□■第三話:それぞれの想い、交わることなく。■□
あの人は誰だったのかしら・・・。
歩いている最中、ずっと考えていた。あの人は、姉・リューシャの名を出した。・・・ということは、リューシャの知り合い。でも、あたしは知らない。理由は、姉もあたしを軽蔑していたから。・・・リュクールの住人も、同じ。皆、あたしを・・・。
考えごとをしながら歩いていると、辺りは真っ暗、夜になってしまった。あたしは、静かに深く息を吐いて、空を見上げた。――無数の星々。この星たちも、何万年、何億年と永遠を歩んでいるのだろう。これからも・・・。そして、今日からあたしも・・・。
朝――。俺は昨夜倒れこんで、そのまま眠りに就いてしまった。少しの間思考が止まっていたが、すぐに動き出す。
「リューシャ!!」
声と共に、躯を勢いよく起こす。そうだ、消滅たんだ・・・。未だ信じることが出来ない。けれど、真実。都の最期の閃光を、この眼で見た。痛いくらいに眩しかった。
まだまだ謎だらけのこの都消滅。だから俺は、あの時都に居たリューシャの妹らしき人物を問いただしてみようと思った。
俺は立ち上がった。衣服を整えて、ゆっくり歩き出した。
あれからずっと歩き続けて行き着いたのは、サリナ国のサリナ城下町。彼女を追って、真っ直ぐ同じ方向に来た。この街に彼女が居る確率は高いはずだ。気を引き締めて、俺は城下町へ入った。
町は、貧相な雰囲気をかもし出していた。しかし、住人は温かな笑顔を見せている。俺は、ちょうど目の合った女性に訊いてみた。
「すまないが・・・。ここに、旅をしているような・・・女の子来なかったか?」
女性は首を傾げる。
「来なかった・・・わねぇ。この町に入ってきたら、今の貴方みたいにすぐに分かるもの」
少し太ったその女性は、俺の質問に答えてから、表情を急変させた。
「それより、今日はこの町で祭があるのよ! 顔を出していったらどう?」
「えっ。でも余所者の俺なんかが・・・」
「ミール・ストーンの使い手を奉る日よ! 余所者でも大丈夫! 夜にはお城の前で舞があるわ。毎年同じ娘だけど、綺麗なのよ。気が向いたら来なさいよ!」
忙しげに、言いたいことだけ言ってその女性は町の中に姿を消した。俺は無意識に溜め息をついた。これからどうしようかと、考えてみたがまず、体がだるい。悲鳴を上げている。
結局、ここで宿を一晩とることにした。
宿に着いて部屋を充てられ、俺はすぐにベッドに倒れこんだ。そのまま、数分と経たないうちに眠ってしまった。




