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第8話 強化or危険?

「やから、なんでうちまで引っ張ってきたんや……」ヒデミは高速道路を流れていく景色を見ながら言った。

「一緒に行くって言ったやん!なんで約束破るん?」

「あほ、一緒に大阪行くって言うたわけやないやろ……」

右隣に座っていたカガミは、二人の言い合いをまったく気にしていないようで、むしろ興奮してスマホを取り出し、バンドの写真を二人に見せ始めた。

「アコちゃん!ヒデミさん!見て見て!」

五人の写真が二人の顔の前に突き出された。

一番前で、右側の半分くらいを占めてるのは、見るからにカガミやった。めっちゃ純粋そうで、無邪気そう。女の子特有の元気が溢れ出てて、カガミの笑顔を見たら誰でも「この青春、無駄にできへんな」と思うやろ。

次に目を引くのは、顔を真っ赤にした女の子。ドラムスティック持って、カガミを叩こうとしてる。白いツインテールの子で、その時は怒ってたから顔が赤くなってた。

「これ、オレがキリカちゃんのスマホ借りて撮ったんやけど、キリカちゃんが怒って取り返しに来たとこなんや。気にせんといてな。」

「ほんまに借りたん?」二人は笑いをこらえきれなかった。

「まあ、とにかく——これくらいにしとこ。これ見て!これがオレたちのVoや——ハナルちゃんや!」

写真の中には、めっちゃ緊張してそうな、チェックのワンピースを着た小さい女の子がおる。カガミが言うとったボーカリストその人や。マイクをぎゅっと握りしめて、左手でカメラに向かって小さなピースサインしとる——見た目、めっちゃ人見知りそうやった。

ハナルのくりっとした茶色い長い髪とおとなしそうな感じは、ロック系には全然見えへん。さっきの二人と比べると、まるで時代が違うみたいや。

「着いたら、キリカちゃんとハナルちゃんがちゃんともてなしてくれるから、安心してな。」

ハナルの隣には、背筋を伸ばした女の子がおる。なんかめっちゃ真面目な場面におるみたいな感じや。黒い服着てて、下半身はJKスカートやから、結構おとなしそうに見える。手はお腹の前で組んでて、いつでも命令待ってる使用人みたいや。

でも、この子の笑顔は無理に作ったもんやないのがわかる。

「こっちがオレたちのもう一人のギタリスト、セイナちゃんや。セイナちゃんはオレたちの中で一番真面目な子やねん。」

そして、隅に座ってるその人はカメラの方を全然見てへん。なんか、ちょっと嫌そうな顔しとる……?

「ああ、あれがユキちゃんや。ユキちゃんはなんでかいつもあんまり話さんくて、オレたちと遊ぶのもあんまり好きじゃないみたいなんや。ライブの時もいつも一番に帰ってもうて……きっと内気なんやろな。」

アコはずっと集中して見とった。最初は「きれいやな」「すごいな」って何回か言うただけやったけど、途中から何も言わんくなって、目の中にはなんて言うたらええかわからへん感情が浮かんどった。ヒデミはアコの肩にもたれて見てたけど、アコの変化には気づかへんかった。

「あれ、どないしたん?アコちゃん?なんか気分悪いん?」

「大丈夫や……羨ましいなって。」

この言葉聞いて、ヒデミは顔を上げてアコを見た。これが羨望やないことはわかっとったけど、アコを守るために何も言わんかった。

「お嬢ちゃん、バンドに十分メンバーおるのに、なんでネットで人探してるん?」

この質問で、アコは一気に「見抜かれる」恐怖から抜け出せた。カガミがアコを困らせることは多分ないやろけど、ヒデミはそうせなあかんと思ったんや。

その時、運転席に座ってたマサルが口を開いた。

「カガミはな、ほんまに頑固なやつやねん。学校の方で、バンドのメンバーが五人おらんと教室使わせへんって決まりがあってな。それでもカガミは、まるで覚醒剤でも飲んだみたいに、たった三週間で四人も集めてきたんや。アコさん、あなたが五人目や。」

「そうそうそう!アコちゃんがおったら、浦和会長も素直に教室貸してくれると思うねん!それにアコちゃん、こんなに綺麗やから、誰も断られへんやろ!!」

こんな風にハナルとかセイナを褒めたら、ハナルは絶対顔真っ赤にして、セイナも何十分も「そんなことないです」って言い続けるやろ。でもアコはこれを聞いて、ちょっとだけ顔赤くして、うなずいて「ありがとう」って言うた。

「こんなに自信ある女の子、なんで羨ましがらなあかんのやろ?」カガミはそう思った。

マサルは、あの二人がめっちゃ仲良さそうに見えたから、カガミがそんな風にアコを褒めたら、もう一人の子は「ヤキモチ」焼くんかな?と思った。でもヒデミは何も言わずに、普通にスマホいじっとった。亜子がそういう褒め言葉を一番好きやっていうことも知ってたし、全然気にしとらん。

大阪。心斎橋。

他の三人ユキはおらんかったはもうとっくにMOCAの入り口で待っとった。塗装したトヨタが入り口に止まって、カガミはウサギみたいに飛び降りた。まるでスーパーマンや。普通の人やったら絶対転んでるやろな。

