□■第九話:聴こえた謳。嫌な目覚め。■□
・・・・・・声が・・・聴こえる・・・。これは、謳・・・? だんだん、近づいてる・・・ような・・・。・・・あたしに向かって、謳ってるの・・・?
『永遠の謳のはじまりはじまり
君の仲間はここに居るよ
世を恨み 時を歩む仲間が
人を恨み 無限を歩む仲間が
こちらへおいで
こちらへおいで
元には戻れません
過去には戻れません
傷は癒せません
気づいた時には、想った時には
もう、手遅れなんだよ』
どこかで聴いたこと、あるような・・・。・・・だめ、思い出せない・・・。手遅れ・・・? いや、そんなの・・・。あたしは・・・!!
ミューシャが目覚めた。俺が、足を投げ出して大きく深呼吸しているときだった。
「い、やっ!!」
目覚めの第一声で、拒絶の言葉。俺は驚いて、すぐさま彼女に駆け寄った。上半身を起こし、俺が掛けてやった服を両手でぎゅっと掴んでいる。
「お、おい。大丈夫か・・・?」
俺の存在に気づかなかったのか、俺が声をかけるとびくっと躯を震わせた。そして俺を見上げる。息をほんの少し荒げていて、頭の中が混乱しているようだった。言葉が上手く、出てきていない。
「あな、たは・・・。あたし・・・」
「なかなか起きないから心配したんだ。気分はどうだ?」
俺の言葉に、何故か彼女は俯いた。そして、何かを思い出したかのように、勢いよく立ち上がった。
「どっ・・・どうした!?」
「あ、あたし行かなきゃ! 貴方とはいられない!!」
「落ち着けっ! 話を訊かせろ!!」
俺は乱暴ながらも、無理矢理その場に座らせた。どうやら観念したようで、もう逃げようとはしなかった。まだ夜中で冷え込んでいたので、彼女の肩に、先程眠っているときに被せてあった自分の服を羽織らせた。




