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□■第十話:それぞれの決意。■□



俺は乱暴ながらも、無理矢理その場に座らせた。どうやら観念したようで、もう逃げようとはしなかった。まだ夜中で冷え込んでいたので、彼女の肩に、先程眠っているときに被せてあった自分の服を羽織らせた。

「ふう・・・。まず、俺の名はキースだ。キース・グレイルー。あんたに、訊きたいことが山ほどある。答えてくれ」

ミューシャは、俯いたまま何も言わなかった。

「・・・単刀直入に訊こう。・・・何故、リュクールを消滅した?」

俺の言葉に、びくっと躯を震わせた。俺はそれを見逃さない。だが、彼女は喋ろうとはしなかった。

「なぁ・・・。なんで、消滅したんだよ・・・?」

俺が弱々しく問いかけると、ぼそりと声が聴こえた。

「・・・ぃ。皆・・・嫌い・・・っ!」

「きら・・・い?」

俺は彼女の言葉を復唱して確かめる。そんな、理由で――!? いや、まだ何かあるのかもしれない。じっと見つめていると、彼女は喋りだしてくれた。

「そうよ・・・っ。皆、消滅えちゃえば・・・!! あたしを、苦しませないで・・・っ!!」

「くる・・・し、む?」

上手く言葉が出てこない。彼女の身に、何があったというのだろう。いつの間にか、ミューシャは両手で顔を覆い、泣き伏せっていた。俺は驚き、わたわたと慌てながら、とりあえず彼女の背中を摩ってやった。

「悪い・・・。えっと・・・嫌なこと、訊いたな・・・」

肩を震わせ、返ってこない返事を待っていた。期待はしていなかったが。

 夜も明け、太陽が顔を出し始めた。鳥たちが「おはよう」と言うかのように、一斉に空へと羽ばたく。

「なぁ・・・。クラーヌって男、知ってるか?」

泣き止んだものの、未だ俯き俺の顔を見ようとしないミューシャに、唐突に訊いてみた。

先程、空から現れた、あの不思議な男のことを。

 しかし、ミューシャは俯いたまま、ふるふると首を横に振るだけだった。「そうか」とだけ、俺は言う。結局、アイツは何者なんだろうか。何故、ミューシャを連れ去ろうとしたのだろうか。

 俺はもう一つ尋ねてみる。

「お前、これからどうするつもりなんだ?」

暫く答えが返ってこなかった。

「・・・・・・何も、ない。目的は果たしたもの・・・」

返ってきた返答は、実に寂しいものだった。この時、俺は彼女を護りたいと思った。目の前に居る少女を。どこかに闇を潜めているこの少女を。あの得体の知れないクラーヌとかいう男から。組織で動いているかもしれない、あの者から。

「・・・じゃあ、俺の国に来いよ。面倒見てやる」

俺の言葉に、ミューシャは驚いたようだった。垂れていた頭を、急に上げて俺を見据えた。

「あ、何も変なことは考えてないぜ。その・・・」

本当の理由を、言えなかった。言いにくかった。この娘ひとりでは、あの男に太刀打ち出来ないのは一目瞭然だ。・・・俺でさえ適わなかったんだから。それよりも、この娘はクラーヌ側へ行ってはいけない気がした。

「まぁ、とにかく来いよ。な?」

理由を紛らわせて、俺は強引にミューシャの腕を引っ張った。彼女は我に返ったのか、びくっと躯を震わせた。

「・・・駄目っ! 一緒に、居られない! あたしと居ると、あなたが危ないの!!」

必死に腕を振り払おうとするが、俺の握力には適わず、結局俺が腕の拘束を解いてやった。息を弾ませながら、また泣き出しそうな表情をしていた。



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