表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トカレストストーリー  作者: 文字塚
延長戦:だったら壊してしまえばいい
210/225

14.広がる景色は5

 ラスボスは硬い、攻撃も苛烈。だけど……、


「こいつは何者なんだろうな」


 ザルギインがハッキネンを見ながら言うので、一瞬知ってるだろと突っ込みそうになったが呑み込む。


「誰か分かんないの。何千年も生きてるくせに」

「さあな、知らんものは知らん」


 ほんと使えねー野郎だ、連れて来なけりゃよかった。内心で愚痴ると、


「何者かは不明ですが、戦意がないのは間違いないでしょう」


 クロスターが静かに指摘した。

 戦意? ラスボスに戦う意欲がない。クロスターはそう言うのか?


「なるほど、迷惑なので追い払っているだけということか」

「そんなところでしょう」

「ふむ。とはいえ双方よくやるな、いい腕をしている」

「まだはっきりとは。しかし打開策はあるのに取らない。何か意図がありそうです」


 あ? 打開策があるだと。ダメージが通らないのにどう打開するってんだ。

 ハッキネンを見つめる男二人、という奇妙な絵面は一端頭の隅に追いやる。


「何をどう打開すればいいんだよ。あんな硬いの、どうしろって言うんだ」


 ザルギインはちらりと視線を寄越し、


「硬い脆いはともかく、叩き続ければいずれ破砕する」

「そんな常識通用するか怪しいだろ。現に1しかダメージ……」


 って、表示の話をしても通じないか。溜め息をつくと、


「お前らは数値化するのが得意なのだろう。それは知っている。だが、数値化出来ない苦手分野があるな」


 鋭い指摘で言葉に詰まる。こいつ、相変わらず察しがいい。


「あれは相当嫌がっているんだよ、攻撃されることは。反撃とて普通の人間なら簡単に倒せるはずだ。だが死なない。手詰まりなのはお互い様という奴だな」


 そんな真面目に答えられても……サイレント映画状態なのになんでそこまで分かるんだ。そもそも合ってるのか分からないけれど、


「じゃあどうしろって言うんだ」

「お前が戦場に行けばいい」

「だから……」

「分かっている。今は行きたくない理由があるんだろう? 同様に、奴らも本気でやりたくない理由があるのだ。お前ら、そう深い付き合いではないな」


 さして興味なさ気に、的確に言い当ててみせる。


「あ、ああ……そうかそういう……」


 意味を理解し、思わず言葉が漏れた。


「戦いはまだ始まったばかりだ。互いに牽制し合っているのか……」


 この互いというのはクリードや時長さんだけを指しているのではない。ラスボスも何故か本気を出したくないらしい。

 我々に関しては信頼関係を構築出来なかった面が強い。加えて連携プレーを全くと言っていい程軽視してきた。手の内を晒すことをこの期に及んで嫌うのは理解に苦しむが……。


「考えようよっては時間はたっぷりあるんだ。今日の残りと明日。もしかしたらその次も」


 ハッキネンの指摘に頷く。三日間という縛りは私達の前提だ。けれど、誰かに気付かれ横取りされそうになった時どうするのだ。近藤は今日明日しか参加出来ないぞ。上位プレイヤーが来た時、簡単に排除出来るだろうか。

 だからこそ手の内は明かさない、か。対応策があるのかもしれない。

 ラスボスは戦意がないらしい。でたらめな全方位攻撃は、現状物理攻撃に限られている。ここに魔法や特殊スキルや状態異常系が加われば、今のような安定した膠着状態ではいられない。


「ザルギイン、お前ら本当にあれを知らないんだよな?」

「こいつのことか? さあな、似たようなものなら見かけたことぐらいはあるかもしれない」


 似たようなもの? 冥府にいたということか?


「まさか、地上の話……」

「なわけないだろう。むしろ、なんでこんな化け物を引きずり出したのだ。お前らは世界を滅ぼしたいのか」


 思わぬ指摘に渋面が浮かぶ。とはいえそこまで考えていなかった。


「そんなに凶悪な強さか? プレイ……戦士は腐る程いるぞ、数じゃ負けない」

「統制が取れるなら、だろう」


 正論野郎になっている。グサグサと刺し傷つくりやがって。


「そう悲観することはないだろう。ガルバルディが来るならきっと抑えきれるよ。まあ僕らにしてみればちょっと不満は残るけどね」


 ハッキネンのこれまた正論が述べられた時、突然映像が切れた。


『悪いな、エネと代わって貰った』


 近藤の声だ。ああ、何か起きたのだなと直感する。


『ガルバルディ絡みのイベントだと思うわ。なんでか俺が城に呼ばれたよ。ちっと行くから、お前ら見てろ』


 それから近藤は、初めましてお三人さん方と付け加えた。

応援評価よろしくー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