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トカレストストーリー  作者: 文字塚
延長戦:だったら壊してしまえばいい
223/225

27.私達の戦いはこれからだ!

 ラスボス、仲間達だった者、そして聖剣士ガルバルディ。東の大陸では戦闘が再開された。

 打ち合わせの最中、ラスボスが巨大な尾を振り回し周囲一帯を凪ぎ払おうとした。

 だが、ガルバルディが受け止め弾き返す。

 予想通り、聖剣士にダメージ表記は見られない。


『事情は理解した。しばらく私に任せてもらえるかな』

『任せた、お手並み拝見だぜ!』


 ゼイロが威勢よく応じ、ここにラスボスとガルバルディの一騎討ちが現実と化した。


 私達はその様子を、固唾を飲んで見守っている。

 ハッキネンは「これが最終形態なのだろうか」とか「ガルバルディ頼む、いや頼まない」などと呟き不安げだ。

 ザルギインは、


「小娘、移動はどうするつもりだ」


 などと実用的な話題が多い。

 そしてクロスター。


「ここが博打の打ち所、か。お前予期してたな」

「さあ。だとして都合が悪いのか」

「いいや全く」


 と、かぶりを振る。不愉快なだけだ。

 最初から話を聞いていた、察しておかしくない。元々こいつらは、ガルバルディ目的で王国を見張っていたのだから。


 私はといえば、映像を眺めながら改めて自分のステータスを確認していた。

 最高レベルまでやり込んだわけではない。レベルが高くなれば、後はアイテムでステータスを上げた方が早いからだ。

 そのステータスはと言えば、とっくにカンストしている。素のステータスも、ジョブチェンジ後のステータスもMAX。

 スキルはどうか。

 状態異常への耐性は装備と共に準備出来ている。攻撃への付加、追加効果も当然万端。

 装備も当然整っている。


 そもそもラスボスと単独でやり合うつもりだったのだ。やり残しはない。

 そういや光の勇者は外した方がいいな、と思い付いたのはそれぐらいだった。


「戦い方の確認をしよう」


 そうして、四人で最後の打ち合わせへと入る。


 ーー彼らの強さには敬意を表したい。

 急遽集めたメンバーだが、確かにみんなやり込んでいる。きっと私よりトカレストを理解しているだろう。


 見たことのないスキルやアイテム、特殊装備や華麗な魔法、鮮やか必殺技など目を見張るとはこのことだ。

 連携も出来てきた。ラスダンの強制に備え、ソロで戦ってきた私にはとても出来そうにない。連携技の特別なエフェクト、演出まで拝めるなんて私は幸せ者である。


 その君達を裏切る形になろうとは、思いもよらなかった。


 ラスボスと単独で対峙出来るガルバルディ、やはりあなたが最強だ。

 私にとっては大凶だが、今はその強さを存分に発揮してくれればいい。


 ラスボスは、ガルバルディさえいなければ最強だったろう。複数の形態に変化し、範囲攻撃を撒き散らす。多彩な状態異常までばら蒔くのに、自分となれば耐性と回復で嵌めようもない。

 確かな火力、これどう考えてもクリアさせる気ないだろうという打たれ強さ。お前は本当に何者なんだ。とても楽しみだよ。


 そのラスボスはガルバルディに痛め付けられ、複数の上位プレイヤーに取り囲まれている。

 そろそろタイミングが訪れそうだ。


「近藤、なんか申し訳ない」

『うん? ああ別に構わんよ。加奈が決めたことだ』

「そうなんだけど、もしかしたらクリアとかなくなるかもしんない」

『そこは俺には関係ないだろ。そもそも俺にその気はないわけだし。つかむしろだな……』

「つか何?」

『まあ、なんか予言めいたことを言ってしまったなと』


 嗚呼、と嘆息する。

 本当に初めの頃、近藤は言っていた。

 ガルバルディがラスボスになるのではないかと。

 今思えば確かに予言めいている。気にするようなことではないが、これから起こることを考えれば思うところもあるだろう。


「大丈夫攻略してみせるよ」

『なら期待しよう。ラストバトル、楽しんでこい』


 あいよと心の中で応じ、


「さあ行こうか」


 三人と向き合う。


「いざってなると、武者震いがするね。ここまでやるとは、君は本当に大胆不敵だ」


 ハッキネンはそう言ってから、慈しむよう愛刀を見つめた。


「我が覇道を成し遂げる好機。失敗は許されん。敵に回してしまうのだからな」

「そうね。待ってればいつか手に入るのに、せっかちだね意外と」


 皮肉混じりで応じると、ザルギインは苦笑してみせた。初めて見るかもしれない。


「老い朽ちた肉体を手に入れてどうする。しかし、正直言うならばだ」

「なんだよ」

「負け続きでうんざりしていた」


 不適に嗤うが、そこにはこいつなりの苦労が見て取れる。小指の先ぐらいは同情してやろう。


「退路はない」


 クロスターはそう言い、ボロきれだった法衣を脱ぎ捨て、丁寧に畳んでから新しい法衣をどこからか持ち出した。


「あの二体は我らが頂く。お前は大願成就、侍も同じくだ」

「早く着ろよ、全裸で語るな」


 主従揃って露出狂かこいつらは。モザイク見るの久しぶりなんだけど。


「我に秘策ありだ。そちらも用意にぬかりはなかろう」


 ようやく法衣を纏い、クロスターの準備も整った。

 こうして我々は、地下都市から戦場へと旅立つ。


 忌々しい記憶、悲惨な出来事、意味不明な仕様、謎の借金システム、薄っぺらを越えたストーリー、管理する気がない運営、エトセトラエトセトラ。


 さあ行こう、私達の戦いはこれからだ!

 違う。

 奴を血祭りにあげて、何もかもぶち壊してやる!

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