまでの僅かな時間で炭と化した。衝突の威力は棍棒のそれと比べて随分と軽く、俺は炭を被っただけで頭を割られずにすむ。
化物、生命の危機、炎。
流れ作業のように続く混乱の締め括りは、俺を助けてくれた彼女の登場だ。
「君って不幸な人間の中では酷く幸運ね。炎の魔法使いに命を救われる機会なんてそうそうない訳だし」
声質は高校生ぐらいだろうか。
大人というにはまだ若く、幼いというには成長が終盤な少女が、郵便ポストの上に立っていた。ポストを足蹴にするとは褒められた人間ではないが、彼女の奇抜な格好が悪行を忘れさせる。
どうして平成になって四半世紀も過ぎているのに、大正浪漫な女学生な格好をしているのだろうか。一方で、どうして所々がヒラヒラした布で飾られているのだろうか。紅色の袴と白いフリフリがコントラストになっていて鮮やかだが。
「炎の魔法使い、皐月。参る!」
魔法使いと本人は言っている。が、たぶん彼女は魔法少女なのだろうなと確信した。