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ママと家族の物語

ママの旦那さん

作者: 岡江

前作『ママはママで、』の続編で、「ママ」のお話です。時系列的にはこちらの方が先になります。


病気や死に関する描写及び延命治療を肯定する表現が(多少ですが)含まれますので苦手な方はご注意ください。


ママ」の口調に違和感ありまくりなので、いつか直したいと思ってます…。

私の夫はバスの運転手だった。


そして私たちの出会いも夫の運転するバスだったの。

バスの運転手とお客の恋愛だなんてまるで小説かドラマのようだなんて言われることもあるけれど、実際にそうだったんだから仕方がないじゃない。


まぁ、運命ってやつかしらねぇ。



夫の背はそこらの人と変わらない高さだったけど、力が強くて体も大きかった。


ちなみに、荷物が重くてバスの乗り降りに四苦八苦していた私を夫が助けてくれたことが夫と話をするようになったきっかけ。

私が引きずるようにして運んでいた荷物を簡単に持ち上げた姿は本当に格好良くて、今思えば一目惚れだったのかもしれないわね。




え?

その後のことを詳しく聞きたいって?


話せば長くなるから勘弁してちょうだいね。

でも、そうねぇ…簡単にでいいのなら…。



--------------------------





夫が運転していたバスは私もよく利用していたから何度も乗るうちにだんだん打ち解けてきて、そのうち夫の仕事が休みの日にも会うようになったの。

今でいう「デート」ってやつよ!


私たちが住んでた所は田舎だったものだから、出掛けるって言っても近くの河原を散歩するくらいだったけれどもね。



そんなことが一年以上続いてもみじが紅く色づき始めた頃、突然プロポーズされて本当に驚いたのよ!

しかも、「親戚が経営するタクシー会社に転職するために今の仕事を辞めて春には都会に出る。だから僕について来て欲しい」って言うんだもの。

腰を抜かすくらいの驚きだったわ。



でも好いた人にそんなこと言われたら悪い気はしないでしょう?

その時の私は舞い上がってその場で返事をしちゃったものだから、両親に後でこっぴどく叱られたの。


両親は私が都会に行くことを最初はそりゃあ渋ったけど、夫の説得もあって許してくれた。



それから私たちは結婚式を挙げて晴れて夫婦になったってわけ。





春になって、私たちは予定通り都会に引っ越した。

都会って言っても私たちが住む新築の団地の周りはまだなんにも無い更地で、工事の車両が一日中走ってるような所だったけど、夫と一緒だから心配なことなんて何もなかったわ。




次の年の春には長男が生まれて、三年後には長女も生まれて…。


毎日大変だったけども本当に幸せだった。

最初は何もなかった団地の周りには他にもたくさんの団地が建ち始めて、そしたら学校もできた。

そのうちに駅ができて周りに店も集まってきて、更地でしかなかった町が大きな道路も公園も病院もある立派な街になった。



街が賑やかになっていくのと同じように長男も長女もすくすくと大きくなって、私はこの幸せがずっとずっと続いて行くものだとあの時は信じて疑わなかったの。






夫が病院に運ばれたって連絡が来たのは長男が大学2年生、長女はまだ高校2年生の時だった。


その時には夫の体の中で病気がかなり広がっていて、手術は成功したけども仕事を続けるのは難しい状態で、私は夫のことと子供たちのこと、そしてこれからのことを考えて目の前が真っ暗になったような気がした。




でも立ち止まってちゃ何もできない。


私はそれからすぐに仕事を探して、運良く夫が入院している病院の近くの飲食店で雇ってもらえたし、子供たちの学費も奨学金でなんとか目途がついた。



朝から夕方まで働いて休憩時間に夫の面会に行き、仕事が終わったら急いで家に帰って子供たちと過ごす。

そんな生活が数年続いて、気付けば子供たちは就職して長女にいたっては早々に結婚していた。



夫の体調は悪くなる一方で、出会ったころにはあんなに大きかった体も力強かった腕も細くなってまるで別人のようになってしまったけど、夫はアルバムをめくりながら昔の写真と今の自分を見比べて「ハンサムになった」なんて言って笑わせてくれた。


