第二十話:港町にて3
そんなわけにいかないの知ってて……。
「で、そっちはどうなの?」
唇を噛んでしまったがすぐ切り換えて、進捗具合を尋ねる。近藤はガルさん担当なので、王国から動けない。話がとんとん拍子に進めば合流もあり得るが。しかし、
「で、結局何匹ぐらい確保出来そうなんだ?」
先程とは打って変わり腕組みしてやがるが、こいつ……。
「……人の話聞いてんの?」
「どれぐらい集められそうなんだ」
「質問を質問で……お前の高校は疑問文に疑問文で返せと教えているのか……私はそっちはどうなのと聞いてる!」
「そんな名言が聞きたいんじゃない、大丈夫なのか確認してるんだ。お前レアボスなんて知らんだろ。メイン以外の事情に精通してる皆さんはなんて言ってる?」
声を荒げたが、これにはうん……と唸ってしまった。確かに数も、狩り場も彼らなしではどうにもならない。だから余計、私の立場が窮屈で苦労しているんだけど。
「近藤だってレアイベントもモンスターも知らないでしょ」
「それはいいから」
自分はいいのか。どこまでもだな、ちくしょう。
「多分七十体を目標にしてると思う。そう聞いてる」
少し声を落とし、拗ねるように言ってしまった。それを聞いた近藤は私の後ろを見上げるようにして、思案を始めた。邪魔していいか迷うが、みっともなさを隠すため話を続ける。
「一日十体、ギリギリ間に合うかなあと」
「じゃあ今は二十体ぐらい?」
「そう」
「現時点で二十。最終的に七十のイベントを吹き飛ばすってことだぞ」
いや、そりゃそうなんだけど……言い出したのは近藤だろう。
「なんか問題ある?」
「いや、出来るんならそれでいい。しかし後半トラブルが起きそうだな」
「目立ち過ぎるのとか、有名どころは後回し。あと、必ずイベントが吹き飛ぶわけじゃないから。違うイベントになったり違うボスに変わったりすることもあるよ」
レアボスハンター部隊と化した我々は、その結果を注視していた。ラビーナの時と同じなのか、それとも修復されるのか……。普通に考えればレアボスはともかく、イベントボスをそのまま掻っ攫うなんて前代未聞、やりたい放題過ぎる。
「じゃあ七十飛ぶわけじゃない?」
問いかけに頷くと、
「七十で足りるのか? 周りが手抜きしての七十体だろ?」
「そこはほら、私とか信用出来ない奴がいない時にソロで痛めつけて、ラビーナを呼んでるから。けど足りるかって言われたら……」
「あまり事を荒立てず、波風立たたせず成立するのが大体七十なわけか」
そういうことになる。
店内は静かだ。ピンク基調のファンシーな飾り付け。大昔のファミリーレストランと喫茶店の中間みたい。よく見ると照明は古めかしく、カウンターの椅子もアンティークっぽい。なんかこの店、統一感がないな。
気が付くと、ウェイトレスはもういなかった。奥に引っ込んだか。外の喧噪も聴こえて来ず、BGMも流れていない。見た目はあんまり落ち着かないけど、なんて静寂だ……お腹いっぱいだし瞑想という名の昼寝でもしようかな、と思ったら邪魔が入った。
「保険が欲しいな」
「それがガルさんじゃないの?」
「あれは切り札で、切らなくていいならそれでいいんだ」
あれってアンタ……私にはあいつら呼ばわりするなと言っておいて。チクってやろうか。
「どうするかな」
「とにかく情報が足りないの。ぶっつけ本番はみんな覚悟してるよ。出来る限りやる。で、そっちはどうなの。ガルさんとちゃんと話付けられそう?」
話を整理し、再度水を向ける。すると、
「うん? ああなんとかなると思うよ」
と気の抜けた返事がきた。こいつ、今日基本的にやる気が感じられない。
「なんとか、じゃなくてちゃんとやって下さい」
「やってるよ」
「ガルさんとは話したの? なんて言ってた?」
「いや、あの人は今謹慎食らってる」
「ふうん……」
そうか、謹慎処分受けてるのか。ほう、ふむ……って、違う落ち着いてる場合じゃない!
「なんで!?」
「なんでって、仕事しないからだろ。他にも理由はあるかもしれんが」
「分かるし知ってるけど、で、その謹慎いつまで?」
「さあ……そこまでは知らん」
「調べろよ! 間に合わなかったらどうすんの! ってかまだ会えてもないってことでしょ!」
まくし立てる私に、
「そうだけど、謹慎食らってるってことは王国内にいるってことだ。接触は出来るよ」
それはそうなんだけど、つまりこの間何もしてなかったってか。私が仲間に値踏みされつつモンスターを半殺しにしている時「謹慎かあ、いつまでだろ」って呑気してたのか。
「お前なあ……復帰したばかりの私がレアボスをノーミスでギリギリ殺さず、しかも華がある感じでやんのがどれだけ大変だったか……」
「そういうゲームだろ」
ま、そうだけど遊び方まで縛られてる私の身になれ。
「私は働いてた! お前何してた!」
「フラグが立った理由を考えてた」
「いや考えずに、というか考えながら動けよって……フラグ?」
「ガルさんが謹慎食らったのは多分俺らのせいだ」
そう言って、近藤はひとつ頷いた。私が何をしたというのだ……いや違う……そうだ、ラビーナには監視が付いていた。だから俺らで、つまり、
「俺達のせいで謹慎。まあ自業自得の面もあるが」
「じゃあやっぱり王様は、何も知らない?」
「何も、かどうかは分からない。俺のルートだと何も知らないはずって前言った通りだ。けど大事なのはそこじゃない」
近藤は意味あり気な顔で、結論を出し惜しみしている。となれば、言うことは一つ。
「大事なのは、近藤が働いていないという現実」
「働いてる。そうじゃないだろ」
働いてるつもりはあったのか。いや、分かってる。
「やっぱりこれは"ラビーナ・ガルバルディルートである"ということだよね」
「そう、その可能性が高まった」




