□■第十二話:笑顔が、陽だまりのようでした。■□
更新遅くなりました。
「キー・・・」
途中でやめてしまった。どうも呼ぶ気にはなれなかった。・・・だって姉さんの知り合いだもの。あたしが知らない、姉さんの交友。あたしを放っておいて、仲良くしてた人。
「何だよ。呼んでくれると思ったのに、名前」
彼はにっこりと笑った。いや、苦笑かしら。反射的に顔を反らしてしまう。吐き気がするような自分の過去。その思いが蘇るようで、眼を直視出来なかった。
あたしが色々思いを巡らせているうちに、彼はその場に立ち、伸びをしていた。
「さーってと。夜も明けたし。行くか」
ひとりごちたように言葉を紡ぐと、彼はまだ座っているあたしに手を差し出してきた。あたしはその手のひらの意味をすぐには理解できず、じぃっと手のひらを見つめていた。いつまでたっても行動を起こさないあたしに、彼は肩をすくめたようだった。
「なに? 立てないの? ほら、行くぞ」
ぼーっとしていたあたしの肩を軽く揺らし、声をかけた。差し伸べられていた手はいつの間にか引っ込められていて。でも、絶えない笑顔があたしに手を差し伸べているようだった。
結局、ひとりで立ちあがったあたし。彼は、あたしが立ち上がると、拍子で落ちた自分のジャケットを拾い、羽織った。
「よし、まずはサリナ国の城下町行くぞ。そこからしか、俺の国への列車が出ていない」
羽織り終えると、彼はあたしを見て最初の目的地を示した。サリナ城下町からのみ、出ている列車といったら、空中浮遊国の、アムタワ国だろうか。
一昔前までは一切交流のなかった国だ。しかし、ミール・ストーンの革命があってから、交流が出来てきたとか。今では、近隣国へ行く普通の列車はもちろん、アムタワ国へ行く浮遊する列車も開発された。特殊な能力を持つ、アムタワ国民の支援を受けてだが。また、動かすのが困難な列車なので、料金が高いのは当たり前、切符を手に入れることでさえ難しい。だから、サリナ国だけにしかなくて、普通の人も新婚旅行とか、特別な中の特別な日でしか行かないのだ。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
答える代わりに、あたしは首を横に振った。それを見て彼は、ふ、と口元を緩め、「よし」とだけ言った。
なんで、この人は見ず知らずのあたしに、危険なチカラを持つあたしに、こんな優しくしてくれるのだろう。まだこのチカラを持たなかった時でさえ、リュクールの皆はあたしから離れていったのに。姉さんでさえも。・・・何か、隠してるような気がする。キー・・・この男は、何かをあたしに隠してる。絶対。
私の初作品である、小説<ミール・ストーン>。
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