「みんなみんな!これがオレが言うてたアコちゃんやで!」

私服のアコは、作業着の時よりもずっと綺麗やった。ロッカールームでおしゃれな服に着替えたんやろな。韓国風のミニスカートに、ハイネックのトップス、黒いローファーで、めっちゃ綺麗やった。

ヒデミは普段あんまりこんなにカッコつけてるとこ見たことない。眠くてしゃーないし、今すぐ和歌山帰りたい気持ちやったけど、アコに誘われたからせっかくやし一緒に行ってみることにした。

「こっちがアコちゃんの友達のヒデミちゃんです!」

ヒデミは手を振った。挨拶のかわりに。

いつもの部屋。ユキは隅に座っとった。ベースも触らず、ただ座っとるだけや。

六人が部屋に入ってきた。アコはみんなと楽しそうに話してて、だらだらしたヒデミはつい部屋の中を見回した。ちょうどその時、ユキの姿が目に入った。ユキは何も言わず、何も言いたくなさそうやった。壁にもたれて頭下げて、うとうとしそうやった。

「あ、そうや。セイナちゃんに頼んで借りてもらった予備のキーボード、もう届いたん?」

「借りました。店長さんがレンタル料はいいから、返してくれたらそれでいいって言ってました。」セイナは床に置いてあったキーボードバッグから予備のキーボードを取り出して、台の上に置いて準備した。

「試してみてください!アコちゃん!」

アコは近づいて、深呼吸した。

「……はい、やってみます。」

「ギシッ、ギシッ」

キーボードのペダルは古くて、擦れる音が耳につく。でもアコには全然気にならんかった。

最初の和音が響いた。カガミは思わず息を呑んだ。澄んどった。一言で言うなら、それだけやった。

アコの指は迷わへんかった。音の一つ一つに、迷いがなかった。曲が進むにつれて、その音は空気を震わせ、壁に反射して、部屋全体を包み込んでいった。

アコの表情はほとんど変わらへんのに、音がどんどん色を変えていく。最初は冷たかった。でも、サビに入ったとき、急に温かくなった。まるで、誰かに話しかけてるみたいやった。

一曲終わって、アコはキーボードから手を離した。顔には嬉しそうな表情が浮かんどった。でも、指先だけがちょっと震えとった。

「……どないでした?」

亜子はみんなの反応を見て、ちょっと不安そうやった。

誰も答えられへんかった。カガミは口開けたまま固まっとった。セイナは腕組んで何か考えとる。キリカはドラムスティックくるくる回しながら、じっとアコを見つめとった。

沈黙に耐えきれず、アコがもう一度聞こうとしたその時——

「……上手い。」

キリカが言った。それだけやった。でも、キリカが「上手い」って言うことがどれだけすごいことか、みんな知っとった。

一方で、寝癖ついてそうなヒデミが微笑んだ。

「すごいな……ほんまにすごいわ、アコちゃん。お前が来てくれて、うちも嬉しいわ。」

アコは嬉しそうに髪をいじりながら言った。「……えへへ、褒めてくれてありがとう。今弾いたん、うちが自分で書いた曲でな、『love you』いうタイトルなんです。もしみんなが気に入ってくれたら、他の楽器でもバージョン作れますよ。」

「や、やっぱり……キ、キーボーディストは曲書くの、得意なんやな……」ハナルが小さな声で言った。「アコさん、もうずいぶん長いこと練習しとるんやろな?」

「あっ……いや、ち、違います。お願いやから『さん』はつけんでください。うち……まだ十七歳なんで。」

「十七歳!?全然そんな風に見えへん!」周りのみんなが驚いた。ヒデミだけは別やった。

「あんた、ほんまに……『としま』みたいやな。まさかうちと同い年やったなんて。」

隣にいたカガミはその言葉聞いて思わず笑ってもうた。ハナルも笑うた。

「安心してな。アコは年上の人をめっちゃ大事にするねん。あんたがアコより一ヶ月でも年上やったら、絶対『お姉ちゃん』って呼ぶで。うちはもう慣れたから呼ばれへんけどな。でも、あんたが年下やったら気にせんでええで。『お姉ちゃん』って呼ぶかどうかは自由やからな。」

亜子はヒデミに「そんなこと言わんといて」って小声で言うた。

「ほんまに……古風やな。」セイナが感心したように言うた。

「まるで軍隊入ったみたいや。」

アコは自分が空気読めてなかったと思って、どないしたらええかわからへんくなってた。その時、カガミが走ってきて、バンドの楽譜集を渡した。

「明日、アコさんがライブ出てくれるなら、この楽譜使ってな!よし、そろそろ練習始めるで!ユキちゃん!」

アコはみんなとうまく合わせられた。音楽が調和して、その曲をもっと良くしとった。ヒデミはアコのことを待ちながら、ついでにちょっと寝とった。

みんなが帰ろうとした時、もう明日一緒にライブやる約束までしてた。二人を見送った後、ユキはこっそりカガミの後ろに隠れた。

「カガミ、あのキーボーディストの隣におった人、なんか楽器できんの?」

「そうやで!ベースや!」

ユキは何も言わんかった。でも、その目はぼさっとした大学生をじっと見つめとった。


(From Dandy:

I dont know how to I can't say enough how much I love this work. If you guys want to collect it or like it, that would be the biggest encouragement for me.)

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