あの時は本当に久しぶりに大笑いしたわねぇ。




それでなんだか肩の力が抜けた気がして、仕事も減らしてもらってこれからの時間は夫のために費やすことにしたの。




長女に子どもが生まれたのはそれからすぐのことだった。

私たちにとっての初孫は玉のような男の子で、今も可愛いけれど生まれたばかりの頃もそれはそれは可愛かったのよ。


二年後には長男がやっとお嫁さんをもらって長女が次は女の子を出産した。

でもその子は体が弱くてねぇ…。

長女がその子の付き添いで病院に泊まることも多かったし、私は仕事があって、その時体調が安定してきて家に戻ってた夫が一番上の孫の面倒を見ることになったの。



そりゃあ最初は心配したけども、夫が嬉しそうに孫の世話をするのを見ていたら心配してたのがなんだか馬鹿らしくなっちゃった。

孫も「じーちゃん、じーちゃん」って言って夫に懐いていて二人とも本当に楽しそうだった。



それからしばらくして、下の孫は成長するにつれて丈夫になって行ったし、長女の三人目の子どもと長男のお嫁さんの初めての子どもの妊娠が判明しておめでたいことが続いたから、私は「もしかしたら夫の病気も良くなるんじゃないか」っていう希望を抱き始めた。







そう、それはそんな矢先の事だった。


「病気が転移しているので、また入院する必要がある」


…そう医師に告げられた時、崖の上から奈落の底に突き落とされたような気分になって、毎日欠かさず拝んでいた神様さえも恨んでしまいそうになったの。





夫はそれからすぐに入院したけれど、病気の進行を薬で抑える以外にできることはほとんど無くて徐々に弱って行った。

長男の所に男の子が、長女の所に女の子が生まれた時にはまだなんとか自分の脚で歩くことができていたけれどそれも直に難しくなって、起き上がることもできなくなって…





でも、それでも夫は頑張って頑張って、医師に告げられた残りの時間よりも少しだけ長く私の、私たち家族のそばにいてくれた。


亡くなる1ヶ月前から危篤に陥ってはなんとか持ち直す、ということが何度も続いて、意識もほとんど無いような状態だったけど…




夫が亡くなったのは、彼が私に「一緒について来て欲しい」とプロポーズしてくれた記念日の翌日だった。






夫の通夜にはバスの運転手時代の仲間やタクシーの常連さんだった方まで来て下さって、小さな会場はいっぱいになった。


夫に一番懐いていたおじいちゃんっ子な一番上の孫はまだ幼いのにおじいちゃんと二度と会えないことを理解して静かに涙を流していたのが本当にかわいそうで…。




…私?

実は自分のことはあんまり覚えてないの。

あの時は本当に必死で自分のことに構ってる余裕なんてなかったし、気付いたら娘たちに布団の中に押し込められてたから…。


でも、「昔プロポーズしてくれた時みたいに私も一緒に連れていって欲しかった」てぽつりとつぶやいたら長男と長女が泣きながら凄い剣幕で怒ったことは覚えてる。


そのあと3人で子どもみたいに声を上げて泣いてたら、「あぁ、夫はいなくなっちゃったけど彼は私にこんなに素晴らしい家族を遺してくれたんだ」って思えてきて、悲しいのになんだか嬉しくて涙が止まらなくなった。




それからしばらく私は長女の家で一緒に暮らして、みんなに支えられて立ち上がって…。



その時私は天国の夫に誓ったの。

あなたが遺してくれた愛しい家族たちを私が守って、絶対に幸せにします、って。







-----------------------




ごめんなさい、なんだか思ったよりもだいぶ話が長くなっちゃったわね。

でもあの時、あなたが家族との同居を勧めてくれなかったら今の私はいなかったかもしれない。


え?そんな大層なことはしてないって?

そんなに謙遜しないでもっと厚かましくなってもいいのよ?



だって、あなたは私の息子のお嫁さんで、私たちの大事な大事な家族なんだから。








閲覧ありがとうございます。


ママ」が話しかけているのは長男のお嫁さんです。


ちなみに、長男の嫁は『ママはママで、』に登場した「ぼく」の祖母で、「お父さん(今作では「私」の長男の息子)」の母です…。

ややこしい(ーー;)


暗い話ばかりで申し訳ありません<(_ _)>

駄文な上に色々と矛盾点もあるので随時修正を加えていく予定です。

今後ともよろしくお願いいたします。


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