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□■第七話:そう、謳が聴こえてきたんだ・・・。■□



 それにしても、綺麗だな。まつげが長い。真っ白な肌には、美しさを感じるが、どこかひ弱そうにも見える。第一、この細い腕。ちゃんと、今まで充分に食事を摂ってきたのだろうか。これでは、倒れるのも当たり前だ。祭で舞を舞うくらいだから、スタイルにも気を配らなきゃいけないのだろうけど。長い金の髪もさらさらで、陽の光にあてられてつややかに光っている。・・・思わず撫でたくなる。いやいや、俺は何を言ってるんだ。

 確かに、アムタワ国にはこんな美人は居なかった。リューシャでさえも、これほどではなかった。・・・比較しちゃあいけないが。

 時間を無駄にしてはいけないと思い、俺は構えをつくり、拳を突き出した。右、左、右、右・・・。連続で出す。時々蹴りを入れてみる。城の警備兵たる者、万が一のことを予測して動かなければならない。

例えば、武器が取られたとき。丸腰でも、相手にぶつかっていけるようにしなければならない。仲間は、仕込み刀などを装備しているが、俺は昔から獲物を扱うより素手で戦う体術の方が向いていた。

だから、これ。実際、幾度もこの拳で敵をのしてきた。しかし、親や親類から訊くところによると、祖先はある理由から、一時期木刀を使っていたらしい。祖先のことを訊くと、何故か毎度うやむやにされた。だから、それ以上のことは知らない。

ひとつだけ、確かなことが言える。それは、俺の祖先がミール・ストーンの所持者だったということだ。

 太陽が真上に昇るまで、俺は素振りを続けた。疲れて、その場にどっと座り込む。後ろに両手をついて、足を投げ出した。汗でTシャツがずぶ濡れになっていることに気づき、急いでそれを脱ぐ。半裸になりながらも、鞄からタオルを取り出して、次から次へと出る汗を拭った。

 すぐ傍に横たわる少女を見ると、すやすやと未だ眠っている。目覚めないことに不安を抱きながら、もう少し、眠らせてやることにした。


 ――夜。昨夜のように、俺はうとうとしながら、ミューシャの横に居た。ぼーっとする頭で、ぼんやりとする視界で、彼女を見つめていた。

 ふと、風向きが変わった。周りの空気が、ぴりぴりと張り詰める。俺は、すぐさま頭と眼を覚ました。・・・嫌でも覚める。そして、その場に立ち上がった。

 辺りに気を配り、神経を集中させていると、木の葉がざわざわと騒ぎだし、人間の謳のようなものが聴こえてきた。


『永遠の謳のはじまりはじまり

 我らは時を歩む呪いの子

 チカラを得た選ばれし者

 未来を選んだのは自分達

 背くな 逃げるな

 君の仲間は今此処に

 さぁ出かけよう

 無限の時を歩む旅へ

 無限を生きる虚しい旅へ』



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