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□■第十五話:〜回想〜悲劇は続くものである。■□



まだ回想が続きました。



 『おねえちゃぁぁん・・・っ。パ、パパと、ママがぁ・・・』

姉さんは、泣いているあたしをぎゅっと抱きしめてくれた。

『どうしたの、ミューシャ!? 何があったの!?』

姉さんがそうあたしに問いかけたその時、先程の門番が帰ってきて、警備本部のドアを思い切り開けた。

『門番さん・・・。パパと、ママは!? 何があったんですか!?』

姉さんはあたしから躯を離し、門番に詰め寄った。詰め寄られた門番は、顔をしかめ、言いづらそうに話し始めた。

『リューシャちゃん・・・。いいかい、よく聞くんだよ・・・。パパとママは、亡くなった。今、見に行った警備兵の一人が、都長に報告してる・・・。これからのことがあるから、まず、都長のところへ行きなさい・・・』

『都長さんじゃない!! あたしはパパとママのことを訊いてるの!! なんで、なんで死んじゃったのさ!?』

再度、姉さんは警備兵に詰め寄ったが、都長の秘書があたしたちを迎えにきて、すぐさま都長のところに連れられてしまった。

 車の中でもあたしは泣き続け、姉さんは呆然としているようだった。・・・もう、抱きしめてはくれなかった。

 

都長の部屋に案内された。都長が表情を曇らせて座っている、目の前の机には、血塗れの布と、何か細長いものが置かれていた。

『おぉ・・・来たか。リューシャ、ミューシャ。よく聞くんじゃ。君たちの父親と母親は、獣に襲われて、お亡くなりになった・・・』

入ってきたあたしたちに気づいて、都長がその場に立ち上がり、曇らせたままの表情で言った。そしてまた、姉さんは詰め寄る。

『・・・なんで!! あの森には、獣は居ないはずだよ!?』

『確かに。今、警備兵で捜査中、そして獣を追跡・退治中じゃ』

姉さんは、その場にへたり込み、嗚咽を漏らしながら泣き出した。

『そんな・・・! だって、ついさっきまで笑ってたんだよ? 信じられるわけないじゃない・・・!』

『しかし、現実じゃ。・・・ほれ、気味の悪いものと化してしまったが、遺留品じゃ。多分服だろう。引き裂かれてしまったようじゃがな。それと・・・獣には喰われなかった、指じゃ』

机の上に置いてある細長いものは、パパとママの指だった。それを見て、姉さんは机に縋るように見上げる。そして、次の言葉。

『・・・あんたの所為よ!!』

『・・・? おねぇちゃん・・・?』

泣き止んでいないあたしを指差して、恨むような、憎むような眼で睨んでいた。あたしは無意識にぶるっと身震いをしてしまった。

『あんたがいたから! あんたが足手まといになったから!! だから、パパたちは逃げれなかったのよ!! ・・・あんたさえいなければ・・・! うっ・・・パパぁ・・・ママーー!!』

姉さんは絶叫した。部屋中に響き渡る。そして、数分も経たないうちに、部屋から出て行ってしまった。

『おねぇちゃん!』

あたしは追いかけた。しかし、四つも年上の姉に追いつくはずもなく。途方に暮れて、最終的には家に帰ってきてしまった。

 すると、玄関の鍵が開いている。・・・閉めたはずなのに。中に入ると、奥から嗚咽が聞こえてきた。

『おねぇちゃん・・・?』

先へ進んでいくと、キッチンのテーブルで、姉さんは伏せって泣いていた。そして、あたしが近くへ来たことがわかると、

『来ないでよ! この家に、あんたの居場所なんかない!! 出でって!!』


この日からあたしたち姉妹は決裂した。ほんの、数ヵ月後までは、まだあたしは姉さんを慕っていた。ご飯を作っても『あんたの作った物なんか食べたくない!』とか、掃除すると『パパのカップに触らないでよ!』などと言って、あたしをことごとく軽蔑した。仕舞いには、自分の友人にまで、あたしのことを妹とは思っていないだとか言う。あたしの友人も、近所の人たちも、リュクールの民はみんな、あたしを軽蔑するようになった。


 あたしは独りになった。


 そして、今まで堪えてきたが、この間限界に達した。ついにあたしはチカラを手に入れ、リュクールを滅ぼしてしまった。



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