□■第六話:拒絶。だけどそれは、届かず−−。■□
疲れが溜まっていたのか。宿のベッドで休ませてやりたかったが、祭の片付けで、町の者は忙しい。宿の主人もいるかどうかわからない。彼女には悪いが、町から出たところの無造作に生えている巨木の元まで抱き上げて連れて行った。そこへ寝かす。頭の下には、俺の鞄を入れて枕代わりにしてやった。躯には、Tシャツの上から羽織っていた俺の服をかけてやった。
・・・暫く起きそうにないな・・・。
木の幹に凭れて、彼女が目を覚ますのを待った。
『ミューシャ!?』
・・・その名前で呼ばないでって言ったのに・・・。あたしは、その名を捨てたの・・・。
この人・・・誰なのかしら・・・。何故・・・あたしの名前を知っているの・・・?
まだ・・・貴方のこと・・・何も知らな・・・。
・・・・・・あたし・・・・・・疲れちゃっ・・・た・・・ょ・・・。
眠い。俺だって、ミューシャを捜していて昨日は全然寝ていない。でも、また逃げられるのも嫌だしな。さて、どうしたものか・・・。
・・・俺の隣で横たわり眠っている少女は、影にいったい何を隠しているのだろうか。・・・何か、とてつもないことを隠している気がする。確かに俺は、訊きたいことがたくさんあるが、本当に、それは訊いてしまってもいいことなのだろうか・・・。
俺は考えごとをしながら、時々うとうととうたた寝してしまった。しかし、何度も目を覚ます。隣を見やると、必ずミューシャは同じ格好で眠っている。これを俺は繰り返していた。
朝。俺はいい加減、中途半端な眠気を覚ますために立ち上がり、高く両腕を上げて背伸びをした。
「う〜っ。・・・はぁっ」
・・・彼女はいつまで眠っているつもりなのだろうか。昨日と変わらず、同じ状態で眠っている。俺だって、休暇が明けてしまうから国に帰りたいのに。幸い、目の前にあるサリナ城下町に、アムタワ国への電車が出ている。・・・電車といっても、ただの電車ではないが。だがその前に、ミューシャと話が出来るまで、帰れない。




